2017年5月30日火曜日

国連特別報告者への政府抗議に「日本政府は2枚舌」と谷口真由美氏

 国連人権委特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏は5月18日付で要旨下記の公開書簡を安倍首相に送りました。
 ・共謀罪法案は、プライバシーと表現の自由の不当な制限につながる可能性がある
 ・国連越境組織犯罪防止条約締結のためというが新法案の適切性と必要性について数々の疑問がある。
 ・捜査対象となるの組織的犯罪集団による犯罪に限定されるというが何が「組織的犯罪集団」に当たるかの定義は漠然としていてテロ組織に限定されているわけではない
 
 それに対して日本政府は在ジュネーブ日本政府代表部の職員が「強い抗議」を申し入れ1ページ余りの文書を提出しましたが、ケナタッチ氏によればそれは「中身のないただの怒り」であり、「プライバシーや他の欠陥など私が多々挙げた懸念に一つも言及がなかった」ということです。
 この件について京都大学の高山佳奈子教授、「これは大変な書簡」であり、「このまま与党が強行採決すると、今回の国際組織犯罪防止条約への日本の参加がスムーズにいかなくなる心配が出てきた」警告しています
※ 5月24日 国連人権委特別報告者から安倍首相に共謀罪批判の文書.
 
 氏は更に5月22日、ジョセフ・ケナタッチ氏の発言に対して「何か背景があるのでは」などと強く抗議しました。実に品位を欠く下劣な発想ですが、大阪国際大学准教授の谷口真由美氏28日放送の「サンデーモーニング」で、「日本政府は2枚舌」だとし、これまでに政府は国連特別報告者を叙勲したこともあり矛盾すると指摘しました
 いずれにして国家が自国本位でケースごとに態度を変えるというのでは国家の品位を貶めるものです。
 
 ところで「息をするように嘘を吐く」と言われている安倍首相は、G7サミットに関連させて、共謀罪について二つの大嘘を吐きました。
 一つは、「国際組織犯罪防止(TOC)条約締結のためのわが国の取り組み(=共謀罪法案)に対して各国支持したという嘘です。
 もう一つは、ケナタッチ氏の立場について、「G7サミットで懇談したアントニオ・グテーレス氏国連事務総長『人権理事会の特別報告者は、国連とは別の個人の資格で活動しており、その主張は必ずしも国連の総意を反映するものではない』旨、述べていた」という嘘です。
 限られたメンバーしかいない場でのことなので「嘘を吐きやすい条件」は整っているのですが、それを利用して嘘を並べるというのは卑怯です。
 
 日本が国際組織犯罪防止条約締結のために努力するのに反対する国がないのは当たり前のことで、それと共謀罪を成立させることとは関係のないことです。各国が共謀罪法案に賛成したのでないことは明白です。
 共謀罪に関するケナタッチ氏の立場については、グテーレス事務総長のリリースによれば、「特別報告者」人権委員会に直接報告する、独立した専門家であると述べたもので、「独立」していて何者にも干渉されない存在であることを説明したものであって、それを「国連とは別の個人の資格」と説明したとするのは明らかな嘘です。
 
 LITERAの「安倍首相がサミットデマ吹聴!・・・・」も併せて紹介します。
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「日本政府は2枚舌」谷口真由美氏が指摘
 国連特別報告者への政府抗議に
Chitose Wada  ハフィントンポスト 2017年05月28日
国連特別報告者が安倍首相に、「共謀罪」法案に懸念を示す書簡を送ったことについて、菅義偉官房長官は5月22日、「何か背景があるのでは」などと強く抗議した。
この発言を大阪国際大学准教授の谷口真由美氏が、28日放送の「サンデーモーニング」(TBS系)で、「日本政府は2枚舌」などと指摘した。日本政府はこれまでに国連特別報告者を叙勲することもあり、矛盾するのではないかという。
 
■これまでの経緯
・ケナタッチ氏が安倍首相宛に書簡:国連のジョセフ・ケナタッチ氏が18日付の書簡で、「(法案は)プライバシーや表現の自由を制約するおそれがある」などと指摘した。「新法案では、犯罪を立証するため国民への監視を強化する必要がある場合に、適切にプライバシーを保護するための新たな特定の条文や措置が盛り込まれていない」ことなどがその理由だった。
・政府が国連に抗議:日本政府は18日付で、国連に抗議。菅官房長官は22日の記者会見で、「政府外務省は、直接説明する機会を得られることもなく、公開書簡の形で一方的に発出した」などと声を荒げ、「書簡の内容は明らかに不適切なもの」「強く抗議を行った」などと述べた。24日の会見では、「何か背景があって(書簡を)出されたのではないかと思わざるを得ない」とも述べていた。
 
■国連特別報告者とは?
国連のプライバシー権に関する特別報告者とは、国連の人権理事会の任命を受け、各国の人権侵害などの状況を調査・監視・公表する専門家だ。各国から独立した立場におり、調査した内容は、人権理事会や国連総会に報告する。
報告書を作成するにあたっては、「当局と被害者の双方に会い、現場での証拠を集める」とされる。
日本は国連人権理事会の理事を務めており、特別報告者の任命権がある。
ケナタッチ氏はマルタ大学の教授でIT法の専門家。2015年7月に、プライバシー権に関する特別報告者に任命された。
 
■日本政府は過去に国連特別報告者を叙勲していた
谷口氏は28日の番組で、日本政府はこれまで国連特別報告者に対し、叙勲していたことがあると指摘した。
確かに日本政府は、北朝鮮による日本人拉致など深刻な人権問題解決に向けた取り組みなどに尽力したとして、インドネシア出身のマルズキ・ダルスマン氏(72)に2017年春に旭日重光章を授与した。ダルスマン氏は2010年8月〜2016年7月に同報告者を務めた。
 
谷口氏は番組で、「『何か意図のある人じゃないか』みたいなことを日本政府が言ったとしたら、これはもう重大な2枚舌」と批判。「そして、理事国としての信頼にもかかわるという、大変な問題をはらんだ今回の菅官房長官の抗議だと考えます」などと述べ、日本政府の矛盾を指摘した。
 
 
安倍首相がサミットデマ吹聴!“G7が共謀罪後押し”
“国連事務総長「共謀罪批判は国連の総意でない」”は全部嘘だった!
LITERA 2017年5月29日
 昨日、G7から帰国した安倍首相だが、案の定、共謀罪法案が審議入りしたきょうの参院本会議で、まるでG7各国が共謀罪を支持しているかのようなインチキをふりまいた。
 
 安倍首相はG7初日である26日の会議で「国際組織犯罪防止(TOC)条約締結のためのわが国の取り組みに対する各国の支持に感謝したい」と言い出し、閉会後の会見でも「わが国が国際組織犯罪防止条約の締結に必要な国内法整備を行い、本条約を締結することはG7をはじめとする国際社会と協調して深刻化するテロの脅威を含む国際的な組織犯罪に対する取り組みを強化する上で、極めて重要」と主張していた。
 しかし、TOC条約と共謀罪はまったく別の話だ。多くの識者が言及しているように、共謀罪を新設せずとも現行法の制度のなかでTOC条約を締結させることはできるし、TOC条約は組織的な経済犯罪を防止するマフィア対策なのに、共謀罪はそのような中身にはなっていない上、テロ対策にさえなっていない。
 安倍首相はその事実を一切ネグって、まるで共謀罪が国際社会から後押しを受けているようなミスリードを行ったのだ。
 
 さらにきょうの国会でも、安倍首相は「G7サミットではテロ対策の重要性が強調された」 「テロ等準備罪を新設させなければ国際組織犯罪防止条約を締結できない」と繰り返した。
 とっくに嘘とばれている主張を平気で強弁し続けるその厚顔ぶりには呆れるほかないが、安倍首相は本日の参院本会議で、もうひとつインチキをふりまいた。共謀罪に懸念を示している国連人権委員会の特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏の公式書簡について、「著しくバランスの欠く不適切なもの」 「客観的であるべき専門家のふるまいとは言い難い」と猛批判し、こう述べたのだ。
この点について、G7サミットで懇談したアントニオ・グテーレス氏国連事務総長も『人権理事会の特別報告者は、国連とは別の個人の資格で活動しており、その主張は必ずしも国連の総意を反映するものではない』旨、述べていました
 国内メディアも、同じように、グテーレス事務総長が安倍首相と会談した際、きょう安倍首相が主張したのとまったく同じ発言があったと報道。それを受けてネトウヨたちは「国連の総意ではなく個人のスタンドプレーだったことが判明」などと騒いでいる。
 
国連事務総長の言葉を都合よく歪曲し、勝手に言葉を加えた安倍首相
 しかし、このグテーレス事務総長の発言内容は、安倍政権によってかなり都合よく歪曲されたものだ。実際、28日付けでグテーレス事務総長は安倍首相との会談についてプレスリリースを発表したが、そこにはこのように綴られている。
シチリアで行われた会談のなかで、事務総長と安倍首相はいわゆる「慰安婦」問題について話し合った。事務総長は日本と韓国のあいだで解決されるべき問題だということに同意した。事務総長は具体的な合意内容については言明せず、原則としてこの問題の解決策の性質と内容は二国に任されるべきと話した。
 また、特別報告者による報告書に関し、特別報告者は人権委員会に直接報告する、独立した専門家であると語った。〉(編集部訳)
 
 政府は慰安婦問題にかんする日韓合意について〈グテレス氏は合意に「賛意」と「歓迎」を表明した〉(産経新聞28日付)としていた。だが、当のグテーレス事務総長は「日韓合意の内容には言明していない」と述べているのだ。あきらかに日本政府の言い分と食い違っている。
 人権理事会の特別報告者についてのくだりも同様だ。リリースでは、「特別報告者」について「experts that are independent and report directly to the Human Rights Council(人権委員会に直接報告する、独立した専門家)」となっているが、この「独立した」は日本国憲法76条が規定している「裁判官の独立」の「独立」と同じ意味で、何者にも干渉されない存在であることを説明するもの。それを「国連とは別の個人の資格」と訳するのは明らかにインチキだ。
 
 しかも、このリリースには、安倍首相が主張したような「国連の総意ではない」などという言葉は一切、出てこない。そもそも、リリース内ではケナタッチ氏の名前も共謀罪やテロ等準備罪、組織犯罪対策という言葉も出てこず、普通に読むと特別報告者の位置づけに関する一般論、あるいは前段の「慰安婦問題」における特別報告者の話の可能性もある。
 
 ようするに、安倍首相と政府は国連事務総長の発言を歪めたうえ、自分たちの言葉を勝手に足してマスコミに流し、共謀罪の正当化に利用しようとしたのである。
 実際、国内メディアはグテーレス事務総長と安倍首相の会談を断定的に報じたが、ジャパンタイムズの記事には〈the Foreign Ministry said〉と書かれている。つまり、両者でどのような話がなされたのかを各メディアは直接取材したわけではなく、「外務省が話した」ものを伝えただけなのだ。
 
官邸のリークに乗って安倍のサミット宣伝をする産経と日テレ
 安倍首相と政府の手段を選ばないやり方はあまりにグロテスクだが、問題は、大本営発表のまま伝えるメディアにもあることは言うまでもない。
 たとえば、今回のG7サミットについて御用メディアは「安倍首相が各国首脳をリードしてまとめあげた!」と大々的に報道。産経新聞は、安倍首相をG7サミットの「陰の議長」と呼んで〈サミットの成否を左右する〉などと称揚した。
 だが、これに輪を掛けて醜かったのが、日本テレビが28日に放送した『真相報道バンキシャ!』だ。同番組では「安倍首相が果たした役割」と題して、いかに安倍首相が暴れん坊のトランプ大統領をたしなめて成功に導いたかを、「安倍総理周辺の取材」に基づき、なんと再現ドラマまでつくって放送。コメンテーターの夏野剛氏も「安倍総理がトップであることで非常に有利な展開」「安倍総理がいなければ深刻だった」「日本にとっては100点満点」と誉めそやすなど、ただのプロパガンダに終始したのだ。
 安倍首相はG7サミット閉会後の記者会見で「G7はもっとも大切な価値を共有しています」と言い、それは「自由、民主主義、人権、法の支配」だと明言。「そうした価値がかつてない挑戦を受けています」とし、北朝鮮を非難した。しかし、「自由、民主主義、人権、法の支配」これらすべてを潰そうとしているのは安倍首相本人ではないか。その典型が、前川前次官の証言ツブシの謀略だ。官邸は前川喜平・前文科事務次官の違法性も何もないスキャンダルをリーク。それを受けた読売新聞は全国紙としての矜持を簡単に捨てて、三流実話誌でも書かないような記事をデカデカと掲載した。
 共謀罪が施行されれば、こうした事態は頻発するだろう。政権批判の動きに対して政府が警察を動かし「組織的犯罪集団」の認定をして取り締まる。そして読売や産経などの御用マスコミが権力のリークに乗っかって政権批判者スキャンダルを垂れ流す。そうやって、社会を萎縮させ、国民を沈黙させていく。
 日本をこうした恐怖支配国家にしないためにも、共謀罪はなんとしてでも止める必要がある。(編集部)