2017年5月26日金曜日

前川前事務次官の暴露で いまや官邸は「裸の王様」状態

 四国の今治市に加計学園経営の獣医学部が新設されるに当たって、それが「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っていること」であるとする文書の出所が文科省前事務次官の前川喜平氏であり、その文書を作成した部署が文科省の担当部局の高等教育局専門課であるということは、いまやこの問題に関心を持つ人たちの間では常識とでも言うべきもので、それをいまだに出所不明の捏造文書だと言い張る官邸はもはや「裸の王様」とでも呼ぶべき存在です。
 
 しかし官邸の醜態は決してそれには留まりません。
 22日の読売新聞に突如前川喜平・前次官が “出会い系バー通い” をしているという記事が載りました。別に刑事事件でもないものを大手の新聞がなんの物証も提示せずに報じるのは前代未聞ですが、それこそは官邸による加計学園問題の実名告発ツブシの謀略でした。(LITERA 22日)
 前川氏は加計学園問題に関する文科省の「総理のご意向」文書が「本物だ」とマスコミに証言する準備を進めていたのですが、その情報を察知した官邸が御用新聞である読売新聞に「前川氏バッシング記事」を載せてその目論見をつぶそうとしたのです。
 それは、前川氏は “出会い系バー通い” をするような人間であり、文科省官僚の天下り問題で辞任したことで官邸を逆恨みして、政権にダメージを与えようと画策しているというものでした。
 前川氏は読売の記事が出た時点ですでにNHKとフジテレビのインタビューに応じ、『NEWS23』(TBS)と『報道ステーション』(テレビ朝日)にも出演する予定でしたが、思いもかけない官邸の暴挙にメディアが怯んだために放映はされませんでした。
 
 それで官邸の目論見は成功したかに見えたのですが、そこは腐っても鯛というか、25日発売の「週刊文春」が官邸の謀略を暴露する記事を掲載したことを受けて、朝日新聞も前川氏のインタビューを一面トップで、毎日新聞も社会面で大きく取り上げ「文書は本物」とする前川証言を紹介しました。そしてTVでも『NEWS23』(TBS)以下続々と前川氏の暴露やインタビューを放映するようになりました。
 そういう中で、「尾木ママ」こと尾木直樹氏(教育評論家)はぼくら教育関係者はみなさん信頼しているし、絶大な人気者。気さくで威張らないし、官僚的ではない。慕っている人も多いですね」と反論するなど、前川氏の下半身スキャンダル “官邸のイメージ操作では” いう見方も広がりました。
 
 一旦は様子見をしていたTVメディアも堰が切って落とされたように、読売新聞系の日テレを除いて一斉に取り上げています。あとは官邸が「裸の王様」の醜態をいつまで続けられるのかということですが、元々良識とはあまり縁のない人がトップを務めているところなので結構続ける可能性はあります。しかしそのことで真実がひっくり返ることはありません。
 
 官邸の前川氏バッシングの謀略を最も早くから(22日から日)追及してきたのはやはりLITERAでした。
 因みに下記のとおりです。
 
  LITERA 5月22日:安倍官邸の謀略が怖すぎる! 前文科省事務次官の加計問題 “実名
                証言” をツブすため読売に “出会い系バー通い” リーク 
  LITERA 5月23日:実名告発ツブされても新証拠が次々…安倍政権は加計学園に利権を独
                占させるためこんな露骨な手口を 
  LITERA 5月24日:官邸幹部が加計問題実名告発ツブシの謀略を認めた! 文科省前次官
             の風俗通い報じた読売記事を「マスコミと当人への警告」と
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官邸の前川証言潰し恫喝に屈したメディア、踏ん張ったメディアが鮮明に! 
日テレ、とくダネは無視、田崎はトンデモ解説
LITERA 2017年5月25日
 元文科省事務次官である前川喜平氏のインタビューを、本日発売の「週刊文春」(文藝春秋)が掲載したことを受けて、今朝の朝日新聞朝刊も前川氏のインタビューを一面トップほか大々的に掲載。毎日新聞も社会面で大きく取り上げ、そのなかで「文書は本物」とする前川証言を紹介した。また、昨晩の『NEWS23』(TBS)は、前川氏のインタビューを今晩放送することを予告した。
 
 本サイトは昨日、前川氏の自宅前にマスコミが殺到している一方で、官邸が上層部から官邸記者にいたるまで恫喝をかけまくっていることを伝えたが、その圧力をこれらのメディアは撥ね返したといえよう。
 だが、今回の前川証言に対する安倍首相はじめ官邸の焦りと怒りは凄まじいものだ。安倍首相は昨晩、赤坂の日本料理店「古母里」でテレビ朝日の早河洋会長と篠塚浩報道局長と会食。報道局長まで呼びつけていることからも、報道に対する牽制があったことはあきらかだ。
 
 剥き出しの圧力をかけられたテレ朝だが、しかし、今朝の『羽鳥慎一モーニングショー』では、「週刊文春」に掲載された前川証言と、「週刊新潮」の報道を取り上げた。
 番組ではまず、前川氏の「出会い系バー通い」を紹介した上で、「週刊新潮」による「官邸は前川前次官の醜聞情報を集めさせ、友好的なメディアを使って取材させた」「 “報復” するとともに口封じに動いた」という内容に踏み込んだ。司会の羽鳥が「これはどうなんですか?」と尋ねると、ゲスト出演したテレ朝の細川隆三・政治部デスクは歯切れ悪くこのように述べた。
「官邸にはいろんな人がいて、この問題にふれるととにかくカリカリしちゃって、興奮する方もいらっしゃるし、逆にこの問題は触ってはいかんと、触らないようにシカトしようとする人もいますし、とにかくこれは内閣の問題じゃなくて個人の問題、とんでもない人がやっているんですよとさらけ出すのがいいんじゃないかっていう人もいるんです」
「官邸による報復なのか?」という羽鳥の問いに対する答えにまったくなっていないが、いかに官邸が記者にプレッシャーをかけているのかが垣間見えるコメントではあるだろう。
 
 だが、ここでレギュラーコメンテーターの玉川徹が、読売新聞の報道に言及。「現役の官僚でもない前の事務次官の、違法でもない話を一面にもってくるバリューが、加計学園にかかわらないんだとしたらどこにあるのか」「ものすごく疑問」と言い、こう畳みかけた。
「安倍総理は自分が語る代わりに『読売新聞を熟読してくれ』っていう関係ですしね。やっぱり権力に対して批判的な目を向けるっていうのがジャーナリズムだと私はずっと思っていままで仕事してきたんですけど、こういう一連の読売新聞のあり方って、政治部的な感覚から見て、細川さん、これどうなんですかね?」
 ごくごく真っ当な指摘だが、これに細川政治部デスクは「いや、だから、(読売の今回の報道は)めずらしいですよね」と返すのが精一杯。だが、テレ朝は『モーニングショー』だけではなく、『ワイド!スクランブル』でも番組トップと第2部で報道し、前川氏の下半身スキャンダルについて “官邸のイメージ操作では” と言及。前川証言と下半身スキャンダルという “両論併記” の報道ながら、しかも総理直々に “圧力” がくわえられたなかで、官邸の読売を使った報復と、読売の姿勢に論及した点は、勇気あるものだったと言えるだろう。
 
 また、朝の『とくダネ!』と昼の『バイキング』では前川証言を無視したフジテレビも、『直撃LIVE グッディ!』ではしっかり取り上げた。
 しかも、菅義偉官房長官が会見で「(前川氏は)地位に恋々としがみついていた」などと人格攻撃したことに対し、ゲストの「尾木ママ」こと尾木直樹は「ぼくら教育関係者はみなさん信頼しているし、絶大な人気者。気さくで威張らないし、官僚的ではない。慕っている人も多いですね」と反論。元文科省官僚である寺脇研も「(菅官房長官の言葉とは)全然別の話を省内で聞いている。『みんな残って下さい』と下の者は思っていたけど、(前川氏は)『自分は最高責任者として全責任は自分にあるんだから辞めなくちゃいけない』と言っていた」「(前川氏が)辞めた日、省内には涙を流した者も相当数いたみたいですね」と、菅義偉官房の発言は官邸お得意の印象操作である見方を示した。
 
 さらに、『グッディ!』でも、一連の文書の出所が前川氏だと官邸が睨み、出会い系バー通い報道をリークしたとする「週刊新潮」の記事にふれ、問題の出会い系バーを取材。だが、コメンテーターの編集者・軍地彩弓は「(前川氏は)脇が甘いと言われてもしょうがないけど、人格否定と今回のことを一緒にするのはやめてほしい。わたしたちが見てても、この話がくることによって撹乱されているように思っちゃうので、分けて話をしたい」と指摘。尾木も「(出会い系バー通いは)まずかった」としながらも、「このことで文書の問題をチャラにしてほしくない。分けて考えないと」と語った。MCの安藤優子も「前川さんの人間性と証言の信憑性を混同させようという動きがあるが、別の話」と番組冒頭から、何度も繰り返していた
 
 このように、官邸から恫喝を受けながら踏ん張ったメディアがある一方、露骨に避けた番組もある。たとえば、すでに前川氏にインタビューを行い、本日夜の『NEWS23』でその模様を流す予定のTBSは、朝の『あさチャン!』や昼前の『JNNニュース』で「怪文書じゃない」という前川氏の証言映像を大きく取り上げたが、『ビビット』ではほんのわずかでスタジオ受けもなく終了。『ひるおび!』でも11時台の新聞チェックのコーナーで扱っただけだった。
 また、NHKと日本テレビも露骨だ。朝のニュース・情報番組では前述したTBSの『あさチャン』のほか、『グッド!モーニング』(テレ朝)『めざましテレビ』(フジテレビ)も朝日新聞を紹介するかたちで前川氏の証言を取り上げたが、NHK『おはよう日本』と日テレの『ZIP!』は一切ふれず。NHKは12時からのニュースで、国会で松野博一文科相が「すでに辞職した方の発言なので、コメントする立場にない」と答弁したことをさらっと伝えたのみで、日テレも『スッキリ!!』では無視、昼前の『NNNストレイトニュース』と『情報ライブ ミヤネ屋』のニュース枠で少しふれただけだ。
 
 いや、露骨といえば、ご存じ “安倍政権応援団” である田崎史郎の解説だろう。昨晩の『ユアタイム』(フジ)に出演した田崎は、前川氏について「 “ミスター文科省” と表現するけど官邸の見方はまったく違っていて、“最悪の次官だった” っていう認識なんですよ」と前川氏をバッシング。挙げ句、「文書を持ち出したとしたら、これ自体が国家公務員違法になるんじゃないかと言う方もいて。当面無視していくスタンスですね」と、またも官邸の方針を垂れ流した。この詭弁には、番組キャスターの市川紗椰も呆れ果てたように「え、無視って後ろ向きの態度を取られると、やっぱり何かあるんじゃないかなと思いますし、政府から調査するべきだと思うんですけどね」とコメント。田崎はやや狼狽えつつも、「文科省の役人が勝手につくったメモ」と断言したのだった。
 
 官邸の恫喝に負けなかったメディアと、官邸の言いなりになったメディアが鮮明になった、今回の前川証言。しかし、きょうの報道だけで、加計学園問題は終わりではない。本日夕方16時より前川氏が記者会見を行い、証人喚問の要請があれば応じる意志を表明した。安倍政権の「行政文書じゃない」などというごまかしで済まされる話ではない。政権の下部組織と化したNHKと読売系以外のマスコミには、官邸の圧力に負けることなくさらなる追及を期待したい。(編集部)