2020年5月4日月曜日

04- いまのままでは緊急事態は半永久的 なぜ韓国、台湾に学ばないのか

 日本はPCR検査数が諸外国に比べて桁外れに少ないにもかかわらず、いまだに東京都内の検査数が平均1日261人(4月1日~5月2日)、国全体で平均1日約3750人(同)というありさまです。これでは永久に桁外れの状態から脱せません、
 一方、抗体検査から得られた陽性率は3.3%(神戸)~6%(東京)で、いま確認されている東京の感染者数約4,480人や全国の感染者数約14,700人はあまりにも少ないことが分かります。氷山の一角とも呼べないほどの少なさで、これでは実態の把握も出来なければ、行動自粛・休業の効果を分析したりそれを止めるための基準を定めることも出来ません。
 それが明確にならないといつになっても行動自粛等を止める決断がつかないし、無理に決めたところでまた感染拡大が起きて、国民に多大な痛みを与える行動自粛等をダラダラと繰り返すことになります。政府の無為無策がそういう形で今後も国民に犠牲を強いるわけです。
 政府や専門家会議は一体どう考えているのでしょうか。

 これと対照的なのが台湾であり韓国です。台湾は12月末の時点で新型コロナの対策本部を立ち上げ、見事な水際対策で死者6人で乗り切りました。
 韓国は「マーズの感染対策」での失敗を教訓に、いち早く「検査と隔離」を徹底する体制を構築しました。全国にプレハブのPCR検査場を500近く設置し、ドライブスルー方式も編み出し、検査キットも自国で開発しました。その結果現在の1日当たりの新規感染者数は0~1桁台になり、見事に抑え込みに成功しました。日本とは雲泥の差です。
 
 日刊ゲンダイが「緊急事態は半永久的? なぜ韓国、台湾に学ばないのか」とする記事を出しました。
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緊急事態は半永久的? なぜ韓国、台湾に学ばないのか
日刊ゲンダイ 2020/05/02
 感染状況も知らないコロナ本部長、責任を押し付け合う政治家と専門家、司令塔不在の場当たり、出口戦略なき自粛の長期化。“巣ごもり”で感染者が減っても一時しのぎにしかなりゃしない
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 新型コロナウイルスの感染を封じ込める緊急事態宣言は、やはり1カ月ほど延長されることになった。1日、報道陣のぶら下がり取材に応じた安倍首相は「5月4日に決定したい。国民の協力に感謝しているが、さらなる協力をいただく以上、記者会見を開いて私から説明したい」と表明。4日午後に衆参両院の議院運営委員会で事前報告後、コロナ禍をめぐる6回目の記者会見を開く見通しだ。

 これに先立って開かれた政府の専門家会議は、引き続き外出自粛など感染防止対策の徹底を要請。その後の会見で、尾身茂副座長は全国の感染状況について「新規感染者が減少していることは間違いないが、スピードは期待したほどではない。(対策期間は)半年か1年か誰もわからない」と言葉を濁し、対応は長丁場になるとの認識を示した。おそらく緊急事態は半永久化するのではないか。国内感染1例目の確認から5カ月。PCR検査はいまだ16万5609件(4月30日正午現在)しか実施されず、政府も専門家も感染の実態を把握せず、コトに当たっているからだ。

 緊急経済対策実施に向けた2020年度補正予算案が審議された先月29日の参院予算委員会。国民民主党の森裕子議員が「感染状況わかんないんじゃないですか? そんなに検査してますか? いま現在、一体どれくらいの国民が感染しているんですか?」と質問すると、閣僚席はシーン。新型コロナ対策本部長の安倍はあからさまにろうばいし、後列の加藤厚労相の方を何度も振り返り、落ち着きなくキョロキョロ。事務方の耳打ちを経てようやく答弁に立つと、「今の感染者数というご質問はいただいていなくてですね。これ(質問通告)にあるのではですね、緊急事態宣言を解除延長する……あの質問でございまして、今しておられることについては、質問の通告がされていない。ということは、まず申し上げておきたい。それはそうですよ、だってこれに書いてない。これに書いてないじゃないですか」と早口でまくしたてて逆ギレ。敵を知らず、己も知らず、どう闘うというのだろう。

また科学的知見ナシの場当たり
 専門家会議の無責任体質にしたって、周知の通りだ。PCR検査を待つ間に容体が急変した女優の岡江久美子さんが急逝すると、メンバーの釜萢敏氏(日本医師会常任理事)は「4日様子を見てくださいというメッセージと取られたのですが、そうではなくて、体調が少し悪いからといって、みなさんすぐ医療機関を受診されるわけではないので、いつもと違う症状が少なくとも4日続くのであれば、ぜひ相談していただきたい。そういうことでありました」と言い訳。厚労省が2月17日に定め、全国の医師会にも通知されたルールには、PCR検査受診の相談ができるのは〈風邪の症状や37・5度以上の発熱が4日以上続く方〉との条件がしっかり記されているのに、だ。同じくメンバーの押谷仁東北大教授に至っては、「私やクラスター対策班が参加する前に、PCR検査の目安は出されていた。これには私は関わっていない」と自己弁護に走った。

 感染状況も知らないコロナ本部長、責任を押し付けあう政治家と専門家、司令塔不在の場当たり、その先にあるのは出口戦略なき自粛の長期化である。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。
「安倍政権のコロナ対策は一貫して行き当たりばったり。補正予算が成立すると、安倍首相は自民党の二階幹事長らに緊急事態宣言の延長方針を真っ先に伝え、専門家会議の議論は後付け。イベント自粛や一斉休校の要請もそうでしたが、科学的知見に基づかない思い付きの判断を相変わらず繰り返している。これでは事態を収束させられるとはとても思えない。PCR検査件数を画期的に増やさなければ、陽性者の増減が政府の方針に左右されている疑惑もぬぐえません」
 安倍は「5月7日から、かつての日常に戻ることは困難だ。ある程度の持久戦を覚悟しなければならない」とも言っていたが、なぜ長期戦になるのか。韓国、台湾を見習わないのか

PCR検査予算は「1日500回分」
 安倍が何かと見下す韓国は正常化に向けて動きだしている。PCR検査の徹底で陽性者を把握し、トリアージ(優先順位)を活用した隔離措置で医療崩壊を防いだ結果、先月30日に新規感染者が初めてゼロになった。政府の緊急承認で増産された検査キットは引く手あまたで、企業はテレワークから通常勤務に切り替え始めたという。WHO(世界保健機関)にいち早く情報を提供し、警戒を呼び掛けていた台湾も防疫措置の緩和を探り始めている。世界に先駆けて中国人の入国を禁止し、入国者の隔離措置を実施。マスク増産と事実上の配給制で感染と混乱を抑え、死者は6人にとどまっている。

 各国がそのノウハウを学び取ろうとする中、この国は隣国の成功事例に見向きもしない。水際対策に失敗し、「医療を守る」と全力投球したクラスター潰しにも大失敗。市中感染が蔓延し、無症状感染者の診療などで院内感染が広がっている。本末転倒だ。PCR検査を積み上げて感染実態の把握に努めるのが急務なのに、厚労省の補正予算に計上された検査費用は49億円。55万回分で1日当たり1500件だという。安倍がブチ上げた「1日2万件への倍増」を実行すれば27日で予算は底を尽き、1500回に抑えれば366日分。トコトンふざけている。

どんどん出口を遠ざけるアジア蔑視と新自由主義
 高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)は言う。
「安倍首相に近い閣僚経験者のテレビでの発言にはア然としました。〈韓国や台湾はMERS(中東呼吸器症候群)の知見があるが、わが国は経験がないから対応が遅い〉と言うのです。弁解にもならないでしょう。百歩譲って、そうであるならば、余裕の出てきた隣国に知恵を借りるとか、支援を求めればいいものを、アジア蔑視に根差したおかしなプライドが邪魔してそれもしない。その上、効率化優先の新自由主義ムキ出しで、この状況下でも医療費削減を推し進め、公的医療機関の病床削減に644億円も費やしている。失敗を認めなければ、さらなる過ちを積み重ねるのは必至です。どんどん出口は見えなくなっていく」

“巣ごもり”で感染者が減っても一時しのぎにしかなりゃしない。そもそも、都合の悪い公文書は隠蔽・改ざんし、統計データをいじくって好景気をデッチ上げてきた政権だ。大不評のアベノマスクをめぐっても、安倍は「配ったおかげでマスクの市場価格が値崩れしているという人もいる」とうそぶいていた。菅官房長官によると、汚れや異物混入問題で未配布分が回収されたため、配布率は全世帯のたった3・4%だという。出回っていないアベノマスクが市場に影響を与えるわけがない。ウソ、ゴマカシは日常茶飯事。必死で守っているのは「国民の健康と生命」ではなく、自分の政治生命。7年を超えるアベ政治のツケがコロナ危機を人災へと変貌させ、この国の形を変えようとしている。