2024年7月17日水曜日

非常識 トランプ狙撃論の流布(植草一秀氏)

 植草一秀氏の掲題の記事を紹介します。
 米国最大の影響力を有するのが軍事資本であり、極東が不安定であることは彼らの繁栄に必要不可欠で、逆に北朝鮮との和解は軍産複合体を破壊するものであるとして、2020年の大統領選では、あらゆる手段を用いてトランプ大統領を引きずり下ろしました。それがいま再びトランプが大統領になろうとしていることで、軍産複合体は最大の危機に見舞われていると見ています。
 それに対して日本のTVコメンテータが、トランプへの銃撃をトランプ陣営の「自作自演」も否定できないかのように語ったのは、あり得ない可能性に言及するもので「非常識極まる」と述べています。
 100m以上(140m)離れた場所から「耳だけ」をかすめる狙撃を実行できるスナイパーが存在すると言うのかとして、日本のメディアはグローバル巨大資本の主張を垂れ流すだけの「大本営」と化していると指摘しています。
 併せて植草氏のブログ記事「もめてる暇ないから即刻辞任」を紹介します。

 また櫻井ジャーナルが、事実上有力な米大統領候補であったJFKジュニアが1999年に不審な自家用飛行事故で死亡し、その後1,2年の間隔をおいて、反体制側の上院議員候補2名がいずれも飛行機事故で死亡したという記事を載せました。併せて紹介します。
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非常識トランプ狙撃論の流布
              植草一秀の「知られざる真実」 2024年7月14日
トランプ米元大統領が狙撃された。
トランプ大統領は右耳を負傷したが、幸い、命に別状はなかった。警戒されたことが現実化した。
私はトランプ氏が巨大資本にとって極めて「望ましくない人物」であると認識されていることを強調してきた。「ペルソナ・ノン・グラータ」である。

米国巨大資本のなかで最大の影響力を有するのが軍事資本。
トランプ氏は大統領時代に軍事緊張を低下させることに尽力した。
北朝鮮との和解を真剣に考えたと見られる。
しかし、北朝鮮との和解は米国軍産複合体にとっての「死」を意味する
極東が不安定であることは米国軍産複合体の繁栄に必要不可欠な事象。
平和の構築者は彼らにとっての天敵でしかない。
北朝鮮との和解は軍産複合体によって破壊された。
2020年大統領選では、あらゆる手段を用いて、力づくでトランプ大統領を引きずり下ろした。

大統領の座を射止めたのは軍産複合体直結のバイデンだった。しかし、そのバイデンが陥落寸前である。高齢による衰えが鮮明であり、2025年からの4年間の大統領職を全うできると考える米国民は皆無に近い状況に転じている。
共和党指名候補であるトランプ氏の大統領選勝利確率が急激に高まった。
しかし、トランプ氏は米国を支配する巨大資本=ディープ・ステイトに服従する人物でない。
このことが、トランプ氏の命の危険を生み出している。7月13日のトランプ氏狙撃はその証左である。
この重大事件について日本のメディアから不適切な情報発信が相次いだ。
テレビ朝日が放映した7月14日の情報番組「サンデーLIVE!」に出演した政治学者の中林美恵子氏が「この犯人がどういう動機だったのか、どちらの陣営の人間なのか、あるいは全く関係のない人なのか、それによっても、選挙に与える影響は全く違ってくるという風に考えられます」と発言した。
「犯人はどちらの陣営の人間なのか」発言の意味は何なのか
犯人がトランプ陣営の人間であったら「自作自演」になる。中林氏発言は「事件がトランプ陣営の自作自演の可能性あり」との見解を示唆するもの。
少なくとも、その可能性があるとの意味に受け取られる。
同日朝放送のTBS『サンデーモーニング』MCを務める膳場貴子氏は、銃撃された後にトランプ氏が立ち上がり拳を突き上げたことについて、「プラスのアピールになりかねない、という感じもしますね」、「共和党、トランプ陣営が結束していくきっかけになるかもしれない」
と述べた。

狙撃した犯人は100メートル以上離れたビル屋上から犯行に及んだとされる。
その銃弾がトランプ氏の右耳を直撃した。
100メートル以上離れた場所から重大事態を引き起こさずに、耳だけをかすめる狙撃を実行できるスナイパーが存在すると言うのか

2年前の7月8日に安倍首相が狙撃されたときに、メディアが「自作自演の可能性」を示唆し、「選挙に向けて自民党のアピールになるかも知れない」とコメントしたら大炎上しただろう。
銃弾が数センチずれていればトランプ氏は帰らぬ人となっていた。
この事態を目前にして「どちらの陣営の犯行か」や「これで共和党のアピールになる」との発言は非常識極まる。

背後にあるのは、グローバル巨大資本がトランプ氏を敵視していることである。
ウクライナの問題についてトランプ氏は6月28日のテレビ討論で
「自分が大統領だったらウクライナ戦乱は発生していない」「自分が大統領に選出されれば、就任前にウクライナ戦乱を収束させる」と述べた。
発言は正鵠を射るものだが、日本のメディアはトランプ氏を一方的に批判した。
AとBの二つの見解が存在し、主張が分かれるときに、メディアが取るべき姿勢は両者の主張を公正に過不足なく取り上げること。ところが、この対応がまったく取られていない。
日本のメディアはグローバル巨大資本の主張を垂れ流すだけの「大本営」と化している。

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もめてる暇ないから即刻辞任
               植草一秀の「知られざる真実」 2024年7月16日
世界政治が激動している。
米国のトランプ元大統領が狙撃されたが危機一髪のところで耳の負傷で済んだ。
1インチずれていれば歴史が変わった。顔の向きを少し変えた瞬間に銃弾が飛び抜けた。
奇跡的な幸運だった。
「どちらの陣営によるものか」の解説を示したコメンテーターがいたが不謹慎であり、考察力が欠落している。「自作自演」で耳を貫く可能性はない
想像力を働かせる必要がある。

銃撃されながら、立ち上がり、拳を突き上げた行動は人々に感動を与えた。大統領選に大きな影響を与える事件になった。
世界で政治体制の刷新が進行中。
英国では14年ぶりに労働党が政権を樹立フランスでは左派と右派が躍進してマクロン大統領勢力が大幅に後退した。米国でも政治刷新が実現する可能性が高まっている
このなかで日本の政治刷新が実現するのかどうか。
自民党に対する批判と失望は頂点に達している。
4月28日衆院補選で自民は3戦全敗(不戦敗を含む)。7月7日東京都議補選では2勝7敗(不戦敗を含む)。静岡県知事選も敗北。
その他、前橋市長選、小田原市長選、鹿沼市長選などで連戦連敗を続けている。

昨年秋に表面化した自民党の組織犯罪。85名もの議員が違法裏金犯罪に手を染めていた。
政治資金規正法の核心は政治資金収支の公開。政治資金収支を公開することにより政治活動を国民の不断の監視と批判の下に置く。
自民党は組織的に政治資金収支を隠ぺいし、裏金を創作していた。適正に税務処理をしていなければ所得税法違反にもなる。
国民は1円単位で消費税をむしり取られている。組織ぐるみの自民党裏金不正事件は歴史的巨大犯罪である。
事態を是正するために法改正が論議されたが、有名無実のザル法改定に終わった。

最大の焦点になったのは政策活動費廃止。
自民党は幹事長に年間10億円の政治資金を寄附し、闇金にしている。
資金使途がまったく公開されていない。政治資金規正法第21条の2の2項を削除して、政党から政治家個人への寄附を禁止する必要がある。
しかし、自公維が提出し、可決成立が強行された改定法は、10年後に政策活動費の黒塗り領収書を公開するというもの。何の意味もない法改定を強行し、これで問題に終止符を打ってしまった。

この姿勢に対して主権者国民が厳しい反応を示している。
しかしながら、これで政権交代に直結するとは言えない。
野党が自民党と同列に不人気なのだ。
東京都知事選では事実上の立憲民主党候補が擁立されたが惨敗した。立憲民主党の不人気が確認されたと言える。
代表の泉健太氏は22年参院選大惨敗の責任を取って辞任するべきだった。しかし、責任を取ることもせず、代表に居座り続けている。
都知事選惨敗を受けて、小沢一郎元代表が代表交代の必要性を唱えた。
これに対して泉健太氏は「政権交代へみんなで力を合わせて向かっている最中だ。もめている暇はない。」と述べた。
発言自体は正しい。しかし、そこから導かれる行動が違う。
もめている暇はないから泉氏が直ちに辞任するべきなのだ。もめずに即刻辞任することが正しい。

 (後 略)


25年前の7月16日にJFKジュニアが妻や義姉と乗った小型機が墜落、全員が死亡  
                          櫻井ジャーナル 2024.07.16
 今から25年前の7月16日、ジョン・F・ケネディ・ジュニア、つまり第35代大統領の息子が搭乗したパイパー・サラトガがマサチューセッツ州ビンヤード沖で墜落、同乗していた妻のキャロラインとその姉であるローレン・ベッセッテと共に死亡した。
 その航空機は目的地であるマサチューセッツ州マーサズ・ビンヤード島へあと12キロメートルのあたりを飛行中で、パイパー・サラトガは自動操縦で飛んでいた可能性が高い。しかも、ケネディ・ジュニアは優秀なパイロットで、しかも几帳面で慎重だとCFI(公認飛行教官)に評価されている。
 また、墜落した飛行機にはDVR300iというボイス・レコーダーが搭載されていて、音声に反応して動く仕掛けになっていた。直前の5分間を記録できるのだが、その装置には何も記録されていなかったという。緊急時に位置を通報するELTを搭載していた。ELTが作動していれば、短時間で墜落現場を特定できたはずだが、墜落から発見までに5日間を要している。
 墜落の直前、JFKジュニアは航空管制官に対し、着陸の指示を求めている。その管制官によると、落ち着いた声だった。パイパー・サラトガの機影がレーダーから消えたのはその2分後。航空機は毎分1400メートルという速度で海へダイブしている。近くの海にいた釣り人は島に向かって落ちる航空機に気付き、地元紙に伝えている。ELTが作動していなくても墜落現場はすぐにわかったはずだ。釣り人は爆発音が聞こえたとも証言しているのだが、この証言は封印された。
 アメリカのNTSB(国家運輸安全委員会)は「夜間に水上を降下中にパイロットが飛行機を制御できなかった」とし、「事故の要因は煙霧と暗い夜だった」としているのだが、その日は視界が良く、別のパイロットは10マイルから12マイル(16キロメートルから19キロメートル)先の空港が見えたと報告している。

 事故の翌年、2000年はアメリカ大統領を決める選挙があった。有力候補とされていたのは共和党のジョージ・W・ブッシュと民主党のアル・ゴアだったが、1999年の段階で最も人気があった人物はジョン・F・ケネディ・ジュニアだった。1999年前半に行われた世論調査ではブッシュとゴアが30%程度で拮抗していたのに対し、ケネディ・ジュニアは約35%だったのだ。
 JFKジュニア本人は2000年の大統領選挙に立候補しないとしていたようだが、彼は1960年11月25日生まれで、投票日の2000年11月7日には39歳。2期後の2008年でも47歳だ。それまで上院議員を務め、2008年の大統領選挙に立候補する可能性は十分にあった。父親を誰が暗殺したのかを明らかにし、犯人を処罰すると決意しているJFKジュニアは彼らにとって危険な存在だ。

 ところで、2000年の上院議員選挙では投票日の3週間前、ブッシュ・ジュニア陣営と対立関係にあったメル・カーナハンが飛行機事故で死んでいる。このカーナハンと議席を争っていたのがジョン・アシュクロフト。ジョージ・W・ブッシュ政権の司法長官だ。ちなみに、選挙では死亡していたカーナハンがアシュクロフトに勝っている。
 2002年には中間選挙が行われたが、この段階でイラク攻撃に反対する政治家は極めて少なかった。例外的なひとりがミネソタ州選出のポール・ウェルストン上院議員だが、同議員は投票日の直前、2002年10月に飛行機事故で死んでいる
 「雪まじりの雨」という悪天候が原因だったと報道されたが、同じ頃に近くを飛行していたパイロットは事故を引き起こすような悪天候ではなかったと証言、しかも議員が乗っていた飛行機には防氷装置がついていた。しかも、その飛行機のパイロットは氷の付着を避けるため、飛行高度を1万フィートから4000フィートへ下降すると報告している。その高度では8キロメートル先まで見えたという。