2015年4月1日水曜日

古賀茂明氏単独インタビュー(2) 田中ジャーナル

 『報道ステーション』(テレビ朝日系)に毎週金曜日に出演していた元経産官僚・古賀茂明氏が、官邸からの強い働きかけがあって3月一杯で解任された件について、田中龍作氏が27日、最終回出演を終わった古賀氏にインタビューしました。
 その後半の「官邸が如何に番組に対して圧力をかけてきたのか」の巻です。
 
 LITERAの「菅官房長官が古賀茂明を攻撃していたオフレコメモを入手」(30日付)の記事も併せて紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
古賀茂明氏、単独インタビュー ~官邸編~
田中龍作ジャーナル 2015年3月30日 
 安倍政権によるメディアコントロールは、かつてないほど巧妙で強権的だ。前回のテレビ朝日編に続き、真実を語れば圧殺されてゆく状況を古賀氏が明かす。
 
田中:官邸からはいつ頃、どんな圧力がかかりましたか?
古賀:証拠があるのは、菅官房長官が側近に報道ステーションの話をするとか、そういうのは去年の秋くらいからあった。
選挙の前には篠塚報道局長が、現場に「選挙があるのに古賀なんか出していいのかな?」と言ったりしたそうです。「何でですか?」と現場が聞くと「いや、ダメだとは言ってない」。
そういうのを聞いたから、僕が篠塚局長に尋ねると「そんなことは言ってない」。「だけど、一般論として選挙の前だから気をつけなくちゃいけない」。
(1月23日の報道ステーションで)I am not ABEと言った時は、官房長官の秘書官が、テレ朝の報道局幹部にメールをしたと聞いています。
その後、「反翼賛の声明」というのを出した時、あれについて、官房長官会見の時に質問した記者がいるそうです。表現の自由が抑圧されてるとか。
菅官房長官は、僕の名前は言わないんだけど、「最近TVでとんでもないことを言った人がいる。報道の自由をはき違えている。そういうコメントができるのも、まさに表現の自由があるからですよね」って言ったそうです。
その後、ぶら下がりのオフレコ会見でやりとりをした。オフレコだからメモをしちゃいけないんだけど、複数社いるからメモが僕の所に来るんです。
菅官房長官がそこで何て言ったかというと「俺は本当に頭に来た。俺だったら放送法違反って言ってやったのにな」というようなことを言ったそうです。
官房長官の秘書官も文句言ってるんだけど「放送法違反だ」までは言ってないんです。政府の要人が「放送法違反だ」と言ったら免許取り消しの脅しになる。
秘書官はバカじゃないから言わないわけです。官房長官の秘書官はテレ朝の中にいるお友達に「ひどい話だね」と。だけど菅さんはそういうメモが回ることを計算して(わざと)言ったわけです。
ということは「俺は許していないからな」という脅しなんです。テレ朝への脅しにもなるし、僕への脅しでもあって。そこで黙っちゃうんですよ、普通の人は
選挙の時に放送局に自民党から手紙(圧力文書)が来たじゃないですか。みんなテレビ局はひた隠しに隠していた。普通にニュースとしてやればいいじゃないですか。
それを上杉隆さんとかが公開(暴露)して、それでもテレビ局はやらない。官邸から見ればヨシヨシと。こいつら(テレビ局は)俺のいう事を聞くんだと。
 
大人しい発言をしていたんじゃ、向こうの言いなり。その逆を行かなければいけないなと、だから菅さん(官房長官)のことも言ったし、I am not Abeともう一回言った。
1月23日は口で言っただけだが、今度は絶対止めないからねという意味であれ(紙)を出したんです。だからあそこまでやったんです。
みんな勘違いしてるけど、僕が安倍さんをキライで、首になるから腹いせにやったんだということではなくて。
最後に言いたかったのが、ガンジー。ひとつは常に自分に言い聞かせてることなんだけど、自分に圧力がかかったから、ちょっと大人しくしようと、仕事がなくなるからと。そうやってみんな変わっていってしまうんです
その時に圧力を受けて、押さえているとそのうちに恥ずかしいと思わなくなっちゃう。
施政方針演説で「列強をめざす」といわんばかりのことを言ったり、最近では「わが軍」発言。これらは昔なら国会は止まるし、マスコミは大騒ぎになる。ところが今ではニュースにならない。
最初は圧力で負けているんだと思っていた。じゃ、社内でそんなことやるな、と自粛の通達が出ているのかと思うとそんなこともないんですよ。
要するに、問題だと感じなくなっちゃった。それがこれ(ガンジーの言葉)なんですよ。これ。なんであそこまでやるんだろうと言われるんだけど、それをやってなかったら自分が変わっちゃうんですよ。できなくなっちゃう。
 
(先の戦争の時は)特高がいて、治安維持法があって、がんじがらめになっていた。仕組みができてた。ところが今そんなものないんですよ。なんとなくの雰囲気でね、安倍さんに逆らうと仕事がなくなるとか、損するという雰囲気ができている
で、やっているうちに皆がマヒしちゃう、ということが起きている。まずはこの言葉のとおり「自分が変わらないため」にも言い続けなきゃいけない。
そういう人が一人でも増えていけば変わるかもしれないけど、どんどん減っているなかで、もう少し大人しくしていれば影響力があるチャンスをもらえる。
 
でも影響力があっても、言えなくなっちゃうんですよ。自分が変わっちゃう。だからクビって決まってましたけどね、私はそうやって言い続けたということです。 
 
 ~終わり~
カッコ(  )の中は田中が挿入した言葉です。
『田中龍作ジャーナル』は読者が支えるメディアです。取材制作にはコストがかかっています。
 
 
事実無根じゃない! 
菅官房長官が古賀茂明を攻撃していた「オフレコメモ」を入手
LITERA 2015年3月31日
 『報道ステーション』(テレビ朝日系)で爆弾発言を行った古賀茂明氏へのバッシングが止まらない。ネットでは、古賀氏に対して「捏造だ」「被害妄想だ」「陰謀論を平気で事実のようにしゃべっている」という声があふれ、そして、30日には、菅義偉官房長官が記者会見で、古賀発言を完全否定した。「テレビ朝日の『報道ステーション』のコメンテーター」が、生放送中に菅官房長官の名を挙げて「バッシングを受けた」と語ったことを、「まったくの事実無根」「事実に反するコメントだ。公共の電波を使った行為であり、極めて不適切だ」と批判したのである。
 よくもまあ、こんな白々しい嘘がつけるものである。そもそも、菅官房長官は、この会見で「放送法という法律があるので、まずテレビ局がどう対応されるかを見守りたい」と発言。テレビ朝日に対して、あからさまな圧力をかけていたではないか。
 
 これだけでも、菅官房長官が日常的にメディアに圧力をかけていることの傍証となるものだが、本サイトはもっと決定的な証拠を入手した。
 古賀茂明氏が『報道ステーション』で「I am not ABE」発言をした少し後の2月某日、菅は会見の後のオフレコ懇談ではっきりと、古賀バッシングを口にしているのだ。その「オフレコメモ」を入手したので、ここに紹介しよう。
 メモはまず、官房長官会見でのこんなやりとりが書かれている。
 
(会見)
 イスラム国の事件を受けて、今月初めごろにフリージャーナリストや作家がマスコミの間で政権批判を自粛するような雰囲気が広がっていると指摘するような声明が出た。
マスコミも政権批判をすれば取材がしにくくなるという懸念があって、これをもって政府から暗黙の圧力という指摘もあるが
 まず、政府としては、もとより憲法が保障する報道、表現の自由は最大限尊重されると考えている。そして我が国においてもあらゆる政策についても、国会や言論界で自由闊達な意見の表明が行われているではないでしょうか。
つい先日、この運動をやっているかたが、テレビに出て発言をしていましたけれども、ISILへの対応について、政府を批判してましたけれども、あたかも政府が人命に本当に危険迫るようなことをしたと、あたかも見てきたような、全く事実と異なることを、テレビ局で堂々と延々と発言していました。そういうことを見ても日本はまさに自由がしっかりと保障されているのではないでしょうか。はき違えというのもあるかだろうと思います。
 公式会見でも十分、マスコミ報道を皮肉るものだが、その後に、オフレコ制限がついた部分のメモがこう続いている
(オフレコ)
 会見で出た、ISILの件でまったく事実と違うことを延々としゃべっていたコメンテーターというのはTBSなんでしょうか。
 いやいや、いや、違う。
 テレビ朝日ですか?
 どことは言わないけど
 古賀茂明さんですか?
 いや、誰とは言わないけどね。(※肯定の反応)ひどかったよね、本人はあたかもその地に行ったかのようなことを言って、事実と全然違うことを延々としゃべってる。放送法から見て大丈夫なのかと思った。放送法がある以上、事実に反する放送をしちゃいけない。本当に頭にきた。俺なら放送法に違反してるって言ってやるところだけど。
 
 どうだろう。これは古賀氏が『報ステ』発言の動機として説明したことと完全に合致する。古賀氏は『IWJチャンネル』でこう語っていた。
 「官房長官は名前は出さないけど明らかに私を攻撃してくる。『俺だったら放送法違反だと言ってやったのに』と言ってるという話も聞いている。官房長官という政府の要人が、放送免許取り消しもあるよという脅しですよ」
 
 ようするに、嘘をついていたのは古賀氏でなく、菅官房長のほうなのだ。明らかに、「放送法違反」という言葉で古賀氏と『報道ステーション』を攻撃しなから、平気で「事実無根」などと強弁する。捏造と謀略による報道弾圧を繰り返してきた安倍政権の官房長官ならではの手法といえるだろう。
 
 しかし、信じられないのが、マスコミの対応だ。彼らはこのオフレコ懇談の席に同席し、誰よりも菅官房長官が嘘をついていることを知りながら、なんの追及もせずに、「事実無根」発言を垂れ流していたのである。
 もっとひどいのが、当事者である『報道ステーション』だ。菅官房長官の会見やその後のオフレコ懇談には、当然、テレビ朝日の担当記者も出席しており、同様のメモが報道局全体で共有されていた。
 ところが、昨晩の『報道ステーション』では、そういう報道は一切なかった。菅の圧力を否定する会見をコメントなしで流し、古舘伊知郎が「古賀さんがニュースと関係のない部分でコメントをしたことに関しては、残念だと思っております。テレビ朝日と致しましてはそういった事態を防げなかった、この一点におきましても、テレビをご覧の皆様方に重ねておわびをしなければいけないと考えております」と謝罪したのだ。
 しかも、30日の会見VTRからは、わざわざ菅がテレビ朝日に圧力をかけた傍証となる「放送法という法律があるので、まずテレビ局がどう対応されるかを見守りたい」をカットしていた
 
 チーフプロデューサーの更迭で4月から番組そのものが大きく変わるといわれている『報道ステーション』。改編を前にすでに報道を捨てたということなのだろうか。
 (山水 勲)