2015年4月3日金曜日

アジアインフラ投資銀行問題 日本はこのままでいいのか

 中国主導アジアインフラ投資銀行(AIIB)の参加申請国は3月末で51カ国に達しまし。アメリカの威信は完全に地に堕ちました。英国はじめ欧州各国が雪崩を打ったのは勿論実利からですが、唯我独尊で自国の国益のみを目指すアメリカにはもう「付き合い切れない」という意思れでもありました。
 日本は井の中にいて何の感覚も持っていないようですが、「欧州が米国を捨て、中国についた」ことは、海外では「歴史的大事件受け止められているということです。
 
 英国がまず米国の制止を振り切りアジアインフラ投資銀行への参加を表明して、全世界に衝撃を与えたのは312でしたが、その丁度1カ月前には、やはりアメリカの意に反する形で、ドイツ、フランスそれにロシアの仲介でウクライナの停戦合意を成立させました。
 アメリカの要求で、対ロシア経済封鎖を続ける中でEU自身が経済的困窮に陥っているのに、更に対ロシア戦争で欧州が戦場になっても一向に構わないとするアメリカの身勝手さに、もはやついて行くべきでないとEUが考えたものと思われます。
 すべてはアメリカの傲慢さ・身勝手さがもたらしたものでした。
 
 31日のダイヤモンドオンラインが「パワーシフト~欧州が米国を捨て、中国についた日」とする記事を出し、「歴史に見る世界のパワーバランスの変遷」を概説しています。それはアメリカの凋落の過程を概観したものにほかなりません
 
 日本も、何が何でもアメリカに従属していればいいというような実に意気地のない間違った考え方にいつまでも耽るのではなくて、
 「日本は、米国の衰退中国の浮上という現実をしっかり認識し、行くべき道を慎重に見極める必要がある
と記事は結んでいます。
  (アメリカの関係者が3月末に中国を訪れていることから、アメリカもいずれアジアインフラ投資銀行加盟するのではないかという観測もあります。)
 
 原記事は5100字を超える長文のものであるため、事務局で要約版を作りました。
 詳細は下記のURLをクリックして原文をご覧ください。
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パワーシフト~欧州が米国を捨て、中国についた日
AIIB参加に動いた欧州諸国の思惑 (要約版)
北野幸伯 ダイヤモンドオンライン 2015年3月31日
※ 国際関係アナリスト  
 3月12日、全世界に衝撃が走った。英国はこの日、米国の制止を振り切り、中国が主導する「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)への参加を表明したのだ。米国は、「もっとも緊密な同盟国」の「裏切り」に動揺した。しかし、それは「始まり」に過ぎなかった。
 
■欧州が米国を捨てて中国についた! 歴史に見る世界のパワーバランスの変遷
 その後、英国に続いてドイツ、フランス、イタリア、スイス、ルクセンブルグが、続々とAIIBへの参加を決めたのだ。これは、「欧州が米国を捨て、中国についた」ことを意味し、世界的には「歴史的大事件」といわれている
 冷戦後の現代史を振り返りながら、世界のパワーバランスがどう変化してきたか見てみよう。
 
 1991年12月25日、ソ連が崩壊し、米国による「一極時代」到来したが、ソ連崩壊で、西欧と東欧が一つになる道が開けたのだ。
 「怖い東の白熊(ソ連)の死」に、欧州の指導者たちは、「もう一度、欧州に覇権を取り戻そう!大きな野望を抱いた。
 著名なフランスの経済学者ジャック・アタリは、その方法について「通貨統合・政治の統一・東欧やトルコへのEC(=現在のEU)拡大。これらが実現できれば、欧州は二一世紀米国をしのぐ大国になれるだろう」西欧と東欧が一体化し「一つの国」になれば、「米国から覇権を奪える」と述べた
 
■イラク戦争を巡って米欧が対立 その後、米国の標的はプーチン・ロシアに
 そして実際、欧州は1999年1月1日、「ドル基軸通貨体制」を崩壊させる可能性のある通貨「ユーロ」誕生させた
 2000年9月24日、イラクのフセイン大統領(当時)は、「石油代金として今後一切ドルは受け取らない」「今後は、ユーロで取引する」と宣言し、同年11月には実際に決済通貨をかえてしまった。
 米国は激怒し、「フセインはアルカイダを支援している」「大量破壊兵器を保有している」などと虚偽の理由をつけて、安保理を無視してイラク戦争を始め、フセイン政権を打倒し石油取引をドルに戻した
 
 こうして「欧州の乱」をなんとか力で平定した米国は、次にプーチン・ロシアを標的に選び、米ロは03年、「イラク問題」「ユコス問題」「グルジア・バラ革命」、04年「ウクライナ・オレンジ革命」、05年「キルギス・チューリップ革命」などを引き起こしたが、原油高がつづき好調のプーチンは07年6月、「ドル体制をぶち壊して、ルーブルを世界通貨にする!」と宣言した。
 米ロ対立は、08年8月「ロシア―グルジア戦争(代理戦争)に発展した当時のサアカシビリ・グルジア大統領は、親米反ロ政治家で、現在クライナの大統領顧問を務める)
 
■沈む米国、浮上する中国 リーマンショックが一大転換期に
 しかし翌月、「リーマンショック」が起きたため、米国とロシアは和解し「再起動時代」が到来した。そして09年から「G2時代」、つまり「米中時代」に入り、米一極時代が終わった
 中国は、世界的に景気が最悪だった09年、9%を超える成長を果たし、「ひとり勝ち」状態になった。同国のGDPは2010年、日本を越え世界2位に浮上。現在は、すでに10兆ドルを超えたとされている。そして、軍事費も米国に次いで2位。世界は、事実として、経済力(=GDP)、軍事費世界1の米国と2位の中国を軸に回り、「衰退する米国」「浮上する中国」というトレンドがはっきり見えだした
 
■英国の“裏切り”でシリア戦争を断念 失墜した米国の威信
 米国のバイデン副大統領は2013年8月27日シリアのアサド大統領が、反アサド派に対し「化学兵器を使用したから」として、「シリアを攻撃する」と宣言したが、その根拠、イラク戦争時と同様「ウソ」国連の調査によるとサリンガスを使っているのは反アサド)だった。バイデンが「シリア攻撃宣言」をしたわずか2日後の8月29日、英国は「シリア攻撃断念」の決定を下したそれにより「誰も一緒に戦ってくれない」ことを悟ったオバマは同年9月10日、シリア攻撃を止める決定を下した。
 
■ウクライナ問題でも、米欧に亀裂 欧州の本音は「米国にはつき合いきれない」
 シリア問題でバラバラになった米国と欧州は2014年3月、ロシアの「クリミア併合」によって、再度一体化する。米国は、欧州と日本を巻き込み、「対ロシア経済制裁」を強化しつづけている。一方で中国はロシア側についたので、世界の対立構造は「欧米日  中ロ」になった。
 ところが、強固にみえる米国と欧州の結束に、ほころびが見えている。政府軍と「親ロシア派」の内戦状態にあるウクライナで、昨年9月の停戦が予想通り破られた後、今年2月11日に、ロシア、ドイツ、フランスの仲介で二度目の停戦合意が実現した。
 ドイツ、フランスが停戦に走ったのは、米国が「ウクライナに殺傷能力のある武器を提供する」方針を示したためで、そうなればロシアも対抗上武器を供給し、最終的にロシアと欧米NATO軍の戦争に発展しかねず、戦場になるのは米国ではなく欧州である。「停戦合意」直前の2月9日にドイツのメルケル首相はワシントンでオバマと会談したが、「好戦的な米国」「停戦を求めるドイツ」という考えの違いが明らかになった。それでそれまでオバマに従ってきたドイツとフランスは慌てて和平に動いた
 
■英国は米国の要請を一蹴 「AIIB」に走った欧州の思惑は?
 ここまで、米国衰退の長期的流れと、それを加速させるオバマ政権の失策について見てきた。その結果が今回の「AIIB事件」アジアインフラ投資銀行である。
 AIIBは、習近平が「アジアのインフラを整備すること」を目的に2013年10月に設立を提唱したもので、インド、ベトナム、フィリピンなど、中国と領土問題を抱える国々も参加していることに注目する必要がある。
 「親米」であるはずの欧州諸国英国、ドイツ、フランス、イタリア、スイス、ルクセンブルグなどがいずれも「米国の制止を無視して」参加を表明している。
 いち早く参加を表明した英国のオズボーン財務相は議会で新たな国際機関の創設の場に存在すべきだと考えたからだ」演説したが、演説の直前には、ルー米財務長官が電話で参加を控えるようオズボーン財務相に求めていたが、それを一蹴して参加に踏み切った中国の影響力拡大を阻止したい米国よりも、アジアへのインフラ投資による「儲け」を欧州各国は重視した。米国のパワーが衰えを象徴するできごとである。
 
 「米国の衰退は長期的トレンド」で、オバマ政権の失策が没落を加速させているのであり、世界における「パワーシフト」は確実に起こっている
 日本は、「米国の衰退」と「中国の浮上」という現実をしっかり認識し、行くべき道を慎重に見極める必要がある