しんぶん赤旗に掲題の記事が載りました。
先の東京都知事選で2位に入った石丸伸二氏の安芸高田市長時代の振る舞いを取り上げたものです。石丸氏はご存知のように非常に弁の立つ人で、異論に耳を傾けずに市議会と対立し 激しい口調で議員に詰め寄り、その様子を納めた動画をSNSで拡散するなどして、話題になりました。
短い記事ですが、広島高裁で市議への名誉毀損が認定され、市長選のポスター製作費90万円ほどが未払いだとして最高裁で敗訴が確定したことなどを含めて、彼の問題行動が明らかにされています。
併せて国際政治アナリスト・渡瀬 裕哉氏の記事:
(前編)「石丸伸二氏こそ“政治屋”だ」…! 暴走支持者に“脅された”政治アナリス
トが指摘する「人気者のカネ」と「石丸構文の危うさ」、
(後編)「都知事選で2位」の石丸伸二氏が出馬した「本当の理由」…安芸高田市長時代
に残していた「4つのフェイク」
を紹介します。石丸氏に関する事実に基づいた緻密な評価が行われています。
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石丸氏の言動に批判 一方的に議員を罵倒 裁判で名誉毀損認定
しんぶん赤旗 2024年7月17日
広島県北部の安芸高田市長を務め、東京都知事選(7日投開票)で165万8000票余を獲得した石丸伸二氏(41)ですが、歯に衣(きぬ)着せぬ発言がネット上で話題となる一方、「何をしたいのか分からない。怖い」(同県内の男性)と危惧する声があります。
民主主義壊す
市長時代には議会との「対立」は「劇場型エンターテインメント」だと公言。異論に耳を傾けず、議員に激しい口調で詰め寄り、その様子を収めたショート動画をSNSで拡散する-パワハラそのものの言動は民主主義を壊し、市民を置き去りにするものでした。
石丸氏は同市生まれ。大学卒業後、三菱UFJ銀行に入行。2020年、前年の参院選を巡る大規模買収事件に関与した当時の市長の辞任に伴う市長選で初当選しました。
就任後、議会中に居眠りした議員の様子を勝手にSNSに投稿。22年6月議会では「居眠りをする。一般質問しない。説明責任を果たさない。恥を知れ!」と議員を一方的に罵倒したパワハラぶりがネット上で話題となりました。
行政運営では独断専行が目立ちました。23年4月、市内の「道の駅」に生活雑貸店が出店する計画を巡り、施設改修費の支出を議会の議決をへない専決処分で決めました。議会側は「議会軽視だ」と反発し、反対多数でこの予算を不承認にしました。ところが、石丸氏は同年6月議会に出店に伴う改修工事費を盛り込んだ補正予算を提案。議会側は再度反対多数で否決しました。
さらに、議会の最大会派が市長の問責決議案を発議し可決されました。石丸氏はこの直後、議場の廊下で発議した議員を順次呼び止め、詰め寄りました。都知事選出馬で市長の辞職が決まっていた今年5月には、三つの保育所と幼稚園を統合し認定ごども園とする予算の専決処分も強行しました。
SNSで拡散
こうした強権的な姿勢は裁判で断罪されています。石丸氏の虚偽発言で名誉を傷つけられた市議が、同氏と市に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で広島高裁は7月3日、石丸氏の名誉毀損(きそん)を認定。市長選のポスター製作費が未払いだとして、製作会社が石丸氏に支払いを求めた訴訟でも8日、最高裁で石丸氏の敗訴が確定しました。
同氏のメディアとの対立も「劇場型」です。22年には地元紙が石丸氏を批判する市民団体の声を報じたのは「偏向報道だ」と断じ、記者の質問への回答を拒否しました。
都知事週後のメディアとのやりとりでは、コメンテーターやアナウンサーの質問をはぐらかし、激昂(げきこう)して逆質問する様子もSNSで拡散されています。
「石丸伸二氏こそ“政治屋”だ」…!暴走支持者に“脅された”政治アナリストが指摘する「人気者のカネ」と「石丸構文の危うさ」
渡瀬 裕哉 現代ビジネス 2024.07.10
国際政治アナリスト 早稲田大学招聘研究員
石丸伸二氏は、今回の東京都知事選挙で得票数2位という大きな爪痕を残した。
しかし石丸氏の言動には謎がつきまとう。
なぜ彼は広島県安芸高田市の市長職を任期途中で放り出してまで都知事選に出馬したのか。そして、なぜその都知事選で敗戦するや、国政選挙への出馬を匂わせ始めたのか。
果たして彼は、多くの都民が期待した通りの「誠実な政治家」なのか。
国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏が、都知事選での言動と安芸高田市長時代の実績をもとに検証する。
石丸氏は“政治屋”そのもの
現職の小池百合子氏の再選で、東京都知事選挙は終わりを告げた。SNSやショート動画を駆使して戦った元安芸高田市長の石丸伸二氏は、2位。
「政治屋の一掃」 6月19日に実施された都知事選立候補者の共同記者会見の場で、石丸氏が掲げたボードに書かれていた言葉だ。
石丸氏は都知事選での敗戦後、日本テレビ系ユーチューブ生配信番組で、この「政治屋」に関して「政治のための政治をする、党利党略に勤しむ、自分第一、これを言っているもの、やっているもの」と改めて定義した。
その石丸氏はというと、安芸高田市政を中途半端に放り出し、さらに敗戦直後の記者会見では選択肢のひとつとして、国政選挙への出馬(広島1区)の可能性すら匂わせている。なぜ、彼は自身が立候補または立候補を検討する場所をコロコロ変えるのだろうか。
それは、石丸氏こそ彼が定義する「政治屋そのもの」だからだ。
このたびの都知事選においても、政治屋ぶりは遺憾なく発揮された。そのハイライトは選挙公示3日前の公約発表記者会見だった。
政治屋に成り下がった瞬間
まずこの会見で、安芸高田市長時代の財政再建の成功は自分の手柄と言い切ったことはご愛嬌だ(実際は一時的に市の財政が改善したように“見えた”だけで、ほぼ外部要因だった。後編記事で詳述する)。
しかし、石丸氏の記者会見で露呈した本当の問題は、そこではなかった。フリーの記者から活動資金について大口の寄付や貸付が存在するのかを問われた際、石丸氏は個人献金上限150万円を行った支援者がいることのみ回答したのだ。
しかしその後、6月27日発売の週刊新潮の取材に答える形で、ドトール創業者である鳥羽博道氏が、
〈僕はいくらでも献金していいと思ったのですが、友人から弁護士に相談しろと言われた。それで弁護士に聞いたら(個人献金は)150万円を超えては駄目だということでしたので、150万円だけ寄付しました。また以前、僕が副会長をやっていたニュービジネス協議会の人々が4000万円、私も1000万円、合計5000万円を法律に沿って貸付けてもいます〉(原文ママ)と巨額の貸付の事実を話してしまった。
貸付自体は直ちに違法となるものではなく、この手の貸付は永田町界隈では常識的に行われてきた。しかし、それは現行の政治資金規正法に「穴」があるというだけの話だ。
政治献金上限に引っかかるから貸付にする、という行為は現行法では合法かもしれないが、政治家は法を正す立場として倫理的な側面を問われるべきだ。「政治のための政治をする、党利党略に勤しむ、自分第一」の政治屋でないのなら、その法改正を訴えることが筋である。
この時点で、彼は明確に「政治屋」となり、「政治家」としては終わった存在になった(そして「ドトール石丸」というネットスラングが定着した)。
この貸付問題に関する苦しい言い訳として、選挙公示日3日前まで貸付については話すら無かったので回答できなかった、という主張もあり得る。しかし、そんな与太話を鵜呑みにする大人はいないだろう。それを信じるのは社会経験が足りない子どもか、切り抜き動画にスッカリ染め上げられた熱烈な支持者だけだ。
石丸氏の特徴は「嘘を述べる」というよりも「重要なことを誠実に回答しない」という点にある。
「石丸構文」は有権者を馬鹿にしている
前述の日本テレビ系ユーチューブ番組内で石丸氏は、コメンテーターの古市憲寿氏からの質問にストレートに答えなかった。相手に対する嘲笑を織り交ぜながらダラダラと回答を引き延ばし、時間切れとなったのだ。
このような質疑のやり方は安芸高田市長時代からの特徴であり、いまやSNS上では「石丸構文」と呼ばれて嘲笑の対象となっている。
自己に都合が悪い質問に対しては答弁を徹底的にはぐらかす。つまり、政治や行政を詳しく知らない国民を心底馬鹿にしている人物と言えるのではないか。
そして、残念なことに彼の積極的な支持者も切り抜き動画の受け売りで、SNS上で異なる意見の人々に罵声を浴びせ、独善的な正義を振りかざす排他的な存在に堕してしまった。
かくいう筆者のXにも、脅迫まがいのコメントが寄せられたため、現在弁護士を通じて相手先の情報開示作業を行っており、場合によっては警察に通報することも検討している状況だ。
この他にも言いたいこと(度重なる稚拙な嘘による裁判敗訴、頓珍漢な議会答弁など)は山ほどあるが、今回は筆者が気になった露骨なポイントに絞って取り上げたい。
その一つが、実績を残したと石丸氏が胸を張る安芸高田市長時代だ。
彼が安芸高田市を捨て、わざわざ都知事選挙に転出した背景には何があるのか。
つづく後編記事『「都知事選で2位」の石丸伸二氏が出馬した「本当の理由」…安芸高田市長時代に残していた「4つのフェイク」』ではその実態についてさらに解説する。
「都知事選で2位」の石丸伸二氏が出馬した「本当の理由」…安芸高田市長時代に残していた「4つのフェイク」
渡瀬 裕哉 現代ビジネス 2024.07.10
国際政治アナリスト 早稲田大学招聘研究員
東京都知事選で得票数2位という大きな爪痕を残した石丸伸二氏。ついこの間まで広島県安芸高田市長を務めていた若き候補者の躍進を、讃える声は少なくない。
では、そもそも彼は中国地方の自治体の長として何を成し遂げたのか。なぜ市長職を投げ出してまで都知事選に出馬しなければならなかったのか。
安芸高田市民は石丸イズムを否定
石丸伸二氏が東京都知事選挙で落選した陰で、広島県の安芸高田市では小さな政治劇場の幕が下りた。
石丸伸二前市長の退任に伴う市長選挙で、石丸市政の「継続と改善」を訴えた熊高昌三氏が、「石丸市政の在り方」の見直しを主張した藤本悦志氏に敗れたのだ。
小さな市を舞台にした切り抜き動画による炎上政治は、住民の手によって否定された。市長選の開票が終わった7月7日夜現在、安芸高田市民に対する石丸支持者の罵声がSNSには溢れている。
しかし今後、安芸高田市民は動画で踊らされた同市とはほぼ無関係の人々による侮辱の日々から解放されることになるだろう。
そもそも石丸氏が安芸高田市を捨て、都知事選に転出した背景には何があるのか。
もちろん同市長選挙に再立候補して負ける可能性も十分にあった。
しかし、それ以上に、仮に再選できたとしても彼の実績が虚構であったことがバレてしまうことが問題だったのではないか(石丸氏は都知事選への立候補に際して別の理由を述べていたが、政治屋が新たな選挙に立候補する際に適当を述べるのはいつも通りのことに過ぎない)。
実は財政改革に成功していない
石丸氏の安芸高田市政の主な実績は、財政改革やふるさと納税額の増加とされている。
しかし、実際の石丸市政は財政改革にほぼ成功していない。また、ふるさと納税の伸び率も全国と比べて著しく高かったわけではなく、彼のYouTuber芸による一過性のものに過ぎない。
そのため、その実態が明らかになってしまえば、彼の求心力が失われることは自明だった。それがこのタイミングでの出馬を模索した背景の一つであることは疑う余地がない。
石丸氏は「市長就任以前の5年間は市の財政は実質単年度収支が赤字であった。それを黒字に立て直した」と主張してきた。実質単年度収支とは、前年度の決算からの変動額を表すものだ。この数字が赤字だと財政が前年度よりも悪化したと言える。
たしかに、公表済みの市の決算書によると、石丸市長就任前の予算が執行された5年間、2016年度から20年度決算まで実質単年度赤字であり、石丸市政開始後の21年度には実質単年度収支は黒字に転じている。
しかし、黒字化した2021年度はコロナ禍による特殊要因があり、国からの地方自治体への巨額の財政支援措置があった。ただし、これは一時的な措置なので、22年度決算では当然のように安芸高田市は再び赤字に転落している。
そして、広島県内で安芸高田市と同規模人口の庄原市や大竹市もほぼ同様の数字の変化を辿っていることからも、実質単年度収支の黒字化は石丸市政の成果ではなく、単なる外部要因による一過性の出来事だったに過ぎない。
実績はすべて外部要因だった
さらに、石丸氏が自らの成果として主張した公共施設等総合管理計画及び個別施設計画(ハコモノの整理計画)は、総務省がもともと2014年度から16年度の間に主導し、20年度末に99.9%の地方自治体が同計画を策定したものだ。
しかし、それらの計画の進捗は首尾良く進まなかったため、総務省が21年度にアドバイザー等を活用するための特別交付税措置(財政支援)を改めて実施し、各地方自治体に見直し計画を改めて作らせることになっていた。
偶然、石丸氏はその年度、金銭スキャンダルで辞任した前任市長に代わって就任したに過ぎない。したがって、国主導の計画づくりであり、市長を誰がやっても同じ計画が当然に出来上がったと言えるだろう。
そして、以前の計画が遅延したように、この計画の本当に困難な点は、計画を作ることではなく、計画をやり切ることだ。
そのためには、市民・市議会との調整が重要となる。議会で対立を生む石丸氏のやり方ではほぼ不可能なことは明らかだった。だから、昨年末に計画を作っただけで、その実行段階では急いで市政から“退場”する必要があったのだ。
そして、財政改革のフェイクの真骨頂は「経常収支比率」である。経常収支比率は予算全体のうち何%があらかじめ使途が決まっているか、という財政の自由度を測る指標だ。この指標は安芸高田のような過疎自治体では95%を超えていることが多い。数値が低いほど自由度は高いと言える。
バラマキという“爆弾”を残して去った
実際、安芸高田市の経常収支比率は2016年度に94.4%となり、19年度に98.2%の財政悪化のピークを迎えた。
ところが、2020年度は92.5%、21年度は88.6%、22年度は94.4%となったことで、21年度の石丸市長就任年前後に改善したように見える。
しかし、2020年度からの数字の低下にはやはり特殊要因が重なっている。20~22年度は、過去の市職員の退職金積立が過剰であったために退職金引当金に対する拠出が低下したこと及び、21年度はコロナ関連の国からの支援等があったことが大きかった。
そのため、それらの要因が剥落した今年秋口に公表される2023年度決算では96%前後に再び上昇してしまう見込みとなっている(23年度決算の悪化は石丸氏が財政説明会で、自ら述べていた数字だ)
さらに、石丸市政最後の予算編成である2024年度予算では、給食費無償化が実行されることに伴い、市の貯金にあたる財政調整基金が億円単位で取り崩されている。
筆者が見る限り、給食費無償化費用は過重であり、持続可能性が極めて疑わしいバラマキ政策となっている。
安芸高田市の新市長に選ばれた藤本氏は、石丸氏が残した財政改革の失敗と向き合い、新たなバラマキとの折り合いをどのようにつけるのか。頭を悩ませることになるだろう。
もし石丸氏が都知事選挙に転出せずに安芸高田市長を継続していた場合、彼は自らの財政改革の失敗に向き合わざるを得なくなっていたはずだ。切り抜き動画でいくら煽ったところで、数字は嘘をつけない。民間企業でも同様だ。広報・PRが上手な企業でも財務状況の悪化を長期間に渡って誤魔化し続けることは難しい。
したがって、石丸氏にとってはこのタイミングで安芸高田市政に関する責任を放棄することは必須だったと言えよう。
そのための渡りに船が都知事選であり、彼が取った行動は、自らが定義してみせた「政治のために政治をする、自分第一」の”政治屋”であった。そして、冒頭に取り上げた通り、安芸高田市民はそのような石丸市政の継続を粛々と拒否したのだ。
従来政治への不満の表れ
しかし、今回の都知事選の大きな問題は、このような不誠実な人物であったとしても、都知事選で第2位の得票ができてしまうほどに「現在の政治に対する不満」が溜まっていることだろう。
実際、彼の公約は財源の裏付けもなく、大学生が数時間で作れる程度の項目とキャッチフレーズのみで詳細を論じるに値しないものであり、政策の具体的な理解が都民に拡まることすらなかった。
そのため、石丸氏の得票は同氏に対する支持の結晶というよりも、しょうもない話題で右往左往する従来の政治屋に対する不満が爆発したと捉えるべきだ。既存の政治関係者も大いに反省するべきだろう。
石丸氏の切り抜き動画を通じたフィクションの政治は、民主主義の学校であり、生活に直結する地方自治の現場を破壊した。もちろん、市議会議員にはマトモな人からふざけた人まで、さまざま存在する。それは事実だ。
しかし、そのような現実を踏まえた上で、政治を変えるには地道な努力が必要なのだ。SNSを使って議会で政敵を吊るし上げるエンタメでは何も変わらない。
政治や行政の関係者には、石丸氏が安芸高田市で見せたような茶番政治が拡がらないように、住民から一層の信頼が得られる積極的な情報発信、及び情報公開などを推し進めてほしい。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。