大阪府大東市の生活福祉課が今年6月、生活保護世帯で働いていた18歳の長男が独立して家を出て結婚生活を始めたことに対して、「世帯の自立から遠ざかる行為」と非難する指導指示書を出し、長男の給料の大半を元の世帯の収入と認定してその分保護費は削減するなどしていたことが分かりました。
両親から相談を受けた弁護士から「居住や移転の自由と長男の人権を侵害するもの。次男や長女に対しても同様の指示を行うことのないよう」との抗議を受け、市側は指導指示書を撤回しました。
生活保護世帯の子弟には大学進学をさせないなどの人権侵害も、決してあってはならないことです。
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大阪・大東市:生活保護、18歳の独立非難 抗議受け撤回
毎日新聞 2015年10月04日
大阪府大東市の福祉事務所(生活福祉課)が今年6月、生活保護の対象となっていた世帯で唯一働いていた長男(18)が独立して家を出たことについて、「世帯の自立から遠ざかる行為」と非難する内容の指導指示書を出していたことが分かった。両親から相談を受けた弁護士から抗議を受け、事務所側は指導指示書を撤回した。
市福祉事務所によると、この世帯は両親と子供3人の5人暮らしで、長男は今春、高校を卒業して就職。6月1日から女性と暮らし始め、別世帯になった。両親は就労ができないため、長男の給料の大半が世帯の収入と認定され、その分、市が支給する保護費は減っていた。
事務所側は長男が高校を卒業後、独立する意思を持っていることを把握していたことから、両親を通じ「今後の生計の維持など、自立について話し合いたい」と長男に要請していた。しかし、連絡が取れたのは、家を出た後だったという。
福祉事務所は6月5日付で「長男が高校在学中から進路について確認し、卒業後は世帯の自立のために就労するよう指示してきた。長男が世帯の中心となり、現在学生である次男や妻が就労すれば世帯の自立が可能であり、(長男の独立は)いわば自立から遠ざかる行為」などとする指導指示書を出した。
相談を受けた弁護士が8月、「指導指示書の内容は居住や移転の自由と長男の人権を侵害するもので、違法・無効であることが明らか。次男や長女に対しても同様の指導、指示を行うことのないよう強く求める」とする福祉事務所長あての意見書を提出。事務所側は「誤解を招く表現だった」と謝罪したうえで、指導指示書の撤回を世帯側に伝えた。
指導指示書は生活保護法に基づき、生活の維持や自立の指導のために対象者に交付される。市福祉事務所は「長男の独立を非難するつもりはなかった。『家を出ないように』という強制はできず、説明が不足していた」と説明している。【寺岡俊】