2017年5月3日水曜日

護憲集会を公共施設から排除 政権批判集会は共謀罪になりかねない

 現行憲法の施行からこの3日で70年目を迎えます。
 ここにきて地方自治体が公共の施設を護憲団体の集会に使用させない動きがさらに強まっています。
 市民団体「石川県憲法を守る会」が金沢市役所前広場で開催しようと企画した「憲法施行70周年集会」に対し、金沢市広場の使用を拒否しまし
 この流れは第二次安倍政権成立以降加速され、神戸市神奈川県大和市室蘭市東京都国分寺市などが護憲や脱原発を訴える団体への公共施設の利用を禁止しています。
 
 地方自治法第244条では「地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならないと定めています地方自治体は別に封建領主という訳ではないのですから、当然のことです。
 それでは一体どんな正当な理由があったというのでしょうか。
 直近の金沢では、「申請後の聞き取りで、集会の内容には政府への批判も含まれると聞いた。中立性確保の面で支障があると判断し」て広場の使用不許可にしたということです。
 海外の多くのメディアからも “極右” と見られている安倍政権に対して国民から批判があるのは極めて当然のことで、賛成意見ならいいが反対意見は表明してはいけないというのであれば民主主義は成り立ちません。憲法が認めている「表現の自由」にも反します。また「中立性」の認識も安直に過ぎます。一体何を「確保」しようというのでしょうか。
 
 憲法第99条は「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」としています。安倍首相のように自ら率先して「改憲」を主張することはこの規定に真っ向から反します。
 金沢市役所の職員も当然憲法を尊重し擁護する義務を負っています。もしも安倍首相が主張する「改憲志向」が中立であって、「護憲を志向する」ことが中立に反するというような観念を持っているのであれば、それは大間違いです。そんな判断でものごとを進められては話になりません。お粗末すぎます。
 
 実際にそんな空気がはびころうとする中で、もしも共謀罪法案が成立したならばどんなことになるのでしょうか。
 政権批判したり政策に反対する市民団体などを官憲が「組織的犯罪集団」と見なすだけでなく、一般市民までがそれに簡単に同調する世相になりかねません
 いまこそ判断基準の座標軸が正しいのかどうかを自問自答すべきです。
 LITERAの記事を紹介します。
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まるで戦前!「憲法を守ろう」排除の動きが続々! 
政権批判するだけで共謀罪逮捕される悪夢がすぐそこに
LITERA 2017年5月2日
「憲法を守ろう」という集会が、公的な場所から締め出し
 明日3日は現行憲法の施行から70年目を迎えるが、その憲法記念日を目前にして、戦前を思わせる不穏な事件が相次いでいる。
 
 そのひとつが、石川県の市民団体「石川県憲法を守る会」が憲法記念日に金沢市役所前広場で開催しようと企画した「憲法施行70周年集会」に対し、金沢市が広場の使用を拒否した一件だ。
 毎日新聞によれば、市の総務課は広場の使用に不許可を出した理由について、「申請後の聞き取りで、集会の内容には政府への批判も含まれると聞いた。中立性確保の面で支障があると判断した」と説明。しかも、金沢市は拒否したことの根拠を〈「特定の政策、主義、意見に賛成または反対する目的での示威行為」などを禁止した市庁舎等管理規則に基づき判断した〉というが、じつはこの「市庁舎等管理規則」の該当部分は3月21日に改正したばかり。これまでは「示威行為」を禁止するとしていたが、改正によって「特定の政策、主義、意見に賛成または反対する目的」という文言が追加されていたのだ。
 これはあきらかに護憲集会を開かせないための恣意的な改正だろう。というのも、同団体は2014年5月まで十数年間にわたってこの広場で護憲集会を開催し、市も許可していたからだ(2015〜2016年は広場が整備工事中だったため別の場所で開催)。
 
 だが、同団体などが同じ2014年5月に自衛隊パレードの反対集会を開催しようと同広場の使用許可を申請したところ、金沢市は拒否理由を「集会は政治的行為に当たる」と説明、最終的に「示威行為」を不許可の根拠としたのだ。その後、市民団体側はこの判断は違憲・違法として市を相手に裁判を起こし、1・2審ともに請求が棄却、今年2月に団体側は最高裁に上告している。
 
安倍政権以降、護憲、反原発、政権批判の集会、人物が次々と排除
 言わずもがな、憲法は「集会・表現の自由」「思想および良心の自由」を保障しており、また、地方自治法第244条も〈普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない〉と定めている。いや、そもそも今回の憲法記念日に企画されたのは「憲法を守ろう」と訴えるイベントだ。それを現行憲法の遵守義務が課せられた公務員が「政治的」と判断して拒否すること、それ自体が「憲法違反」ではないか。
 
 さらに今年4月には福井県でも、福井県庁前の交差点において反原発を訴えている市民団体に対して県が活動自粛を文書で要請するという事件も起こった。これもまた、国策を批判するという表現の自由を奪う暴挙と言うべきものだ。
 だが、注目すべきは、こうした政権批判や、護憲・平和をテーマにした市民団体のイベントに対して行政が過剰に反応、対処するようになったのが、第二次安倍政権以降の特徴的な流れであるということだろう。
 挙げ出せばキリがないが、たとえば2014年2月には、憲法記念日に企画された内田樹氏の講演会の後援を神戸市が不承認。6月には神奈川県大和市が、後援した護憲を訴える市民団体のイベントでアイドルグループ・制服向上委員会が自民党を歌詞で批判したため、後援を取り消した。また昨年も、北海道室蘭市は憲法学者の小林節氏が講師を務めた憲法イベントのチラシの市民会館への掲示を不許可。東京都国分寺市では、市が補助金を出し事務局を担う「国分寺まつり」において、護憲や脱原発を訴える3つの団体が出店や参加を拒否されるという事件も起こっている。
 
 政治に対して批判を自由に行える、それは民主主義国家の大前提だ。しかし、護憲や平和を訴えることさえも、いまや「政治的中立を逸脱している」などと判断される。そうした空気をつくり出したのは、ほかでもなく安倍政権だ
 そして、この空気のなかでいま、考えなくてはならないのは、安倍政権が血道を上げて成立を目論んでいる「共謀罪」がいかに危険か、ということだろう。
 
共謀罪成立すれば、護憲や平和を訴えただけで検挙対象に
 共謀罪に対してはいくらでも恣意的な運用が可能であることが指摘されているが、実際、先月21日の衆院法務委員会で盛山正仁法務副大臣は「(一般人が)対象にならないということはない」と、一般人も捜査対象であることを認めた。また、過去に自民党衆院議員として共謀罪審議を行ってきた早川忠孝弁護士も、衆院法務委員会で行われた共謀罪法案参考人質疑の場で「(金田勝年法相よりも)副大臣のほうが法律家に近い感覚でお答えになったのではないか」と発言。さらに既報の通り、共謀罪の取りまとめ役となっている自民党法務部会長である古川俊治参院議員は、『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)の取材に対し、「(市民団体も)組織的犯罪集団として認定される可能性はありますね」と明言している。
 
 ようするに、権力側の一存で、政権に批判的・反対する態度をとる市民団体などは「組織的犯罪集団」とされてしまうのだ。そうなれば、護憲や平和を訴える集会を開催することも、こじつければ簡単に「組織的な威力業務妨害罪」とすることも十分に可能だろう。憲法を守ろうと主張すること、平和を守る観点から政権批判を行うこと、そんなことすら検挙の対象となる社会──。「そんな馬鹿な」と思うかもしれないが、これがいま、現実に近づいているのである。
 
 安倍首相は昨日1日、「新しい憲法を制定する推進大会」に出席し、「もはや憲法を不磨の大典だと考える国民は非常に少数になってきた」などと言い、「改憲か護憲と言った抽象的で、そして不毛な議論からは私たちは卒業しなければいけない」と宣言した。前回の参院選の遊説では一度たりとも「憲法改正」に言及しなかったにもかかわらず、こうやってこの総理は現実に起こっている護憲の声を無きものにしようとしている。ならば、無視できないほどにより強く、「憲法守れ」と訴えるしかない。(水井多賀子)