6日の各紙社説は翁長・菅会談会談を取り上げました。
琉球新報は、翁長・菅会談会談で、名護市長選、知事選、衆院選で示された辺野古移設反対の民意が存在しなかったかのように菅氏が述べることは、「沖縄住民の自治は存在しない」と語った米キャラウェイ高等弁務官の強権姿勢に通じると翁長知事が語ったことを、沖縄の戦後政治史の中でこれほど強い言葉はないと評価しました。
一方 菅官房長官が知事に語った言葉は軽すぎて、普天間の固定化をさけるには辺野古移設が「唯一の解決策」だと言い張ることは、県外に移設先を求めない日本政府の怠慢でしかないと述べました。そしてそもそも民主党政権の防衛相だった森本敏氏も海兵隊の居場所は「軍事的には沖縄でなくてもよい」と述べているとして、普天間の危険性除去のために新しい基地を沖縄が負担しろというのは、知事が主張するように「日本の政治の堕落」でしかなく、沖縄の民意が弊履のようにふみにじられることは許されないとしました。
沖縄タイムスは、翁長知事が、講和条約発効後に「銃剣とブルドーザー」で強制的に接収されたのが沖縄の基地であるのに、危険性除去のために新たな基地を負担しろというやり方を「政治の堕落だ」と厳しく批判しのは、名護市長選、知事選、衆院選の三つの選挙で移設反対の候補が全勝し、各メディアの世論調査で7割前後の県民が移設に反対しているにもかかわらず、菅氏がこれを否定するような民意無視の発言を繰り返したからだとしました。
その一方で、菅氏が「最重要なのは普天間飛行場の危険除去である」とお決まりのフレーズを口にしていることを批判して、それなら「普天間の5年以内の運用停止」を何が何でも実現させるべきで、安全保障のコストを日本全体で分かち合うという姿勢がないとしています。
そして翁長知事に、「危険性の除去」など政権が都合よく解釈する言葉を放置せず、民間団体の力も借りて、選挙で示された民意を正確に国内外に発信してほしいと要求しています。
そのほかにも、下記のように政府側のこれまでの態度を批判する社説が多く見受けられました。
琉球新報と沖縄タイムスの社説を紹介します。
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(社説)翁長・菅会談 自治の抑圧即時やめよ 辺野古移設の断念を
琉球新報 2015年4月6日
「キャラウェイ高等弁務官の姿が思い出される」
就任以来ようやく実現した菅義偉(よしひで)官房長官との会談で、翁長雄志知事が言い放った。かつて米国の軍事植民地に置かれた沖縄に君臨したキャラウェイは「(沖縄住民の)自治は神話でしかなく、存在しないものだ」と語り、強権を振るった。翁長知事はキャラウェイに重ねて安倍政権を批判した。沖縄の戦後政治史の中で、これほど強い言葉はないだろう。
名護市長選、知事選、衆院選で示された辺野古移設反対の民意が存在しなかったかのように振る舞うことは「自治は神話」で日本は独裁国家と言うに等しい。
「政治の堕落」
それにしても来県した菅官房長官が知事に語った言葉は軽すぎる。「辺野古(移設)を断念することは普天間の固定化につながる」と述べ、移設作業を「粛々と進めている」と語った。
辺野古移設を「唯一の解決策」と言い張ることは、県外に移設先を求めない日本政府の怠慢でしかない。第3次安倍内閣で防衛相に就任した中谷元氏が2014年3月、県外での反対や抵抗によって沖縄の基地の分散は難しいとの認識を示した。中谷氏は「分散しようと思えば九州でも分散できるが、抵抗が大きくてできない」「理解してくれる自治体があれば移転できるが『米軍反対』という所が多くて進まないことが、沖縄に(基地が)集中している現実だ」などと答えている。
民主党政権の最後の防衛相だった森本敏氏も海兵隊の普天間飛行場の移設先について「軍事的には沖縄でなくてもよいが、政治的に考えると沖縄が最適」と発言している。知事が指摘するように県民は「粛々」という言葉に決して脅かされないだろう。
看過できないのは、なぜ知事にユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)沖縄誘致の話を持ち出すのか。USJは民間企業である。まるで国営企業のようではないか。勘違いも甚だしい。あまりにも露骨な懐柔策だ。
知事は普天間飛行場が沖縄戦の最中に住民から土地を奪って建設された史実を語った。戦争中に民間地の奪取を禁じるハーグ陸戦条約に違反する行為であり、日本が降伏した時に、返されるべき施設である。それを70年もの長きにわたって占拠し続ける米国の異常さを認識すべきである。
代替の新基地を求めること自体もっての外だ。日本政府が米国の不当行為に加担して、普天間の危険性除去のために沖縄が負担しろというのは、知事が主張するように「日本の政治の堕落」でしかない。
「弊履」のような扱い
キャラウェイの圧政に屈せず、沖縄県民は自らの代表を自ら選ぶ「主席公選」を勝ち取った。当選した屋良朝苗氏は、日本復帰に際して基地のない平和な沖縄県を目指した。1971年「復帰措置に関する建議書」を抱えて羽田空港に降り立ったとき、衆院沖縄返還協定特別委員会は、与党自民党が数の力で返還協定を強行採決していた。復帰後も米軍による基地の自由使用が決まった。
このとき屋良氏は破れた草履を意味する「へいり(弊履)」という言葉を使い「沖縄県民の気持ちと云(い)うのはまったくへいりの様にふみにじられる」(11月17日付日記)と憤激した。安倍政権の沖縄に対する姿勢はこの言葉と重なる。
翁長知事は菅氏に、安倍政権は辺野古が唯一の解決策のように国民を「洗脳」していると批判した。政府が基地の縮小を持ち出すことについて見掛け倒しで実現しない「話のごちそう」と突き放した。
県民の民意を体現して知事が繰り出す言葉は非常に重みがある。菅氏はその重みを受け止め、辺野古移設が不可能だと認識すべきだ。
そうでなければ、菅氏の来県は元知事の平良幸市氏が沖縄を訪問した国会議員団の主体性を疑問視し非難した「何のかんばせ(顔)あって相まみえんや」となる。
(社説)翁長・菅初会談 菅流 上から目線にノー
沖縄タイムス 2015年4月6日
翁長雄志知事と菅義偉官房長官が5日、那覇市内のホテルで会談した。
知事就任から約4カ月、やっと実現した官邸との協議の場で、翁長氏は普段より強い調子で沖縄の民意を代弁した。米軍普天間飛行場の辺野古移設をめぐって国との距離が縮まることはなかったが、新基地建設に反対する沖縄側の覚悟と、問題の原点である「安保の過重負担の解消」を突き付けた意義は大きい。
会談では、菅氏が抑止力や危険性除去を理由に「辺野古が唯一の解決策」とこれまでの考えを主張。翁長氏は基地建設の歴史をひもとき、政権との距離についても触れた。
米軍上陸後の軍事占領で一方的に土地を囲い込まれ、講和条約発効後、「銃剣とブルドーザー」で強制的に接収されたのが沖縄の基地である。自ら差し出したものでもないのに、危険性除去のために新たな基地を負担しろというやり方に対し翁長氏は「政治の堕落だ」と厳しく批判した。
辺野古移設で菅氏がよく使う「粛々と」という決まり文句についても、「上から目線の言葉」と指摘し、県民の多くが感じていることを代弁した。
翁長氏が政府への不信感をストレートにぶつけたのは、知事就任以来、「冷遇」されているからではない。
名護市長選、知事選、衆院選の三つの選挙で移設反対の候補が全勝し、各メディアの世論調査で7割前後の県民が移設に反対しているにもかかわらず、菅氏がこれを否定するような民意無視の発言を繰り返したからだ。
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菅氏は「最重要なのは普天間飛行場の危険除去である」と強調している。だが、このお決まりのフレーズは眉に唾を付けて聞く必要がある。
政府が本気で「一日も早い危険性の除去」を考えているのであれば、仲井真弘多前知事が官邸と約束したという「普天間の5年以内の運用停止」を何が何でも実現させるべきである。
5年以内の運用停止は「あり得ない」と表明している米側に対し、政府はどのような対応を取ってきたのか、それを語ることが先決だ。
佐賀空港へのオスプレイの移駐についても、どうなったのか聞きたい。
普天間問題の原点は過重負担の解消だった。
安全保障のコストを日本全体で分かち合うという、そもそもの課題にも方向性を示していない。
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安倍首相は、埋め立て工事の進展を今月末の日米首脳会談のお土産にしたいようだ。地元との「歩み寄り」を演出するため、訪米前の安倍・翁長会談の話も浮上している。
知事に注文したいのは、政府首脳と会談する際の透明性の確保である。密室での協議は誤解を招きやすく、丁寧な説明が求められる。
安倍官邸は政府機関を動員し、メディアを最大限に活用して世論を誘導するメッセージを送り続けている。「危険性の除去」など政権が都合よく解釈する言葉を放置せず、民間団体の力も借りて、選挙で示された民意を正確に国内外に発信してほしい。