2020年5月1日金曜日

政府はコロナ医療危機を無視し「病院のベッド数削減」政策を維持

 29日までの20年度補正予算案の審議では、コロナ収束後に実施する観光・飲食などへの消費喚起策「Go Toキャンペーン」に1兆7000億円を計上していることが問題になりましたが、政府は必要だとして押し切りました。
 それと同時に、例の「地域医療構想」と銘打った病院の統合と病床数の削減などを目指す方針はそのまま堅持すると公言しました。
 コロナ禍が広がる中で、そのセンターとなる国立感染研が政府の方針によって10数年来一貫して人員を減らされ予算も削られてきたことが問題視されました。
 それに加えて政府は25年までに全国の病床数を合計で13万床も減らす(そうすると必要数よりも33万床が不足)というものです。
 そしてこの病院の統合や病床の削減に必要な経費644億円は予算から削らないとしました。

 ところで当面絶対的に必要な集中治療用病床(ICUベッド)の10万人当たりの設置数は、日本は僅かに73床で、これは医療崩壊を起こしたとされるイタリア(125床)やスペイン(97床)よりも少ないです。
 因みに米(34・7床)、独(29・2床)より圧倒的に少なく、仏(11・6床)や韓国(10・6床)にも及びません。コロナの国内発生から既に3ヶ月以上が経過していますが、その間に政府はこの充実に向けては何一つしようとしませんでした。

 韓国国会が30日未明に、新型コロナウイルス対策として全世帯に支給する「緊急災害支援金」の財源確保に向け、軍事費9897億ウォン(約850億円)を削減し、総額12兆2千億ウォンを支援金支給に投入することを決定したのとは決定的な違いです。
 国民の人気取り(結果的に的外れ)を目指す一方で、PCR検査の充実等には何も効果的な施策を講じないまま、全体として逆方向に進めようとしているのが日本の政府です。

 LITERAが取り上げました。
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安倍首相がコロナ医療危機を無視し「病院のベッド数削減」政策の維持を宣言! しかも削減するため予算644億円を投入
LITERA 2020.04.30
 本日、新型コロナの緊急経済対策を盛り込んだ2020年度補正予算案が参院本会議で可決、成立した。本サイトでは繰り返しお伝えしてきたが、安倍政権はこの補正予算案のなかで、新型コロナ収束後に実施するという観光・飲食などへの消費喚起策「Go Toキャンペーン」に1兆6794億円を計上。これには「収束後の予算を付けている場合か」「そんな予算があるなら医療現場にマスクや防護服を!」といった批判が殺到、野党も先送りを求めていたが、これを与党は蹴ったのだ。
 だが、本日おこなわれた補正予算案の審議では、さらにとんでもない発言が飛び出した。新型コロナ対応で全国の医療現場から悲鳴があがるなか、安倍首相と加藤勝信厚労相はなんと、病床削減の推進を明言したのである。

 そもそも安倍政権は、医療費削減を狙った「地域医療構想」を掲げ、その実現のためとして「病床のダウンサイジング」を打ち出した。これはその名の通り、入院ベッド数を減らすことで医療費を削減しようというものなのだが、さらに政府は昨年9月に「再編統合の議論が必要」だとする全国424の公立・公的病院を名指ししたリストを公表。名指しした病院がある都道府県に2020年9月までに統廃合の結論を出せと迫り、一方、統廃合や病床削減をおこなう病院には全額国費で補助金を出すとし、このために2020年度予算で84億円を計上。これらの施策により、2025年度までに全国の急性期病床を約20万床減らすという。
 しかし、新型コロナの感染拡大によって、医療機関の病床不足が深刻化。感染症指定医療機関の専門病床ではない一般病床や、感染症が専門ではない一般の病院も、院内感染に怯えながら患者の対応に追われていることは、周知のとおりだ。
 病床が圧倒的に足りないと現場から悲鳴があがっているいま、まさか逆に病床を減らすなんてバカなことをやるはずがない。そんなことは当たり前だ──。そう思いきや、安倍首相と加藤厚労相は、きょうの衆院予算委員会で、まさかの答弁をおこなったのである。

 この問題を取り上げた国民民主党の森裕子参院議員は、病床削減のための補助金84億円、さらに「地域医療構想」の達成に向けた医療機関の施設整備事業に560億円、計644億円が投入されていることについて、安倍首相をこう追及した。
「公的病院の病床数の削減に644億円。なんでいまさらやるんですか! 支離滅裂ですよ! どうやって地域の医療提供体制を充実させようかというときに644億円もかけて、ダウンサイジングですか。中止してコロナ対策に使ったほうがよっぽどいいじゃないですか! 総理!」
 しかし、安倍首相が答弁を求められたにもかかわらず、加藤厚労相が手を挙げ答弁席へ。そして、こう言い放ったのだ。
「いやいや、そうではなくて、その地域に必要な医療の人的な財源をより効率的に使って、よりしっかりとした医療サービス、その地域にあったサービスをしていこうということですから、これは当然、つねにやっていかなきゃいけないことなんですよ」
「コロナ対策はコロナ対策で交付金を実施していきます。それから地域に必要な医療構想をするためにはこのお金を使ってまいります。これは当然、両方やっていかなくてはいけない。ただ、地域医療構想を進めるスケジュール感は、もちろん地域はいまコロナの取り組みに集中しているわけだから、スケジュールは地域とよく相談して進めていく」
 病床が足りないと言っているさなかに、病床を削減する政策を「つねにやっていかなきゃいけないこと」だと宣う……。絶句するほかないが、その後、ようやく答弁席に立った安倍首相も、こう断言したのだ。
「これはですね、いわば地域の医療提供体制を削ろうというわけではなく、地域に合ったかたちの医療のあり方、より効率的なニーズに合ったかたちの提供の仕方についてかたちづくっていく、そのための支援の予算だ」

安倍政権から再編統合を名指しされた千葉市立病院は「ベッドなんて余ってない、ぎりぎり」
 安倍首相も加藤厚労相も「地域にあった医療をかたちづくる」などと言うが、それよりもいまただちに必要なのは、患者の受け入れ先確保、すなわち病床の確保だ。にもかかわらず、この期に及んで医療費削減のための施策を「やっていかなきゃいけない」と言うのだ。頭がおかしいとしか言いようがないだろう。
 実際、病床削減のための再編統合が必要だと政府に名指しされた病院はいま、新型コロナ対応による病床不足で切迫した状況に追い込まれている。たとえば、千葉市立青葉病院の岡崎太郎事務局長は「新型コロナへの対応で、余力がないぎりぎりの状態。ベッド数が余っているなんてことは全くありません」と現状を明かしている(東京新聞4月25日付)。だが、安倍首相も加藤厚労相も、こうした現実を無視するのだ。
 また、加藤厚労相は「スケジュールは相談する」と言ったが、新型コロナの収束の目処はまるで立っていない。いや、今回の騒動によって日本がいかに医療体制が脆弱であるかがはっきりしたのだから、感染症が全国で蔓延する場合を想定した医療体制の強化、医師・看護師など医療従事者の人手不足の解消といった抜本的な改革が必要なのは言うまでもない。「地域医療構想」はそれと逆行するもので、廃止するのが当然だ。

 ところが、廃止どころか「やっていく」と推進を明言するとは……。しかも、安倍首相は、新型コロナ対応で確保している病床数について、嘘をついたばかりだ。
 安倍首相は2日の衆院本会議で、「ピーク時の入院患者数等は現在集計中ですが、治療のために必要な病床としては、現時点において感染症指定医療機関の病床を最大限動員し、2万5000床を超える病床を確保しております」と豪語した。
 だが、これは嘘だった。東京新聞17日付の記事によると、この2万5000床という数字は、厚労省が「指定医療機関にある一般病床も含めた空きベッドの数を都道府県に報告してもらい、足し合わせた」ものだった。一方、病床数を報告した都道府県の担当者は〈国に報告した空きベッド数がそのまま「コロナ対応の病床」として計上されていることを知らなかった〉というのだ。つまり、厚労省は新型コロナ患者に対応できるベッド数ではなく、たんに空きベッド数を挙げさせ、それを足したにすぎなかったのである。そして、実際に新型コロナに対し各都道府県が確保できたとする病床の数は、この記事が出た時点で東京新聞が計算したところ、なんと計1万607床でしかなかったのだ。
 この「2万5000床確保」という安倍首相の嘘は、安倍首相の「やってる感」のアピールのために厚労省が最大限の数をはじき出すべく恣意的にやったとしか考えられないものだが、安倍首相は嘘をついただけではなく、このような緊急事態の真っ最中であるにもかかわらず、国民の命を守る最前線である病院のベッド数を減らすことに執心しているのである。
 国民の命・健康を守ることに注力するのではなく、むしろ地域医療を崩壊させることに税金を使う──。新型コロナという危機に晒されてもなお、人命第一の対応をとらない安倍政権。これこそが最大の「国難」なのである。(編集部)