安倍首相が行政の公正・公平さを一切顧慮せずに政治を私物化した結果がいま問題となっている森友学園・加計学園疑惑のわけですが、五十嵐仁氏は、そこから見えてくるものは安倍政権の狂暴な=政権に楯突くものは決して許さずに社会から葬り去ろうとする=本質であるとして、もしも共謀罪が成立すればそれが当たり前の世の中になり、普通の市民の日常的な行動を秘かに監視し、権力者に不都合なことが生じた場合、一斉に牙をむいて暴露し罪に陥れる惧れがあると述べています。
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権力者の横暴に手を貸すのか、それと戦う人々の側に立つのかが問われている
五十嵐仁の転成仁語 2017年5月27日
相変わらずしらを切り続けるつもりなのでしょうか。加計学園疑惑に絡んで明らかにされた「総理のご意向」と書かれた文書について、「怪文書」だと言い続けている菅官房長官のことです。
テレビに映っている菅さんの無表情な顔を見ていると、言いたくなります。あなたの方こそ「怪人物」じゃないのかと。
この内部文書について、当事者であった文科省の前川前事務次官が記者会見を開き、「文書は確実に存在していた」と改めて明言しました。「怪文書」ではなく、本物だったのです。
それでも否定するしかないと、菅官房長官は覚悟を決めているようです。それしか、安倍首相を守る手立てがないからでしょう。
内部の調査をした松野文科相は確認できなかったと言い、前川さんが証言した後でも再調査はしないそうです。初めから「なかった」ことを証明するための調査ですから、またやって本当に見つかったりしたら困ると思っているからでしょう。
それにしても恐ろしい時代になったものです。権力者に楯突いたらどうなるのか、そのための見せしめとして森友学園問題では「籠池叩き」、加計学園問題では「前川叩き」が、一部のマスメディアも動員して、これでもかこれでもかと繰り返されています。
今、私たちが目にしているのは「安倍一強」のもとで権力者がどれほど暴走するのかという姿であり、たとえ味方や身内であった人でも、いったん楯突く姿勢を示せば「敵」になり、徹底的に攻撃されるという実例です。忖度や懐柔、恫喝などが駆使され、政治が私物化され歪められている姿をしっかりと目に焼き付けなければなりません。
他方で、疑惑の当事者である安倍首相もその夫人の昭恵さんも、黙して語らずのままです。国会という議論の場があるのに、そこから逃げ続けて知らんぷりを決め込んでいるという異常さです。
森友学園問題では、籠池さんを証人喚問に呼んで偽証罪で監獄にぶち込もうとしました。加計学園問題では、かつて秘かに調査していた前川さんの素行を暴露して社会的に抹殺しようとしています。
前者では、瑞穂の国記念小学校建設の背後で画策していた昭恵さんを守るためであり、後者では、岡山理科大獣医学部の新設をめざす友人を後押しして行政を歪めた安倍首相を守るためです。この二人が政治を私物化し、行政の公正・公平を損ねてきたのではないかとの疑惑は増すばかりです。
この疑惑を封じるために関係者は真実を隠蔽し、情報を隠して嘘をつくことを強いられています。本当のことを話せばどれほどひどい目にあうか、籠池さんと前川さんの実例が示しているからです。
それにしても前川さんは気の毒です。本当のことを話さなければ、出会い系バーに行っていたことなど明らかにならず、「地位に恋々としがみついていた」と菅さんに侮辱されることもなかったでしょう。
読売新聞の記者も可哀そうです。官邸からのリークと圧力がなければ、あのような記事を無理やり書かされることもなかったでしょう。
その尻馬に乗って、前川叩きに躍起となっている人々も犠牲者です。安倍さんを守るために嘘をつき、他人を貶めるという醜悪な姿をさらすことになってしまったのですから。
共謀罪が成立すれば、これが当たり前の世の中になってしまうのではないでしょうか。普通の市民の日常的な行動を秘かに監視し、権力者に不都合なことが生じた場合、一斉に牙をむいて暴露し、罪に陥れるというようなことが。
他方では、権力者にすり寄る者や知人、友人に対しては政治に介入し行政を歪めて便宜を図り、それへの配慮と忖度が構造化されつつあります。必要な時には犯罪のもみ消しまでやっているようです。
「安倍総理お抱えジャーナリスト」として知られている山口敬之氏の例があります。「準強姦」容疑での逮捕状が発付されましたが直前に執行取り止めになり、 その背後に菅官房長官の秘書官も務めた中村格警視庁刑事部長による隠蔽の可能性があることが『週刊新潮』で報じられました。
これが今、私たちの目の前で繰り広げられている光景です。権力者の横暴とその恐ろしさがこれほどあからさまになったことが、かつてあったでしょうか。
疑惑の関係者はもとより、私たち国民の一人一人が問われているように思われます。このような安倍夫妻を中核とする権力者の横暴に手を貸すのか、それと戦う人々の側に立つのかが……。