2015年10月8日木曜日

マスコミが伝えないTPPの問題点

 ブログEveryone says I love you ! が、「マスコミが伝えないTPPの問題点」と題する記事を出しました。
 マスコミは、TPPが大筋で合意したことを さもめでたいことであるかのように報じるのみで、協定が秘めている恐ろしい実態については何一つ国民に伝えようとはしません。
 
 ここでは同ブログの「地の文」だけを紹介しますが、原文には豊富な図表が添えられています。
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 ISD条項をはじめ、ラチェット規定、NVC条項、スナップバック条項などは、ネット上では当初から指摘されていたことですがマスコミは何故か一切報じません。
 (地の文では触れていませんが)これ以外にも「事実上脱退が許されない協定」であることや、調印後も4年間は国民に内容を開示しない(国民が内容を知らされない段階で協定の「批准」が迫られる)というキチガイじみた規定など、ありとあらゆる不合理を満載した協定です。
 
 TVで政府寄りの解説者が、「ISD条項は何処でも行われていて問題がない」とか、「提訴されたら闘えばいい」などと述べていますが、世界銀行傘下の裁定機関はアメリカの3人の弁護士で構成されるといわれ、一審制で控訴もできず 決して公平と呼べるものではありません。
 下表は同ブログの図表を写したものですが、カナダ、メキシコアメリカが結んだ「北米自由貿易協定」の例では訴訟の帰趨は驚くべきもので、全てアメリカの勝利に終わっています。こんな機関で一体何を闘えというのでしょうか。
 
 
 NAFTAでのISD訴訟の件数と裁定結果     2010.10.1現在
 
国 名
件数
裁 定 結 果
 
カナダ
28件
(米企業に対して)
全敗、全て賠償
 
メキシコ
19件
(米企業に対して)
全敗、全て賠償
 
アメリカ
19件
(両国企業に対して)
全勝、賠償ゼロ
NAFTA:カナダ、メキシコアメリカ北米自由貿易協定      
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マスコミが伝えないTPPの問題点
貿易障壁だとして、安全基準も健康保険も主権も奪われるかもしれない
Everyone says I love you ! 201510月7
 2015年10月5日、TPP=環太平洋パートナーシップ協定交渉が大筋合意に達したということで、マスコミは
「日本のGDPが12兆円増える」
「世界のGDPの4割を占める巨大な貿易圏が誕生した」
「韓国も入りたがっている」
などと祝賀ムード一色ですが、TPPって本当に日本に暮らす人を幸せにするのでしょうか。
 ちなみに、TPPが決着した、成立したというわけでは全然ありませんからお間違えなく!
 また、TPPが実際に効力を持つ発効には、最後に書くように各国の批准手続き=議会での承認などが必要です。
 
 マスコミは、コメの問題など、TPP交渉の報道でも関税に焦点を合わせがちですが、TPPは圏内の自由貿易を推進するものですから、加盟国同士で輸入する製品にかける税金(関税)を原則として撤廃するだけでなく、貿易を活発化させるために、さまざまな「貿易障壁」を撤廃していきます。
 たとえば、日本が輸入する食品に独自に行っている安全審査が、相手国にとって輸出の妨げになるとして撤廃される可能性があります。
 日本独自に使用を制限・禁止している様々な化学薬品も、相手国が自由に使えないと輸出しにくくなるので、制限できなくなるかもしれません。
 食品に表示させている合成保存料や着色料などの安全表示さえ、日本の消費者が加盟国の輸出品を買ってくれにくくなるなどとして、なくされる可能性があります。
 そもそも、国産品を買いたいと思っても産地の表示は輸出国にとっては邪魔ですから、許されなくなる可能性さえあるのです。
 これらは、食品だけでなく、医薬品や化粧品や子どものおもちゃなどなど、ありとあらゆる品目で起こりうることです。
 
 また、貿易障壁とされうるのは、こういった物品の安全面の基準だけではありません。
 たとえば、今、日本では国民皆保険と言って、世界がどこも達成していない国民全員が公的健康保険に加入し、医療を安全に安く受けられる制度が完備していますが、TPPでは、外国の保険会社が医療保険という商品を日本に輸出するときに、この国民皆保険が貿易障壁だとされる可能性があります。
 そうすると、日本の健康保険制度が抜本的に見直され、健康保険を使えない自由診療や、自由診療と保険診療を組み合わせた混合診療が主流になってしまい、今までのように安心して診察を受けられなくなるかもしれないのです。
 
 
 これまでの自由貿易協定にはたいていISDS条項が含まれてきました。
 聞きなれない言葉かもしれませんが、これは、ISDS=「Investor(投資家) State(国家)  Dispute(紛争) Settlement(解決)」、「国家と投資家の間の紛争解決条項」と呼ばれるものです。
 この条項は、ある国家が自国の公共の利益のために制定した政策によって、海外の投資家が不利益を被った場合には、世界銀行傘下の「国際投資紛争解決センター」という第三者機関に訴えることができる制度です。
 
 すでに多くの自由貿易協定(FTA)に盛り込まれているのですが、たとえば脱原発をしようとしたドイツがスウェーデンの原発輸出会社に訴えられて多額の損害賠償を支払うなど、国の政策まで制限されてしまうので、世界中で「主権を侵害しかねない」と大問題になっていて、毒素条項などと言われています。
 ところが、TPPは秘密協定で、自国にも中身が知らされないので、このISDS条項がTPPではどうなっているのかもはっきりわかりません。
 また、先ほど述べた「貿易障壁」の撤廃がどのように合意されているのか、ほとんどわからないのが現状です。
 
 
 
 もう一つの有名な毒素条項、ラチェット規定のラチェットとは、一方にしか動かない爪歯車を指します。そこから転じてラチェット規定とはすなわち、いったん進展した自由化よりも後退を許さないという規定です。締約国が、後で何らかの事情により、市場開放をし過ぎたと思っても、規制を強化することが許されない規定なのです。
 日本が参加する前にすでに決められていた自由化を丸呑みしなくてはならず、しかも元には戻せないのですから、こんな危険な賭けはありません。
 また、NVC条項(Non-Violation Complaint条項)=非違反提訴という条項もあります。これは、米国企業が日本で期待した利益を得られなかった場合に、日本がTPPに違反していなくても、アメリカ政府が米国企業の代わって国際機関に対して日本を提訴できるというトンデモない条項です。
 日本に違反が無くても、米国企業が日本で期待した利益を得られなかった場合にも提訴できるというのですから、例えば、アメリカの保険会社が公的な健康保険分野などで参入などがうまくいかないと、日本が提訴されて、国民健康保険などの公的保険制度が不適切として改変を求められるということもありうるのです。
 
 
 今回のTPP交渉では、聖域だから死守するとしてきたコメの関税でさえ、アメリカに関税ゼロの特別枠を与えることになってしまいました。
 これでは、安倍政権がTPPを妥結するために、他の様々な制度についてどんな譲歩をしてしまったか知れたものではありません。
 商品の中身もわからないまま、物を買う人がどこにいるでしょうか。
 このままTPPを受け入れるのは危険すぎます。
 
 しかし、まだチャンスはあります。
 日米など12カ国は、関税撤廃などの効力が発生する協定発効の条件を決めたのですが、全参加国が議会承認などの国内手続きを協定署名から2年以内に終えられない場合、国内総生産(GDP)の合計が85%以上を占める6カ国が手続きを終えれば発効できるとしたのです。
 逆に言うと、日本とアメリカ議会が承認しなければTPPは発効しません。アメリカ議会では与野党ともに反対する議員が多数おり、来年の大統領選挙を控えて、承認されるかどうか予断を許さないと言われています。
 日本でも、民主党政権がTPP交渉に入ろうとしたときは、右派の人たちも上のような問題点を指摘して「売国協定だ」と激しく批判しました。
 国民にも以上のような問題点が浸透すれば、日本でも来夏に参議院選挙がありますから、広範な国民が反対することでTPPを止められる可能性は十分あります。
 これから、さらによりわかりやすくお伝えしていけるよう、頑張りたいと思います。