2020年5月6日水曜日

06- 安倍首相にはPCR検査を拡充する気はなかった

 先進国集まっている経済協力開発機構(OECD)4月28日人口1000人当たりPCR検査人数を発表しました。
 それによると日本は僅かに18人で、加盟国36か国中35位です(トップアイスランドの135人最下位はメキシコの04人)。
 OECD加盟国の平均は231人で、日本はその13分の1に過ぎません(イタリア297人、ドイツ251人、スペイン223人、アメリカ164人韓国117人 等)。

 この異常な少なさは早くからWHOなどから指摘されていたことですが、安倍政権は一向に改善しようとしませんでした。それは「PCR検査を増やすと医療崩壊が起きる」などと言って検査を抑制してきた専門家会議も同罪で、4日の会見の際に副座長が検査数が拡大しない理由をいくつか挙げていましたが、どれも納得できるものではありませんでした。
 検査が不十分で感染者の実態が不明では行動の自粛や休業をいつ止めるか、判断の見極め(出口戦略)ができません。
 早くから出口戦略に関心を持っていた大阪府は5日、下表の数値を「7日間連続で達成すること」との基準を発表しました。


大阪府の外出自粛、休業要請緩和の判断基準

1日あたりの感染経路がわからない患者数 
10 未満

検査を受けた人のうち陽性者の割合
07% 未満

重症の患者を受け入れる病床の使用率 
60 未満

 いうまでもないことですがこれらは十分な検査が行われていることが前提となります。
 大阪府はある程度の見通しを持っているのでしょうが、首都圏のように超過少な検査数では、そもそも陽性率7%を達成できません(無理な解釈で誤魔化してもすぐに感染爆発につながります)。首都圏を除いた他の地域を解除するのは首都圏との交流遮断が条件となるので、満足な社会活動・経済活動と両立しません。
 
 諸悪の根源はPCR検査の極端な少なさです。一体何故こんなことになったのでしょうか。理由は極めて単純で「民間によるPCR検査には金がかかる」からでした。
 トランプに言われれば役に立たない兵器に何兆円も使うくせに、直接国民の生命にかかわることにケチケチした結果、いま大勢の国民が困窮の極みに達し、日本の経済は破綻の瀬戸際に追い込まれました。回復の見通しは全く不明です。
 愚かというしかありませんが、とてもそんな軽い言葉で済まされるような問題ではありません。

 LITERAの記事とブログ「植草一秀の『知られざる真実』」を紹介します。
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安倍首相はPCR検査拡充を「やる気」なんてなかった!
保健所パンクを放置し民間検査を進めなかった原因を徹底検証
LITERA 2020.05.05
 緊急事態宣言の期限延長を受けて、昨日4日、記者会見をおこなった安倍首相。延長にともなう補償策を打ち出さなかったことは既報でお伝えしたが、一向に増えないPCR検査についても、無責任極まりない発言をおこなった。
 安倍首相は「PCR検査の実施可能数を2万件に増やす」と豪語しているが、いまだに検査数は1万件にも届かない体たらく。捕捉できていない感染者がかなりの数にのぼることは明白で、この調子では緊急事態宣言の解除など到底おこなえないような状態にある。当然、会見では記者からもPCR検査についての質問が相次ぎ、「PCR検査を本気で増やそうとしていなかったということなのか、それとも実際に本気で増やそうとしたのに本当に増えなかったのか」と問われたのだが、そこで安倍首相はこんなことを言い出したのだ。

「もちろん、本気でやる気がなかったというわけではまったくありません。私は何回も、とにかく(検査)能力を上げていくと。実際、能力は上がってきているわけであります。国としてできることは、予算をつけて能力を上げるということでありまして」
 抗弁するにしてもよくもまあ、こんな言葉が出てくるものだ。安倍首相はようするに「本気でやってきた」とは胸を張れず、「やる気がなかったわけじゃないんだけど」「検査能力を上げろとは言った」と、宿題を忘れた小学生みたいな稚拙な言い訳を繰り広げたのである。
 だが、安倍首相に「そこそこのやる気」さえあったとはとても思えない
 たとえば、PCR検査が増えない理由について、安倍首相は「本日の専門家会議の分析、提言」だとした上で、原因のひとつに「各自治体における保健所の業務過多」を挙げた。しかし、後手後手対応で「保健所の業務過多」を放置してきたのは、言うまでもなく安倍政権だ。
 実際、そのことを象徴する、唖然とするような発表を厚労省が4月30日におこなった。それは、こういうものだ。

〈厚生労働省は2020年5月中旬をメドに、新型コロナウイルス感染者の情報を全国で一元管理する情報システムを稼働させる。全国の保健所や病院が感染者情報を新システムに入力することで、国や自治体などが感染状況をいち早く共有できる体制を整え、医療機関は患者の治療にも活用する。〉
〈これまで感染者情報を集約するには保健所から都道府県に報告するなどの段階を経ていたが、新システムでは保健所や病院が直接入力する体制に移行する。システム開発費用は10億円程度という。〉(日経クロステック1日付)
「感染者情報の全国一元化」などという初期の初期に導入しておくべきシステムを、5月中旬に稼働させる……。この遅れっぷり自体が衝撃的だが、感染者情報の管理という観点だけではなく、これは安倍政権に、保健所に集中している業務を軽減しようという視点がまるでなかったことの証明でもある。

民間のPCR検査体制はなぜ構築されなかったのか? 理由は「金がかかる」から
 そもそも、保健所が大変なことになるというのは最初からわかっていたことだ。事実、歴代の自民党政権は社会保障費を抑え込むために保健所を削減、1992年には852カ所あったが、2019年には472カ所にまで減少した。そして、新型コロナ対応で保健所が圧迫されるということは2月の段階から野党が指摘、体制の強化を訴えていた。だが、その意見を無視してきただけではなく、保健所から「限界を超えている」という悲鳴があがっている最中に、妊婦向け「アベノマスク」の不良品の確認作業までを一部の保健所がおこなわされていたことも判明している。
 にもかかわらず、PCR検査数が増えない理由を安倍首相は「保健所の業務過多」にあると言うだけで、自分がその体制強化を怠ってきたことの責任は頬かむりするのだ。
 いや、大前提として、PCR検査数の少なさについてはもう3カ月近く指摘されてきたことなのだ。実際、『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)はPCR検査数の少なさを一貫して疑問視し、ドライブスルー検査や発熱外来の設置などを提案しながら徹底した検査の実施を訴えてきた番組だが、2月13日の放送ですでに「民間の検査機関を使えば、万単位の検査がすぐにでも可能だ」と伝えていた。2月の時点で民間検査の体制づくりが一気に進んでいれば、いまの状況はまったく違ったはずだ。

 では、なぜこのとき、民間検査の体制は構築されなかったのか。その理由は「民間検査には金がかかる」からだ。現に、厚労省幹部は「民間での実施は費用が高額になる」とコメントしていた(朝日新聞デジタル2月10日付)。
 やろうと思えばやれるのに、やらない理由が「高額だから」……。しかも、『モーニングショー』ではこの放送回で、厚労省にPCR検査の保険適用を検討しているかと質問したのだが、その回答は「将来インフルエンザの検査キットのように一般病院でも簡単に検査できるようにすることが今後の課題。そうなれば商品薬として保険適用する」という、いま見ても信じられないような危機感のなさだった。その後、遅れに遅れて3月になってようやく公的保険が適用されるようになったが、期待された民間検査の活用はいまだに進んでいるとは言い難い状態だ。
 こうして振り返れば、いかに安倍政権にPCR検査を増やそうという「やる気」がまったくなかったか、よくわかるというものだろう。一方、“安倍首相の代弁者”である田崎史郎氏は「厚労省の医系技官が医療行政を牛耳っている。大臣の言うことも、総理大臣の言うことをきかない人たちなんです」と説明しているが、これまで人事権を盾にして官僚を支配してきた安倍政権が、強権を発動できないわけがない

青木理は「検査が増えないのは明らかに政府が無能だから」と一刀両断!
 現に、安倍首相の「やる気のなさ」は予算にはっきりと表れている。前述したように、昨日の会見で安倍首相は「国としてできることは、予算をつけて(検査)能力を上げるということ」と述べたが、安倍政権が成立させた補正予算では、厚労省予算で「検査体制の確保」に49億円しか計上していない。新型コロナ収束後の消費喚起策「Go To キャンペーン」に約1兆7000億円も充てておきながら、PCR検査体制の確保のための予算がそのわずか数百分の一とはあまりに少なすぎるが、じつはこの49億円は検査体制強化のための予算ですらない。PCR検査の自己負担分の免除のためと、新型コロナの発生動向調査の経費支援に割り当てられるものにすぎないのだ。
 さらに、国がまったく動かないために日本医師会や自治体が痺れを切らし、ようやく自治体で検査センターの設置がはじまったが、この予算について、各自治体は補正予算などから捻出している一方、安倍政権はそのための整備費用を補正予算に計上していない。29日の衆院予算委員会でこの問題を取り上げた日本共産党の志位和夫委員長によると、この検査センターの整備には「全国で数百カ所つくるとなれば200億円程度が新たに必要になる」と言うが、「Go To キャンペーン」に約1兆7000億円も計上する前にこっちに予算を回すのは当たり前の話だが、安倍首相はそれすらしなかったのだ。
 休業補償の問題とも通底するが、この安倍首相の「やる気のなさ」は、国民の健康や生命、暮らしを本気で守るつもりはない、ということの表れである。本日放送の『モーニングショー』でジャーナリストの青木理氏は「あえて言いますけど、たかが検査なんですよね」と言い、その数が一向に増えないことの安倍首相の責任に言及し、「検査がこれだけ増えないというのは目詰まりと安倍さんおっしゃってましたけど、ごめんなさい、僕は明らかに政府が無能だからだと思いますよ」と述べていたが、この“やる気ゼロの無能政権”にこのまま任せていていいのか、国民は、よくよく考えるべきだ。(編集部)


「三ミス」が安倍内閣コロナ対応失敗の主因
植草一秀の「知られざる真実」 2020年5月 5日
安倍内閣のコロナ対策が失敗している理由は「三ミス」にある。
「三ミス」とは
1.感染者数隠蔽=五輪ファースト
2.ドケチ財政
3.利権ファースト   だ。
安倍内閣のコロナ対策失敗を主導したのは 安倍-加藤-尾身のインパールトリオ。悪名高きインパール作戦の東条-河辺-牟田口に類似する。
安倍晋三首相、小池百合子東京都知事は3月24日に東京五輪の延期が決定されるまで、五輪の7月開催強行を基軸に行動した。
日本でコロナウイルス感染者が確認されたのは1月16日のこと。中国の武漢での感染拡大が重大ニュースになっていた。
本ブログでは1月25日付記事「常に後手に回る政策対応が日本崩壊の主因」https://bit.ly/3adaWlX に「安倍内閣は利権まみれの東京汚リンピックを推進しているが、新型肺炎の感染拡大によって東京汚リンピックが開催中止に追い込まれる可能性も否定し切れない。
危機意識の乏しいトップの対応が、多くの問題を引き起こす。日本国内で感染が拡大するリスクを否定できない。内外の経済活動にも重大な影響が広がるだろう。」と記述した。

ところが、安倍首相は1月24日、在中国日本大使館公式HPに「安倍晋三内閣総理大臣春節(旧正月)祝辞」を公表し、このなかで
「春節に際して、そしてまた、オリンピック・パラリンピック等の機会を通じて、更に多くの中国の皆様が訪日されることを楽しみにしています。」と記述した。

中国でコロナウイルス感染拡大が猛威を奮うなかで、安倍首相は中国の国民に対して訪日を期待するメッセージを送ったのだ。
その後、ダイヤモンドプリンセスの悲劇が発生した。主因は安倍内閣が乗員、乗客3711人に対してPCR検査を273人にしか実施せず、全員を狭い船内に監禁したこと。
これ以来、安倍内閣はPCR検査妨害を続けている。
世界各国がPCR検査を徹底的に拡大するなかで、安倍内閣はPCR検査妨害を続けてきた。
最大の理由は感染者数の隠蔽にあったと考えられる。
ダイヤモンドプリンセスの悲劇が拡大して安倍内閣はコロナ対策を示さざるを得なくなったが、3月19日の専門家会議提言を受けて対応緩和を示した。全国小中高の再開を宣言したのだ。
3月20日から22日の3連休の人出が拡大したのはこの政府方針変化を背景とするものだった。
東京都に至っては3月1日に7万人の濃厚接触を生み出す東京マラソンを強行した。

PCR検査妨害を主導してきたのは加藤勝信厚労相。加藤厚労相の行動は万死に値する。
5月4日の会見ではPCR検査を徹底して抑止してきたことについて、言い訳にもならない説明が示されたが、政府に意思があればPCR検査を拡大することは十分に可能である。
PCR検査を拡大させる意思がなかったことが問題なのだ。加藤勝信厚労相はPCR検査を妨害する意思を持ち続けてきた。
PCR検査を妨害してきた理由が、感染者数隠蔽、ドケチ財政、利権ファーストだ。
PCR検査には1件当たり1万8000円程度の費用がかかるとされる。100万件の検査を実施すれば180億円の費用が発生する。安倍内閣のドケチ財政方針が検査抑制をもたらした。
さらに、PCR検査妨害は「愚策と利権の専門家」会議にとっても良策だった。
感染研・地方衛生研の検査能力が小さく、検査件数をこの範囲内に収めようとした。
理由は検査利権と検体データ収集を感染研・衛生研が独占するためである。
今後の治療薬およびワクチン開発が巨大利権になる。
感染者数隠蔽・ドケチ財政・利権ファーストの「三ミス」が安倍内閣コロナ対策失敗の主因であることを確認しておく必要がある。
(以下は有料ブログのため非公開)