2015年4月1日水曜日

法律家6団体 安全保障法整備の即時中止を求める共同声明

 法律家6団体が、「与党合意に抗議し、閣議決定の撤回と、安全保障法整備の即時中止を求める共同声明」を発表しました。
 
 政府がいま進めようとしている安全保障法制が、憲法9条に違反したもので、いつでも海外での戦争が始められるという極めて危険なものであることを厳しく指摘しています。
 
 声明は4800字あまりの長文のものなので、事務局で要約版を作りました。
 詳細は記載のURLをクリックして原文をご参照下さい(PDF版です)。
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与党合意に抗議し、閣議決定の撤回と、安全保障法整備の即時中止を求める法律家6 団体の共同声明 (要約版)
 
1 はじめに
 自民、公明両党は、新たな安全保障法整備の具体的な方向性について合意し、共同文書を発表した。昨年7月1日の閣議決定は、許される条文解釈の限界を超え、憲法第9条そのものを否定する内容でその後の立法により、憲法9条の実質的な改憲を行おうとすることは、立憲主義と国民主権の原理にも反し違憲無効である。
 今回発表された与党の共同文書は、米国以外の他国軍隊の武器等防護のための武器使用まで許容する点など、昨年の閣議決定すらも踏み越える内容となっていて、憲法第9条平和主義に違反するとともに憲法第96条立憲主義の原理にも違反するものであり、違憲無効を免れない。
 現在進めている安全保障法制定作業を即時中止することを求める。
 
2 共同文書「安全保障法整備の具体的方向性について」の問題点
 
(1)憲法第9条の下で許容される自衛の措置―集団的自衛権行使関連
 与党合意の問題点の第1は、自衛隊法、武力攻撃事態法等を改正し、わが国に対する武力攻撃が発生していなくても、わが国と密接な関係にある他国に武力攻撃が発生した場合(新事態)に、自衛隊による武力行使を認め、集団的自衛権の行使を可能とする点である。
 集団的自衛権の行使に当たり加えられた新3要件は、法律要件として著しく不明確であり、何らの歯止めにもならない。現に安倍首相は、経済的理由による集団的自衛権の発動の可能性も否定していない。さらに、存立事態にあたるかどうかを判断するのは、国家安全保障局、国家安全保障会議(NSC)、最終的には首相判断であり、国会も国民も事実の検証がなんらできないままに、わが国が他国と戦争状態に入る現実的な危険が加わっている。
 
(2)他国軍隊に対する支援活動―周辺事態法改正関連
    並びに国際社会の平和と安全への一層の貢献―PKO法改正関連等
 与党合意の問題点の第2は、自衛隊の海外派兵(派遣)を恒常的に解禁し、武器使用を含む自衛隊の活動権限と範囲を飛躍的に拡大し、米軍及び米軍以外の他国軍隊との一体的な共同軍事行動を可能にする点にある。
 従来の自衛隊の海外派遣法制は、これまで憲法9条の制約のもと、時限的にも(特措法)、地域的にも、活動権限内容においても限定されてきたが、与党合意は、これらの憲法9条による制約をすべてはずすことを目的としている。
 
ア)周辺事態法改正関連では、①自衛隊派兵(派遣)の要件を、わが国の平和及び安全に重要な影響を与える事態という漠然不明確で運用次第でいくらでも広がる要件に変え、②地域的にはわが国周辺地域に限定せず、無限定に地球上のどこでも派兵できるとし、③支援対象を米軍以外の他国の軍隊にまで広げ、④「後方地域」ではなく、「現に戦闘行為を行っている現場ではない場所」で、⑤武器弾薬の供給、輸送活動、空中空輸等々の軍事行動を支援活動として認める方向性である。
   それでは支援活動中の自衛隊自体が、相手国の攻撃対象にさらされるほか、戦闘現場で展開中の米軍ないし米軍以外の他国軍隊が、相手国から攻撃されれば、その場でなし崩し的に集団的自衛権の行使(戦闘状態に突入)となる危険性が極めて大きい。
 
イ)PKO法を大幅に改変し国連決議がない場合でも、要請があれば米軍及びその他の国の軍隊の一員として紛争終結後の治安掃討作戦(治安維持活動)にも加わることを任務に加え、武器使用を解禁する内容となっていて、平時が一転して有事に転換しかねない危険が増大することなる。
 
(3)武力攻撃に至らない侵害への対処(自衛隊法改正関連)
 与党合意の問題点の第3は、本来、警察権の管轄領域であるグレーゾーン事態に、自衛隊が堂々と武器をもって出動することを認め、武器の使用=武力行使を認める点である。そうなればグレーゾーン事態が一転して国際紛争の火種を大きく燃え上がらせる事態に発展し、有事にもつながりかねず、危険を飛躍的に増大させる
 
(4)与党合意に基づく安保法制が国民の命と平和な暮らしを守るか
 与党合意は、いかなる事態においても切れ目のない対応を可能とする国内法制を整備するとしている。
 ここでいう切れ目のない対応とは、自衛隊を平時有事を問わず、いつでもどこにでも切れ目なく派兵し、米軍および米軍以外の他国軍隊と一体となって、あらゆる「脅威」に対して、戦争・武力による威嚇、武力の行使ができる体制の法整備を指す。
 しかし、平時からの自衛隊の早期投入と武器使用が可能となれば、一発の銃声や砲弾により、直ちに反撃となり戦闘行動が開始されることにもなりかねず、容易に武力行使、戦争へと拡大し、米国および同盟国軍との共同軍事作戦の下、なし崩し的に集団的自衛権の行使につなげることを可能とする仕組みの整備にほかならない。
 
3 軍事力・軍事同盟の強化によって安全は守られない 憲法9条こそが安全保障の要
 日本国憲法は、戦争と武力による威嚇又は武力の行使を永久に放棄し、戦力を持たず、交戦権も認めないとする世界に例のない徹底した平和主義を基本原理とするもので、それが日本の平和と繁栄の礎となってきた。
 戦争は、これまでも「自衛のため」「正義のため」「テロとの闘い」などの口実により開始されてきたいかなる名目であっても戦争はしないとした憲法9条の神髄がここにある。それに対して共通の敵を想定する軍事同盟・集団的自衛権型安全保障は、果てしない軍拡の応酬と疑心暗鬼と相互不信、摩擦と対立を生み、紛争を決して解決することはない。
 積極的に非暴力・非軍事の外交と国際貢献を行う、それこそが、日本国憲法の定める積極的平和主義であり、21世紀の安全保障のあるべき姿であることを、私たちは疑わない。
 
4 結語
 私たち法律家6団体(構成員延べ7000名)は、憲法を無視し、国民の批判も国会をも蔑ろにする反民主主義、反立憲主義的手法により急ピッチで整備されてきた9条の実質改憲の動きに対し、一貫して反対し警鐘を鳴らしてきた。
 改めて、違憲無効の閣議決定を直ちに撤回し、現在進めている安全保障法制定作業を即時中止することを強く求めるものである。                   以上
 
       2015年3月27日
   社会文化法律センター自由法曹団青年法律家協会弁護士学者合同
部会、日本国際法律家協会日本反核法律家協会日本民主法律家協会
(代表者名は省略