2015年10月15日木曜日

防衛局が承認取り消しで不服請求 植草氏が辛口の批評

 翁長沖縄知事名護市辺野古沖の埋め立て承認の取り消しは、満を持して行った感がありますが、沖縄防衛局は14日午前、不服審査請求と取り消し処分の効力停止を石井国交相に申し立てました(国交相は公有水面埋立法を所管)。
 
 翁長知事は政府の対応について、「承認取り消し通知書を受け取った翌日に審査請求を行うことは、新基地建設ありきの強硬姿勢を端的に示すもので誠に残念」行政不服審査法に基づく申し立てをしたことに関しても「国などの処分から国民の権利等を迅速救済することを目的としている法の趣旨にもとる行為で、国民の理解を得られない」と述べました
 
 もしも取り消し処分の効力停止が行われれば、対抗して知事側は取り消しの効力確認や工事差し止めを求める訴訟を提起するなど、いずれにしても今後は法廷闘争になります。
 その見通しについて関係閣僚の一人は、「この種の訴訟で国が負けた前例はなく、負けることは100%ない」と断言(朝日新聞)しています。日本の司法のこれまでのあり方を思えば、この問題でも残念ながらそうなる蓋然性は極めて高いと思われます。
 
 政治経済学者の植草一秀氏は、この問題のポイントは本体工事の着手を阻止するかどうかにあったのであり埋立承認取り消し国が本体工事着手の事前協議書を提出する前(⇒遅くとも6月中)しておく必要があったとしています
 これは知事が2月に設立した第三者委員会の答申期限を7月に設定したことが間違っていたとするもので、知事に対する手厳しい批判になっています(彼は翁長氏が知事選に立候補するにあたり「承認の取り消し」を公約しなかった時点で、そのことを厳しく批判しました)。
 
 東京新聞の記事と植草氏のブログを紹介します。
 
 (関係記事)
2014年9月23日 沖縄知事選 植草氏の続報と「反戦な家づくり」氏の反論 
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辺野古取り消しで不服請求 沖縄防衛局が対抗措置
東京新聞 2015年10月14日
 防衛省沖縄防衛局は十四日午前、沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が米軍普天間(ふてんま)飛行場(宜野湾(ぎのわん)市)移設・新基地建設に向けた名護市辺野古(へのこ)沖の埋め立て承認を取り消したことに対抗し、行政不服審査法に基づく不服審査請求と取り消し処分の効力停止を、石井啓一国土交通相に申し立てた。国交相は、埋め立ての根拠法である公有水面埋立法を所管する閣僚。
 
 菅義偉(すがよしひで)官房長官は記者会見で「防衛省で承認取り消し理由を精査した結果、瑕疵(かし)はないということだった」と述べた。
 防衛局は、承認取り消しを受けて移設関連工事を中断しているが、早期再開を目指している。不服審査には一定の時間がかかるため、承認取り消しの効力を一時停止する申し立ても併せて行った。
 効力停止の判断は数日~一週間程度で出るとみられる。防衛局は、効力停止が認められれば、不服審査の結論が出なくても工事を再開する構えだ。
 
 翁長知事は、政府の対応について「(埋め立て承認取り消し)通知書を受け取った翌日に審査請求を行うことは、新基地建設ありきの強硬姿勢を端的に示すもので誠に残念」とのコメントを出した。今後も建設阻止に向け、正当性を訴えていく考えを示した。沖縄防衛局が、国民が行政機関に紛争解決などを求めるためにある行政不服審査法に基づく申し立てをしたことに関しても「国などの処分から国民の権利、利益の迅速な救済を図ることを目的としている法の趣旨にもとる行為で、国民の理解を得られない」とした。
 
 
承認取消 辺野古問題最大焦点は本体工事着手阻止
植草一秀の「知られざる真実」 2015年10月14日
想定通り、沖縄県の翁長雄志知事が埋立承認を取り消しした。
問題は、「辺野古に基地を造らせない」という公約を実現できるかどうかである。
「辺野古に基地を造らせない」という公約を実現するために、何よりも重要なことは、
辺野古米軍基地建設の本体工事着手を阻止することである。
沖縄防衛局は7月29日に、本体工事着手のために、沖縄県に事前協議書を提出した。
仲井真弘多前知事が出した埋め立て申請承認のなかで、埋め立て工事着手の前に事前協議をすることが定められていた
このために、国は沖縄県と事前協議をしなければ、本体工事に着工することができなかった。
したがって、この「事前協議」のための協議書が沖縄県に提出される前に、翁長知事が埋立承認を取り消してしまうと、沖縄県は「事前協議」のための協議書を受理する必要がなくなる。
そうなると、手続き上、国は本体工事に着手することができなかった。
したがって、「本当に」「辺野古に基地を造らせない」という公約を守るには、一番遅くとも、国が本体工事着手の事前協議書を提出する前に、埋立承認を取り消しておく必要があった
 
メディアは、翁長知事が埋立承認を取り消したことを沖縄県民が高く評価していることを報道するが、沖縄県民の翁長知事に対する評価は、「埋立承認を取り消したか否か」ではなく、「辺野古に基地を造らせない」公約を実現できるかどうかで判定されるべきものだ。
「埋立承認の取り消し」は、「辺野古に基地を造らせない」ための手段であって目的ではない。「埋立承認を取り消し」ても、「辺野古に基地を造らせてしまう」なら、翁長氏は公約を守ることにならない。
 
昨年11月に沖縄知事選が実施された。
この候補者選定の時点から、私はこの問題を指摘し続けてきた
翁長氏が知事に就任して、直ちに埋立承認を取り消ししていれば、「辺野古に基地を造らせない」という公約を守ることができた可能性は高い。
しかし、本体工事着手のための「事前協議書」が提出され、沖縄県がこれを受理してしまったあとに、埋立承認を取り消ししても、「辺野古に基地を造らせない」公約を守ることは困難になると推察される。
現時点で、結果が出ているわけではないから、断定することはもちろんできないが、少なくとも、これまでの翁長知事の行動が、「辺野古に基地を造らせない」公約を守るための「全力投球の行動」ではなかったことだけははっきりしている
 
翁長氏の支持陣営のなかに、「辺野古に基地を造る」ことを容認して、それと引き換えに、大きな政府の沖縄支援策を獲得しようと考える勢力が存在すると考えられる。
USJの誘致も、那覇空港の滑走路増設も、医療特区の創設も、沖縄コンベンションビューロー会長人事も、沖縄都市モノレール社長人事も、沖縄MICE建設地選定も、この文脈で捉えることが必要との指摘もある。
翁長氏に対する評価は、あくまでも、「辺野古に基地を造らせない」公約の可否によって定められるべきものだ。
なぜなら、埋立承認取消をここまで先送りしてきた合理的な理由が存在しないからである。
「埋立承認は取り消した」が「基地は造られた」という結果が生じる場合には、その最大の原因は、「埋立承認取り消し」があまりに遅すぎたということになるからだ。
 
もちろん、今後のさまざまな情勢変化により、辺野古基地建設が頓挫する可能性はある。
結果が大事だから、仮に頓挫するなら、それに越したことはない。
しかし、それは「棚からぼたもち」であって、政治の意思により、成果を間違いなく生み出した結果とは言えない。
この意味で、最重要の問題は、国が辺野古基地の本体工事に着手するのかどうかである。
国が本体工事に着手し、工事が進行する場合、「辺野古に基地を造らせない」公約を実現することは難しくなる。
実際に工事が進んでしまうからだ。
翁長知事が、6月までに埋立承認を取り消していれば、国は本体工事に着手できなかったと考えられる。
理由は、先述したように、「事前協議」を実行できないからである。
翁長氏は、なぜ、事前協議書提出の前に埋立承認を取り消さなかったのか
現時点での最大の問題がこの部分にある。
(以下は有料ブログのため非公開)