2024年6月19日水曜日

日本経済衰退主因の政策運営/大統領職に居座るゼレンスキー(植草一秀氏)

 「骨太の方針」(など)という表現は小泉内閣時代に竹中平蔵氏が盛んに使ったのが始まりですが、それは日本語の体をなしていない 何とも「珍妙」な表現で、国語の教師ならNGを出す用法です

 植草一秀氏が掲題の記事で、「骨太の方針」の起源に触れながら単純に「基本方針」とすべきであると述べました。至言です。
 同氏は日本経済が小泉内閣以降の25年間凋落を続けてきた原因は「市場原理至上主義」「大企業利益だけ追求」「財政収支均衡主義」の3つであり、この間大資本と富裕層の利益だけが追求されことにあると述べました
 具体的に経済財政運営の歪みの象徴が税制の改変であり、消費税が導入された1989年度から現在までに消費税で510兆円が吸い上げられたが、同じ期間に法人と個人の税負担が610兆円も軽減されたと指摘しました
 そして経済政策運営を根底から刷新しなければ日本経済は深刻な不況に転落するとした上で、まずは「骨太」という陳腐な名称の政策方針を全面撤回することが強く求められると述べました

 併せて植草氏の記事「大統領職に居座るゼレンスキー」を紹介します。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
日本経済衰退主因の政策運営
               植草一秀の「知られざる真実」2024年6月18日
「骨太の方針」と呼ばれるものがある。あまりにも陳腐なネーミング。本来の名称は「経済財政運営と改革の基本方針」。
このなかにも意味不明な言葉が用いられている。「改革」だ。何かを変えることを「改革」と表現しているのだが、何をどう変えるのかによって「改正」にもなるし「改悪」にもなる。
「改革」という言葉にはプラスのニュアンスが含まれているから、いかなる改悪であっても「改革」の言葉をかぶせてしまえば良い制度変更であるかのように偽装できる。
だから名称は単純に「経済財政運営の基本方針」とすべきである。

方針が良いものであるか悪いものであるのかを判定するのは主権者である国民。
運営側が「改革」と称して「良い制度変更をする」と、判定を強要するのは不当だ。
2001年1月、省庁再編で内閣府に経済財政諮問会議が設置された。
このとき、当時の宮澤喜一財務相が「諮問会議では骨太の議論をする」と発言したために、「経済財政運営と改革の基本方針」の通称が「骨太の方針」とされたといわれる。
骨太の議論をすることは構わないが「経済財政運営の基本方針」に「骨太の」と付すのは奇妙。
言葉が陳腐であるだけでなく、基本方針に対する評価を発表する側が名称に盛り込むことがおこがましい。
企業が経営計画を発表する際に「素晴らしい経営計画」、「立派な経営計画」、「最高の経営計画」などの修飾語を付すようなもの。

実際に日本経済は25年間、凋落を続けてきた。2001年に小泉内閣が「骨太方針」を発表し始めてから、現在まで経済の凋落が続き、日本国民の生活は悪化の一途を辿っている
その原因は三つ。
第一は市場原理至上主義が採用されてきたこと
第二は大企業利益だけが追求されてきたこと
第三は財政収支均衡主義が根幹に置かれたこと
大資本と富裕層の利益だけが追求された。このことは、裏を返せば一般国民=労働者=消費者の利益が踏みにじられてきたことを意味する。
大企業の利益を拡大するために諸制度が改変された。これを「改革」と称してきた
「改革」は大資本利益を増大させる制度変更で、同時に、一般労働者の不利益を増大させる制度変更だった。
このことを端的に示しているのが労働者一人当たりの実質賃金推移。
1996年から2023年までの27年間に労働者実質賃金は16.7%も減少した。










労働者分配所得が減少した一方で、大企業利益は激増した。
株価上昇は日本経済好調の反映ではなく大企業利益好調の反映。
大企業利益は労働者所得減少を踏み台にして達成されたもの。
「改革」の代表は労働規制の撤廃。派遣労働が拡大し、正規労働者が激減して非正規労働者が激増した。「働き方改革」という名の「働き方改悪」も強行された。
長時間残業が合法化され、定額働かせ放題労働プランも拡大された。

経済財政運営の歪みの象徴が税制の改変。消費税大増税と法人・個人大減税が同時並行で進められた
消費税が導入された1989年度から現在までに消費税で510兆円が吸い上げられたが、同じ期間に法人と個人の税負担が610兆円も軽減された

















庶民から税金をむしり取り、この税収が大企業と富裕層の減税に充てられた。
個人消費の推移を見ると個人消費の停滞が消費税増税を連動していることが一目瞭然だ。
この日本経済がいま、景気後退の入り口に立っている。
経済政策運営を根底から刷新しなければ日本経済は深刻な不況に転落する。
「骨太」という陳腐な名称の政策方針を全面撤回することが強く求められる。

メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」https://foomii.com/00050
のご購読もよろしくお願いいたします。
続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』3815号
「心神耗弱が疑われる岸田首相」でご購読下さい。

メールマガジンの購読お申し込みは、こちらからお願いします。(購読決済にはクレジットカードもしくは銀行振込をご利用いただけます。)なお、購読お申し込みや課金に関するお問い合わせは、support@foomii.co.jpまでお願い申し上げます。


大統領職に居座るゼレンスキー
                植草一秀の「知られざる真実」 2024年6月17日
スイスで開催されたウクライナ「平和サミット」が6月16日に2日間の日程を終了して閉幕した。
ウクライナとロシアの戦乱を終結させるためのサミットだが肝心のロシアが招かれていない。
これで解決策を見出すことは不可能である。
ウクライナのゼレンスキー大統領は本年4月に大統領任期が終了している。
本来は大統領選挙を実施して新しい大統領を選出しなければならないが、ゼレンスキー氏に対する支持が急落しており、大統領選を実施すればゼレンスキー氏は落選すると見られる。
そこで、大統領権限を使って大統領選挙を回避している。
ウクライナではゼレンスキー氏の独裁体制が敷かれており、国内に民主主義は存在しない。
成年男子には国外退去の自由もない。
国家総動員体制が敷かれており、兵役を拒否すれば国家に処罰される。
このゼレンスキーが和平を呼び掛けても成立するわけがない。

ウクライナ戦乱はNATOとロシアの代理戦争。NATOを牽引しているのは米国と英国である。
2022年3月に和平交渉が成立しかけた。しかし、早期の戦争終結を忌避したのは米国である。そもそもウクライナ戦乱は米国の軍産複合体が自分たちの利益を獲得するために人為的に創作したもの。
早期に戦争が終結すれば米国軍産複合体は巨大な利益を掴み損なう。
このことから、米国が「ブチャの虐殺」などを創作して戦争終結を阻止したと見られている。
平和主義を掲げる日本は、米国が主導する戦争の長期化と拡大に反対して、早期の戦争終結を呼び掛けるべきである。ところが、日本は米国の命令に服従するだけ。
ウクライナ復興費用の肩代わりを約束させられている。

平和サミットにはロシアが招かれておらず、中国も参加しなかった。
同会議の共同声明には不参加のロシア、中国は無論、インド、インドネシア、サウジアラビア、メキシコ、南アフリカ、ブラジルのG20メンバー国が署名しなかった。
G20会合でこれまで対ロシア経済制裁決議が採択されてきたが、経済制裁に賛成国が10(EUを1としてカウント)、非賛成国が10という構成だった。
人口比では賛成国が20に対し、非賛成国が80である。
今回の共同声明にはトルコとアルゼンチンが賛成に回ったが、その理由は採択された声明にロシア軍の撤退やウクライナ領土の回復が盛り込まれていなかったことにある。
ゼレンスキーが主張する領土回復、ロシア軍撤退という条件は意味を有していない。
ゼレンスキーは戦争の継続、拡大を求めているが、このことによって生じるのはウクライナ国民の犠牲拡大と米国軍産複合体の利益拡大だけである。

ウクライナ和平を本気で考えるなら、ウクライナとロシアと調停国による会議を開催する必要がある。大国の中国が調停に加わることが必要不可欠だ。
そもそも、ウクライナ戦乱は米国が工作して創作したものである。
ウクライナでは2004年と2014年に政権転覆が生じているが、いずれも米国が地下工作して実現させたもの。
2014年の政権転覆は米国が主導した暴力革命による非合法政府樹立という基本性格を有している。この非合法政府を真っ先に国家承認したのが米国である。
樹立された新政府はネオナチ政府と呼ぶべき存在だった。ネオナチ政党が政権中枢に位置する新体制で、この新体制の構成を米国のビクトリア・ヌーランド国務次官補と米国のパイアット駐ウクライナ大使が電話で密議した内容はyoutubeで暴露された。
樹立されたネオナチ政権は東部のロシア系住民支配地域に対する弾圧と武力攻撃を展開した。
これにロシア系住民支配地域が抵抗してウクライナ内戦が勃発した。

このウクライナ内戦を収束させるために制定されたのがミンスク合意。
2015年のミンスク2ではウクライナ東部2地域に高度の自治権を付与することが明記された。これによって内戦を終結させることが決定された。
合意は国連安保理で決議され、国際法の地位を獲得した。
しかし、ゼレンスキーはこのミンスク合意を一方的に破棄した。
その結果として生じたのが2022年2月24日以降のウクライナ戦乱である。
国際社会は米国主導の戦乱長期化・拡大を阻止するために協調するべきだ。

メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」https://foomii.com/00050
のご購読もよろしくお願いいたします。
続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」3814号
「意味ある停戦協議を始動させよ」でご購読下さい。

メールマガジンの購読お申し込みは、こちらからお願いします。(購読決済にはクレジットカードもしくは銀行振込をご利用いただけます。)なお、購読お申し込みや課金に関するお問い合わせは、support@foomii.co.jpまでお願い申し上げます。