これはウクライナ戦争の真実を記載したものでウクライナにとっては冷酷な記事です。
結論は末尾に書かれている通りで、ウクライナは賢明な助言に従って一刻も早くこの勝ち目のない戦争を終結させる交渉の席に着き、これ以上のウクライナ兵の無意味な死を防ぐことです。
ウクライナ政権が過去の8年間を通じてドンバス地方を完全制圧しようとして残酷な準備を重ねてきたことが、この戦争につながりました。
その反省に立って潔くドンバス地方の独立を認め、国の行く末を彼ら自身の判断に任せることです。
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鋼鉄に埋もれる:軍事生産とウクライナにおけるNATO代理戦争
マスコミに載らない海外記事 2024年6月 6日
Brian Berletic 2024年6月3日
New Eastern Outlook
隣国ウクライナで、選挙で選ばれた政権が打倒され、その後のアメリカとNATO諸国による同国の軍事化によって、ロシアの特別軍事作戦(SMO)が開始されて、現在三年目を迎えているが、それがロシアの巨大な軍事産業基盤の恩恵を受けているのは明らかだ。
かつては粗悪で時代遅れのロシア兵器が「画期的な」NATO兵器に打ち負かされつつあるというニュースで溢れていた欧米メディアが、今やロシアの軍事生産と、それに追いつけないNATO状況のギャップが拡大しているという見出しを掲げている。他の見出しも、過去二年以上の戦闘で、かつて自慢していたNATO兵器が欠点を露呈していると認めている。
鋼鉄に埋もれる:ロシアの砲弾と滑空弾生産
こうした見出しの中に、スカイニュースの2024年5月下旬記事「ウクライナの欧米同盟諸国の約三倍の速さ、約4分の1の費用でロシアは砲弾生産をしている」があり、下記のように認めている。
ロシアの工場で今年約450万発の砲弾が製造または改修されると予測されているのに対し、欧州諸国とアメリカを合わせた生産量は約130万発であることが公開情報を基にベイン・アンド・カンパニーが行った砲弾に関する調査で判明した。 |
ウクライナでの戦闘を決定づける最も決定的な要因の一つは火砲だ。アメリカ政府と欧米諸国企業が資金提供する外交問題評議会が2024年4月に発表した報告書「戦争兵器:ロシアとウクライナの競争」には次のように書かれている。
火砲は数世紀にわたり「戦いの王」として知られてきたが、これは今日もほぼ変わらない。ロシア・ウクライナ戦争では砲撃が両軍死傷者の約80パーセントを占めている。アメリカの援助打ち切り後のここ数カ月で、ウクライナの砲撃が5対1から10対1に減ったのは、一層不吉だ。 |
もし5対1から10対1で武器でウクライナが劣勢なら、死傷者も同様にこの差を反映することになる。イギリス国防省を含む欧米諸国の様々な情報源によると、ロシアが「35万5000人」の死傷者を出しているのに対し、ウクライナは約5倍から10倍、つまり170万から350万人のウクライナ人死傷者を出している。
より現実的に考えると、ロシアの損失は5万人、ウクライナの損失は50万人の可能性が高い。
NATOとそのウクライナ代理勢力にとって懸念が高まっているもう一つの分野は、ロシアがウクライナ防空網の残存範囲外にロシア軍用機で投下する精密誘導滑空爆弾を使用していることだ。ロシアの圧倒的な砲兵力の優位性をもってしても不可能な規模で、この爆弾は、ウクライナの要塞を標的にして破壊できる。
2024年5月下旬の「ロシアの滑空爆弾がウクライナ都市を安価に破壊」と題する記事でBBCは次のように説明している。
ウクライナでの攻勢を進めるため、安価ながら破壊力の大きい兵器「滑空爆弾」をロシアは益々多く使用している。 |
ウクライナはアメリカと同等の統合直接攻撃弾(JDAM)を受領したが、減少する戦闘機と優れたロシアの電子戦(EW)能力と相まって、この能力も無意味になっている。
2023年6月に発表した報告書「JDAM阻止:ロシア電子戦によるアメリカ兵器への脅威」の中で、アメリカ兵器の欠点と、ロシアの妨害からアメリカの滑空爆弾を守る技術的課題をアメリカが解決する可能性が低いことをロンドンに拠点を置く王立統合安全保障研究所(RUSI)は詳細に説明している。
たとえロシアの電子戦能力をアメリカが克服できたとしても、アメリカと欧州製の滑空爆弾の数は、それを搭載できる戦闘機と訓練を受けたパイロット不足により、ロシアが使用する数のほんの一部にとどまるはずだ。
期待に応え損ねているNATOの「奇跡の兵器」
アメリカ製JDAMが標的に命中し損ねているのに加えて、ウクライナに供与された他の多くの精密誘導兵器もロシアの電子戦妨害に直面しており、その中にはアメリカ製エクスカリバー155mmGPS誘導砲弾や、アメリカ製HIMARSおよびM270発射装置に発射される誘導多連装ロケットシステム(GMLRS)、HIMARSおよびM270システムに発射されるアメリカ製の地上発射小口径爆弾(GLSDB)などがある。
これら兵器は戦場で効果的に使用されているが、ロシアの電子戦能力により全体的有効性が阻害されている。また同等のロシア兵器より供給が少ないため、ロシアに決定的優位性をもたらしている。
ウクライナでの戦闘を通じて明らかになった他の「形勢を一変させる」兵器には、ドイツ製レオパルト1と2主力戦車(MBT)とイギリス製チャレンジャー2 MBTがあり、どちらも失敗したウクライナの2023年攻勢で使用された。
アメリカ製M1エイブラムス主力戦車もウクライナに供与された。これらは2023年の攻勢時には留め置かれていたが、代わりに今年ロシア軍が勝利したアヴデーエフカでの戦闘で戦場デビューを果たした。
戦場で燃えるM1エイブラムスの画像や映像は、ウクライナにおける他の欧米諸国主力戦車の結果の例外でないことを示している。
最近の記事で、M1エイブラムスの使用を試みたウクライナ人乗員にCNNはインタビューし、彼らの苛立ちと失望を報じた。
「ウクライナ兵、アメリカ供給の戦車はロシア攻撃の標的になっていると語る」と題されたこの記事は、次のように認めている。
イラクでサダム・フセイン政権軍や反政府勢力と戦うために使用された米軍の主力戦車(総経費1000万ドル)には最新兵器を阻止できる装甲が欠如しているとドイツで訓練を受けた乗員らは語った。 |
これは欧米諸国の装甲車両の「生存性」を称賛する欧米諸国の専門家や評論家の主張と矛盾する。
記事は、多くが運用不能となっている戦車の兵站と保守の課題も取り上げている。
記事は、下記のように認めている。
…戦車には技術的問題があるようだ。 |
また、ウクライナのM1エイブラムス戦車に提供された弾薬は戦車同士の戦闘用だとCNNは報じたが、記事はそういう場合はまれだと認めている。そうではなく、戦車は歩兵陣地を攻撃するための突撃砲として使用されているので、高爆発性弾薬の方が適しているが、どうやら十分な数が供給されなかったようだ。
最後に、アメリカ製M1エイブラムス戦車の失敗は、アメリカとNATOが決して想定していなかった、十分な火砲と航空支援がない形で:ウクライナが戦車を使用しかねない事実による可能性もあるとCNNは認めている。
CNNは次のように報じている。
戦車がNATOスタイルの戦争、すなわち戦車と歩兵が前進する前に空軍と砲兵が戦場を準備する戦争のために作られていることにウクライナ軍乗員は不満を表明した。キーウは長い間、砲兵と空軍の不足を嘆いてきた。 |
ウクライナは空軍も砲兵もないため、M1エイブラムスを含むウクライナ軍に移管された複雑で重く信頼性の低い欧米諸国の戦車は全て特に脆弱だ。
予想可能な結果
ウクライナへの欧米諸国の兵器供与が「形勢を一変させる」結果を予想する多くの欧米諸国の見出しと対照的に、アメリカと欧州のハードウェアの失敗は完全に予測可能だった。
欧米諸国の軍事的優位性という神話は、全て、数十年にわたる複数の紛争で生じた一連の不一致に基づいていた。アメリカと同盟諸国は訓練も装備も不十分な軍隊の国々と戦争してきたのだ。これらの国々の多くは「ソ連」または「ロシア」の軍事装備を運用していたとされるが、それは最先端装備から数世代遅れており、装備を十分活用できない組織化不十分な軍隊に運用されていたのだ。
こうした多くの不利な点にもかかわらず、数十年にわたり、アメリカの侵略戦争の標的となった国々は、少なくとも理論上、アメリカと欧州の兵器には限界があり、同等またはほぼ同等の敵との戦闘では脆弱なことを証明していた。このことや訓練や兵站に関する課題などの他の要因により、ウクライナの戦場における欧米諸国兵器の有効性(またはその欠如)は予想可能だった。
欧米諸国の軍事的優位性という神話は今やウクライナで完全に打ち砕かれ、欧米諸国の兵器は量的にも質的にも限界に達し、戦場でロシア軍に決定的優位性を与えているが、欧米諸国は機会を捉えられないことが明らかになった。
前述のスカイニュース記事は、ロシアの滑空爆弾の数が膨大かつ増加していると論じているが、欧米諸国全体の軍事産業生産が不十分なため、欧米諸国から提供される兵器が不足していることも指摘している。
この記事には「最前線の戦争で工場が勝ち得る」という題の部分があり、下記のことを認めている。
武器と弾薬生産の重要性から、ウクライナ戦争の勝敗は最前線ではなく、工場の生産ラインで決まる可能性があると多くの専門家は述べている。 |
これは「アマチュアは戦略を語り、プロは兵站を語る」という格言を反映している。
欧米諸国の兵器メーカーは十分な注文があった場合にのみ生産能力を拡大すると記事は説明している。これにより利益は最大化されるが、即応性が犠牲になる。生産拡大は費用のかかる過程であり、資源や、更に重要なことに時間が必要なのだ。
ロシアの国営兵器製造企業は即応性を優先し、注文に関わらず過剰生産能力を維持しているため、欧米諸国の工場が一年以上もかかるのに対し、ロシアは数ヶ月という比較的短期間で生産を増強できる。
ウクライナの現在の危機が、少なくとも部分的には、SMO(⇒特別軍事作戦)が始まる何年も前からロシアが軍事産業生産と兵站に長期的に重点を置いてきたことと、これだけの規模や激しさや、これ程長期にわたる運用を決して想定していなかった欧米軍事産業基盤による武器を使って代理戦争を戦っている欧米諸国集団との対立の結果であることは明らかだ。
欧米諸国が共同で軍事産業の生産拡大に真剣に取り組む頃には、ロシアは既に数年先を行く状況にある。例えば、アメリカと欧州の砲弾生産合計は、2025年から2027年の間に年間250万から300万発に拡大すると予測されている。これはロシアの現在の生産量より少ない。2025年から2027年までにロシアが生産量を更に拡大しているのはほぼ確実だろう。
ワシントンやロンドンやブリュッセルの政策立案者の間では、この紛争におけるウクライナの「勝利」は決して本当の狙いではなかった。2019年のランド研究所論文「ロシアの手を広げさせる」が認めている通り、常に、この計画の狙いは莫大な費用を伴うロシアによるウクライナ介入を誘発し、ロシアを過度に拡大させ、ソ連のように崩壊を引き起こす可能性だった。ウクライナ紛争は「不釣り合いに多くのウクライナ人の死傷者、領土の喪失、難民の流入を引き起こす可能性がある。ウクライナを不利な平和に導く可能性さえある」と論文は予測していた。
今日、かつて東西間でバランスを取り、両世界との商売で利益を得ていた東欧の国ウクライナにおけるロシアとのワシントン代理戦争の余波が一体どのようなものかを我々は見ている。ウクライナを本当に支援する能力も意欲もない同盟諸国の利益のために、ウクライナは、ロシアの鉄鋼に埋もれつつある。
戦闘の明らかな結末(2019年初頭には既に良く知られていた結末)にもかかわらず、ウクライナが非合理的に戦い続けるのを促すように欧米諸国全体から発せられる言説の多くは作られている。多くのウクライナ人の心の中に、ロシアに対する深い憎悪が意図的に植え付けられているが、彼らの本当の敵は常に欧米諸国全体の指導部だった。利益、権力、影響力の永続的ながら最終的には持続不可能な獲得を前提とする欧米諸国の政策立案者の近視眼的性質は、欧米諸国全体自身さえ最大の敵にしているのだ。
勝てないだけでなく(そもそも勝つ見込みもなかった)戦争の結末が全て戦場で決まるとすれば、より賢明な助言が勝ち、より適切な欧米外交政策が採用され、ウクライナが最終的に交渉の席に着き、戦いが長引けば長引くほど最終的に「ウクライナ」が小さくなる戦争を終わらせるまで、この自己破壊過程がいつまで続くか時が経てば分かるだろう。
一方、ロシアの軍事工業生産は成長を続けている。砲弾や装甲、航空戦力、滑空爆弾、ドローン、防空システム、あらゆる種類のミサイルは生産量が増大しているだけでなく、品質の向上に向けて開発が進められている。多くの場合、ロシアの軍事装備は欧米諸国の装備の能力を超えている。品質に関係なく、単純に量が多いため、戦場で敵を鋼鉄で「葬り去る」ことができるのだ。
Brian Berleticは、バンコクを本拠とする地政学研究者、著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/06/03/buried-in-steel-military-production-natos-proxy-war-in-ukraine/