2024年7月31日水曜日

山形・秋田で豪雨災害続出…異常気象続きなのに防衛費8兆円に比べて防災予算が少なすぎる!

 今夏の異常気象は例年以上です。多くの地点で40近い酷暑が続くだけでなく、毎日のようにゲリラ豪雨があちらこちらで発生しています。九州地方で始まった豪雨による水害は、停滞する梅雨前線の影響で山形、秋田両県記録的な大雨をもたらし最上川など複数の河川が氾濫し、土砂崩れも起きました。
 問題はこの事態は今後毎年続く可能性があるのに、政府の防災予算は驚くほど少なく、司令塔となるべき内閣府の防災部門の今年度の予算はたった73億円に過ぎないということです
 これは国交省などの予算にも公共事業関係費として災害対策費は計上されているので、全省庁のありとあらゆる国土強靱化関係予算(防災とは無関係なものも)を積み上げれば5兆円今年度)になりますが、被害補償などには回りません。
 日刊ゲンダイが、「山形・秋田で豪雨災害続出…異常気象続きなのに防衛費8兆円に比べて防災予算が少なすぎる!」という記事を出しました。
 岸田首相は不要で有害な軍事費のために2027年までに43兆円を捻出しようとしていますが、日本中で水害、土砂崩れが続いている現実をどう考えているのでしょうか
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山形・秋田で豪雨災害続出…異常気象続きなのに防衛費8兆円に比べて防災予算が少なすぎる!
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 またしても豪雨災害で人的・物的被害が出てしまった。停滞する梅雨前線の影響で、25日から記録的な大雨に見舞われている山形、秋田両県では、最上川など複数の河川が氾濫し、土砂崩れも起きた。山形県には線状降水帯も発生した。
 気象庁は山形県内の一部市町村に25、26日と2度にわたって大雨特別警報を発表。3市町が2万世帯超に警戒レベルが最も高い緊急安全確保を発令した。パトカーが洪水にのまれた山形県警の警察官など28日までに死者2人、行方・安否不明4人。住宅などの浸水被害は両県で1000棟近い。警報級の大雨は30日ごろまで続く恐れがあるという。
 今夏の異常気象は例年以上だ。多くの地点で40度近い酷暑が続くだけでなく、毎日のようにゲリラ豪雨があちらこちらで発生。各地で警戒が高まっている。

内閣府の防衛部門はたったの73億円
 ところがである。これほど豪雨災害への備えが必要になっているのに、政府の防災予算は驚くほど少ない。本来、司令塔となるべき内閣府の防災部門の今年度の予算は、たったの約73億円だ。しかも、「土砂災害・水害等の災害時における避難対策等の推進」予算は、前年度の5200万円から4600万円に減額されている。
 もちろん、国交省などの予算にも公共事業関係費として災害対策費は計上されている。それでも全省庁のありとあらゆる国土強靱化関係予算(防災とは無関係なものも含む)を積み上げても今年度は約5兆円だ。
 防衛費に約8兆円、5年間で43兆円投じる計画と比べても少なすぎる。国民の生命・財産を奪うという点では防災予算こそ、もっと分厚くすべきだろう。

「シン・防災論」の著者でジャーナリストの鈴木哲夫氏がこう言う。
「線状降水帯を分析するスーパーコンピューターを気象庁が購入したのは昨年3月です。線状降水帯による被害は10年近く前から深刻になっていたのに、ようやくでした。防災予算は全体の金額が少ないだけでなく、いくつもの省庁にまたがっているため、効率的に使えていない。内閣府に集中させるなり、『防災省』を作るなりして、予算と組織を一元化する必要がある。毎年のように豪雨災害の被害が出て、同じことを繰り返している」

 岸田首相は山形、秋田について「万全の対応を行う」と強調していたが、事が起きてから予備費を注入するイタチゴッコをいつまで続けるのか。 

コロナ治療薬は公的支援なし、高額だと3万円

 オミクロン変異株「KP.3」による今年のコロナ感染者は今月15~21日に6万7334人と前週から以上も増加しました。感染者は9月に向けて大拡大する恐れがあります。
 政府は昨年コロナを第5類に移行させることを決め、治療上の公費負担を3月末で終了させました。罹ってもインフルエンザ並みの症状(でしかも後遺症がない)の場合には5類移行による被害は殆どありませんが、そうでないケースでは大変な薬代が掛かるようで、生活に余裕がない人々は高価なクスリの処方を断るしかないということです。
 岸田政権が迅速に第5類に移行させた理由は一にも二にも公費負担の軽減(と倍増軍事費の捻出)にあります。「トータルではその方が安く済む」は、ある程度生活に余裕があればの話しです。
 政府は、余裕のない人たちには感染する度に「命懸けの選択」を迫ることになるこの事態をどう考えているのでしょうか。
 少なくとも「重症化リスクの高い人を対象にした補助制度」を早急に作るべきです。
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  7月21日)変異株「KP.3」が猛威!要注意 「感染爆発の夏」新型コロナ禍に逆戻りの兆し
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コロナ治療薬は公的支援なし、高額だと3万円…それでも飲むべき理由 感染症の専門家が指摘
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 高額な値段に躊躇してしまう。
 流行拡大中の新型コロナ。厚労省の最新(26日)の発表によると、全国約5000の定点医療機関から報告されたコロナ感染者数は、今月15~21日に6万7334人。前週の5万5072人から1万人以上も増加している。
 人流が増えるお盆に向けてさらなる感染拡大が懸念されているが、今年4月から新型コロナ治療費の公費支援がなくなった。自己負担分が増えたことで、治療薬は5日分処方の場合、高齢者など1割負担だと5200~9900円、3割負担だと1万5500~2万9700円の支払いが必要になった。薬の種類や、人によって3万円と高額なため、医療現場では薬を諦める患者が多いという。
 処方は医師の判断だが、結局のところ薬を購入するかは患者次第。以前に感染した際、解熱剤だけで回復したケースも少なくないため、懐事情を考え、悩むところだが、昭和大医学部名誉教授の二木芳人氏(臨床感染症学)は薬の使用をこう言って勧める。

■トータルでは安く済む
「薬で重症化のリスクを防ぐことができます。症状が悪化し、入院や通院が必要になった場合の治療費を考えれば、かえってトータルで安く済むこともある。高齢者や持病のある方は特に推奨されます。また、早期に治療薬を飲んだ人は倦怠感などのコロナによる後遺症が出にくいというデータがあり、こうした予防効果も期待できます。軽症から中等症を対象に処方される『ゾコーバ』は、重症化や後遺症を予防する効果を立証するデータは現時点でありませんが、一日でも早く回復したい人にとってつらい症状を和らげてくれます。いずれにせよ命に関わることなので、高いお金を払ってでも薬を飲む価値は十分にあると思います」
 さまざまなリスクを考えれば、薬は買うべきだ。とはいえ、一番高価な「パキロビッドパック」は1割負担でも1万円弱になる。年金生活の高齢者や生活困窮者には厳しい金額だ。
重症化リスクの高い方を対象にした補助制度があってもよいのでは。薬が幅広く使用されれば、医療現場の逼迫などの混乱を事前に防止できます。政府には臨機応変さを求めたいです」(二木芳人氏)
 せっかく薬があるのに、使われなければ本末転倒だ。

維新の“オワコン化”は決定的!吉村府知事と藤田幹事長のお膝元首長選で連敗街道ヒタ走り

 かつて維新は大阪府の市長選などで破竹の勢いで勢力を伸ばしたので、その上の全国政党になるべく党勢拡大を図ってきました。それがここにきて吉村府知事の地元での市長選で候補者を立てられず、府議補選に敗れるなど連敗しています。
 藤田幹事長の地元・衆院大阪12区(大東、寝屋川、四條畷)の各市長選でも4年前の四條畷、昨春の寝屋川、今年4月の大東市長選で軒並み維新候補が敗北しました。
 日刊ゲンダイが「驕れる者も久しからず」と揶揄しました。そういえば馬場代表については、かつて週刊文春が「社会福祉法人の乗っ取り疑惑」を報じましたが、それを否定することもなく、それに対する説明はまったくされていません。
 それでもかつての名残で、維新はいまも府内43市町村のうち21市町長を占めていますが、一時の勢いはどこへやらで、万博に加え、兵庫の斎藤知事のパワハラ告発問題も重なり、維新はいまダブルパンチを浴びています。

 また21年の兵庫県知事選で維新推薦を受けて初当選した斎藤元彦知事は、維新系の最初の知事として維新が誇りました。それがいまはパワハラ疑惑などで県議会による百条委員会で調査される立場となりました。自死に追い込まれた元県庁局長は、斎藤氏のパワハラや職権乱用等を7項目に渡って告発しています。関係者からは知事の辞職要求が出されていますが、任期を1年残している斎藤氏は頑として辞職を拒んでいます。
 彼は知事になると精力的に自分の活躍をSNSで発信するなどして、大いに活用していたようです。それが皮肉なことに今ではSNSでは同知事を批判・非難する動画で溢れています。
 こうした斎藤氏の在り方も大いに維新にダメージを与えているように思われます。
 
 日刊ゲンダイが報じました。
 併せて同紙の記事「ほんまダサいで維新…野党第1党獲得正直難しいと白旗、大阪万博も政治改革もグダグダ」を紹介します。
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維新の“オワコン化”は決定的!吉村府知事と藤田幹事長のお膝元首長選で連敗街道ヒタ走り
                          日刊ゲンダイ 2024/07/30
「驕れる者も久しからず」とはよく言ったもので、全国政党を目指して党勢拡大を図る「維新の会」の足元がグラグラだ。幹部連中の“お膝元”の首長選挙では連敗街道をヒタ走り、維新系知事は内部告発を受けて進退きわまる。自業自得の問題噴出で、維新はオワコン化を避けられそうにない
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 28日に投開票された大阪府議補選(河内長野市=定数1)は、前市議で「大阪維新の会」の新人・西田善延氏が、同じく前市議で諸派新人の道端俊彦氏に敗北。約4000票差だった。
 河内長野は大阪の吉村府知事の出身地。維新は6月の同市長選で候補を擁立できず吉村氏は自身の地元である強みを生かせないまま「不戦敗」を喫した。
 そんな経緯があるだけに、今回の府議補選は絶対に落とせない戦いだったが、吉村氏は27日に予定していた応援演説の前日に新型コロナ陽性が判明。いいところを見せられないまま市長選に続けて連敗し、維新の共同代表としてのメンツは丸潰れだ。現地取材したジャーナリストの横田一氏がこう言う。
「日本維新の馬場代表や大阪維新の横山幹事長(大阪市長)が応援に駆け付けるなど、かなりの力の入れようでした。横山幹事長が演説で『ここで負けたら、維新は落ち目だと言われる。負けるわけにはいかない』などと気炎を吐いていたのが印象的です。来年開催の大阪・関西万博に対する逆風について『選挙への影響があるのでは』と尋ねると、横山幹事長は『大丈夫だ』と強がっていましたが、無残な結果に。昨年の統一地方選で見せた“躍進”も、今では見る影もありません」
 異変は日本維新の藤田幹事長のお膝元でも起こっている。藤田氏の地元・衆院大阪12区(大東、寝屋川、四條畷)の各市長選は軒並み維新候補が敗北4年前の四條畷、昨春の寝屋川、そして今年4月の大東市長選での3連敗である。

■足引っ張る兵庫のパワハラ知事
 いまだに府内43市町村のうち21市町長を維新が占めているものの、一時の勢いはどこへやら。万博に加え、兵庫の斎藤知事のパワハラ告発問題も重なり、維新はダブルパンチを浴びている」(横田一氏)状態だ。
 斎藤氏は2021年の兵庫県知事選で維新と自民から推薦を受けて初当選。馬場氏が「維新スピリッツを持った首長」と太鼓判を押すなど、維新とはツーカーの関係だ。
 斎藤氏によるパワハラ疑惑などを告発した元西播磨県民局長の男性職員は懲戒処分を受けた後、「死をもって抗議する」との言葉を残して自殺。疑惑の数々は県の第三者委員会や県議会の百条委員会が調査中だ。ある兵庫県議がこう明かす。
「職員が自死する異常事態を招いたのに、知事は『県政を前に進めることが私の責任』と、平然と公務をこなしています。涙を流して辞職を表明した副知事に至っては、裏で『あの会見、良かったやろ?』とうそぶいているとか。酷いもんです。こんな人物を副知事に重用し続けた斎藤知事が居座る限り、維新県議団も批判を免れません。維新の盛衰に関わる事態です」
 馬場氏は斎藤氏への内部告発について、「もし今報道されていることが『すべて事実である』と判明すれば、維新の会としてしかるべき判断をするように本人に直接話をする」と留保を付けて煮え切らない。
 こんなダサい態度では、オワコンになって当然である。
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 ついに馬場代表自ら、次期衆院選の「野党第1党獲得」野党第1党獲得に「正直難しい」と白旗宣言。


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ほんまダサいで維新…野党第1党獲得「正直難しい」と白旗、大阪万博も政治改革もグダグダ
                          日刊ゲンダイ 2024/06/17
 やることなすこと、ほんまにダサい。「維新の会」の面々のことである。
 16日放送のBSテレ東番組で、「日本維新の会」の馬場代表が次期衆院選の「野党第1党獲得」の目標について「正直言ってなかなか難しい」とホンネをポロリ。「与党の過半数割れの方が手が届きやすい」と強がってみせたが、ほぼギブアップ宣言である。
 維新人気に陰りがあるのは当然で、端的に言えば「ダサい」からだ
 調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)をめぐり、馬場氏は「使途公開と残金返納を義務付ける立法措置」を盛り込んだ岸田首相との合意文書にサイン。政治資金規正法改正の自民修正案に衆院で賛成したものの、自民側に「旧文通費の見直しは今国会中の成案が困難」と見事に裏切られた。
 カンカンの馬場氏は15日、自身のXで〈人を騙したりウソをついたりした方が責められなくて騙されたりウソをつかれた方が責められるような社会ってエエんでしょうか?〉と恨み節を炸裂。当然「エエわけない」のだが、社会福祉法人の乗っ取り疑惑がくすぶる馬場氏がエラソーに言えた義理ではない

口は達者な吉村知事
 ダサいのは、馬場氏と並んで共同代表を務める大阪府の吉村知事もまたしかり。
〈空飛ぶクルマは空の移動革命になる〉〈万博時には人を乗せて商用運航の実現を〉〈必ず実現させる〉──。2025年大阪・関西万博の目玉である空飛ぶクルマについて、吉村知事は3月末に自身のXで、そう意気込んでいた。それから3カ月足らず。空飛ぶクルマの運航事業者の「スカイドライブ」が14日、商用運航を断念すると発表した。
 吉村知事は昨年8月のイベントで「普通の人が自転車に乗るみたいに、空飛ぶクルマに乗ってぐるぐる回っているのを、万博でやります」と豪語していたが、全然ムリだったわけだ。ただただダサい。
 明るいニュースとばかりに吉村知事が飛びついたのは、時給2000円の万博スタッフに想定の10倍以上の応募が殺到したこと。自身のXで〈想定を超える多くの応募を頂きました〉とアピールしたが、大阪府内の最低賃金(1064円)の倍にあたる“ニンジン”をブラ下げれば、そりゃ人も集まるだろう。ちなみに募集人数は120人程度と、そもそも少ない。

 維新といえば、東京都知事選(6月20日告示、7月7日投開票)で小池知事に「知事選で独自候補を出さない代わりに、来年の都議選で都民ファーストとのすみ分けを求めた」(都政関係者)ものの、結局は袖にされたという。「政治とカネ」の改革も万博準備も、まるで維新は締まらない。ダサすぎやで、しかし。

31- 米国の戦争マシーンに組み込まれた日本は中露と戦争する準備を進めている

 櫻井ジャーナルが掲題(の趣旨)の記事を出しました。
 岸田首相が口にする「台湾有事」は 中国を叩きたい米国が戦略的に考え出したもので、別に中国がそういう意図を持っているということではありません、逆に中国は、台湾に独立運動でも起こされれば別でしょうが、台湾とは良好な経済関係を維持しています。
 日本にとって中国は紛れもない隣国であり最大の貿易相手国なので、中国と戦火を交えることなどはあってはならないことです。万一 台湾の独立運動によって中国と台湾の間で争いが起きたとしても、それは中国の「内政問題」なので日本が関与すべきではありません。
 仮に中国と戦火を交えることになれば日本は間違いなく廃墟と化します。そうした事態は「対露戦争」についても同様です。米国は全て承知の上で日本を巻き込んでいる筈で、そんなことが分からないのであれば政治家失格です。
 櫻井ジャーナルは、日本は「米国の戦争マシーン」に組み込まれていると表現しています。
 正確な表現に思われます。
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日本が従属しているアメリカは世界制覇を目指して侵略戦争を繰り広げ、窮地に  
                          櫻井ジャーナル 2024.07.30
 日米安全保障協議委員会(日米「2+2」)が7月28日に開かれ、日本側からは上川陽子外務大臣、木原稔防衛大臣が、またアメリカ側からアントニー・ブリンケン国務長官、ロイド・オースティン国防長官が出席した
 自衛隊は今年度末までに陸海空を一元的に指揮する「JJOC(統合作戦司令部)」を市ヶ谷に設立する予定だが、それに合わせてアメリカ政府はUSFJ(在日アメリカ軍)を「JFHQ(統合軍司令部)」へ格上げするようだ。

 自衛隊とアメリカ軍は連携するという建前だが、日本側の主体的な判断に基づいて自衛隊が活動するということは考えられず、アメリカ軍の指揮下、その手先としてロシアや中国と最前線で日本人が戦う態勢が整備されつつあると言える。
 ソ連消滅後、中立を掲げていたウクライナを支配下に置くため、アメリカは介入した。2004年のことである。この選挙では東部や南部を支持基盤にし、中立を主張していたビクトル・ヤヌコビッチが勝利したのだが、これをジョージ・W・ブッシュ政権は許さなかった。
 そこで2004年から05年にかけて内政干渉し、「オレンジ革命」を引き起こし、配下のビクトル・ユシチェンコを大統領に就任させた。この人物は金融界の出身で、新自由主義的な政策を推進、人びとの生活を破壊した。そこで有権者は2010年の選挙で再びヤヌコビッチを選んだ。
 それに対し、アメリカの外交や軍事を支配してきたネオコンは2013年11月から14年2月にかけてネオ・ナチを使ったクーデターをキエフで仕掛け、ヤヌコビッチ政権を倒すことに成功するのだが、軍や治安機関でも約7割はネオ・ナチが主導権を握るクーデター体制を拒否、離脱したと言われている。

 クーデター後にクリミアはロシアの保護下に入り、東部のドンバスはロシアの支援を得られなかったことから武装闘争を開始、内戦に発展した。この反クーデター軍はキエフのクーデター軍より強く、アメリカはクーデター体制の戦力を増強するために時間稼ぎをする。それがミンスク合意だ。
 アメリカ政府は8年かけてウクライナ軍の戦力を増強すると同時にドンバスの周辺に要塞線を築く。2022年に入ると十分に兵力を増強できたと判断したようで、ドンバスの周辺に兵力を集中させ、ドンバスの民間人に対する砲撃を激化させた。その年の春に大規模な攻撃を始める計画だったが、その直前にロシア軍が介入、ウクライナ軍を一気に壊滅させた。軍事介入から2週間ほどでキエフ政権が停戦に合意したのはそのためだ。戦争が続いたのはアメリカやイギリスが圧力をかけたからである。
 しかし、アメリカ/NATOはロシアに圧倒されている。すでにウクライナ軍は壊滅状態で、戦争を続けるならNATO諸国が前面に出てロシアと直接戦わなければならない。

 日本がアメリカの戦争マシーンに組み込まれたのは1995年のことである。1991年12月にソ連が消滅した直後、アメリカの国際問題や安全保障政策を仕切っていたネオコンはDPG(国防計画指針)草案という形で世界制覇計画を作成した。いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」である。
 その目的は新たなライバルの出現を防ぐことで、その対象には旧ソ連圏だけでなく、西ヨーロッパ、東アジア、西南アジアも含まれる。ドイツと日本の場合、アメリカ主導の集団安全保障体制、つまり戦争マシーンに組み入れて「民主的な平和地域」を創設するともされている。
 しかし、細川護煕政権は国連中心主義を打ち出して抵抗、ネオコンの怒りを買うことになり、1994年4月に倒された。その年の6月に自民、社民、さきがけの連立政権が誕生、村山富市が首相に就任して抵抗してネオコンを怒らせた。

 そうした状況をネオコンのマイケル・グリーンとパトリック・クローニンはカート・キャンベル国防次官補(当時)に訴え、1995年2月にジョセイフ・ナイは「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表する。そこには、10万人規模の駐留アメリカ軍を維持し、在日米軍基地の機能を強化、その使用制限は緩和/撤廃されることが謳われていた。
 こうした中、1994年6月に長野県松本市で神経ガスのサリンがまかれ(松本サリン事件)、95年3月には帝都高速度交通営団(後に東京メトロへ改名)の車両内でサリンが散布された(地下鉄サリン事件)。松本サリン事件の翌月に警察庁長官は城内康光から國松孝次に交代、その國松は地下鉄サリン事件の直後に狙撃された。

 1995年8月にはアメリカ軍の準機関紙と言われているスターズ・アンド・ストライプ紙に85年8月12日に墜落した日本航空123便に関する記事が掲載された。この旅客機が墜ちる前、大島上空を飛行していたアメリカ軍の輸送機C130の乗組員だったマイケル・アントヌッチの証言に基づく記事で、自衛隊の責任を示唆している。日本がアメリカの戦争マシーンに組み込まれたのは、この1995年だと言えるだろう。

 ウォルフォウィッツ・ドクトリンをベースにしてネオコン系シンクタンクPNACは2000年に「アメリカ国防の再構築」というタイトルの報告書を発表、それに基づいてジョージ・W・ブッシュ政権は世界戦略を作成していく。その戦略を起動させたのは報告書が発表された翌年の9月11日に引き起こされた「9/11」だ。それを利用してアメリカは2001年10月にアフガニスタン、03年3月にはイラクを先制攻撃しているが、いずれも9月11日の攻撃とは無関係な国だった。

 日本がアメリカの戦争マシーンに組み込まれてから今年で29年。そのひとつの結果がJJOCだ。ウクライナ軍はアメリカ軍の命令でロシアと戦争を始めた。兵器や情報、そして作戦はアメリカから与えられているが、戦場で殺されるのはウクライナ人だ。すでにウクライナは崩壊している。

2024年7月29日月曜日

法人化と権力介入ノー 学術会議巡り 学者ら6団体声明

 しんぶん赤旗に掲題の記事が載りました。
 日本学術会議の法人化は「学術会議会員任命拒否の制度化・合法化」に他なりません。
 自民党政治はこの4半世紀で日本を三流経済国に転落させましたがそれに飽き足らず今度は「学問」を政界と財界に従属させるという「禁じ手」を使おうとしています。
 それを当たり前のように行おうとしている人物こそがおよそ学問とは無縁と思われる菅前首相と岸田首相の二人で、それはそのまま日本の悲劇を象徴しています
 学者や弁護士らでつくる6団体が27日、「法人化による権力介入に強く反対する声明」を発表しました
 その声明文を併せて紹介します。
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法人化と権力介入ノー 学術会議巡り 学者ら6団体声明
                        しんぶん赤旗 2024年7月28日
 日本学術会議を法人化する方針で政府が議論を急いで進めていることに対し、学者や弁護士らでつくる6団体が27日、東京都内でシンポジウムを開き、「法人化による権力介入に強く反対する声明」を発表しました。

 政府が昨年末に決定した法人化方針は、外部者らが学術会議の会員選考や運営に関与する委員会や、大臣が任命する監事や評価委員会などの新設が柱です。
 前学術会議会長の梶田隆章・東京大教授は、政府が2022年末に示した同会議の独立性を侵害する改悪法案への対応などについて「(内閣府側に)学術会議をより良くしようという根本的な考えが見えず、われわれの思いを届けるのは極端に難しいと痛感した」と報告。このまま法人化案が進めば「日本はナショナルアカデミーのない国になる」と強い危惧を表明しました。
 元学術会議第一部長の小森田秋夫・東大名誉教授は、同会議は国の機関として、政府方針と一致しない「科学的助言」も行い、20年までは会員任命拒否がなく、独立した組織として機能してきたと強調。政府側の「独立性を高めるための法人化」という主張を批判しました。

 学術会議会員への任命を拒否された一人の加藤陽子・東大教授はビデオメッセージで、「学問の自由、研究組織の自律性が確保されなかったことの帰結が原爆投下」だと指摘。学術会議を無力化する法人化の阻止を訴えました。
 米倉洋子弁護士は、任命拒否の情報公開請求訴訟の経過を報告した上で、「法人化案は任命拒否の制度化・合法化」だと指摘。青井未帆・学習院大教授は、政府の動きについて、国家安全保障に学術専門家集団を組み込むための「破壊と浸食」などと指摘するメッセージを寄せました。


                                2024年727
日本学術会議の法人化による権力介入に強く反対する声明
                            学問と表現の自由を守る会
                   大学危機をのりこえ、明日を拓くフォーラム
               学術会議会員の任命拒否理由の情報公開を求める弁護団
                              立憲デモクラシの会
                        安全保障関連法に反対する学者の会
                  稲田から広げる9の会(早教職員9条)

本学術会の法人化の形をとった独立性侵害の危機
 政府は法人化の形をとって日本学術会議(以下、学術会議を政府の言いなりになる組織に作り替ようと、急ピッチで法案化を急いでいます。その内容は驚いたことに担当としては学術にあまり関係のない防災・海洋政策担当の特命担当大臣が2023年1222日にした「日本学術会議の法化に向けて」で提起した「日学術会議を国から独立した法人格を有する組織とする」というものでした。そして学術会議を法人化した上で、「選考助言委員会」(仮称)や「運営助言委員会」(仮称)等の委員会を設置し、政府がガバナンスしやすくするというもので、学術の独立性、自律性を害するいくつもの仕掛けが組み込まれています。この決定の裏には、菅前首相が学術会議会員任命拒否を行った2020年10月の直後に発足した「自民党政務調査会。政策決定におけるアカデミアの役割に関する検討プロジェクトチーム(PT)」が2020年12月9日に発表した「日本学術会議の改革に向けた提言」がありました。そこでこれでの経緯簡略に触れながら学術会議の独立性、自律性の侵害の問題を検討し、反対の声を挙げたいとえます。

学術会議存立の要件
 学術会議会員任命拒否には多くの団体、人々から反対の意見が表明されました。それからすでに4年が経とうとしていますが、まだこの問題は終わっていせん任命の拒否理由を示さないどころか、員選出に透明性がないと決めつけて、政府は学術会議の在方の見直しを迫りました。
 学術議は見直しに関わって2021年4月の総会で「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」を採択ました。世界のアカデミた要件して 学術的に国を代表する機関としての地位 そのための公的資格の付与、 国家財政支出による安定した財政的基盤、 活動面での政府からの独立、 会員選考における自主性・独立性」を挙げ、この「5要件」には、「近視眼的な利害に左右されない独立した自由な学術の営みを代表するアカデミーの活動が、学術の豊かな成果を広く国際・国内の社会に還元する役割を通じて公共の福祉を保障する世界共通の信念が託されています」と述べ、政府の機関であっても政府から独立した組織である意義が語られました

学術会議法改正案の提案を断念
 2004年に学術会議が組織改革された折、十年後に見直すという総合科学技術会議の方針に基づき、2015年内開府特命担当大臣(科学技術政策)のもに「日本学術会議の新たな展望を考える識者会議」が組織され、「日本学術会議の今後の展望についてというが出されました。それには「国の機関でありつつ法律上独立性が担保されており、かつ、政府に対して勧告を行う権限を有している現在の制度は、日本学術会議に期待される機能に照らして相応しいのであり、これを変える積極的な理由は見出しにくい。」との見解が示されました。

「佐渡島の金山」世界遺産決定/朝鮮人強制労働も含めた歴史全体示す取り組みを

 しんぶん赤旗に掲題の記事が載りました(時事通信/しんぶん赤旗記者による解説)。

 佐渡金山が当時世界最大級の金生産地であり、推薦に値する世界的な文化遺産であるのは事実です。そしてアジア・太平洋戦争末期に、佐渡金山で当時日本の植民地支配の下にあった朝鮮人の強制労働が行われたことも歴史的事実であり、新潟県史や地元自治体の町史に記述されています。
 当然韓国側は「強制労働の現場だ」として日本政府に抗議するなどしてきました。しかし日本政府は金山を文化遺産に推薦するに当たり、朝鮮人への強制労働を認めようとはしませんでした。
 結局 文化遺産登録は明治時代以前の部分に限定して行われましたが、歴史的遺構でありながら都合の悪い時期を排除するなどは本来あり得ないことです。
 日本政府には世界遺産委員会での約束事を誠実に守ることは勿論、朝鮮人を迫害したことへの真摯な反省の立場から、歴史の全容の展示と説明に取り組むことが求められます。
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「佐渡島の金山」世界遺産決定
                        しんぶん赤旗 2024年7月28日
【ニューデリー=時事」インドで開催中の国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は27日(日本時間同)、世界最大級の金生産地だった「佐渡島(さど)の金山」(新潟県佐渡市)の世界文化遺産への登録を決定しました。ユネコの諮問機関は6月、追加情報を求める「情報照会」を勧告していしたが、審議の結果,全会致で登録が決まりました。
 世界遺産は「世界で採鉱などの機械化が進んだ時代に、高度な手工業による採鉱と製錬技術を継続したアジアにおける他に類を見ない事例だ」と評価しました。
 佐渡島の金山を巡っては、太平洋戦争中に朝鮮半島出身者も働いていたことから、韓国側は「強制労働の現場だ」として日本政府に抗議するなどしてきました。世界遺産委は本に対し、「鉱業採掘が行われたすべての時期を通じた歴史を説明する施設を整えること」などを勧告しました。
 政府代表は審議で、「金山におけるすべての労働者、特に朝鮮半島出身労働者を誠実に記憶に留め、韓国と協議しながら展示施設を強化すべく努力していく」とする声明を読み上げました。
 政府は、佐渡市の「相郷土博物館」に過酷な労働状況などに関する展示物を新たに整備。市で毎年、労働者の追悼行事を行うことも表明しました。
 佐渡の金山は17世紀には世界最大級の金生産地となり、機械化が進む中で19世紀半ばまで手工業による金生産が行われました。政府は「世界に類のない鉱山遺跡」として、昨年の登録を目指して推薦書を提出。しかし、ユネスコから内容の不備を指摘され、昨年に修正した推薦書を再提出しました。
 ユネスコの諮問機関、国際記念物瀧跡会議(イコモス)は6月、「登録」に次ぐ情報照会を勧告。推薦対象外の明治以降の遺構が多く含まれる一部地区を除外するなど3項目の指摘を受け、政府はいずれも応じました

朝鮮人強制労働も含めた歴史全体示す取り組みを
 国教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は、日本政府が登録推薦していた「佐渡島の金山」(佐渡金山、新潟県佐渡市)の登録を決定しました。佐渡金山は推薦に値する文化遺産です。一方で、佐渡金山には戦時中の朝鮮人強制労働の歴史があります。日本政府は、朝鮮人強制労働も含めた佐渡金山の歴史の全体を示す取り組みを行うべきです
 アジア・太平洋戦争末期に、佐渡金山で当時日本の植民地支配の下にあった朝鮮人の強制労働が行われたことは、新潟県史や地元自治体の町史に記述された歴史的事実です。日本政府は、韓国政府との協議の中で朝鮮人労働者の歴史を現地で展示することを約束しました。一定の前進です。
 そもそも世界遺産とは「人類の知的・精神的連帯に寄与し平和と人権を尊霊する普遍的な精神をつくる」という理念に基づくものです。登録推薦物の調査・勧告を行う国際記念物遺跡会議(ICOMOS=イコモス)は「より広い社会的、文化、歴史的、然的な文脈と背景に関連させなければならない」(「文化遺産の解説及び展示に関するICOMOS憲章」)としています。この理念・原則を踏まえるならば、全体が示されるのは当然です。
 岸田政権は2022年の推薦決定以来、安倍晋三元首相を中心に「新たな『歴史戦』チーム」を発足。朝鮮人強制労働を否定するための作業部会をつくりました。岸田首相は2223両年の政府主催の全国戦没者追悼式(8月15日)でアジア諸国への加害責任や植民地責任につい一切触れていません。岸田政権は日本の負の歴史に向き合わない不誠実な態度を示してきした。今回の登録でも、日本政府は朝鮮人労働の強制性について認めていません。日本政府が真摯(しんし)な反省の立場から歴史の展示・説明に取り組むことが求められます
           (若林明)