2024年7月25日木曜日

25- 飲酒・喫煙で五輪選手の未来をつぶす日本社会の異常さ(古谷経衡氏)

 パリ五輪体操女子日本代表の宮田笙子選手(大学生)が飲酒・喫煙をしていたことが明らかになったため五輪出場を辞退しました。事実上の懲罰処分です。
 この件を巡ってSNS上では、厳し過ぎるという意見と当然の措置だとする意見の賛否両論が「しのぎを削る」事態となりました。

 普通であれば「当然の措置」論が正しいとされるのですが、未成年者が飲酒または喫煙の罪で少年院に入れられたという話は聞かないので、厳しい罰(この場合は運動選手の五輪出場辞退)を与えるのは適正ではないという説も成り立ちそうです。
 それに良し悪しは別にして、日本には昔から大学生になれば未成年であっても(特にコンパなどの時には)飲酒も喫煙も許されるという「文化?」も存在しています。

猫の神・バステトを信奉する猫教徒」を自称する作家の古谷経衡氏が傾聴すべき主張をしていますので紹介します。
 併せて日刊ゲンダイの記事「  フルボッコにするなら『巨悪』の自民裏金議員では」を紹介します。
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  猫と保守と憂国古谷経衡
飲酒・喫煙で五輪選手の未来をつぶす日本社会の異常さ
                     古谷経衡 日刊ゲンダイ 2024/07/24
                        (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 パリ五輪体操女子日本代表の宮田笙子選手が、トレーニングセンターで飲酒していたことが内部通報によって確認され、加えて喫煙も認めたことから同五輪出場を辞退した。辞退といえば聞こえがいいが、事実上の懲罰処分である。
 端的に異様だ。こんなことをしていれば若者からはやる気が失われるばかりか、日本全体の国力をそぐ結果にもなりかねない。しかも今回の処分は恣意的であり、他競技の選手では同様の行為があっても軽微な処分内容だ。

 19歳の飲酒喫煙は法律で禁止されているのだから、「ダメなものはダメ」という論調で処分を肯定するものも少なくはない。確かに法律的には、20歳未満の飲酒喫煙行為は禁止されているが、実は行為者に罰則はない
 未成年者と知りながら酒やたばこを勧めた成人側が法で罰せられるのが法律的な立て付けである(二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律大正11年法律第20号)。よく、芸能人が未成年者と酒席に同席した際、立件されるのが成人側だけになるのは、このような理屈である。よって未成年者の飲酒喫煙は、成人側が制止すべき性質の問題であって、原則その場で選手の行為を掣肘するのが法が意図する趣旨である。それが内部通報によって発覚するという経緯にも強い違和感を感じる。
 日本社会は現在、強い「品行方正」の倫理が求められている。それをコンプライアンス重視と呼ぶこともできるが、強すぎるその倫理は社会から活力を失わせ、ひたすら内向的な萎縮の潮流を加速させるだけで有害である。

 日本人は宗教的な道徳心が近世以前から薄い。葬式仏教という言葉が示す通りである。自らが「無宗教」と信ずる者は人口の5~6割という調査が複数出ている。この無宗教の多さは、日本の他には共産圏、旧共産圏に特有のものだ。
 宗教的な道徳が薄い代わりに、日本にはかつて「世間さま」という道徳規範があった。しかし「お天道様が見ている」という道徳は、「地方の疲弊共同体の崩壊と都市部への人口移動」によって希薄化した。つまり日本は、宗教道徳も世俗道徳もほぼ存在しない社会ということになる。
 そうすると人々の価値観は、「人間による他罰」へと向かう。つまり神や世間がない社会では、世俗を生きる者同士が他者を裁き、罰することが道徳となる。世俗の法律に反するかどうかが絶対の善悪判断になる。死後に裁きを受けるという観念がないと、生きているうちに、人が人を裁くという究極の「世俗社会」になる

 日本で現在、法を引用した「品行方正」「コンプライアンス順守」がさように強烈となり、それがもはや社会的道徳にまでなっているのはこのためである。神の代わりに自分こそが他者を裁き、罰を与えるという風潮は、極めて傲慢であり更生という概念も薄くなる
「再チャレンジ」という言葉のみが躍るが実際は不寛容であり、いつまでも日本人の多くが他者の失敗や不徳を裁判官のように指弾するのは、神と世間が不在であり、法律だけが残っているからだ。日本社会の生きづらさの原因は、ほぼすべてこれである。ちなみに筆者は猫の神・バステトを信奉する猫教徒である。

古谷経衡 作家 1982年生まれ。立命館大学文学部史学科卒。令和政治社会問題研究所所長。「左翼も右翼もウソばかり」「日本を蝕む『極論』の正体」「毒親と絶縁する」「敗軍の名将」「シニア右翼」など著書多数。


女子体操・宮田笙子が喫煙疑惑→五輪出場辞退も…フルボッコにするなら「巨悪」の自民裏金議員では
                          日刊ゲンダイ 2024/07/20
「たかがタバコ、されどタバコ」ー。パリ五輪の体操女子日本代表、宮田笙子(19)に喫煙疑惑が浮上し、賛否を巡って大騒動になっている。宮田は4月の全日本選手権で初優勝。5月のNHK杯で3連覇を成し遂げ、主将に選ばれた。パリ五輪の有力メダル候補だったが、宮田はすでにチームを離脱。事前合宿地のモナコからも帰国したといい、五輪出場を辞退した。

 この騒動に対し、元東京都知事で参議院議員の猪瀬直樹氏(77)はX(旧ツイッター)にこう投稿。
つくづく日本人は劣化している。たかがタバコで何を騒いでいるのか。麻薬じゃないんだぞ!!規則尽くめの杓子定規が日本をダメにしてきたのだ。こんな些細なことで19歳の夢を潰すつもりか!

 猪瀬氏の意見は19日朝からネット上で拡散され、《だからと言って法律違反を許してはならない》《ルールに基づくスポーツ大会だからこそ厳格に》《いやいや、タバコで出場なしとかありえない》《反省文ていどで許してあげて》などと大論争になった

高校卒業前に「くわえたばこ」でパチンコを打っていた野球選手は米大リーグで大活躍
 国立がん研究センターが2022年5月に公表した「成人年齢とたばこについての世論調査」によると、18~19歳の成人であっても、喫煙が禁止されていることを「知っていた」と回答した割合は20歳以上で68.6%、18~19歳では同90%だったという。
 宮田が未成年喫煙の禁止について知っていたのか、知らなかったのは分からないが、社会全体が大騒ぎすることなのか。かつて、高校卒業直前に「くわえたばこ」でパチンコを打つ姿を写真週刊誌に撮られた野球選手がいたが、その後、米大リーグで大活躍している。

 そもそも厳格な法律適用を叫び「フルボッコ」するのであれば、もっと「巨悪」がいるだろう。派閥の政治資金パーティーで集めた多額のカネをキックバックされながら納税せず、長年にわたって常習的に組織的に裏金にしてきた自民党国会議員の面々だ。未成年喫煙は自身の健康に影響が及ぶだけだが、裏金は違う。犯罪行為だ
 叩くのであれば、幼い時から苦しく厳しい練習を積み重ね、ようやく五輪代表をつかんだ少女ではなく、巨額の裏金をため込みながら、この期に及んでもトボケ続け、今も国民の税金を懐に入れている自民党国会議員だろう。