海外からの避難民は(ゆっくりと調査する余裕もないまま)日本が「難民条約」に加盟しているから難民に認定すだろうと期待して来日します。しかしながら難民申請は殆ど拒否(認定率1・9%)されます。
日本の入管行政が国際基準からも人権や保護の観点からも大いに逸脱していることは、スリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが名古屋入管で亡くなった事件で改めてクローズアップされました。
それを受けて入管法の改定案が作られましたが、それはむしろ改悪案と呼ばれるべきもので批判に晒されました。それが殆どそのままで、技能実習法の改定案と抱き合わせで「改定入管法・技能実習法」として6月14日に成立しました。
技能実習制度についても、政府は技術移転による国際貢献が目的だと説明してきましたが、実際は外国人を非熟練・低賃金の労働力として使い深刻な人権侵害を引き起こしてきました。
現実に実習生の失踪が相次ぎ、国連自由権規約委員会などからも人権侵害を指摘されました。こちらも改善ではなく改悪と呼ばれるべき改定案でした。
しんぶん赤旗が2つの記事を出しました。「きょうの潮流」の方から紹介します。
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きょうの潮流
しんぶん赤旗 2024年6月16日
10年以上前から申請をくり返しているのに認められず、住み家を追われるスリランカの男性。命からがら逃げてきたが、すぐに所持金が尽きホームレスになったというアフリカの母子。
戦争や迫害を背景にして、日本に逃れてきた難民たちが映されていました。ETV特集「あなたの隣人になりたい」。国際基準からも人権や保護の観点からも、かけ離れたこの国の入管行政。その中で支援に奔走する団体や個人の姿も。
難民と認めまいとする入管。しかし国際的には「疑わしきは申請者の利益に」が原則となっています。日本社会の一員になることを願う人々を追い込んでいく現実。今月から施行された改悪入管法では3回以上難民申請をした外国人を強制送還できるようにも。
さらに今国会では外国籍住民の永住許可を取り消す規定まで盛り込まれました。自公や維新、国民の賛成によって。共産党の仁比議員は反対討論で「自民党政治の外国人差別と排外主義はどこまで底深いのか」と批判しました。
人権侵害の温床とされてきた技能実習制度を育成就労と言い換えたものの、安い労働力として人間らしい生活や権利を奪ってきた仕組みに変わりはありません。インバウンドを当て込む一方で多くの外国人労働者を使い捨てにする。これが日本政府の「おもてなし」なのか。
先の番組では支援者の手をかりて、なんとか日本に受け入れてもらおうと努力する姿がありました。同じ社会、同じ人間として、互いによき隣人でありたいと望みながら。
改定入管法・技能実習法成立
人権侵害加速の危険 永住許可取り消し・職場移動自由なし
しんぶん赤旗 2024年6月16日
改定入管法・技能実習法が14日の参院本会議で可決・成立しました。政府は外国人労働者を受け入れ、共生社会に道を開くかのように説明しますが、改定の実態は逆です。創設する外国人労働者の「育成就労」制度は、深刻な人権侵害の温床となってきた技能実習制度を温存。永住許可を取り消す規定を新設し、人権侵害を加速させる危険があります。
政府は技能実習制度の目的は、技術移転による国際貢献だと説明してきました。しかし実際は外国人を非熟練・低賃金の労働力として使い、深刻な人権侵害を引き起こしてきました。失踪が相次ぎ、国連自由権規約委員会などからも人権侵害を指摘されています。
使い捨ての懸念
技能実習制度の名前を変えて創設する育成就労制度は、特定技能1号水準の人材の育成と当該分野の人材確保を目的に掲げます。人権侵害の防止を図るとして、技能実習で原則認められていない「転籍」(職場の移動)を認めるとしますが、「本人の意向による転籍」は同じ分野に限定。就労後1~2年は認めず、日本語・技能要件など厳しい制限があり、労働者が持つ職場移動の自由は事実上ありません。日本共産党の仁比聡平参院議員は「日本語教育をしない、技能試験にも行かせない不当な監理支援機関のもとの労働者ほど転籍できない」と矛盾を指摘しました。
育成就労外国人を支援する「監理支援機関」について政府は、外部監査人の設置義務化などで中立性を確保するとしていますが、受け入れ企業の役員との兼任を排除していません。手数料収入に依存し受け入れ企業から独立できない機関では労働者を守れません。
農業・漁業など季節性のある分野に派遣労働の仕組みも導入。中間搾取や使い捨て労働の懸念があります。
実習生が多額の借金を背負う問題では、原則として新たに2国間取り決めをした国からのみ受け入れ、手数料負担の軽減を図るとしています。しかし従来の取り組みの延長では実効性がありません。
突如盛り込まれ
さらに政府は、新制度で永住につながる外国人が増えるとして、税金や社会保険料などを故意に支払わない場合などに永住許可を取り消せる制度を新設。この規定は法改定に関する有識者会議の最終報告書に含まれていないのに、「永住許可制度の適正化を行う」という政府方針の閣議決定をうけ、突如盛り込まれました。審議を通じ、当事者の聞き取りすら行われていないことが明らかになり、規定を必要とする根拠のデータは最後まで示されませんでした。
失業などでやむなく税金などを滞納することは誰にでも起こり得ます。永住者が日本で培った十分な生活基盤を失わせることは人道に反し、日本で暮らす全ての外国人の地位を不安定にします。
在日本大韓民国民団中央本部の金利中団長は、同法成立の14日に談話を発表。「永住外国人に対する偏見の助長や、さらなる排外主義の台頭につながる」「『永住者』とその家族を、この社会の一員、市民ではなく、いつでも社会から排除されうる極めて不安定な生活をしなければならない立場に追いやるもので、政府が目指す共生社会の実現』に逆行する」として、見直しを求めました。
外国にルーツを持つ人々の人権を守り、共に生きていく制度へ抜本的に改めることが必要です。 (伊藤幸)
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。