元外交官の天木直人氏は、19日に行われるカナダの総選挙は国民にTPPへの警戒感があるために、与党が苦戦気味だとされていることを取り上げて、安倍政権は震え上がっているのではないかと述べています。
カナダは、かつて米・加・メキシコの3国で結んだ北米貿易協定(NAFTA)で、米国とのISD訴訟において、47件で全敗するという手痛い目に遭っているので国民は簡単には騙されないのでしょう。
(関係記事)
10月8日 マスコミが伝えないTPPの問題点
TPPのEU版と呼ばれる米とEUとのTTIP(環大西洋貿易投資協定)の交渉もTPPと並行して行われていますが、ドイツのベルリンではつい10日ほど前に、10万人とも25万人ともいわれる反対デモが行われたばかりです。
また韓国ではFTA(米韓2国間自由貿易協定)の批准案が2008年10月に国会に提出されましたが、多数の誤訳があったために2011年5月に一度撤回されて、同年9月16日にようやく外交通商統一委員会で審議が始まりました。
しかしISD条項について野党側がアメリカとの再々交渉を要求して膠着状態になったため、李明博(イ・ミョンバク)大統領は11月15日、国会に出向き「米韓FTA発効後にISD条項についてアメリカ側と協議を行うと明言しました。野党側は当然発効前に行うことを要求してこれを拒否しました。
最終的には11月22日に議長の職権により批准案が強行採決されましたが、国民の怒りのデモは街頭に溢れて収まりませんでした。
このように海外ではいずれもアメリカの侵略的な貿易協定に対して強い反対運動が起きています。
今回のTPPでも、東南アジアの国々は国益を守るために交渉委員の尻を叩いたことが読み取れますが、日本だけは当初から国益を放棄してアメリカに追随しました。それにもかかわらず何故いまもこのように静かで反対運動すら起きないのでしょうか。まだ最終の詰めが残っていて妥結前だからというのでしょうか?
いずれにしても少なくとも天木氏の言うような安倍政権を震撼させる状況とは、まだまだ大きな距離がありそうです。
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安倍政権を震撼させることになるカナダの総選挙結果
天木直人 2015年10月17日
きのう10月16日の東京新聞が書いていた。
10月19日に行われるカナダの総選挙はTPP合意後、交渉参加国の中で初めて行われる選挙となると。
カナダ国民にはTPPへの警戒感があり、与党は苦戦気味だと。
この東京新聞の記事を読んだ安倍政権は震え上がったに違ない。
もしカナダの選挙結果が与党の惨敗に終わるなら、その衝撃はさらに大きなものになる。
だからこそ、それを見越して安倍政権はTPP大筋合意の直後にあわててTPP対策本部をつくったのだ。
順序が逆だろう。
本来ならばTPP交渉前に対策本部をつくって、国内産業を守るための戦略を立てるべきだ。
ところが、TPP合意によって国内産業が打撃を受けることが分かっているから、被害を受ける産業をなだめる為に予算を講じるのだ。
そのための対策本部である。
選挙目当てなのだ。
コメの自由化ばかりが騒がれていたが実はそれだけではなかった。
TPPが大筋合意を見たとたん、野菜や海産物など、これまで一度も報道されなかった品目で、次々と関税撤廃が報じられるようになった。
秘密交渉で隠されていたことを明らかにしなければいけなくなったからだ。
当然ながら関係業界は不安と怒りが渦巻く。
来年の参院選に悪影響を及ぼす。
それを占うカナダの総選挙の結果から目が離せない(了)