中国が主導するアジアインフラ投資銀行への参加が3月末で閉め切られ、世界の主要国の中ではアメリカとそれに従属する日本だけが取り残されました。
日本に何か対抗する構想があったなどということではなく、ひたすらアメリカの顔色だけを伺った結果です。
不参加の判断をしたのは財務省ですが、天木直人氏によれば財務省のある幹部は、「米国とこじれると何をされるかわからない。それは避けたい」と理由を明かしたということです。まさに奴隷根性そのもので、それによってついに世界の孤児になったわけです。
対米従属は勿論今に始まったことではなく、戦後一貫して続けられている恥ずべき姿勢です。したがって安倍氏が「戦後レジームからの脱却」を言うのであれば、真っ先にこの対米従属からの脱却が求められる筈ですが、以下に述べるように安倍氏にはまったくその考えはなく逆に対米従属路線一辺倒、まっしぐらです。
30日の朝日新聞が、安倍首相がいま進めている安全保障法制は、2012年に出された提言書「アーミテージ・ナイ・リポート」に沿ったものであることを暴露するスクープ記事を出しました。
「同リポート」は、ジャパンハンドラーのアーミテージ元国務副長官と元国防次官補のナイ・ハーバード大教授らが書いたもので、いわゆる「安保で喰う人たち」にとっては、この数年毎に出されるリポートこそはバイブルなのです。
朝日新聞の記事は、安倍首相も全く彼らと同様に「同リポート」をバイブル視していたことを明らかにしました。
同記事を読むと、首相が白けるばかりに忠実にリポートに沿って安保法制の改悪を進めていることが分かります。
天木氏のブログと朝日新聞の記事を紹介します。
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アジアインフラ投資銀行問題が教えてくれた財務省の対米従属ぶり
天木直人 2015年04月01日
アジアインフラ投資銀行の参加が3月末で閉め切れら、ドタバタ劇の第一幕は終わった。
対米従属の日本だけが取り残される事になった。
その責任はどこにあるのか。
今回ばかりはズバリ財務省である。
日本の官庁はどの国より縦割りの縄張り意識が強く「省益あって国益なし」とよく揶揄される。
まさしく国際金融の世界は財務省(旧大蔵省)の独断場だ。
それを私は外務省にいて目撃して来た。
例の沖縄密約の時も、湾岸戦争の130億ドルの資金援助の時も、外務省は次官であれ、駐米大使であれ、何の関与もさせてもらえなかった。
とくに世銀・IMF体制とその配下にあるアジア開発銀行に関しては、人事も含め、指一本触れさせてもらえない。
今度のアジアインフラ投資銀行の問題も、コメントをするのは麻生財務大臣だ。
岸田外務省の出る幕など皆無だったに違いない。
官邸も財務省にまかせっきりだったに違いない。
その財務省が、外交音痴で、ぼやぼやしていたのだ。
きょう4月1日の朝日新聞が書いている。
年明け以降、財務省のもとに、中国・米国双方から水面下で接触があった、と。
米国側は、不参加を直接的に求めて来たのではなかったのだ。
「別に要請はなかったが、『そうだよな』で(話しは)終わった」と麻生大臣自らが認めている。
財務省のある幹部は、「米国とこじれると何をされるかわからない。それは避けたい」と明かしたという。
驚くべき対米従属ぶりである。
しかし、財務省を批判する事が、このブログの目的ではない。
対米従属に関しては外務省も同じだ。
だから今回の財務省の対応には、権限争いを超えて、無条件に賛同したに違いない。
これと対照的なのが英国だ。
すでに各紙が報じてる。
英国も、米国との関係に配慮する外務省は参加に反対していたが、オズボーン財務相が商業的利益が外交懸念にまさると説得した、という。
私が言いたいのは、この国はすべての官僚が対米従属だということだ。
司法官僚がどこよりも対米従属であることは、田中、小沢事件で見せた検察官僚の態度や、砂川判決の田中耕太郎最高裁長官の対応を見れば歴然だ。
官僚がそういうなら政治はそれに従う。
民間企業に至っては「官」の言われるままだ。
この国の対米従属ぶりは、国を挙げての異常なものがある。
それに異を唱える事がいかに難しいか。
いままさに我々は、沖縄でそれを目撃している(了)
安保法制、米提言に沿う 知日派作成、首相答弁にも反映
朝日新聞 2015年3月30日
安倍晋三首相が進める安全保障法制によって、日米同盟をさらに強めようとする動きが日米両政府から出ている。背景には安保法制が米国の知日派による提言書に沿っていることがある。中東・ホルムズ海峡での機雷除去など、首相が法整備の理由に挙げた事例は、提言書とも一致する。首相の国会答弁にも、その趣旨が反映されている。
訪米した高村正彦自民党副総裁が今月26日、カーター米国防長官と会談した際、安保法制について「日本だけでなく、国際社会に重要な影響を与える事態にも対応できるようにする」と説明すると、カーター氏は「安保法制は歴史的取り組みだ」と評価した。シーア米国防次官補も同27日の講演で「日本にとどまらず、様々な地域で協力することになる」と強調した。
こうした日本政府の取り組みは、米国の共和・民主両党の知日派が、党派を超えて作った対日政策の提言書に沿っている。
提言書は「アーミテージ・ナイ・リポート」と呼ばれる。日米の政権に影響力のある共和党のアーミテージ元国務副長官、民主党のクリントン政権で国防次官補を務めたナイ・ハーバード大教授らが中心になっている。最初の2000年に続き、07年、12年と発表した。日本政府で安保政策に関わる担当者らが新たな防衛政策を練り上げる際、常に「教科書」としてきた。
最新の12年の提言書は、「日本の責任範囲を拡大すべきだ」と集団的自衛権の行使を認めるよう強く勧めた。そのうえで、新たな防衛協力分野の具体例として、「ホルムズ海峡での機雷除去と、南シナ海の共同監視」を挙げた。
提言書はさらに、安倍首相が法整備の主な理由に掲げる自衛隊の「切れ目のない対応」も求めた。
「日本防衛」と「地域防衛」の区別はなくなったと強調。「ホルムズ海峡の封鎖や、南シナ海での軍事的緊急事態は、日本の安全と安定に深刻な影響を及ぼす」として、自衛隊の活動を世界に広げるべきだと指摘した。
特に機雷除去については、イランが欧米からの制裁への対抗措置としてホルムズ海峡封鎖を示唆したことを挙げ、国際社会の要請があれば「日本は単独で掃海艇を地域に派遣すべきだ」と、日本が真っ先に駆け付けて機雷除去に取り組むよう促した。
安倍首相は2月の国会答弁で「ホルムズ海峡に機雷が敷設された場合、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様に深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況にあたりうる」と強調した。 (佐藤武嗣=ワシントン、今野忍)