2017年5月21日日曜日

森友・加計・共謀罪と 普通なら内閣は3つ吹っ飛んでいるのに

 8日の衆院予算委の集中審議で、首相の9条改憲発言の真意を糾した民進の長妻昭氏に対して、安倍氏はナント「自民党総裁としての考え方は相当詳しく読売新聞に書いてある。ぜひ熟読していただいてもいい」と答弁しました。野党議員の質問に対して「首相支持派」の新聞の記事を読めと答えたわけです。「もはや皇帝気どり。常軌を逸していますよ。なんでも『俺がいえばできるんだ』と過信しているんでしょうね」と長妻氏は呆れていたということです(朝日新聞15日付)。
 
 実際に安倍首相の国会答弁は滅茶苦茶です。自分に取って都合の悪い質問に対しては逆切れしてワメキ続けるか、全く回答にならない無内容を延々と語り続けるかです。安倍首相は漢字こそロクに読めませんが、党内で権力を握ることあるいは政権が官僚たちを掌握することにかけては、決して見過ごすことが出来ない能力を持っています。
 
 自民党内の勢力分布において「安倍1強」を打ち立てたのは、勿論「小選挙区制」の弊害を徹底的に利用した結果であって、そのことは安倍氏自身が誰よりも自覚している筈ですが、そのことで自分がまるで皇帝にでもなったかのように錯覚しているところは大いなる浅はかさです。
 「多数決が基本ではあるが決して万能ではない」とはどの民主主義の教科書にも書かれているところです。民主主義自体には様々問題はあります。現実に民主主義に代わる制度がない以上、その綻びを大きくすることがないように歴代の政府は良心と良識を持って対処して来ました。
 ところが安倍首相は全く逆であり、「多数派が正義」、「多数決で何でも決められる」という超単細胞的思考の持ち主です。その害悪は既に、特定秘密保護法や安全保障法(戦争法)そして盗聴法の改悪となって既に現れてきています。そして今度の共謀罪法案です。
 
 かのヒトラーも比較第一党で政権の座についたときには、「あのペンキ屋風情が・・」と軽く見られたということですが、国会焼き討ち事件(犯人は不明)を共産党の仕業だと極めつけて、数千人の共産党関係者や自由主義者たちを逮捕勾留して恐怖政治を敷くと、一気にあの絶対的な独裁体制を打ち立てました。
 安倍政権をあなどるのは大変に危険です。
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巻頭特集  
森友、加計、共謀罪 ふつうなら内閣は3つ吹っ飛んでいる
日刊ゲンダイ 2017年5月20日
 明らかな“敵前逃亡”だった。「ダメだ、ダメだ」「こんなの認められない」。19日、維新を除いた野党議員らの怒号が飛び交う中、衆院法務委員会で強行採決された「共謀罪」法案。これだけの重要法案の採決にもかかわらず、NHKの生中継はなし。さらに、その場には安倍首相の姿もなかった。
 首相出席による締めくくり質疑を行わないまま、異例の採決となった理由は明白である。安倍は加計学園疑惑の追及から逃げたのだ。
 
 与党側は当初、17日の委員会採決を目指し、この日予定した審議時間4時間のうち1時間は首相出席で行うことを提案していた。ところがどっこい。朝日新聞が17日付朝刊で、加計学園傘下の岡山理大獣医学部の新設を巡る「総理のご意向」文書の存在をスクープ。すると、衆院法務委の鈴木淳司委員長(自民)は職権で19日の委員会開催を決定。本来、行われるはずだった首相出席の締めくくり質疑をすっ飛ばし、自公プラス維新で採決を強行したのだ。これほど分かりやすい話はない。
 いや、加計学園疑惑だけではない。森友学園疑惑も、超ド級の“籠池砲”が炸裂したばかり。籠池泰典前理事長が“安倍記念小”の建設予定地の地下3メートル以深には「ゴミがなかった」という業者のメールを公開。国有地8億円値引きの根拠が吹っ飛ぶなど新局面を迎えている。
 
 国民生活を大きく揺るがす重要法案の採決の場でも、窮地の安倍を忖度するロコツな“2つの学園疑惑”隠しがまかり通ってしまうのだ。いかに自民党が、安倍サマの顔色をうかがう“ヒラメ議員”の群れと化しているかを雄弁に物語っている。
 
「味方だけ理解すれば」と民主主義を完全無視
 直近の世論調査でも共謀罪について、6割以上の国民が「今国会で成立させる必要はない」と答えている。賛成派でさえ、「審議を十分に尽くせ」と求めているのに、与党は「採決の目安」と称する「審議30時間」に達したとの自分勝手な理屈で強行採決したのだ。
 
 肝心の審議の中身もグダグダだ。法案の責任者である金田法相は「ビールと弁当を持っていれば『花見』、地図と双眼鏡なら『犯罪の下見』」などとデタラメ答弁を連発。「一般人が捜査対象になる」との懸念は何ひとつ払拭できず、野党に「100項目以上の疑問点が残っている」(民進党・山井和則国対委員長)と指摘されるほど。
「それでも今国会での共謀罪の成立にこだわるのであれば、政権の最高責任者として安倍首相は国民に詳しい説明を行うのがスジ。自らの疑惑追及を恐れて締めくくり審議から逃げ、説明責任を放り出すなんて、もってのほか。国民軽視も甚だしい。それにしても安倍政権はいかなる重要法案でも、ハナから数の力に頼った強行採決ありき。話し合いに基づく合意という民主主義の基本を無視しています」(政治評論家・森田実氏)
 森友、加計、共謀罪の3点セットの国会審議が象徴的で、この政権の無能大臣たちはそろって、「民主主義の原則」を守ろうとしない。
 
 原則とはすなわち、情報を共有して議論を重ねることなのだが、どの大臣も「詭弁」「強弁」の目白押し。そもそも議論が成り立たないのである。
 デタラメ答弁の金田法相しかり、南スーダンPKOについて「戦闘」を「武力衝突」と言い換えた稲田防衛相しかり、フリー記者の質問にブチ切れて「出ていけ」と迫った今村前復興相しかり。もちろん、最たるデタラメは安倍その人だ。
 
 唐突な改憲宣言でも首相と党総裁の立場を都合よく使い分け、野党の質問には「読売新聞を熟読して」と取りつく島もない。高千穂大教授・五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言った。
「いくら敵対する相手であっても、野党議員も国民が選んだ代表者ですし、記者の背後には国民が控えています。政治家がろくに説明責任を果たさず、結論だけを押し付けるのは国民軽視とイコールです。それでも、この政権の面々は言葉を尽くして敵対勢力を説得することは皆無で、歩み寄りの姿勢は一切、感じられません。まるで政権を支持してくれる“味方”だけが理解してくれれば十分だという態度しか伝わってこないのです」
 
■腹心の友に恩恵を与え、裏切り者は吊し上げ
 国会で民進党議員に昭恵夫人と森友学園の「ズブズブの関係」を突っ込まれると、安倍は「品の悪い言葉を使うのはやめた方がいい。それが民進党の支持率に表れている」と、ニタニタしながら低支持率を揶揄していた。一国のトップのそんな姿を見るにつれ、つくづく言論の府がないがしろにされていると痛感する。
 むしろ、こうして国民を愚弄する振る舞いを続けることが、安倍政権には好都合なのかもしれない。前出の五野井郁夫氏が続ける。
「有権者が『安倍政権は汚い』『自分たちの言い分は何ひとつ聞き入れてくれない』と無力感を味わうほど、国政への関心は薄れてしまう。投票所から遠ざかり、棄権が増えれば御の字で、政権側には大歓迎くらいに思っているのではないか。そうした発想がなければ、これまでの説明責任の放棄はあり得ません。今の政権がやっていることは、民主主義そのものを軽んじる究極の居直りなのです」
 国会審議は多数派の意見がすべて、話し合いによる合意形成なんてクソくらえ。首相の腹心の友には国政私物化を極め、でき得る限りの恩恵を与えるよう便宜を図る。その一方で、首相を侮辱するような不逞のやからは、籠池前理事長のように証人喚問で見せしめとして吊し上げる
 常に我が身かわいさの低俗なヒラメ議員に担がれたイカれた政権の手にかかれば、発展途上の独裁国家顔負けの情実政治も、お茶の子さいさい。とことん、国民をなめ切った厚顔政権である。
 
 前出の森田実氏はこう指摘する。
「かつての自民党政権なら、党内にも一定数の批判勢力が存在し、時の政権がヘタを打てば、その座をすぐに取って代わる勢いがあった。また、安保改正と引き換えに退陣した安倍首相の祖父、岸信介氏のように、内閣の命運をかけた重要法案を通せば、首相の座を失っても構わないという気概もありました。森友、加計と政権を揺るがす疑惑が2つも飛び出し、国民無視で共謀罪まで強行すれば、本来なら内閣が3つ吹っ飛んでも、おかしくない。与党内の緊張感に伴う疑似政権交代こそが、自民党の長期支配の源泉でしたが、今の自民党は安倍1強の一枚岩。党内野党を失った一枚岩ほど、少しの亀裂でバラバラに崩れ去るもろさと隣り合わせです。野党が2つの学園問題を徹底追及すれば、親ガメがコケたら皆コケたの可能性は十分にあり得ます」
 
 いつまでも民主主義を否定する政権にナメられっ放しではダメだ。無力感を覚えても、有権者は絶対に諦めてはいけない。イカれた首相が自らのスキャンダル追及に怯える今こそ、鉄槌を下すチャンスである