2015年4月12日日曜日

日本のワーキングプア – 苦闘し、苦悩する人々

 英週刊誌「エコノミスト」が日本のワーキングプアを取り上げました。
 
 政府と日銀が一体となって「異次元」という非常手段で円安と株高を現出させましたが、それで浮かれているのは富裕層と大企業の一部だけで、日本の貧困率は16%とこれまでで最悪の数値に達しました
 
 年間100万人の労働年齢人口の減少もあって見かけ上の失業率は4%以下にとどまっていますが、「求人件数の増加」を作りだした新しい仕事の中身は「質の悪いもの」でそれがワーキングプアの増加を生みだしています。
 
  安倍首相が政権についてから2年半、収入著しく低い非正規雇用労働者の数は150万人を超え今や非正規労働者やパートタイム労働者の数は約2000万人、その割合は全労働者の4割に達しています。
 
 生活保護の受給世帯も昨年初めて200万を突破ました。それなのに政府は、昨年夏、福祉関係予算の削減を行い、さらに多くの人々を貧困層に落とし込みました。
 
 安倍政権はアメリカへの従属を旨として、ひたすら安全保障法制の制定に没頭していますが、政治が真っ先に取り組むべきこうした貧困問題についての認識は持っているのでしょうか。
 認識がないのであれば「エコノミスト」に教えてもらうべきです。
 
 11日付のブログ「星の金貨プロジェクト」 が同記事の翻訳文を掲載しましたので紹介します。
 (なお、末尾の図表は原記事にはないもので、「星の金貨プロジェクト」が独自につけたものです)
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日本のワーキングプア – 苦闘し、苦悩する人々 
 星の金貨プロジェクト 4月11日
 エコノミスト 2015年4月4日
 東京に隣接する日本第2の都市横浜、高級ブティック、高級レストランが立ち並ぶ地区からさほど離れていない場所で寿町の住人達は暮らしています。
 しかし寿町にあるのは高級店舗が立ち並ぶ地区とは全く別の世界です。そこは荒廃と退廃が支配する、窮乏生活へと落ちていく日本人のための一時停車駅なのです。
 ドヤと呼ばれる安ホテルで暮らす男性たちは、仕事も家族も失った人々です。臨時雇いのその日限りの仕事があるのは良い方で、ほとんどの人は全く働いていません、
 寿町には250のベッドを持つ寿町総合労働福祉会館がそびえたち、過去数十年の間には40カ所前後の公共の職業あっせん施設が設置されました。
 これらの施設は路上生活をしていた約18,000の人々を救い出すことは出来ましたが、彼らを寿町へと追いやった最大の原因である貧困の拡大に対してはほとんど無力でした。
 昨年、日本政府は平均収入の半分以下の収入で暮らす貧困層が、全体の16%に達したことを発表しました。これまでで最悪の数字です。
 日本の貧困率は1980年代半ばから、およそ年に13%の割合で増加を続けてきました。この数字は2011年のOECDによる分析により、世界の主要先進国34カ国中、6番目に悪いものです。
 
 貧困層かそうでないかを分類するのは年収200万円のラインですが、数千万の日本人がそれ以上の収入を得る中、200万円以下の年収で生きのびる方法のハウツウ本がベストセラーになっているという広告が書店に大きく貼り出されていました。
 日本はこれまで長い間、まじめにさえ生きていれば社会の谷間に落ちていくことは無いという事を誇ってきました。スラム街の無い日本の整然とした街並みは、その事実を証明してきました
 路上犯罪は、寿町においてさえ発生することは稀です。
 失業率は4%以下にとどまり、安倍首相が進める大規模な金融緩和策により、求人件数も増加しています。
 しかし『求人件数の増加』を作りだした新しい仕事の中身、その質の悪さがワーキングプアの問題を作りだしていると、法政大学社会学部の堅田香緒里(かただかおり)教授が語りました。
 安倍首相が政権についた2012年後半以降、正社員と比較して収入が著しく低いとされる非正規雇用労働者の数が150万人を超え、飛躍的に増大してしまったのです。
 今や非正規労働者やパートタイム労働者の数は約2,000万人、その割合は全労働者の4割に達しています。
 
 しかしこうした非正規労働社会への変貌は、これまでは目に見えない形で進行してきました。理由の一つとして、親たちの世代が進んで負担を肩代わりしていることが挙げられます。数百万人の若い労働者が親元で暮らし、家賃その他の生活経費がかからないようになっています。
 しかし堅田教授によれば、現在の親の世代である戦後のベビーブーマーたち、すなわち団塊の世代が完全に引退生活に入れば、日本の根底にある貧困問題がはっきりと姿を現すことになります。
 
 安倍首相は豊富な資金を持つ大企業に対し、雇用を増やし、労働者への賃金の支払いを増やすよう求め、若干の成功を収めました。過去数週間、日本の大企業の中でも最大手は、恵まれた立場にいる従業員たちの昇給を発表しました。
 しかし日本経済の回復が喧伝される中、ぎりぎりの生活を送っている人々は一層追いつめられています。生活保護世帯の数は1995年に882,000と一度は底を打ちましたが、その後は着実に増え続けてきました。 昨年、生活保護の受給世帯が初めて200万の線を突破してしまいました。
 
 GDPの約2.5倍という莫大な額の公的負債の削減を迫られている日本政府は、昨年夏、福祉関係予算の削減を行いました
 文化人類学者で、『横浜ストリート・ライフ:日本の日雇い労働者の不安定な職歴(Yokohama Street Life: The Precarious Career of a Japanese Day Labourer)」の著作があるトム・ギル氏は、その事がより多くの人々を貧困層に落とし込んだのだと指摘しました。
 
 横浜市も日本国内に多い赤字の自治体のひとつです。
 現在ホームレスの救護所を混雑させている男性たちは、かつては建設現場や自動車生産ラインで生計を立て、国税や県税、市町村税を支払っていました。
 今日、少なくとも建設業は再び上向きましたが、以前と比べれば産業としての規模も縮小し、支払われる賃金もかつてとは比較になりません。
 
 一部の男性たちは、仕事に就くことが出来ました。しかし寿町にいる人々のほとんどは、日本社会の重荷になったままです。
 
 
 

 「ジニ係数とは、主に社会における所得分配の不平等さを測る指標で、
小さいほど平等に近い。


非正規雇用