2024年6月29日土曜日

政権追い詰めた共産党の論戦 通常国会150日(3)(4)

 しんぶん赤旗の連載記事「政権追い詰めた共産党の論戦 通常国会150日」の(3)(4)を紹介します。

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政権追い詰めた共産党の論戦 通常国会150日(3)
 自民党経済政策の破綻 法人税引き下げは失敗
                        しんぶん赤旗 2024年6月27日
「(新たな経済成長への)移行の兆しは明確になっている」―。岸田文雄首相は通常国会が事実上閉会した21日の記者会見でこう強調しました。
 しかし、4月の実質賃金は前年同月比25カ月連続マイナスとなり、過去最長を更新。物価高騰に賃金や年金が追い付かず、個人消費もリーマン・ショック以来の4半期連続マイナスです。

「選挙目当て」だ
 岸田首相が物価高対策の目玉に掲げた、1人あたり4万円の所得税・住民税の定額減税も、6月の世論調査で「評価しない」が7割(「毎日」)に上ります。給付は1回きりなうえ、複雑で不公平な制度となり、「選挙目当て」の政策だと見透かされています。
 岸田首相が「減税」の恩恵を示そうと、従業員などの減税額を給与明細に記載するよう求めたことも、自治体や企業の大きな事務負担となりました。批判が広がるなか、この問題をただした日本共産党の小池晃書記局長に、政府は減税額の記載がなくても罰則はないと答弁。自営業やフリーランスの配偶者と親族が減税対象から外された問題では、田村貴昭衆院議員や小池氏の質問、全商連などの運動で、政府から調整給付を行うとの答弁を引き出しました。
 一方、論戦を通じ長期の経済停滞「失われた30年」をもたらした自民党の経済政策の破綻ぶりも浮き彫りに。
 田村智子委員長は、財界の求めに応えた法人税率引き下げ政策について、2024年度の与党「税制改正大綱」が、「賃金や国内投資は低迷」し、「累次の法人税改革は意図した成果を上げてこなかった」と認めていると追及(3月5日、参院予算委員会)。岸田首相は「企業収益が投資や賃上げに振り向けられてこなかった」と失敗を認めました。
 また、「物価に負けない賃上げ」を掲げながら、大もうけの大企業には減税、6割が赤字の中小企業には効果が薄い「賃上げ減税」に固執。田村氏は、大企業の内部留保の一部に課税して中小企業に賃上げの直接助成をするよう迫りました。

負担を押し付け
 岸田首相が「前例のない規模で抜本的な強化を図る」として成立させた、子ども・子育て支援法も「看板倒れ」です。財源は社会保障費の歳出改革や医療保険料に上乗せする「支援金」などでまかない、高齢者の医療費窓口負担増や介護保険の利用料負担増など、新たな国民負担を押し付けます。
 宮本徹衆院議員の事務所は、会社員などが加入する被用者保険と比べ、非正規雇用労働者やフリーランスなどが加入する国民健康保険料では、同じ年収でも「支援金」の負担額が2倍以上になると試算。高橋千鶴子議員の「(支援金の財源を)なぜ社会保障改革でのみやりくりするのか」との質問には、内閣官房内閣審議官から「(社会保障関係以外の歳出改革は)防衛力強化のための財源として整理されている」との答弁が飛び出しました(3月13日、衆院特別委)。「大軍拡」と子育て支援が両立しないことが明確になりました。
 しかも岸田政権の子育て支援策には、高等教育の無償化などはありません。こうしたなか、東京大学が授業料の約10万円の値上げを検討するなど学費値上げの動きが強まっています。吉良よし子議員は東大の学生自治会アンケートで9割の学生が値上げに反対しているとして、運営費交付金や私学助成を増やし、全ての大学の学費の値下げを迫りました。(6月4日、参院文教科学委)
 岸田首相が、最も人手不足が深刻な訪問介護の基本報酬を引き下げたことで、訪問介護事業所の倒産が過去最多を更新する事態も生まれています。小池書記局長や倉林明子参院議員は、報酬引き下げの撤回を要求。介護報酬を引き上げても保険料に跳ね返らないよう、国庫負担引き上げなど介護保険制度の抜本改革を求めました。
 自民党に多額の献金をする大企業には減税や補助金をばらまきながら、国民には負担増、社会保障切り捨てを押し付ける―。破綻した自民党政治の転換が必要です。田村委員長は21日の議員団総会で「日本共産党の経済再生プラン」に基づく対案を示し、国民的運動を広げようと呼びかけました。(つづく)


政権追い詰めた共産党の論戦 通常国会150日(4)
「共同親権」・入管・選択的別姓… 「人権後進国」脱却迫る
                        しんぶん赤旗 2024年6月28日
 今国会で岸田政権は人権を巡り、ジェンダー平等、子どもや外国人の人権などを踏みにじる悪法を数の力で次々と強行しました。日本共産党は「こんな人権後進国でいいのか」と対決し、「個人の尊厳、全ての人の人権が尊重される社会をつくる新しい日本を」と脱却を迫りました。

子の安全損なう
 離婚後「共同親権」を導入する改定民法を巡っては、医療、教育、福祉などの現場から怒りの声が上がり、与党からも懸念が相次ぐ異例の事態となりました。
 改定民法は、父母の協議が調わなくても、合意のない父母にも「共同親権」を裁判所が定めることのできる仕組みを導入します。「共同親権」の合意を促す方向で運用されるとの懸念から、DV(配偶者などからの暴力)や虐待当事者ら約700人が3月29日、「人間関係、強制するな」と廃案を求めて声を上げるなど、新しい運動が湧き起こりました。
 日本共産党の本村伸子議員は4月3日の衆院法務委員会の参考人質疑で、小泉龍司法相も改定案で紛争が増えると審議で認めたとし「新たな人権侵害が起きるのではないか」と質問。DV被害者の斉藤幸子さん(仮名)は「子どもの安全・安心が損なわれないか心配だ。当事者の声を聞いてほしい」「子どもの成長の節目で別居親の同意が必要になる。どこが『子の利益』になるのか」と語りました。
 参院での審議では、「共同親権」の場合、離婚後も父母の収入が合算され、所得制限のある公的支援が受けられなくなる重大な懸念が浮上しました。
 仁比聡平参院議員の調査で、親の収入などが要件となる各省庁の支援策が少なくとも32件(5月16日時点)に上ることが判明。共産党が合意のない「共同親権」が子どもに与える影響を事実に即して明らかにしたことが、急速に反対世論を広げる力になりました。

深刻な人権侵害
 華僑や在日韓国人、日系ブラジル人などの当事者などから撤回を求める声が広がる中、当事者の声を無視して強行されたのが外国籍住民の永住許可を取り消す要件を盛り込んだ改定入管法・技能実習法です。
 改定法は、永住許可制度の「適正化」として、日本で永住者資格を持つ外国人が ▽税金や社会保険料を未払い ▽在留カードの常時携帯義務違反など入管法が定める義務を守らない―などの場合に永住者資格を取り消せる制度を新設します。
 仁比氏は6月6日の参院法務委員会で、永住許可取り消し制度を盛り込むことに対し、「当事者から撤回を求める声が広がっている。この声にどう応えるのか」と迫りました。岸田首相は「当事者のヒアリングは行っていないが、当事者の意見は適切に踏まえている」と強弁し、具体的根拠を示せませんでした。
 育成就労制度は、深刻な人権侵害の温床となってきた技能実習制度を「育成就労」と言い換えるだけで、看板の掛け替えにさえなっていません。
 5年間で技能実習生の失踪者は4万人に上りますが、原因究明と再発防止策は曖昧にされ、職場を移る「転籍」も制限。仁比氏は14日の参院本会議で、「自民党政治の外国人差別と排外主義はどこまで底深いのか」と抗議。「苛烈な外国人差別と迫害の歴史、真の共生社会への強い要求を真正面から受け止めるべきだ」と主張しました。

ジェンダー平等
 長年にわたる女性たちの訴え、ジェンダー平等を求めるムーブメントにより、選択的夫婦別姓の実現を求める声は経済界からも上がっています。
 田村智子委員長は19日の党首討論で、選択的夫婦別姓の早期実現を迫ったのに対し、岸田首相は「女性に大きな不利益が生じていることは重く受け止める」と述べる一方、「さまざまな角度から議論を深める必要がある」などと後ろ向きの姿勢に終始しました。
 田村氏は、夫婦の95%で女性が結婚後に改姓し、アイデンティティーの喪失、キャリアの断絶などに直面している実態を示し、一日も早く法案を国会で審議するよう要求しました。
 倉林明子議員は21日の参院本会議で、男女賃金格差の是正、単身高齢女性の貧困やケア労働者の処遇改善などについて政府の姿勢を追及。さらに、正規雇用男性労働者の賃金を100とした正規女性、非正規男性、非正規女性の賃金比率の公表と、企業に原因分析と是正措置を義務付けるよう迫りました。
 ハラスメント根絶も喫緊の課題です。宮本徹議員は5月29日の衆院厚生労働委員会で、ハラスメントを受けた労働者が会社の窓口に相談しても救済されない実態を示し、国際労働機関(ILO)のハラスメント禁止条約批准と包括的なハラスメント禁止の法整備を求めました。(つづく)