2015年10月20日火曜日

20- シリア国民はロシア介入で戦争終結に「期待」

 東京新聞がシリアの激戦地アレッポに国内メディアとしては初めて入りました。
 いまシリアでは、アサド政権から要請されたロシア軍がISや反政府勢力に対する空爆を行い、IS側は多大な損害を受けて劣勢となりました。
 水も電力も不足し、死の恐怖と隣り合わせで先の見えない生活を送る市民は、現状を変えるロシアの軍事介入を歓迎しているということです
 
 アメリカは、シリア国内のISを殲滅するという口実で、アサド政権の反対を押し切って空爆を開始してから1年余り、この間有志連合とともにシリア国内に行った空爆は数千回になましたがISの勢力は一向に衰えず、シリアから命からがら国外に脱出する膨大な難民が大きな国際問題となりました。
 
 なぜ5千回もの空爆を行っても劣勢とならなかったISが、ロシアのわずか数回の空爆で大打撃を受けたのでしょうか。
 アメリカの真のねらいはアメリカに「まつろわぬ」アサド政権の転覆が目的であり、そのために有用なISや反政府勢力に打撃を与えないように、またトルコから連なるISへの兵站線を破壊しないようにして、空爆を続けてきたということに他なりません。
 
 ロシアの空爆に困窮しているアメリカ(エスラエル、トルコなどもISを支援)は、今後ロシアへの非難を強めると思われますが、それはいわゆるプロパガンタに類するものです。
 この段階で反権力を貫いてきた東京新聞特派員が現地に入ったことは、正しい現地のニュースを得るうえで大変に好都合です。
 
 東京新聞と櫻井ジャーナルの記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ロシア介入 終結に「期待」 シリア内戦で疲弊の住民
東京新聞 2015年10月19日
 シリア内戦の焦点に急浮上した激戦地、北部アレッポに十八日、ロシアの軍事介入後、日本メディアとして初めて入った。ロシアが空爆で事実上支援するアサド政権軍が一気に攻勢を拡大。米欧は反発を強め、和平が遠のく懸念も指摘される。四年半に及ぶ戦乱に疲れ果てた現地は軍民問わず「ようやく終結に向かう」と過剰な期待を膨らませ、切羽詰まった状況が垣間見えた。内戦の主役は今、間違いなくロシアだ。
 
 トンネルをくぐって小部屋に入る。政権軍の狙撃手の陣地。内戦の最前線だ。銃眼の向こうに反体制派地域が見えた。無人の廃虚が広がる。「敵の士気は著しく下がった。交戦時間も短くなり、すぐ撤退していく」。中心部で戦闘を続けるアハメド大尉は「ロシア参戦の効果」と指摘した。
 
 政権と反体制派の支配地域が入り組むアレッポでは市街地が戦場。「ズーン」と腹に響く爆発音や「パンパンパン」という銃声が日常の一部だ。「そこは歩くな。敵の狙撃手に狙われる」と同行した軍当局者に何度も警告された。市民が買い物をする市場の壁にも新しい無数の弾痕が目立つ。
 水も電力も不足し、死の恐怖と隣り合わせで先の見えない生活を送る市民は、現状を変えるロシアの軍事介入を歓迎している
 
 反体制派地域に隣接するビスタン・カサル地区では、三人の幼子を連れた主婦ヤスミンさん(30)が「殺し合いには心底うんざり。ロシア軍は今の私たちにとって唯一の希望です」と言い切る。米軍による過激派組織「イスラム国」(IS)への空爆開始から一年が過ぎても混乱が続くシリア。廃虚が広がる地区の小学校校長サメル・ハラクさんは「米国の介入は言葉だけ。ロシアの介入が解決策だ。戦争が終わる。正常な教育を再開できる」。
 
 ロシアはISに狙いを絞った空爆と説明するが、シリア人権監視団(英国)などによると、実際は国際テロ組織アルカイダ系の「ヌスラ戦線」や、穏健な反体制派「自由シリア軍」系部隊も標的としている。
 
 ロシア軍の介入に合わせ、イラン軍などの地上部隊約二千人がシリア入りしたとも報じられた。政権軍高官は「冬が来る前に、アレッポから首都ダマスカスに至る幹線道路を確保できる」と断言。実現すれば、政権にとって大きな「勝利」だ。
 
 内戦に疲れているのは政権側だけではない。ビスタン・カサル地区には、反体制派地域に人道支援物資を運び込むためのゲートがある。車いすの搬入作業をしていた援助団体の担当者は「向こう側の生活環境はもっと厳しい」と語る。アレッポ南方を管轄する軍当局者は「ロシア空爆開始後、ヌスラ戦線系の部隊から和平を求める動きが出始めた」と話した。 (アレッポ・共同)
 
 
シリア政策をゲーツ元国防長官から批判されたオバマ政権はそれでもISを使ってシリア破壊を目指す
櫻井ジャーナル 2015年10月17日
 IS(イラクとレバントのイスラム首長国。ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも表記)と戦うためだとして、シリアの反政府軍を国外で訓練するという破綻した計画を続けるのは狂っているとロバート・ゲーツ元国防長官はバラク・オバマ大統領を批判したという。当然の反応であり、こうした意見が封印されている国があるとするならば、それも狂っている。
 
 恐らく、オバマ政権もそうした計画が狂っていることを承知しているはず。自分たちがISなりアル・ヌスラ(AQI)なりを使ってシリアのバシャール・アル・アサド体制を倒して傀儡政権を樹立しようとしているなどとは言えないため、そうした計画をカムフラージュとして打ち出しているだけだ。
 ゲーツは1980年代、ロナルド・レーガン政権の時代にイラクのサダム・フセイン体制をめぐってネオコンと対立したことがある。今回もゲーツが本当に批判しているのはネオコンだろう。
 
 ネオコンはズビグネフ・ブレジンスキーと同じように、ロシア制圧を目指している。ウクライナで手先として使っているのはネオ・ナチ(ステファン・バンデラ派)であり、中東や北アフリカではアル・カイダ系の武装集団。その集団はここにきてサラフ主義者やムスリム同胞団からチェチェン人などカフカス周辺を拠点としている人びとへ主導権が移ってきたと言われている。ネオコンは彼らにシリアで実戦を積ませ、ロシアと戦わせようとしていたのだろう。
 
 安倍晋三政権が従属しているアメリカの好戦派は「テロ支援勢力」であり、集団的自衛権は日本も「テロ支援勢力」に引き込む仕組み。アメリカが世界で行っている侵略行為を見て見ぬ振り、知らん振りしている人びとも安倍首相と大差はない。