2017年5月8日月曜日

巡航ミサイルの所有は専守防衛を逸脱 イスラエルとのドローン共同開発も

 政府は北朝鮮による相次ぐ弾道ミサイル発射や核開発継続を受け、発射拠点を破壊するための巡航ミサイルの導入本格検討に入りました。「敵基地攻撃能力」の保有を目指すものです
 日本が憲法上認められているのは急迫不正の侵攻に対する防衛(力)のみであって、敵基地攻撃はその対極に属するものです。敵基地攻撃論はこれまでも折に触れて極右の人たちの口の端には上りましたが、これまでまともに取り上げられることはありませんでした。
 北朝鮮はもう20年近くも前から日本を射程に収める「ノドン」を所有していましたが、安倍政権が登場するまではただの一度も日本への脅威が問題になることはありませんでした。それがこの度の北朝鮮危機を機に、「弾道ミサイル」を発射する惧れがあるから対策が必要だと、突如言い出しました。
 そもそも北朝鮮危機をトランプ大統領と共に演出してきたのは安倍首相に他なりません。自作自演という言葉がありますが、北朝鮮危機を煽り北朝鮮を挑発した安倍政権が巡航ミサイルの保有を言い出すとは語るに落ちました。
 
 国が軍拡競争への道に入れば民生が圧迫され、人々がどれだけ貧窮することになるのかは北朝鮮の人たちを見れば良く分かります。日本もかつてはまったく同じ道をたどり悲惨な敗戦を体験しました。
 日本が生きる道は9条を堅持して平和外交に徹することしかありません。それ以外の選択はすべて「いつか来た道」に通じます。敗戦でそのことを噛みしめた思いが9条に結実しました。
 安倍首相を見ているとよくわかりますが、「軍拡競争への道」に入ること自体は極めて容易なことなので、その末路を想定できない愚かな人間は簡単に選択したがります。そこには先の大戦で幾千万の尊い命が無残にも絶たれたことへの反省は微塵もありません。
 産経新聞の記事と琉球新報の社説を紹介します。
 
 それとは別に、日本はイスラエルとの兵器の共同開発を始めていますが、その実態はイスラエルがガザを定期的に空爆するのに使っている無人爆撃機ドローンに関するものだということです。イスラエルは「草刈り」と称して、数年ごとにガザが空爆の被害から復興した頃を狙っては猛烈な爆撃を繰り返していますが、その9割を占めているのがドローンだということです。
 この連休にもイスラエルに行った日本政府要人は数人を数えました。平和国家であるはずの日本が、どうしてパレスチナ人の恨みを買うようなことをしなくてはならないのでしょうか。これも安倍政権の顕著な特色といえます。
 ドローンはガザ侵攻以外の時期には、ガザ地区のパレスチナ人への砲撃・銃撃にもっぱら使われているということです。子供であろうと容赦はしません。
 田中龍作ジャーナルの記事を併せて紹介します。
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巡航ミサイル導入検討 政府、北朝鮮脅威に対処
産経新聞 2017年5月6日
 政府は北朝鮮による相次ぐ弾道ミサイル発射や核開発継続を受け、日米同盟の対処能力を強化するため、巡航ミサイルの将来的な導入に向けた本格検討に入った。北朝鮮の脅威は新たな段階になったとして、発射拠点を巡航ミサイルなどにより破壊する「敵基地攻撃能力」の保有を目指す。早ければ、来年度予算案に調査費などを計上したい意向だ。政府関係者が5日、明らかにした。.
 敵基地攻撃を目的とした装備を持つことは、従来の「専守防衛」という日本の防衛の基本方針から逸脱しかねないとの懸念が根強い。政府、与党内にも慎重論がある。安倍政権は「反撃能力」と位置付ける方針だが、野党からの反発は必至だ。.
 巡航ミサイルは米国製「トマホーク」の導入を想定。日本海上から北朝鮮全域を射程に収め、低空飛行するためレーダーに捕捉されにくく、目標を精密に攻撃する特徴がある。4月の米国によるシリア攻撃の際にも使われた。
 
 
<社説> 巡航ミサイル検討 専守防衛逸脱する愚行だ  
  琉球新報 2017年5月7日
 政府が巡航ミサイルの将来的な導入に向けた本格検討に入った。北朝鮮による弾道ミサイル発射や核開発継続を受け、日米同盟の対処能力を強化することが狙いだ。
 巡航ミサイル導入は発射拠点を破壊する「敵基地攻撃能力」の保有を意味する。従来の「専守防衛」という日本の防衛の基本方針から逸脱する懸念がある。先制攻撃も可能となり、憲法違反の武力行使を誘発させる恐れがある。巡航ミサイルの導入は現憲法で定めた「交戦権否認」を否定する極めて危険な一歩であり、愚行だと言うほかない。
 
 巡航ミサイルは主にジェットエンジンで推進する無人誘導の有翼ミサイルで、艦艇などから発射する。低空飛行のためレーダーに捕捉されにくく、射程が長く精度が高いことから、相手国の重要施設への攻撃に使用される。
 日本が導入を検討している米国のトマホークは最大射程が約2500キロだ。米国は今年4月、地中海東部の駆逐艦から数百キロ離れたシリアの空軍基地を攻撃している。相手国国土の壊滅的な破壊のためにのみ用いられる攻撃的兵器だ。
 日本はこれまで攻撃的兵器の保有は直ちに自衛のための必要最小限度の範囲を超えることになるとして「いかなる場合にも許されない」(防衛省)との立場に立っていた。それなのに、なぜ導入を検討できるのか。政府自ら前言を撤回するのなら、国民に納得できる説明をする必要がある。
 敵基地攻撃について政府は憲法上も可能だとしてきたが、中国や韓国など周辺諸国への配慮から「政治判断」として、その能力を保有してこなかった。
 
 安倍晋三首相は1月の衆院予算委員会で敵基地攻撃について「他に手段がないと認められるものに限り、敵の基地をたたくことも自衛の範囲に含まれる」と答弁した。
 これは1956年の鳩山一郎内閣による「座して自滅を持つべしというのが憲法の趣旨とは考えられない。自衛の範囲だ」とし「他に手段がない」場合に限り許されるとの見解を踏襲したものだ。
 だが敵基地攻撃能力の保有に突き進めば軍拡競争を加速させてしまう。かえって敵基地攻撃以外に「他に手段がない」状況をつくり出すだけだ。巡航ミサイル導入を検討するのではなく、日本は平和国家としての歩みを踏襲し、平和的解決に努力を傾けるべきだ。
 
 
ガザの子供を殺してどうするのだ? イスラエルと共同兵器開発する日本
田中龍作ジャーナル 2017年5月5日
( 【写真説明】 即死状態で救急病院に運ばれてくる子供たちの骸は、瞬く間に白い布に巻かれた。命のあっけなさに愕然とする他なかった。=2014年7月、ガザ市内 撮影:筆者= )
 
 きょうは端午の節句。中東に「子供の日」がある訳ではないが、子供の命があまりに軽いガザに思いを馳せる。
 2014年、イスラエルの軍事侵攻で2,000人余りのパレスチナ人が殺害された。
 救急病院の遺体安置室は、小さな骸が大半を占めていた。子供の犠牲が多いことを物語る。
 爆撃の中心は空爆だ。空爆の9割以上をドローンが占める。ドローンは24時間、重低音のエンジン音を立てて上空を旋回していた。
 そして陸上の移動物体を見つけるとミサイルを放つ。
 海岸の波打ち際で遊んでいた男の子たちが対人ミサイルに直撃された。
 陸上基地でモニター画面を見ながらドローンを操縦するイスラエル軍兵士は、攻撃対象が子供であることを十二分に認識していたはずだ。
 子供たちの親もドローンで殺されている。現地医療機関の調査によると、子供たちがPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症する原因のトップはドローンだ。
 日本はイスラエルと兵器を共同開発する、という。こともあろうにドローンだ。
 パレスチナの子供たちを殺してどうするのだ? 私たち日本の納税者に突きつけられている重くて厳しい問いである。
『【ガザ写真集】いとも簡単に殺される命』を発表しました。イスラエルの軍事侵攻から3年が経っても忘れてはならない、過酷な現代史を写真で振り返ります…
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