共産党の、画期的な選挙協力を含む国民連合政権の呼びかけを受けたにもかかわらず、民主党の態度は全く煮え切りません。それどころか呼びかけへの回答もしないうちに維新の党との連携を画策しているようです。
そんななか共産党の志位委員長は15日、外国特派員協会で記者会見し「連合政権では日米安保条約は凍結し、廃棄を目指す措置は取らない」ことを明言しました。
日米安保条約の廃棄は共産党がこれまで一貫して主張してきた基本的な政策です。
志位氏の主張は、安倍政権を打倒し安保法制を廃棄するという当面の課題を達成するためには、安保条約の問題は棚上げするということであって、党としてそれを捨て去るということではありません。
会見に出席していたジャーナリストの神保哲生氏は、「共産党はこれ以上ないほど譲歩しています。自分たちの政策をほぼ丸々封印してまで野党で共同戦線を張りたいと言う。『必ずしも閣内協力とは限らない』とも言った」と、その本気度を高く評価しました(日刊ゲンダイ)。
また元外交官で、当時の小泉首相がアメリカのイラク侵略に同調したことに抗議して職を失った天木直人氏は、「共産党が日米安保条約を廃棄する大方針を変更するわけではなく、安倍政権打倒という緊急避難的な国民連合政府の実現に向けて、日米安保を棚上げするというは大英断」と評価しました。
それでもまだ共産党との協力ができないということであれば、民主党には現今の政治のあり方に対する危機感があるのかが疑われることになります。
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主張も“封印”し現実路線に志位共産党
「野党共闘」への本気度
日刊ゲンダイ 2015年10月16日
共産党が呼びかけた「国民連合政府」構想は、民主党の岡田克也代表が「ハードルが高い」と難色を示したことで、世間の関心は下火になった感がある。だが、「違憲の安保法廃止」と「集団的自衛権行使を容認した昨年7月の閣議決定取り消し」への共産党の覚悟は、想像を超えるハンパなさだ。
いずれも国会で多数を取って、政権奪取しなければ実現できない。そのためなら、共産党は「日米安保条約の廃棄」や「自衛隊の解消」という従来からの主張を“封印”する、というのである。
共産党の志位和夫委員長が15日外国特派員協会で記者会見し、日米安保条約に関してこう言った。
「政策的に違いのある政党が暫定的であれ政権を共にするのは無理とメディアは言うが、『立憲主義の回復』は根幹の大問題で、あれこれの政策課題とは次元が違う。国民連合政府としては、相違は横に置いて、現行の法律と条約の枠内で対応する。日米安保条約については凍結する。廃棄をめざす措置は取らない」
これに対し記者が、「国民連合政府が政権運営している時に有事が起きたら、自衛隊と在日米軍の出動を要請するのか」と突っ込むと、志位委員長はこう強調した。
「(政府としては)『凍結する』と言っているのですから、自衛隊法がある以上、有事の時に自衛隊を活用するのは当然のことです。現行の日米安保条約の第5条で日本が武力攻撃を受けた際は共同で対処すると述べられています」
会見に出席していたジャーナリストの神保哲生氏は、共産党の本気度をこう見る。
「共産党は、これ以上ないほど譲歩しています。自分たちの政策をほぼ丸々封印してまで野党で共同戦線を張りたいと言う。志位さんは『必ずしも閣内協力とは限らない』とも言いました。政権に近づくのが目的だとか、うがった見方が出ていますが、そうではないという印象を強くしました。一点突破で安保法を廃止したら、解散して総選挙ですから、ついでに他の政策をやろうというのでもない。むしろ他の野党は、共産党と共同戦線を張れないのなら、あれだけ抵抗した安保法反対は本物だったのかが問われます」
30分間のスピーチで志位委員長は、「本気」という言葉を10回も使った。立憲主義を踏みにじり、民主主義を亡きものにする安倍政権を倒すため、民主党も、もっと現実的になるべきだ。
日米安保容認を言い出した共産党の本気度
天木直人 2015年10月16日
共産党の志位委員長がきのう10月15日に日本外国特派員協会で記者会見し、国民連合政府が実現した場合、日米安保条約の廃棄を求めない考えを示したらしい。 きょうの各紙が一斉に書いている。「清水の舞台から飛び降りる覚悟」で連立政権構想を言い出したのは、こういうことだったのだ。
もしこれが、共産党が今後日米安保を容認するという方針に大転換したのなら、私は共産党を見限る。そして「共産党は隠れ親米、従米の裏切り政党だ」と批判する、共産党よりももっと過激な左翼の連中の言い分が正しかったということになる。
しかし、報道を詳しく読むと、同時に志位委員長はこう言っている。
「日米安保条約を廃棄する大方針を変更するわけではない」と。
つまり安倍政権打倒という緊急避難的な国民連合政府の実現に向けて、日米安保を棚上げするということだ。それを私は、大英断と評価する。
しかし、ここまで言っても民主党は乗って来ないだろう。
岡田民主党の中枢を占める連中と、その連中が優先的に連携を進めようとしている、旧みんなの党を含む松野維新の党の連中は、共産主義を掲げる日本共産党を認めないからだ。
だから、いくら志位委員長がラブコールを送っても、いつまでたっても民主・維新の党と共産党の協力は進まない。進んでも中途半端な選挙協力に終わって、とても安倍自公政権を倒すところまではいかない。
共産党が本気で安倍政権を倒そうと思うのなら、まず社民党や生活の党との統一を目指すべきだ。日本共産党という名前を変えて彼らと新党をつくるのだ。
もはや将来性のない社民党や生活の党にとって、もし彼らが保身や私利私欲と無縁であれば、解党して新党をつくることに反対しないはずだ。
少なくとも報道されている限り、打倒安倍に対する思いも、政策も、この三つの政党は一番近い。そして、これら三党が打倒安倍政権を掲げた新党を作れば、支持政党のない多くの反安倍自公政権の国民は、次の参院選で新党に投票するはずだ。
そして新党を結党したあとの世論調査において、この新党は、維新の党はもとより、野党第一党の民主党よりも高い支持率を示すかもしれない。もしそうなれば、「政治は数だ」の言葉通り、民主党や維新の党は向うの方から近寄って来ることになる。
しかし、共産党は社民や生活の党との統一を呼びかけることはないだろう。 日本共産党の名前にこだわり共産主義にこだわり続ける。そして社民や生活の党もまた、共産党との統一を選ばないだろう。彼らのエゴがあるからだ。
ここに、この国の既存の政党・政治家の限界がある。よほどの事が無い限り、既存の政党、政治家の離合集散では安倍自公政権は倒せない。
そのよほどの事とは何か。それはわからない。
しかし、はっきりしていることは、日本の情勢が落ちるところまで落ちるときだ。
国民が悲鳴を上げる時だ。
そうなる前に安倍暴政を止めなければいけないのである(了)
共産党の「危機的事態」認識は正常だ。
日々雑感 2015年10月16日
(「日刊ゲンダイ」よりの引用部分は省略)
共産党の志位委員長の日本が置かれている「危機事態」認識は正常だ、と思わざるを得ない。それまでの党是を封印してまで、ここは一先ず「憲法無視」の安倍自公政権を倒さない限り戦争の悪夢へ日本国民を引き摺りこむ暴走を止めることは出来ない、という認識だ。
片や最大「野党」の民主党は何たる体たらくだ。彼らこそ党を解体してでも立憲主義を死守する「野党連合」の提唱を呼びかけるべきだった。しかし米国隷属の意を表している民主党幹部たちにとって、安倍自公政権とガチンコで対決する覚悟も決意もない。
何しろ、現岡田党代表は当時の鳩山首相の「最低でも県外」に外務大臣として面と向かって反対した張本人だ。彼は間違いなく米国のジャパンハンドラーに取り込まれている。他の菅氏や野田氏などの消費増税とTPP参加を提唱した首相経験者たちも勿論のこと、当時の閣僚たちも安倍自公政権の政治家たちと全く同類の隷米政治家だ。
彼らは共産党の呼びかけを苦々しく聞いたに違いない。第二自民党に堕した民主党と、自民党の補完政党の維新の党は「戦争法」に反対ではない。その証拠に対案や修正協議を持ち掛けたではないか。「戦争法」は集団的自衛権に賛成であれ反対であれ、周辺事態法に賛成であれ反対であれ、とにかく違憲法の制定には「反対」だという筋を通すべきだ。
共産党の「野党連合」の呼びかけは正しい。それに逡巡する民主党や維新の党は既に野党としての資格はない。彼らは自民党へ入党要請を行うべきだ。その方が国民にとって解り易いだろう。