2024年6月3日月曜日

規正法・自公維合意 金権腐敗の温床はそのままだ(しんぶん赤旗)

 自民党は今週中に政治資金規正法改定案をまとめ今国会で成立させるということです。しかしながら改定案は裏金事件を解消するものではなく、その温床となった規正法の抜け道をそっくり温存するというものです。
 政治資金パーティー券の購入者の公開基準を「5万円超」にしたものの何故か「3年の経過措置」を設けました。その間に「5万円超」を小分けにする手法(現在も行われている)を購入者との間で確認するとでもいうのでしょうか。政策活動費の領収書の「公開は10年後とする」のもそれでは税法上の時効を大幅に上回るし、それで「政治資金の規正」が行われる保障は何もありません。
 与党の改定案は、本来あるべき企業・団体献金禁止や政策活動費の廃止など抜本改革とはかけ離れています。しんぶん赤旗の3つの記事を紹介します。
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主張】 規正法・自公維合意 金権腐敗の温床はそのままだ
                        しんぶん赤旗 2024年6月2日
 自民党派閥による裏金事件の温床だった政治資金パーティーをはじめ、企業・団体献金の禁止に踏み込まない「修正」案では、国民の不信は募るだけです。強行すれば岸田文雄・自公政権は国民から完全に見放されることになるでしょう。

 裏金事件を受けた政治資金規正法改定案をめぐり岸田首相は公明党の山口那津男代表、日本維新の会の馬場伸幸代表とそれぞれ会談し、新たな「修正」で合意しました。しかし、パーティー券購入者の公開基準額を「5万円超」に引き下げ、政党が党幹部らに渡す非公開の政策活動費を10年後に公開するというだけです。企業・団体献金禁止や政策活動費の廃止など抜本改革とはかけ離れています

「同じ穴のむじな」
 自民と公明の合意は、パーティー券購入者の公開基準額を、現行の「20万円超」から「5万円超」にするものです。5万円以下は非公開のままです。政治家は今でも、名前を出すのを嫌う企業から基準額を超える多額の券を買ってもらうため、企業と示し合わせ、企業が買った分を従業員や関連会社が買ったことにし、それぞれの購入額が基準額以下になるよう名義を分散し、公表を避けています
 20万円超から5万円超にしても「直径20メートルの抜け穴を5メートルにするようなもの」です。企業によるパーティー券購入を温存することに変わりはなく、そこから裏金をつくる抜け道は残ったままです。
 しかも、5万円超にするのは3年後の2027年からとされ、それまでは20万円超が続きます。
 公明党の山口代表は昨年末、裏金事件の発覚を受け「(自民党と)同じ穴のむじなに見られたくない」と批判していました。しかし、これでは結局、「同じ穴のむじな」です
 自民と維新の合意は、政策活動費の支出状況を領収証などを含め10年後に公開するというものです。
 しかし、10年間は非公開で、「ブラックボックス」のままです。しかも、10年後に違法・不適切な支出が分かっても、党幹部や議員の交代、政党の離合集散などがあれば責任はあいまいにされてしまいます。
 さらに「制度の具体的な内容については、早期に検討が加えられ、結論を得る」とされ、仕組みの決定は先送りされています。
 決定までは「組織活動費」「選挙関係費」など大まかな項目別に支出年月・額を政治資金収支報告書に記載することになりますが、具体的な使い道が不明な「ブラックボックス」の状態が続きます。

■自民党に手を貸す
 維新は、日本共産党、立憲民主党、国民民主党、有志の会とともに、(1)企業・団体献金の禁止 (2)政策活動費の廃止 (3)政治家に会計責任者と同等の責任を負わせる措置 ―を求めてきました。馬場代表が自民党案に「基本的に賛成する」と述べたことは、この3点の一致をほごにするものです。
 公明、維新は、「修正させた」という形をつくり、結局、抜本的な改革をせずにやり過ごしたい自民の思惑に手を貸しました。自民党は改定案の4日の衆院通過を狙っていると報じられています。「金権腐敗」の温床をそのままにしての強行などもってのほかです。


主張裏金原資に税還付 常套手段でないのか調査せよ
                        しんぶん赤旗 2024年6月1日
 自民党が裏金事件の真相解明に背を向け、企業・団体献金の温存など抜け穴だらけの政治資金規正法の改定に躍起になるなか、驚くような裏金の“活用法”が明らかになりました。

■自分で自分に寄付
 派閥の政治資金パーティー収入のキックバック(還流)で裏金を手にした政治家個人が、裏金を原資に自らが代表を務める政党支部に寄付し、それによって所得税の控除を受けていたのです。
 裏金事件で「党役職停止6カ月」の処分を受けた自民党安倍派の菅家一郎・元副復興相(衆院比例東北ブロック)は、2018~21年の4年間に受け取った裏金1289万円の全額を、自身が支部長だった自民党支部などに個人名義で寄付したうえで国に控除を申請し、約148万円の還付(今年1月に返納と説明)を受けたと認めました。
 租税特別措置法では、個人が政党や政党支部に寄付した場合、寄付額の約3割が税額控除されるか、課税対象の所得総額から寄付分が差し引かれます。有権者の政治参加と個人献金を促すためです。
 菅家氏は「法を犯したわけじゃない。適正にやっていた」(27日の記者会見)と居直りました。しかし、岸田文雄首相は派閥からキックバックされた金について、繰り返し「政治団体でなく個人が受け取ったならば法律違反」と答弁してきました
 派閥などの政治団体が政党支部や政治家個人の資金管理団体などに寄付するのは、政治資金収支報告書にきちんと記載すれば違法ではありません。自民党はこれを記載せず裏金にしてきました。
 菅家氏の場合、こうした金を違法に個人の懐に入れ、それを原資に実質的に自分で自分に寄付し、税の還付を受けていました。二重三重に悪質な行為です。

■深まる使途の疑惑
 看過できないのは、政党支部への寄付について菅家氏が会見で、安倍派から「政治資金収支報告書に記載するな」と指示され、税の還付は「私だけではない」と語っていることです。80人超の裏金議員の間でこうしたやり方が常套(じょうとう)手段となっていないのか。自民党として調査すべきです。
 196万円の裏金があった安倍派の稲田朋美幹事長代理(衆院福井1区)も、自らが代表を務める党支部に202万円を寄付し税控除を受けたことを認めました。稲田氏は裏金が原資ではないと言うだけで根拠はあいまいです。
 稲田氏は、全会一致で議決した衆院政治倫理審査会への出席意向の確認で「さらに説明を求められれば、拒むものではない」と回答しています。ならば裏金の使い道を含め少なくとも政倫審で説明すべきです。

 自民党は2月発表の裏金議員からの聞き取り調査結果で、裏金を政治活動費以外に用いたと述べた者はいなかったと片付けました。しかしその後、選挙買収に使われた疑惑も浮上、脱税の疑惑も消えません。裏金を原資に税還付を受ける政党支部への寄付なども調査結果にはありません。
 裏金づくりは誰がいつ始め、何に使ったのか―。徹底的な実態解明抜きの政治資金規正法改定の強行などもってのほかです。


金権の温床温存自公維合作 政治資金規正法改定案
                        しんぶん赤旗 2024年6月1日
 自民党は裏金事件を受けた政治資金規正法改定の再修正案をまとめ、これに公明党が同意する方向で、日本維新の会は同意を表明しました。これら3党による合作″は、金権腐敗政治の温床となっている企業・団体献金を温存し、使途を明らかにしない政策活動資も廃止しません裏金の原資となってきた企業・団体による政治資金パーティー券購入も温存します。真相解明に背を向けたうえ、対策も示せない自民党の無反省と無責任が際立つと同時に、国民の怒りに応えようとしない公明と維新の責任も重大です。

論点ずらし
 裏金事件の原資となったのは、政治資金パーティー券購入という形を変えた企業・団体献金です。企業・団体献金には賄賂性があります。同時に、企業が金を出し、企業の利益のために政治をゆがめ、国民の参政権を侵害することにつながります。
 リクルート事件などを受けた1990年代の 「政治改革」では企業・団体献金の廃止が議論となったにもかかわらず、自民党がつくった抜けつが政治資金パーティー券の購入でした。これが裏金事件へとつながったのです金権腐敗政治を改めるには企業・団体献金の全面禁止が必要です。
 再修正案は、政治資金パーティー購入者の公開基準を「5万円超」に引き下げ、政策活動費の領収書を10年後に公開するというものそもそも企業には収支報告書の提出の義務がなく、公開基準を引き下げても透明性は高まりません。しかも、公開基準の引き下げ論とは、政治資金パーティーが企業・団体献金の抜け穴になってきたという本丸″の問題からの諭点ずらしにすぎません。パーティー券購入を献金みなし、企業によるパティー券の購入も禁止べきです。政策活動費は例外的に議員個人への寄付を認めたもので、使途を明らかにする義務のない不透明な資金です。選挙買収に使われた疑惑もあり、きっぱり廃止すべきです。
 公明党の山口那津男代表は「そのまま賛同はできない」(30日)と言っていましたが、公開基準引き下げなど「求めていた大きな判断を(自民は)した」(31日)と変化。
 維新に至っては、日本共産党や立憲民主党、国民民主党、有志の会とまとめていた
① 企業・団体献金の禁止  政策活動責の廃止  会計責任者と等の責任を政治家に負わせる という3点の一致を事実上反故(ほご)にする態度です。

全面禁止を

 日本共産党が一貫して主張してきた企業・団体献金の全面禁止や政策活動費の廃止などを実現する法改正こそ、本来の政治改革への道です。     (若林明)