2024年6月26日水曜日

「政権追い詰めた共産党の論戦 通常国会150日」(1)(2)

 23日に閉会した通常国会では、国民の政治不信が頂点に達し自民党の裏金事件でも、岸田政権は「抜け穴」温存の大改悪法を強行し、「経済無策」を続ける一方で、「戦争国家」づくりの数々の悪法を押し通しました。
 しんぶん赤旗が、国民の怒りと運動を広げ岸田政権を窮地に追い詰める抜群の役割を果たした日本共産党の論戦を振り返る特集記事の連載を始めました
政権追い詰めた共産党の論戦 通常国会150」(1)、(2)を紹介します。
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政権追い詰めた共産党の論戦 通常国会150日(1)
裏金 核心に迫る
                        しんぶん赤旗 2024年6月24日
 通常国会が23日に閉会しました。自民党の裏金事件で国民の政治不信が頂点に達しても、岸田政権は真相究明に背を向け、「抜け穴」温存の大改悪法を強行。さらに「経済無策」を続ける一方で、「戦争国家」づくりの数々の悪法を押し通しました。どの問題でも“自民党政治はもうダメだ”という行き詰まりが示される中、国民の怒りと運動を広げ、岸田政権を窮地に追い詰める抜群の役割を果たした日本共産党の論戦を振り返ります。

 「赤旗」日曜版のスクープをきっかけに政権を揺るがす大問題となった自民党の組織的な裏金づくりが、今国会最大の焦点になりました。前代未聞の裏金事件を起こしながら、真相を隠蔽(いんぺい)し、金権腐敗政治を温存しようとする岸田文雄首相に対し、一貫して徹底的な真相究明に奮闘し、真の政治改革とは何かを太く明らかにしたのが日本共産党です。

組織的犯罪行為
 自民党議員の2割を超える82人が組織的に関与した裏金事件。裏金がどうして始まり、何に使われたのか、根本を明らかにするための追及が繰り返されました。
 「自民党による組織的犯罪行為という認識はあるか」―。日本共産党の田村智子委員長は3月5日の参院予算委員会で、裏金事件の違法性をどう認識しているのかという問題の核心をただしました。
 田村氏は、自民党がまとめた裏金事件の「聞き取り調査」などから浮かび上がった(1)派閥による犯罪行為の指導 (2)所得隠しの悪質な所得税法違反の可能性 (3)裏金が選挙買収に使われた疑惑―の3点を追及。紛れもない組織的犯罪であることを明確に示して迫るも、岸田首相は「組織的犯罪という定義は承知していない」と、ごまかしの答弁に終始しました。


政倫審を開くも
 今国会では日本共産党などの求めに応じ、真相解明のための政治倫理審査会(政倫審)が開かれました。岸田首相をはじめ自民党の派閥幹部などが出席し弁明したものの、真相は何一つ語らずじまい。残りも、衆院で44人、参院で29人の出席と説明が求められていますが、いまだに誰一人応じていません。

企業献金禁止が国民的世論に
賄賂性を追及しリード
 清和政策研究会(安倍派)を巡っては、裏金づくりの違法性の認識を派閥幹部で共有していた可能性が浮上しました。日本共産党の塩川鉄也議員は3月1日の衆院政倫審で、安倍派がいったん裏金づくりをやめると決めながら復活させた経緯を追及。幹部会合で「還流分を“合法的”に出す案」が示されたことを指摘し、「違法性の認識があったからではないか」と厳しく批判しました。その後、幹部の発言内容に食い違いが生じるなど疑惑がますます深まる事態に…。
 誰が裏金づくりを始めたのか。山下芳生議員は同14日の参院政倫審で、安倍派幹部らの証言から、裏金づくりが始まった時期は1997~2000年の間だと推察されると指摘。「この間の清和会の会長はだいたい森喜朗元総理だ」と追及しました。キーパーソンである森元首相の参考人招致、証人喚問を求める世論が一気に高まりました。
 ところが、その後、岸田首相が森元首相に行ったという「電話での聞き取り」は、第三者の立ち合いもない形だけのものだったことが明らかになっています。さらにこの間、安倍派の会計責任者の公判での証言で、政倫審で弁明した幹部らの発言が偽りだった疑いも浮上。このまま幕引きを許すわけにはいきません。

肝心要が欠落の自民案
 「政治資金パーティー券の購入者の公開基準の引き下げや、政策活動費改革を含む、政治資金規正法改正を実現することができた」―。岸田首相は事実上国会閉会となった6月21日の会見で、「政治改革」の「成果」を強調しました。
 今回の裏金の原資は政治資金パーティー収入という「抜け穴」を利用した企業・団体献金です。パーティー券購入も含めた企業・団体献金の全面禁止こそ、最大の再発防止策になります。
 日本共産党は参院に「企業・団体献金全面禁止法案」と「政党助成法廃止法案」を提出し、金権腐敗の根を大本から断つ抜本的な提案を示して論戦に臨みました。
 企業・団体献金は本質的に賄賂性を持ちます。見返りを求める企業・団体からの巨額の献金が自民党に流れ込み、政治がゆがめられてきたことこそ、今回の裏金問題の本質です。
 山添拓議員は10日の参院決算委員会で、自民党が日本建設業界連合会(日建連)に額まで示して献金を依頼している「献金あっせん」の実態を告発。日建連加盟企業から自民党への献金が10年間で20億円を超える中、政府が日建連の要望通りの予算編成の仕組みを実現していることを示し、「自民党が政策に値札を付けて売ってきた」と厳しく批判しました。
 一方で自民党が提出した規正法改定案(自民案)は、肝心要の企業・団体献金禁止がすっぽりと抜け落ちています。それどころか、政治資金の流れをさらに不透明化する改悪の内容も審議を通じて明らかになりました。

真の改革 共産党2法案
 自民党が幹事長などの役職者に対して支給してきた巨額の「政策活動費」。使途の詳細は全く明かされず、規正法の趣旨に反する脱法的な闇金です。塩川氏は3日の衆院政治改革特別委員会で、自民案が、規正法上規定のない政策活動費を初めて法定化=合法化するものだと明らかにしました。
 自民案は官報や都道府県の公報への政治資金収支報告書の「要旨」の作成・公表義務を削除しています。山下氏は17日の参院政治改革特委で、「規正法の目的である政治活動に対する『国民の不断の監視』を後退させるものだ」と批判。専門家からも「要旨の作成を廃止すれば、過去3年を超える政治資金に関する公的な資料がなくなり、政治資金の監視に困難を伴う」(上脇博之神戸学院大学教授)との指摘があがっていることを突き付けました。
 参院では日本共産党が「企業・団体献金全面禁止法案」など2法案を提出したため、党議員が法案提出者として質問に答える場面もありました。井上哲士議員は10日の参院政治改革特委で、「大企業や業界は選挙権は持たないが、個人の力を超える巨大な財力を持っている。その力で政治を左右することは国民の基本的人権である参政権を侵害する」と指摘し、共産党は「政治改革の核心として企業・団体献金をパーティー券購入も含め全面禁止することを提案している」と説明。17日の同委でも答弁に立ちました。
 真の政治改革を求め、法案を30年間国会に提出し続けてきた日本共産党の論戦を力に、いま、企業・団体献金禁止を求める声が国民的世論となっています。カネの力でゆがめられる政治をこのまま続けさせるわけにはいきません。(つづく)


政権追い詰めた共産党の論戦 通常国会150日(2)
平和へ 対案示す
                        しんぶん赤旗 2024年6月25日
 自民党裏金事件で国民からの信頼を失う一方、岸田政権は、憲法の平和国家としての理念を破壊する「戦争国家づくり」の悪法を次々と強行しました。この暴走に正面から立ち向かう論陣を張ったのが日本共産党でした。
 4月、米ワシントンで行われた日米首脳会談で、岸田文雄首相はバイデン大統領と自衛隊と米軍の作戦や能力の「シームレス(切れ目のない)な統合を可能」にすることなど指揮統制強化を合意。この合意をめぐって、自衛隊が米軍の事実上の指揮下に置かれ、米側が主権の一部まで切り離すよう求めている実態を告発したのが志位和夫議長です。(4月22日、衆院予算委員会)
 志位氏は、米軍が同盟国を動員して具体化を進めている「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」をめぐり、米国の公式文書で米インド太平洋軍が「(同盟国に)主権の一部を切り離させる」ための「政府をあげてのアプローチが必要」などと主張していることを暴露。「これが米軍の求める『シームレスな統合』だ。日本の主権まで米国に差し出すなど、まぎれもない憲法違反だ。国の独立をかなぐり捨てるものだ」と迫る志位氏に対し、岸田首相は「自衛隊は独立した指揮系統だ」などと根拠を一切示さず繰り返すだけ。志位氏は「日本が進むべき道は軍事的対応の強化の道でなく、東アジアの平和を構築するための憲法9条を生かした平和外交にこそある」と提起しました。

統合作戦司令部
 自衛隊を米軍の指揮下に組み込む米国の狙いと一体で進められたのが、陸海空3自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」創設を含む防衛省設置法等の改定です。
 赤嶺政賢議員は4月11日の衆院安全保障委員会で、同司令部の創設は「自衛隊を米軍の指揮下に深く組み込み、日米一体で敵基地攻撃能力を運用する体制をつくるものだ」と指摘。エマニュエル米駐日大使が日米の指揮統制連携強化は「台湾有事を念頭にしたもの」と明言し、台湾有事を想定した日米共同作戦計画の原案では日本が安保法制に基づく集団的自衛権を発動して南西地域で米軍と一体で中国と戦うと報じられていると指摘し、「断じて容認できない。政府は東アジアに平和をつくる外交にこそ力を尽くすべきだ」と強調しました。
 山添拓議員は、5月9日の参院外交防衛委員会で、米軍の情報に基づき攻撃した結果、自衛隊の武力行使が必要最小限度の範囲を超えない保障はどこにあるのかと追及。「自衛隊の活動は憲法、国内法の範囲内で行われる」と繰り返すだけで保障を示せない木原稔防衛相に、山添氏は「憲法の制約などないと言っているに等しい」と批判しました。

「死の商人」告発
 政府が署名した、英国・イタリアとの次期戦闘機の共同開発・生産・輸出を推進する政府間機関「GIGO」を設立する次期戦闘機共同開発条約。同条約の承認をめぐり、宮本徹議員は4月25日の衆院本会議で、武器を輸出しないことは、国会議論や衆参両院での全会一致の国会決議で憲法の平和国家としての理念を踏まえて確立した「国是」だと強調しました。
 山添氏は6月4日の参院外交防衛委員会で、「平和国家の立場を投げ捨て武器を売り歩き利益を増やすのは『死の商人国家』との批判は免れない」と述べ、「大軍拡ではなく外交で平和構築を図るべきだ」と求めました。
 十分な審議のない採決強行が相次ぐ中、「戦争国家づくり」の危険を告発するとともに平和構築の対案を示す日本共産党の論戦が光りました。

岸田政権の「戦争国家づくり」
軍拡進める悪法に対決
 安保3文書に基づく大軍拡を推進する立法措置の強行に対し、日本共産党は対決を貫きました。

経済秘密保護法
 経済秘密保護法は、政府が指定する秘密の範囲を「防衛・外交・スパイ活動・テロ活動」から経済分野にまで拡大するものです。
 塩川鉄也議員は4月9日の衆院本会議で、同法の狙いは、岸田政権が日英伊の次期戦闘機や米英豪の軍事枠組みAUKUS(オーカス)との兵器の共同開発などを進めようとする中で秘密の範囲を広げ、同盟国・同志国と同等の秘密保全法制を整備することにあると告発。「米国などの同盟国・同志国と財界の要求に応えて兵器の共同開発・輸出を進めるものだ」と指摘しました。
 井上哲士議員は5月10日の参院本会議で、同法は米国と日本の財界の要求に応え、科学技術全体を軍事に動員するものだとして、「日本を戦争国家、死の商人国家におとしめる」と厳しく批判しました。
 同法成立後も、国会前では廃止を求める行動が取り組まれています。

改定地方自治法
 改定地方自治法は、政府が「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」と判断すれば国が地方自治体に指示ができる「指示権」を新たに導入。日本共産党は、沖縄県や県民の反対の意思を踏みにじり、国による「代執行」で強行されている辺野古米軍新基地建設のような強権的なやり方が全国に広がるおそれや、「指示権」が米国の戦争に地方自治体を動員するために使われる危険を鋭く告発しました。
 5月23日の衆院総務委員会での宮本岳志議員の追及で、国が自治体に「指示権」を行使できる「事態」について総務省が集団的自衛権の発動要件である存立危機事態を定めた「事態対処法」も除外されないと認めました。
 6月6日の参院総務委員会で、伊藤岳議員が「指示権」が行使された場合、地方自治体は拒否できるのかとただすと、松本剛明総務相は「指示の通りに対応していただく」と答弁。地方自治体を国に従属させることが浮き彫りになりました。
 沖縄県の玉城デニー知事が「自治体の事務をする上での判断は住民に一番近い責任者が行うべきだ」とし、東京・世田谷区の保坂展人区長が「全部含めて白紙委任するのは有事法制のつくりと一緒だ」と指摘するなど、地方自治体から強い懸念の声があがっています。

食料困難対策法
 「有事」を想定して、輸入途絶など不測の事態に際し農家に生産拡大の指示や罰則を通じて食料を確保する食料供給困難事態対策法田村貴昭議員は「戦前の国家総動員法を彷彿(ほうふつ)とさせ、戦争する国づくりの一環」だと指摘(2月22日、衆院予算委員会)。田村氏は5月8日の衆院農林水産委員会で、「政府に命令されて作付けはしたくない」「罰金まで科されて強制されるのなら、農業をやめて他の仕事に就く」との農業者の声を突きつけ、廃案を求めました。
 紙智子議員が6月11日の参院農林水産委員会で、「国家安全保障戦略」でいう有事の際のシーレーン(海上交通路)における脅威も同法の発動要件となるのかと追及すると、坂本哲志農水相は「対応し得る」と答弁。紙氏は同法が「戦争する国づくりを目指す安保3文書と軌を一にしたものだ」と厳しく批判しました。
 農民運動全国連合会は同法を「戦時立法」だと指摘し、悪法を発動させないため政治の転換を求めてたたかうと表明しています。
 田村智子委員長は、通常国会が事実上閉会した6月21日の党国会議員団総会のあいさつで、「『戦争国家づくり』に反対する国民世論を起こしていこう」と呼びかけました。
 同時に、「日米同盟を絶対視し、軍事一辺倒の自民党政治に対し、憲法9条に基づく平和外交こそ真の安全保障だという対案を示しているのも、わが党だけ」と指摘。4月17日に志位和夫議長が発表した「東アジアの平和構築への提言――ASEANと協力して」と題する外交提言は国外からも歓迎されているとし、こう強調しました。「日本共産党が、アメリカいいなりから脱却し、国民多数の合意のもと日米安保条約廃棄をめざす党であり、その立場からアジア外交の努力を重ねてきた党だからこそのもの」(つづく)