2024年7月10日水曜日

大宣伝・印象操作・巨大選対/石丸氏メディア異常宣伝の黒幕(植草一秀氏)

 植草一秀氏が都知事選の結果について分析した二つの記事(10日付及び9日付)を出しました。
 前者(10日付)では、小池氏の当選を確実にするためには蓮舫票を引きはがす「第三の候補」が必要で、その資質:巨大資本の利益に合致する「対米隷属で新自由主義」であることに適った石丸氏が巨大選対を得て目的を達したと述べています。決して突然「単騎で登場した」というようなものではないということです。
 そして石丸氏のおかげで小池氏のマイナスイメージが極めて見えにくくなった点で、小池氏は最大の恩恵享受者であるとして、小池氏に対する疑惑追及はこれから本番を迎えると述べています。

 後者(9日付)では、小池氏を当選させる最大の方策として「第三の候補=石丸氏」が用意されたもので、彼を浮上させた原動力は「メディアの大応援」にあったとして、ここでいうメディアは地上波に留まらず、テレビ・新聞・雑誌等の既存メディアとネットメディアの二つであるとしています。共通するのは、どちらも「大資本」が支配権を有していることで、既存メディアとネットメディアに差は存在しないと述べるとともに、石丸氏が巨大な選対を保持したことは巨大資本の支援なしには考えられないと述べます。
 そして見落とせない点は既存政治勢力を嫌悪する主権者が激増していることで、石丸氏はメディア大宣伝という追い風を受けて主権者の票を集めることに成功した反面、蓮舫氏は「主権者多数が既存政治勢力を嫌悪している現実」を認識できなかったと述べています。
 反既得権勢力が勝利を得るには、既存政治勢力を嫌悪する主権者の票を幅広く獲得することが必要であったのに対して、野党の既存政治勢力を代表した蓮舫氏には、この主権者の票を獲得する力がなかったと指摘しました、
 次期衆院選において、反自公勢力は既得政治勢力を嫌う主権者の意思を踏まえた戦術を構築することが必要だと述べています。
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大宣伝・印象操作・巨大選対
               植草一秀の「知られざる真実」 2024年7月10日
小池百合子氏にとって石丸伸二氏は文字通り救いの神。
都知事選には56名が立候補したが主力候補は小池氏と蓮舫氏だった。
反小池氏が蓮舫氏に集中すれば勝敗は拮抗したはず。
現に、小池氏292万票に対して石丸・蓮舫氏票が294万票だった。
294万票を一人が獲得していたら小池氏は落選していた。

蓮舫票を引きはがす「第三の候補」が必要だった。
「第三の候補」のなり手は石丸氏以外にもいた。
AI技術者の安野たかひろ氏、医師の内海さとる氏だ。
この2名のいずれかを、石丸氏のようにメディアが大宣伝していれば、その人物が石丸氏の代役を務めただろう。

石丸氏が浮上した原動力はメディア大宣伝にある。
しかし、石丸氏が「第三の候補者」である合理的な理由は存在しなかった。
しかし、メディアは選別的に石丸氏に対して特別の対応を示した。
メディアにはマスメディアとネットメディアの二つがあるが、共通するのはどちらも巨大資本が支配力を有していること。
石丸氏の引き立てが巨大資本の利害に合致したということ。
2008年以来、メディアが大宣伝を展開する対象は同じカテゴリーに含まれる。
「対米隷属で新自由主義」がメディア大宣伝の条件である。

もう一つ、見落とせないのは石丸選対が大がかりであったこと。
大がかりな選対を用意するには巨大な資金が必要になる。
巨大な資金が投下される巨大な選対が用意された。
巨大な資金を用意した黒幕が存在したということ。
石丸氏の個人の力で大量得票を実現したわけではない。そのことを本人が自覚していないとすればおめでたい。

「メディア大宣伝」、「印象操作」、「巨大選対」が得票激増をもたらした。
選挙戦術上、「印象操作」の賞味期限は投票日で構わない。
投票日まで「好印象」を演出できれば目的を達成できる。
しかし、投票日を過ぎると「印象操作」で見えなかった部分が見え始める。
元々、有権者は石丸氏をよく知って支援したわけではない。「印象操作」、「メディア大宣伝」、「巨大選対」に誘導されただけである。

投票日が過ぎて、「印象操作」で伝わらなかった部分が判明してくる。
本人の力が「印象操作」を上回っていれば、投票日後も支持が増大する。
しかし、石丸氏の場合は投票日が支持のピークになったのではないか。
人々との円滑なコミュニケーションを図ることが政治家として業績を積み上げる上で必要不可欠。このコミュニケーション能力の不足が露呈し始めたと見られる

そもそも、石丸氏は安芸高田市の市長任期をまっとうしていない。
市長任期を残すなかで、安芸高田市の市民から市長を辞職して都知事選に出馬することを強く求められたのなら、任期途上での市長辞職にも正当性があると言えるだろう。
しかし、そのような市民の声に押されて都知事選に出馬したわけではない。
逆に、安芸高田市では石丸市政に対する批判が強まっていたと見られる。
また、市長選に出馬した際のポスター制作費用を踏み倒していたとの訴えが起こされ、最高裁で石丸氏の敗訴が確定した。
議員から恫喝を受けたとの主張に対して事実でないとの訴えが起こされ、これも裁判で敗訴している。
石丸氏の市長辞職に伴う市長選では石丸路線を否定する候補者が新市長に選出された。

石丸氏は都知事選を踏み台にして国会議員や県知事に就任することを目論見ていると思われるが、そうなると都知事選での訴えが何であったのかとの疑問も浮上することになる。
だが、石丸氏のおかげで小池百合子氏のマイナスイメージが極めて見えにくくなった。
この面で小池氏は最大の恩恵享受者である。
この点までが石丸氏大宣伝戦略の目論見に含まれていたとすれば、小池3選アジェンダを構築したプロデューサーの腕は確かということになる

小池氏の学歴詐称疑惑はまったく消えていない。
また、神宮・築地再開発に関する官民癒着の疑惑も解消していない。
小池氏に対する疑惑追及はこれから本番を迎える。この点を再確認しておく必要がある。

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  (後 略)
 
 







石丸氏メディア異常宣伝の黒幕

                       しんぶん赤旗 2024年7月 8日
都知事選は政治の構造を考える多くのヒントを与えるものになった。
政治のあり方を端的に規定しているのが日本国憲法。
「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、
(中略)
ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。
そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。」
やや分かりにくい表現だが、核心は、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」「国政は、国民の厳粛な信託によるもの」ということ

選挙で代表者を選出して政治を行うが、その政治は国民の信託による。
選挙で主権者である国民が誰を選出するのかが最重要になる。
現在の国政与党は自公。対立政党に立共が存在する。
今回都知事選では自公支援候補が勝利したが、小池氏が獲得した票が292万票、2位、3位の得票数合計が294万票だった。
2位は石丸伸二氏で166万票、3位は蓮舫氏で128万票だった。

自公対立共の対立での野党候補である蓮舫氏が128万票しか獲得できなかった。
新しいかたちの選挙を実行した石丸氏が166万票を獲得した。
2位、3位候補の得票数合計は小池氏の得票を超えた。
「小池3選アジェンダ⇒計画」と表現して記述したとおり、小池氏を当選させる最大の方策=策略として「第三の候補」が用意されたと見ることができる。
石丸氏がどの程度意識してきたのかどうかは不明だが、石丸氏を浮上させた原動力は「メディアの大応援」にあった。
ここでいうメディアは地上波に留まらない。現在のメディアは二本立て。テレビ・新聞・雑誌等の既存メディアとネットメディアの二つ。
共通するのは、どちらも「大資本」が支配権を有しているということ。
この点で既存メディアとネットメディアに差は存在しない。

そのメディアが石丸氏を大宣伝したことが石丸氏浮上の最大の原動力になった。
もう一点、付け加えなければならないことは、石丸氏が巨大な選対を保持したこと。
巨大な選対保持という意味は巨大な資本が投下されたということ。巨大資本の支援なしに、この選対運営は存在しない

メディア大宣伝の対象が石丸氏でなく安野たかひろ氏であったなら、安野氏が大浮上したと考えられる。大宣伝の対象が内海さとる氏であったなら内海氏が浮上したと考えられる。
ただし、石丸氏と安野氏・内海氏の相違は、安野氏も内海氏も、石丸氏のような巨大選対を保持していなかったこと。この事実を見落とすことはできない

小池3選アジェンダとして石丸氏を浮上させる「大きな力」を背景にした「方策」=「策略」が取られたことを認識することが重要だ。
同時に見落とせない点は、既存政治勢力を嫌悪する主権者が激増していること。
石丸氏はメディア大宣伝という追い風を受けて主権者の票を集めることに成功した。
蓮舫氏は「主権者多数が既存政治勢力を嫌悪している現実」を認識できなかった。
小池氏に投票した主権者が多数存在したのは、政治利権のおこぼれに群がる主権者が全体の25%存在するからだ。自民批判よりも現世利益の利権志向が優先されたと言える。
この人々は雨が降ろうが、槍が降ろうが、投票所に足を運び、既得権勢力に票を投じる。

反既得権勢力が勝利を得るには、既存政治勢力を嫌悪する主権者の票を幅広く獲得することが必要。野党の既存政治勢力を代表した蓮舫氏には、この主権者の票を獲得する力がなかった
自公と同様に既存野党も主権者の支持を失っている。
利権与党の場合は利権の力で主権者の25%を引き付けられる。しかし、野党にその魔力は存在しない。

次期衆院選において、反自公勢力は既得政治勢力を嫌う主権者の意思を踏まえた戦術を構築することが必要。旧態依然の対応なら既得政治勢力の野党は粉砕されることになるだろう。

 (後 略)