2024年6月10日月曜日

政治家はつかみ金温存 庶民は地獄の猛暑と生活苦(日刊ゲンダイ)

 自民党の政治資金規正法改定案について、「裏金維持法」という「#」タグが立ったということです。実に的確な命名です。
 また9日に投開票された栃木県鹿沼市長選(自民茂木幹事長の地元)では、自公推薦の候補が立民党系の候補に敗れました。首長選や補選で自民系が敗れるのはいまではごく普通の景色になりました。
 岸田首相は「必ず・・・」とか「確実に・・・」などと強調するのが好きですが、何一つ実現した試しがないのですから もう国民が端から信用しなくなるのは当たり前のことです。
 日刊ゲンダイが掲題の記事を出しました。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
政治家はつかみ金温存 庶民は地獄の猛暑と生活苦
                            日刊ゲンダ 2024/06/08
                         (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 このところ、新聞に書いてあることの意味が分からず、頭が混乱することがある。7日の読売新聞にも、そんな一行があった。
<首相は政治資金規正法改正案を今国会で成立させたうえで、重点政策の「デフレ脱却」を実現するなどして政権浮揚を図り、総裁選に突入する戦略を描いている>
 はて? 政治資金規正法改正案の成立が政権浮揚になるのか。少なくとも、首相はそう考えているらしい。そして、今はデフレで、もっとインフレにして「デフレ脱却」すれば、これまた国民の支持が集まり、総裁選に有利と、首相は踏んでいるらしい。
 国民はア然ではないか。岸田だけ違う国に住んでいるのか、と思ってしまう。今度の規正法改正を評価する国民がいたら、呼んできて欲しいものだ。自民党は企業・団体献金は禁止せず政治資金パーティー券購入者の公開基準を5万円超に引き下げただけで、小口化による抜け穴を堂々と残した。政策活動費の廃止を見送り、10年後の領収書提出も細部は不明。独立機関の監査とやらも“これから検討”という国民愚弄だ。連座制についても巧妙で、会計責任者のせいにして言い逃れできるよう曖昧にしている。
 要するに「濡れ手に粟で裏金を掴む」手法はそのまま残したわけで、これが「総裁選再選戦略」とは国民にケンカを売っているのも同然だ。

「デフレ脱却」で再選というふざけた戦略
 そこに輪をかけてふざけているのが、首相の再選戦略のもうひとつ、「デフレ脱却」なのである。
 岸田が指しているのは賃上げと物価上昇の好循環のことで、6月から1人4万円の定額減税で、個人消費に火がつくと踏んでいる。このトンチンカンにも国民の怒りが爆発している。経済評論家の斎藤満氏は呆れ顔でこう言った。
「今度の減税は政治的に最低のやり方です。公費を4兆円も使うのに、まったく、実感が得られないからです。減税には恒久的な定率減税と一時的な特別減税があり、後者は貯金に回ってしまう傾向が強い。それでもドカンとやれば、まだ消費に回りますが、今回の減税は1回限りのうえに、給付ではなく、税金の軽減なので、そもそも税金が少ない人は複数回に分けて軽減する。ちょぼちょぼの分割軽減では実感を味わえません。まして振り込みが2カ月に1回の年金生活者などは、家族分も含めた減税がいつ“完結”するのか見当もつかない。これでは消費に火が付くわけがありません。そのうえ、この間にも物価は上がっていくのです。政治家の裏金ルートは温存するくせに、こんな愚策で国民に大きな顔をされたらたまりません。政党助成金を廃止し、裏金に課税するのが先ですよ」
 これが国民のまっとうな声というものだが、実感が乏しいことがわかっている岸田は減税の給与明細への明記を求め、それが企業の経理担当者の怒りを買っている。裏金を温存、正当化する法改正と恩着せがましく無意味な減税。それが「総裁選戦略」とは、お花畑もいいところだ。

クーラーもつけられず病院にも行けない6月以降
 それでなくても、庶民の今後の生活苦は凄まじいものになりそうだ。痛みを知らないのは裏金政治家だけである。
 まず、東京都の消費者物価指数によると、5月の電気代は前年比13.1%の上昇だった。再生エネルギーの特別賦課金が乗ってきたからだ。そこにもってきて、6月請求分からは電気・ガス代への政府補助が半分になる。これにより、どの電力会社でも6月は過去最高の値上げになるとみられている。
 すでに猛暑の気配なのに、今夏はおいそれとクーラーのスイッチすら入れられなくなる。猛暑と生活苦の地獄絵だが、それで体調を崩したら、もっと地獄だ。6月1日からは診療報酬も入院基本料も上がっているのだ。せめてうまいもんでも食べたいが、帝国データバンクによると、6月以降614品目の食料品が値上げである。うち、3割が円安による値上げで、要するに自民党のせいだ。こうして円安を加速、放置することで、大企業を儲けさせ、そこから企業・団体献金をせしめ、裏金化するのが自民党のビジネスだということを忘れちゃいけない。
 だから、今回もそれを温存し、庶民には円安・物価高を押し付ける。実質賃金は25カ月も下がり続けているのに、その非を認めず、バカげた減税で「デフレ脱却」などとうそぶいている。そんな亡国の戦略を国民が黙認、放置すると思ったら大間違いだ。

ポスト岸田の主導権争いが始まった
 それだけに岸田周辺では一気にきな臭いにおいが立ち込めるようになってきた。国民は愛想を尽かし、その反感の凄まじさを肌で知った自民党議員が右往左往で浮足立ってきたのである。
 今月4日、横浜市議の佐藤茂市連会長が「党の支持率は危機的だ」「2009年の政権交代に匹敵する」「(岸田総裁は)自ら身を引く決断をしていただきたい」とぶち上げたのは周知の通り。青森でも県連幹部の間で同様の意見が出たと思ったら、「待ってました」と動き出したのが菅前首相だ。6日に都内の寿司屋で小泉進次郎元環境相、加藤勝信元官房長官、武田良太元総務相、萩生田光一前政調会長らと会食。「反岸田の号砲か」などと報じられている。政治ジャーナリストの山田惠資氏はこう言う。
「岸田首相は今回の規正法改正で、自民党内と国民の双方から総スカンを食らいましたね。パーティー券購入者の公開基準を巡って、公明党と妥協したことで党内は“あり得ない”と怒っているし、国民世論は本質的な問題にメスを入れなかった姿勢を批判している。岸田首相にしてみれば、“この法案が通らなければどうにもならない”“通ればどうにかなる”と思っていたのでしょうが、成立のメドが立って、むしろ、追い詰められている感がある。ま、解散を封じられた今、通らなければ、即、行き詰まったでしょうが、それがちょっと先送りされただけです。この先、国会閉会後に改造をやるのか、できるのか。次に総裁選で誰が出てくるのか、出てこないのか。その時、誰がポスト岸田を主導するのか。菅さんの会合のメンバーには麻生さんの天敵、武田良太氏が入っている。菅さんと麻生さんの主導権争いが始まったという見方もできますね」

 言うまでもないが、そこに国民の視点はない。どうすれば、自分たちがヌクヌクと生き残れるか。自民党にあるのはそれだけだ。そこに国民の本質的な怒りがある。それに気づかない自民党は岸田もろとも沈んでもらうしかない