2015年4月19日日曜日

残業代ゼロ法案 年収制限ほかをなくす

 残業をしても残業代を支払わなくてもよいとする「残業代ゼロ法案」は、当初の案では年収1075万円以上で、対象となる職種も具体的に決められていました。ところが閣議決定されたものはそうした制限がなく、全て「厚労省の省令で定める」となっていたことがわかりました。
 この種の改悪は当初は適用が限定されていてもいずれは拡大されるものですが、当初からそうであるとはあきれます。
 明確に限定しなくても成立させられると見込めたからでしょう。しかし労働基準法の根幹に当たるところがこのように簡単に蹂躙されるのは本来許されないことです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
残業代ゼロ法案 40代以上管理職の「賃カツ法」になる場合も
NEWSポストセブン 2015年4月17日
週刊ポスト 2015年4月24日号
 アベノミクス成長戦略の柱の一つである「柔軟な働き方の実現」のための労働基準法改正案が4月3日に閣議決定された。週40時間を基本とし、超過分には労働時間に応じて賃金が支払われる「労働時間規制」に例外を設けるとする内容だ。いわゆる「残業代ゼロ法案」である。
 
 これまで大メディアは「金融アナリストやディーラーなど一部職種の年収1075万円以上のサラリーマンが対象」と報じてきたが、法案にそうした文言はない。
 法案は例外が適用される「高度プロフェッショナル制度」の対象となる業務についてこう記す。
 〈高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして、厚生労働省令で定める業務〉
 なかなか頭に入ってこない典型的なお役所言葉だが、最後に〈省令で定める〉とあるのがミソだ。法改正が国会での審議と議決が必要なのに対し、「省令」は各省の大臣が制定できる
 
 法律には大まかなことだけを書き、大事なことは省令で決めるのが政府・霞が関の常套手段だ。業界との談合も癒着もやり放題の仕組みである。『2016年 残業代がゼロになる』(光文社刊)の著者で、ジャーナリストの溝上憲文氏が解説する。
 
 「法案決定に先立って厚労省の労働政策審議会が報告書をまとめています。そこにはたしかに年収1075万円以上を目安とすると書かれ、対象となる職種も『金融商品の開発業務』『ディーリング業務』などと具体的に例示されています。
 報告書の内容が先に広く報じられたため一部限定のイメージが定着しましたが、政府は曖昧な文言の法案で国会審議を乗り切り、省令で対象業務を広げていく目論見なのでしょう」
 
 さらに溝上氏が続ける。
 「大企業ではマネジメントに携わるライン管理職にはなれないが、キャリアを積んで専門性を持つ社員に専門課長といったポストを与えているところが少なくありません。45歳以上で年収1000万円以上の人もいて、残業代を合わせるとライン管理職より高くなることもある。
 経営者としてはこの人たちの残業代をなんとかカットしたいのです。『高度な専門知識がある』という説明もしやすい。1075万円以上の専門課長が対象となる場合、残業代がまるまるカットされて月10万円以上の賃下げになるケースも考えられます」