「宮城秋の陣」でも共産旋風が吹き荒れて、25日投開票の宮城県議選は8月の仙台市議選に続き、安全保障関連法の廃止とTPP反対を前面に出した共産党が議席を4から8に倍増させ(議席増は共産党だけ)、5選挙区中3選挙区でトップ当選を果たしました。それに対して自民の候補者は軒並み苦戦を強いられ、議席を一つ減らしました。
五十嵐仁・法政大(社研)名誉教授は、仙台市議選、宮城県議選で示されたこの風は、他の地方でも吹いているのではないかと政治的地殻変動を引き起こす可能性に言及しつつ、これを来年の参院選まで持続させることが課題であると述べています。
「アベ政治」の暴走をストップさせるという明確な方向で野党は手を結んで、大きな帆を張ってその風を受けて前進すべきであると。
+東京新聞の選挙詳報を追加
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共産党議席倍増で政治的地殻変動を予感させた宮城県議選
五十嵐仁の転成仁語 2015年10月26日
地方でも、政治的な地殻変動が起きているのではないか。そう、予感させるような選挙結果でした。
注目の宮城県議選で、共産党が現有4から8へと議席を倍増させたからです。宮城県では8月の仙台市議選でも共産党が5選挙区中3選挙区でトップ当選し、得票率を3ポイント余り伸ばしましたが、その勢いはさらに増しているようです。
自民党は、石巻・牡鹿選挙区や加美選挙区で現職が落選しました。選挙前から4議席減らして27議席となって無所属の推薦候補2人を加えても過半数の30議席には届きませんでした。
民主党は選挙前から2議席減らして5議席です。公明党は、選挙前と同じ4議席で、維新の党は選挙前から1議席減らして1議席、社民党は選挙前から3議席減らして1議席、日本を元気にする会は議席を獲得できませんでした。
他方、共産党は仙台市内の5選挙区全てに候補をたてるなど9人を擁立し、市内5選挙区すべてで当選しました。これまで議席のなかった、米どころとされている大崎選挙区でも新人が当選しています。
政党で議席を増やしたのは共産党だけです。自民・民主・維新・社民の各党は議席を減らしました。
今日の日本政治における民意のあり方が、この結果に象徴されているように見えます。最も民意に沿った政策を掲げ、主張を行っている政党が支持されたということにほかなりません。
政策課題で言えば、安保法制とTPP(環太平洋経済連携協定)の二つが大きな争点となったのではないでしょうか。前者は仙台市議選での共産党躍進の追い風となり、今回の選挙直前に基本合意された後者は、さらにその追い風を強める結果になったように見えます。
同様の風は、他の地方でも吹いているのではないでしょうか。それは同じような政治的地殻変動を引き起こす可能性を秘めています。
その風を受けて大きく前進するための帆を張らなければなりません。政治的な地殻変動を政治勢力の分布の変化に結びつける必要があります。
そのために何ができるかが、とりわけ野党には問われることになるでしょう。対応を間違えれば民意によって見放されてしまうのだということを、今回の選挙で議席を減らした政党は学ばなければなりません。
これからの地方選挙でも同様の風を吹かせ、来年の参院選まで持続させることが課題です。「アベ政治」の暴走をストップさせるという明確な方向を示すことでしか、その風を受けて前進することはできないでしょう。
野党は手を結んで大きな帆を張ってもらいたいものです。そうしなければ、せっかくの風もただ頭の上を通り過ぎてしまうでしょうから……。
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安保法成立後 初の県議選 政権批判票が共産に
東京新聞 2015年10月27日
他国を武力で守る集団的自衛権を柱とした安全保障関連法の成立後、初の都道府県議選となった宮城県議選(定数五九)。自民党は七人が落選し、選挙前を四下回る二十七議席に。目標とした単独過半数(三十議席)を割った。安保法や原発再稼働への反対を主張した共産党は倍増の八議席を得て、県議会第二党になった。 (高山晶一、篠ケ瀬祐司)
二十五日の選挙では、二十三選挙区に八十六人が立候補し、うち十六選挙区で投票が行われた。投票率は過去最低の40・03%(前回比1・66ポイント減)。与党は安倍政権の経済政策の成果などを訴え、野党は安保法や環太平洋連携協定(TPP)の問題点を指摘した。
自民党は二〇一一年の前回と比べれば一議席減。前回選挙後に所属議員が増え、今回は現職四人を含む七人が落選となった。本紙の計算では、前回と比較可能な十二選挙区(前回も自民候補が出て投票が行われた選挙区)の総得票は計二千票余り減った。
逆に共産党は、候補者九人のうち落選は一人だけ。前回と比較可能な七選挙区の総得票は計一万六千票余り増えた。五選挙区で前回より順位が上がり、定数七と県内最多の青葉選挙区ではトップ当選した。
民主党は選挙前を二下回る五議席、公明党は選挙前と同じ四議席。社民党は三議席減、維新の党は一議席減でいずれも一議席にとどまった。
政府は安保法の影響を否定する。菅義偉(すがよしひで)官房長官は二十六日の記者会見で「(安保法の採決で反対した)社民、民主も大幅に議席を減らしたのが非常に印象的」と強調。政府高官は「共産党の勢いは今に始まったことでなく(安保法成立前の)統一地方選でもはっきりしていた」と述べた。
共産党の山下芳生書記局長は「安倍政権の暴走政治への強い怒りが示された」と指摘。民主党の枝野幸男幹事長は「全体として与党に厳しい中で、(批判票を)うまく受けとめる候補が共産党に多かった」と分析した。
一方、二十五日投開票の千葉県袖ケ浦市長選で自民推薦の無所属新人、奈良県橿原(かしはら)市長選でも自民、公明両党推薦の無所属新人が、それぞれ現職候補に敗れた。