29日の各紙社説は、28日に、国会の議論も経ないままで、憲法や安保条約をも逸脱して、自衛隊の海外での行動を大幅に拡大する内容の、「新日米防衛指針」(ガイドライン)を取り決めたことを非難しています。
曰く、国民不在の政策転換、国会軽視、米軍との際限なき一体化・・・という具合です。
首相は指針改定の対米交渉を進める防衛省の幹部に対して、「日本として行けるところまで行け」と指示した(神戸新聞29日社説)ということです。これほど日本国憲法9条を無視した話もなく、首相の資質が改めて問われます。いずれにしてもあとは押して知るべしです。
沖縄タイムスの社説を紹介します。
29日地方紙の主な社説のタイトル
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(社説) [ガイドライン改定] 国民不在の政策転換だ
沖縄タイムス 2015年4月29日
日米の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)で、「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)の改定が合意された。
集団的自衛権の行使を盛り込み、自衛隊の活動を地球規模に広げるなど、戦後日本が平和国家として歩んできた道を大きく踏み外す改定である。
ガイドラインは日本有事の際、自衛隊と米軍の役割分担を定めた政府間の文書。冷戦時代の1978年に旧ソ連の侵攻に備えて策定され、97年に朝鮮半島有事を想定し改定された。
今回の再改定は、尖閣諸島周辺で活動を活発化させている中国に対抗しようと日本側が提案した。アジア重視の「リバランス」(再均衡)政策を掲げるオバマ政権も、日本の協力に期待を寄せている。財政難で国防予算の削減を余儀なくされる中、負担を肩代わりしてほしいという思惑があるからだ。
新指針には、自衛隊が集団的自衛権を行使する事案として、米国を標的とする弾道ミサイルの迎撃などが例示されている。安倍政権が認めた集団的自衛権行使をガイドラインに反映させたというが、そもそも集団的自衛権の行使を具体化する安保法制の国会審議はこれからだ。
3月下旬の共同通信の世論調査では、安保法案の今国会成立に約半数が反対であった。国内での議論を後回しにして、米国との合意を先行させるやり方は、国会軽視というほかない。
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新指針では、日米協力の範囲を「アジア太平洋地域およびこれを越えた地域」としている。
従来の「周辺事態」の概念は地理的な制約があったが、事態の性質を「地理的に定めることはできない」として、これを「重要影響事態」と定義し直し、自衛隊の活動が日本周辺に限定されないことを明確化した。世界中で米軍の後方支援を可能にするものだ。
法的拘束力もない事務レベルで合意した指針で日米安保条約の改定にも等しい政策転換が図られようとしている。
改定のきっかけとなった尖閣の問題について新指針は、離島防衛への共同対処を明記したものの、有事の際の米軍の関与は依然不透明である。
基地が集中する沖縄では、自衛隊と米軍の一体化による、軍事的負担の増大が懸念される。
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「2プラス2」の共同文書には普天間飛行場の辺野古移設が「唯一の解決策」と書き込まれた。日本政府が県と約束した普天間の「5年以内運用停止」は盛り込まれていない。
中谷元・防衛相は、5年以内運用停止を米側に伝達したとするが、回答はなかったという。まるで子どもの使いだ。本気度が感じられない。
辺野古移設が進まないのは、県民の意志に反した計画だからだ。日米首脳会談を待たず「2プラス2」による辺野古移設の再確認は、選挙で示された正当な民意を無視するものであり、到底受け入れられない。