日刊ゲンダイと夕刊フジが、来年の参院選について状況は決して甘くないとする記事を出しました。
どちらも政治ジャーナリスト鈴木哲夫氏の予想に基いています。
その内容は、「野党が最も躍進したケース」で、野党4党が改選121議席のうち57議席を獲得し、自民、公明両党の計52議席を上回る計算になりますが、野党連携に失敗すれば、改選部分でも自公が51議席ほど押さえ、野党5党は45議席を割り込む可能性があるとしています。
もしもそうなれば安保反対で高まった『反アベ』の熱も次第に冷めてしまうことになるでしょう。
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参院選は甘くない 野党「統一名簿」できなければ惨敗の懸念も
日刊ゲンダイ 2015年10月16日
立憲主義を破壊した安倍政権。国民は来年夏の参院選で鉄槌を下そうと手ぐすね引いている。しかし、野党が勝てるかというと、実はそんなに甘くない。
今度の改選議席は自民48、公明9で与党は57議席。野党は民主41、維新5、共産3、社民2、生活2の53議席。つまり、2010年の参院選では民主らが善戦し、自公は薄氷の勝利だったのである。
ところが、前回、2013年の選挙では様相が一変。自民65、公明11で与党は76議席。野党は民主17で、計34議席の大敗を喫している。
目下の情勢では、内閣支持率がまだ4割もある安倍自公は決して侮れないし、ヘタすりゃ前回はそこそこだった野党の大コケもあり得る。そんな懸念が「反安保法制」で一致団結した学者や市民グループなどの間で広がっているのだ。
実際、自民の改選組は手ごわい。中曽根弘文元外相(群馬)や宮沢洋一前経産相(広島)、三原じゅん子氏(神奈川)をはじめ、中学時代の全裸イジメで炎上した中川雅治氏(東京)までも当選が確実視されている。
一方、民主で当確なのは、安保国会で抗戦した元官房副長官の福山哲郎氏(京都)や元防衛政務官の大野元裕氏(埼玉)、小西洋之氏(千葉)、それに世耕弘成官房副長官の夫人の林久美子氏(滋賀)くらいだ。
政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏もこう言う。
「野党共闘がうまく運べば、勝敗を握る32の1人区でいい勝負に持ち込めるとみています。それには年内に比例代表選での統一名簿をつくる。さらに言えば、統一会派でまとまり、年明けの通常国会から対決構図を鮮明にする必要がある。しかし、野党連携に失敗すれば、安保反対で高まった『反アベ』の熱も次第に冷めてしまう。自公が51議席ほど押さえ、野党5党は45議席を割り込む可能性があります」
これがシビアな見方なのだ。民主を筆頭に野党が党利党略でグズグズしていたら安倍首相の思うツボである。
参院選衝撃予測 「野党連合」自公を逆転
政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏分析
夕刊フジ 2015年10月16日
・政治ジャーナリスト、鈴木哲夫氏の予測をもとに作成 ・「※」は、維新の党(参院11人)の分裂に伴い、(1)片山虎之助参院議員会長ら5人が新党に参加(2)小野次郎総務会長ら6人が党に残留-と仮定して算出した。
来年夏の参院選に向け、野党間で選挙協力を模索する動きが加速している。民主党と維新の党は、両党の代表、幹事長らで構成する「連携協議会」を設置し、今月中に共通政策の原案をまとめる方向だ。第3次安倍改造内閣が「経済最優先」で突き進むなか、主要野党の協力が実現した場合、与野党の勢力図はどう塗り替えられるのか。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が分析したところ、最も極端なケースでは「野党連合」の獲得議席が自民、公明両党を上回るという結果が出た。
「野党連合が実現した場合、安倍晋三首相率いる自民党にとっては非常に厳しい選挙になる」
鈴木氏はこう語る。注目の予測データは別表の通りだ。
民主党、維新の党(新党参加者を除く)、社民党、生活の党と山本太郎となかまたちの4党の協力を想定し、(1)大半の選挙区で候補者を一本化した(2)比例代表向けの4党統一名簿を作成した(3)改選1人区を中心に、共産党とのすみ分けも実現した-という前提で試算した。
野党が最も躍進したケースだと、4党は改選121議席のうち57議席を獲得し、自民、公明両党の計52議席を上回る計算だ。
鈴木氏は「安全保障関連法への反対運動は成立後も続いており、野党にとっては追い風だ。勝敗のカギを握る1人区(計32)では、自民党が半数以上の選挙区で敗れる可能性もある」と指摘する。
ただし、非改選組を合わせた参院全体の勢力(242議席、過半数は122議席)をみると、自公与党の優位は変わらない。
前述の野党躍進ケースでも、与党は128議席を占め、現有(134議席)とほぼ同程度の勢力を維持する。最も野党が低調だったケースでは、与党は現有を上回る141議席を獲得することになる。
一方、大阪市の橋下徹市長が1日に結成を表明した新党「おおさか維新の会」はどうか。
鈴木氏は「選挙区では関西で1議席確保するのがやっと。比例票も関西以外では伸び悩むだろう」として、5議席獲得と分析した。旧日本維新の会として8議席を得た2013年の参院選に比べると、見劣りは否めない。
参院選での野党共闘をめぐっては、共産党が、先の国会で内閣不信任決議案を共同提出した、野党による連立政権「国民連合政府」構想を提唱している。共産党の志位和夫委員長は9月25日に民主党の岡田克也代表と、同28日には生活の党の小沢一郎代表と会談した。
だが、共産党は綱領に「日米安保条約の廃棄」「米軍基地撤退」「社会主義・共産主義の社会への前進をはかる」「(天皇制は)民主主義および人間の平等の原則と両立するものではなく…」と堂々と掲げており、さすがに各党の忌避感は根強く、実現は困難な情勢だ。
民主党の岡田代表は9月29日の常任幹事会で、共産党との選挙協力については「候補者の調整は意味があり、話し合いは進める」と前向きな姿勢を示す一方、国民連合政府構想に関しては「あり得ない」と突き放した。
鈴木氏は「共産党側も、連立政権樹立が難しいということは織り込み済みなのではないか」と推測し、続ける。
「共産党が、他党に選挙協力を呼びかけること自体、非常に思い切った提案だ。『わが党が参画する政権を作るためだ』という大義がなければ、長年の支援者らも納得しない。最終的には(選挙区ごとに候補者のすみ分けを図るなどの)現実的な協力態勢に落ち着くのではないか」
もっとも、共産党との協力以前に、4党の比例統一名簿作成が順調に進むかも見通せない。
野党第1党の民主党内には、かつて党を割った生活の小沢代表や、12年衆院選の直前に橋下氏のもとに逃げ込んだ維新の松野頼久代表らに対して「後ろ足で砂をかけて出て行った裏切り者」(中堅)という拒否感や嫌悪感もくすぶる。
今回の予測は、あくまでも統一名簿の実現を前提にしたものだ。不調に終わった場合、「19」と予測されていた4党連合の比例獲得議席は、合計で13(民主12、社民1、維新と生活は0)に下振れする。
鈴木氏は「統一名簿ができるかどうかが全てだ。野党にとっては、次期参院選は『ラストチャンス』だと言ってもいい。ここでまとまることができなければ、自民党に対峙できる受け皿作りの好機はしばらく訪れない」と語っている。
・政治ジャーナリスト、鈴木哲夫氏の予測をもとに作成 ・「※」は、維新の党(参院11人)の分裂に伴い、(1)片山虎之助参院議員会長ら5人が新党に参加(2)小野次郎総務会長ら6人が党に残留-と仮定して算出した。