日本がインフレを抑止し円安を改善すべきであるのは論を俟ちませんが、そのために「利上げ」をすれば様々な弊害が伴うので容易には出来ません。「金融の異次元緩和」から「正次元」に戻るのは「至難の業」というよりも「大悲劇を伴わずには不可能」、ということはアベノミクスの当初からいわれていたことでした。
その「異次元緩和」を安倍元首相と共に長年に渡って漫然と続けてきた黒田・前日銀総裁の責任は例えようもなく大きいと言えます。
ではどうすればいいのか。植草一秀氏は、日本政府は約1兆ドル(155兆円ほど)の米国の国債を保有しているので、それを全額売却すれば相当な為替利益を獲得できるとし、これまで数日間の円買い介入で10兆円分のドル資産の売却が出来たのだから、1兆ドルのドル資産売却は十分に可能なので、それを実行するべきだと述べています。これは以前からの主張です。
米国は当然反対するでしょうがこれは日本の当然の権利であり、米国がこれまで陰に陽にそれを妨害してきたことの方に非があります。
米国も自国の都合で一方的に利上げをしてきたのですから、日本が自国の都合で米国債を売却することに文句を言える立場ではありません。
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政府は保有米国債全額売却すべし
植草一秀の「知られざる真実」 2024年6月 2日
日本の経済政策について歪んだ議論が多い。
日銀はいま金融政策運営を大きく変化させている。背景にあるのはインフレの進行。
2022年から24年にかけて激しいインフレが進行した。
この現実に対して日銀がインフレ抑止を基軸に対応するのは当然のこと。
ところが、日銀の政策軌道修正を批判する声が聞こえてくる。
日本経済は超停滞を続けている。
昨年の4‐6月期に実質GDPがコロナ前のピークをようやく超えた。
コロナ前のピークは2019年4-6月期。この水準を超えるのに丸4年かかった。
その間にコロナ禍が日本経済を襲った。
政府の対応がまずかった。コロナを2類相当から5類に変えたのは昨年5月。
対応が1年遅れた。そのために、日本経済の回復も1年遅れた。
しかし、昨年7-9月期から実質GDPはまた落ちた。
昨年7-9月期から本年1-3月期まで実質GDPは減り続けている。日本経済は景気後退に陥っている。
この状況下で対応するべきは財政政策である。
金融政策はインフレ対応で「超緩和」を修正するのが正しい。
インフレ進行下でインフレの旗を振る中央銀行は存在しない。狂気の沙汰だ。
諸外国がインフレ対応しているのに日本銀行だけが超金融緩和の旗を振り続けた。
そのために日本円が暴落している。日銀の政策修正は正当であり、必要不可欠なもの。
このなかで景気後退が発生しているなら財政政策を活用するしかない。
また、日本円暴落に対してどのような対応策を示すのかも考える必要がある。
金利を大幅に引き上げれば景気後退が深刻化する。
いま実行可能な有効性のある対応を取るべきだ。それがドル売り為替介入。
財務省が本年4月~5月のドル売り為替介入が9兆7885億円だったことを公表した。
日本政府は約1兆ドルの米国国債を保有していた。円換算金額で155兆円ほど。
10兆円の介入は保有米国国債の10分の1にも達しない。
円暴落を是正するために、まずは保有米国国債を全面売却するべきだ。
4~5月の為替介入で160円/ドルが151年/ドルまで円高回帰した。
金利差が残存しているから米ドルの基調は強いが為替介入には一定の効果がある。
何よりも重要なことは、現在のドル円水準で日本政府が保有する米国国債を売却すれば為替利益を獲得できること。
しかも、日本政府がドル売り介入をして、大きな弊害は発生しなかった。
数日の介入で10兆円のドル資産売却ができるのだから、1兆ドルのドル資産売却は十分に可能。これを実行するべきだ。
ところが、米国政府がクレームをつけた。
主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議に出席するためにイタリアのストレーザを訪れた米国のイエレン財務長官が、日本政府のドル売り為替介入について、
「介入はまれであるべきで、実施には事前の伝達が適切だと考える。そして介入するのであれば、主に為替市場のボラティリティー(⇒価格変動の度合い)への対応であるべきだ」「介入は決して日常的に用いられるような手段ではない」
と述べた。
米国は日本政府の米国国債売却に不快感を示した。
日本政府の保有米国国債売却は、米国に貸したお金を回収することを意味する。
米国政府は日本政府からお金を借りたと考えていない。
日本政府の米国政府への上納金だと考えている。
だから、日本政府が米国国債を売却して貸したお金の回収に動くことを不快に感じるのだ。
貸したお金を返してもらうのは当たり前。
日本政府は毅然とした姿勢で必要に応じて米国国債を売却する方針を明言するべきだ。
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