毎年この時期になると、良心的なコメンテーターなどがTVの画面から消えていきます。今年も元経産官僚の古賀茂明氏がそうされました。
安倍内閣になってからとりわけ報道への干渉が顕著になりました。小泉内閣のとき(副)官房長官をしていた安倍晋三氏が、慰安婦問題の報道に関連して抗議のためにNHKに乗り込んだという話は有名です。
日刊ゲンダイは31日の記事で、「この春の番組改編で、民放各社の報道・情報番組のコメンテーターから、安倍政権に批判的な論客は静かにほぼ一掃された。今や、反安倍論客はテレビ界の『絶滅危惧種』といってもいいほどだ」と述べています。
以下に紹介します。
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古賀茂明氏だけじゃないTVから一掃された“反政権”言論陣
日刊ゲンダイ 2015年3月31日
先週27日のテレビ朝日系「報道ステーション」で、降板をめぐる官邸やテレ朝上層部からの“圧力”を暴露した元経産官僚の古賀茂明氏(59)。「I am not ABE」と書いた紙を掲げ、強烈な最後っ屁をかましたが、古賀氏はまだマシかも知れない。
この春の番組改編で、民放各社の報道・情報番組のコメンテーターから、安倍政権に批判的な論客は静かにほぼ一掃された。今や、反安倍論客はテレビ界の「絶滅危惧種」といってもいいほどだ。
報ステでは、月~木曜のコメンテーターだった朝日新聞の恵村順一郎論説委員も3月いっぱいで降板する。昨年9月放送の慰安婦問題の検証で、「慰安婦問題は消すことのできない歴史の事実」とコメントしたのが、同10月のテレ朝の番組審議会で「ちゃぶ台返し」と非難された。ちなみに、審議会委員長の見城徹・幻冬舎社長は安倍首相の「メシ友」だ。
また、古賀氏と同じく「翼賛体制の構築に抗する言論人、報道人、表現者の声明・宣言」の賛同人である精神科医の香山リカ氏も、3月をもって9年続いた日本テレビ系「スッキリ!!」のコメンテーターから外れた。香山氏は昨年、安倍首相の集団的自衛権の行使容認会見を「欺瞞的」と切り捨てていた。
ほかにも、安倍政権の解釈改憲を真っ向から批判している作家のなかにし礼氏や、「秘密保護法は戦争できるようにするための法律」と喝破したジャーナリストの鳥越俊太郎氏。原発事故後に東電と国の原子力行政を批判してきたジャーナリストの上杉隆氏や岩上安身氏らも、地上波から完全に姿を消してしまった。
■今の民放キー局に“意見は不要”の自粛ムード
「私も民放キー局から、だいぶ干されています」と打ち明けるのは、経済アナリストの森永卓郎氏だ。森永氏はアベノミクスに否定的な立場を明確にしている。
「古賀さんのように官邸にニラまれなくとも、今の民放キー局には政権批判の自粛ムードが蔓延しています。広告収入は激減、制作費は大幅カット、少数スタッフで番組作りを強いられる現場は『始末書』を書く余裕すらない。裁判やBPOに訴えられたら面倒だ、とハナから厄介事を避ける風潮が強い。だから、コメンテーターには政治に波風を立てて欲しくない。いわゆる“左派”に限らず、コラムニストの勝谷誠彦さんや独立総合研究所の青山繁晴さんなど過激な“右派”も干されてしまうのです。元NHK記者の池上彰さんや、予備校講師の林修さんが重宝されるのは、政治的意見を極力抑えて、誰からも批判されないように時事ネタを解説するのが上手だから。今の民放キー局に“意見”は不要なのです」
かくして報道・情報番組のMCやコメンテーターには、ジャニーズのタレントやよしもと芸人ばかりが増えていく。今のテレビは「言論の自由」を自らの手で握り潰している。
左から古賀茂明、鳥越俊太郎、香山リカ、森永卓郎の4氏