2024年7月29日月曜日

「佐渡島の金山」世界遺産決定/朝鮮人強制労働も含めた歴史全体示す取り組みを

 しんぶん赤旗に掲題の記事が載りました(時事通信/しんぶん赤旗記者による解説)。

 佐渡金山が当時世界最大級の金生産地であり、推薦に値する世界的な文化遺産であるのは事実です。そしてアジア・太平洋戦争末期に、佐渡金山で当時日本の植民地支配の下にあった朝鮮人の強制労働が行われたことも歴史的事実であり、新潟県史や地元自治体の町史に記述されています。
 当然韓国側は「強制労働の現場だ」として日本政府に抗議するなどしてきました。しかし日本政府は金山を文化遺産に推薦するに当たり、朝鮮人への強制労働を認めようとはしませんでした。
 結局 文化遺産登録は明治時代以前の部分に限定して行われましたが、歴史的遺構でありながら都合の悪い時期を排除するなどは本来あり得ないことです。
 日本政府には世界遺産委員会での約束事を誠実に守ることは勿論、朝鮮人を迫害したことへの真摯な反省の立場から、歴史の全容の展示と説明に取り組むことが求められます。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「佐渡島の金山」世界遺産決定
                        しんぶん赤旗 2024年7月28日
【ニューデリー=時事」インドで開催中の国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は27日(日本時間同)、世界最大級の金生産地だった「佐渡島(さど)の金山」(新潟県佐渡市)の世界文化遺産への登録を決定しました。ユネコの諮問機関は6月、追加情報を求める「情報照会」を勧告していしたが、審議の結果,全会致で登録が決まりました。
 世界遺産は「世界で採鉱などの機械化が進んだ時代に、高度な手工業による採鉱と製錬技術を継続したアジアにおける他に類を見ない事例だ」と評価しました。
 佐渡島の金山を巡っては、太平洋戦争中に朝鮮半島出身者も働いていたことから、韓国側は「強制労働の現場だ」として日本政府に抗議するなどしてきました。世界遺産委は本に対し、「鉱業採掘が行われたすべての時期を通じた歴史を説明する施設を整えること」などを勧告しました。
 政府代表は審議で、「金山におけるすべての労働者、特に朝鮮半島出身労働者を誠実に記憶に留め、韓国と協議しながら展示施設を強化すべく努力していく」とする声明を読み上げました。
 政府は、佐渡市の「相郷土博物館」に過酷な労働状況などに関する展示物を新たに整備。市で毎年、労働者の追悼行事を行うことも表明しました。
 佐渡の金山は17世紀には世界最大級の金生産地となり、機械化が進む中で19世紀半ばまで手工業による金生産が行われました。政府は「世界に類のない鉱山遺跡」として、昨年の登録を目指して推薦書を提出。しかし、ユネスコから内容の不備を指摘され、昨年に修正した推薦書を再提出しました。
 ユネスコの諮問機関、国際記念物瀧跡会議(イコモス)は6月、「登録」に次ぐ情報照会を勧告。推薦対象外の明治以降の遺構が多く含まれる一部地区を除外するなど3項目の指摘を受け、政府はいずれも応じました

朝鮮人強制労働も含めた歴史全体示す取り組みを
 国教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は、日本政府が登録推薦していた「佐渡島の金山」(佐渡金山、新潟県佐渡市)の登録を決定しました。佐渡金山は推薦に値する文化遺産です。一方で、佐渡金山には戦時中の朝鮮人強制労働の歴史があります。日本政府は、朝鮮人強制労働も含めた佐渡金山の歴史の全体を示す取り組みを行うべきです
 アジア・太平洋戦争末期に、佐渡金山で当時日本の植民地支配の下にあった朝鮮人の強制労働が行われたことは、新潟県史や地元自治体の町史に記述された歴史的事実です。日本政府は、韓国政府との協議の中で朝鮮人労働者の歴史を現地で展示することを約束しました。一定の前進です。
 そもそも世界遺産とは「人類の知的・精神的連帯に寄与し平和と人権を尊霊する普遍的な精神をつくる」という理念に基づくものです。登録推薦物の調査・勧告を行う国際記念物遺跡会議(ICOMOS=イコモス)は「より広い社会的、文化、歴史的、然的な文脈と背景に関連させなければならない」(「文化遺産の解説及び展示に関するICOMOS憲章」)としています。この理念・原則を踏まえるならば、全体が示されるのは当然です。
 岸田政権は2022年の推薦決定以来、安倍晋三元首相を中心に「新たな『歴史戦』チーム」を発足。朝鮮人強制労働を否定するための作業部会をつくりました。岸田首相は2223両年の政府主催の全国戦没者追悼式(8月15日)でアジア諸国への加害責任や植民地責任につい一切触れていません。岸田政権は日本の負の歴史に向き合わない不誠実な態度を示してきした。今回の登録でも、日本政府は朝鮮人労働の強制性について認めていません。日本政府が真摯(しんし)な反省の立場から歴史の展示・説明に取り組むことが求められます
           (若林明)