2020年5月4日月曜日

首相がビデオメッセージで緊急事態条項 改憲を強調 非難の嵐!

 安倍首相は今年も憲法記念日に、憲法改正推進派の民間団体によるインターネット配信で集会にビデオメッセージを寄せ、特に緊急事態条項の創設の必要性を訴えました。
 今年はコロナ禍に関連して緊急事態宣言を出したこともあり、憲法に緊急事態条項を盛り込むことを国民に訴える好機だと思ったのかも知れません。
 しかし特措法に基く緊急事態宣言と憲法の条文上に謳う緊急事態条項は全く別物です。特措法による緊急事態宣言は憲法の制約を受けるので憲法が謳う基本的人権等は保障されますが、緊急事態条項が憲法の条文になれば他の人権条項等の制約が及ばなくなるので独自の威力を発揮することになります。

 その危険性を示す記事については当ブログでも繰り返し紹介して来た通りです。
 歴史的に緊急事態条項の害悪が最大限に発揮されたのがあのナチスドイツによる独裁政治でした。当時ドイツには最も民主的なワイマール憲法が制定されていたのですが、それにもかかわらず緊急事態条項によってヒトラーへの全権委任法が成立してあの悲劇が起きたのでした。
 今回のコロナ禍で明らかになったのは安倍政権の無能さです。韓国の対応が世界中から賞賛されていますが、対照的に日本では肝心なPCR検査が現在に至るも世界の中で桁外れに少なく、実態が正確につかめないため、今後の方針も立てられない有様です。安倍政権の無為無策がいまの惨状をもたらしたのであって何も緊急事態条項がなかったからではありません。

 LITERAが紹介しているツイートはそのことを端的に表わしています。 曰く
〈問題があるのは今の特措法並びに政府の対応である。すべきことがほとんど出来てない〉
〈国民のせいとお考えのようだけど、23月の無策が原因だからね〉
〈究極の火事場泥棒だ。緊急事態条項で私権制限を口にする前に、いくらでも政治の力でやれることはある。この機に乗じて改憲をすること自体言語道断〉
PCR検査が未だ1日8000件。トップリーダー能力不足であり憲法は関係〉
〈コロナ対処できず喫緊の課題が山積み憲法の話は後でやれ〉
という具合です。

 毎日新聞、東京新聞、LITERAの記事を紹介します。
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首相、緊急事態条項創設の必要性強調 改憲推進派ネット集会にビデオメッセージ
毎日新聞 2020年5月3日
 安倍晋三首相(自民党総裁)は憲法記念日の3日、憲法改正推進派の民間団体によるインターネット配信での集会にビデオメッセージを寄せ、緊急事態条項の創設の必要性を訴えた。 
 メッセージは、改憲を目指す「美しい日本の憲法をつくる国民の会」などによるネット配信の「憲法フォーラム」で流された。 
 首相は新型コロナウイルスの感染拡大を受けた国会審議に触れ、「与野党で協議し、さまざまな工夫がなされてきたが、そもそも現行憲法には緊急時に対応する規定は、参議院の緊急集会しか存在していない」と指摘。「未曽有の危機を経験した今、緊急事態に国家や国民がどのような役割を果たし、国難を乗り越えていくべきか。そのことを憲法にどう位置づけるかについては極めて重く、大切な課題だと改めて認識した」と述べた。 
 その上で、自民党が改憲を目指す4項目のうちの緊急事態条項の創設に触れ、「国会の憲法審査会の場でじっくりと議論を進めていくべきだ」と強調した。 
 自身が2017年のビデオメッセージで、20年の改正憲法施行を目指すと表明したことについては「残念ながらいまだその実現には至っていない」との認識を示した。その上で「憲法改正への挑戦は決してたやすい道ではないが、皆さんとともに成し遂げていく」と改めて意欲を示した。【佐野格】 


<新型コロナ> 緊急事態を強調、改憲狙う自民 「条項」国会関与なく私権制限
東京新聞 2020年5月3日
 日本国憲法の施行から七十三年となる憲法記念日を三日、迎えた。改憲を目指す自民党は、新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言が全国に出される中、「緊急事態条項」創設を風穴として改憲論議を促す動きを強めている。だが、緊急事態条項は緊急事態宣言とは全くの別物。国民の自由や権利を、国会の関与なしに制限できる点で大きく異なる。 (井上峻輔)

 緊急事態条項は、自民党が二〇一八年三月にまとめた改憲四項目の一つ。大規模災害により「国会による法律の制定を待ついとまがない」と認めた場合、法律で定めるべき事項を内閣が政令で定められる規定や、国会議員の任期を延長できる特例を盛り込んでいる。
 自民党は改憲への第一歩として、衆参両院の憲法審査会で四項目提示を目指したが、安倍晋三首相が主導する改憲を警戒する立憲民主党などの野党が応じていない。この一年間で憲法審での実質的な議論は、衆院で視察報告などを議題に四回行われただけで、参院はゼロ。今国会は両院とも憲法審が開かれていない。
 自民党にとって緊急事態条項は、憲法審を動かすための呼び水。今年二月以降、憲法審開催を野党側に求め、国会議員に感染が広がった場合の対応を議題として掲げた。首相も「緊急時に国家や国民がどのような役割を果たすかを、憲法にどう位置付けるかは極めて重く、大切な課題」と国会で訴えた。だが、野党側は「究極の火事場泥棒」(共産党の小池晃書記局長)と反発している。
 緊急事態宣言と緊急事態条項は、緊急時に一定の私権制限を可能とする点で共通しているが、決定的に違うのが国会による統制だ。
 緊急事態宣言は、発令する際は国会に報告することが特措法で義務づけられている。事前報告とは限らないが、一定の歯止めにはなる。また、都道府県知事による外出自粛要請や休業指示に強制力を持たせるなど、私権制限を強める場合は法改正が必要なため、必ず国会のチェックを受ける。
 これに対して緊急事態条項は、法律と同等の効力を持つ政令を、国会のチェックを経ずに定められるという規定。強い私権制限を含む政令でも、政府の一存で出せてしまう。そもそもどんな状況が緊急事態に当たるのか曖昧だ。
 上脇博之・神戸学院大教授(憲法学)は、緊急事態宣言と緊急事態条項について「しっかり分けて考えないといけない。(緊急事態条項が入れば)三権分立が破壊され、限りなく独裁に近い状況になる」と指摘。新型コロナ対策では「今の法律でやれることをやり、それでも不十分なら法律を変える。地に足を着けた議論をすべきだ」と話す。

写真


安倍首相の新型コロナを利用した「憲法に緊急事態条項を」メッセージに非難殺到 失策を棚上げ、日本会議系集会でお仲間と改憲PR
LITERA 2020.05.03
 いったいどういう神経をしているのか。安倍首相がきょう3日の憲法記念日、日本会議が主体となった団体が開催するネット上の改憲集会「憲法フォーラム」に新型コロナを利用して緊急事態条項の必要性を訴えるビデオメッセージを出す。
「憲法改正への挑戦は決してたやすい道ではないが、必ずや成し遂げていく。その決意に揺らぎは全くない」と改めて強調したうえ、憲法の緊急事態条項に触れ「緊急事態の国家や国民の役割を憲法にどのように位置付けるかは極めて重く、大切な課題だと改めて認識した」などと述べるものだ。
 現行の法律もきちんと活用できず、検査体制も治療体制も後手後手、接触機会削減やそのための休業が国民に浸透していないのも補償や生活支援をきちんとしていないからなのに、安倍首相は自分の失策を棚上げ、全部憲法のせいにしようとしているのだ。
 しかも、安倍首相がメッセージを出す憲法集会は、櫻井よしこ、田久保忠衛、ケント・ギルバート、百地章ら、安倍応援団や日本会議の極右論客が勢揃いするもので、タイトルは「新型コロナ 憲法は国民の命と生活を守れるのか!〜新型肺炎と中東危機〜」。ようするに安倍首相は応援団とともに、コロナを改憲PRに利用しようとしているのだ。

 もっとも、今回はさすがに国民をダマすことはできないだろう。世論調査でも、NHKでは「憲法以外の問題 優先して取り組むべき」が78%、朝日でも「安倍政権のもとで改憲することについて「反対」が58%に達した。
 それだけではない。安倍首相が緊急事態条項の必要性を訴えるメッセージを出すことがわかった2日から、逆に安倍首相に対する批判の声が殺到しているのだ。
 ツイッターはもちろん、普段右派的な声が目立つYahooニュースのコメントも以下のような意見であふれている。

問題があるのは、今の特措法並びに政府の対応である。横に逃げ道を作らず、今の問題に取組むべき、すべきことがほとんど出来てない。憲法変えたら、防護服用意できるんですか? PCR検査増やせるんですか? 給付金の交付が早くできるんですか?〉
〈自粛できてないのが感染拡大の原因、つまり国民のせいとお考えのようだけど、2月3月の無策が原因だからね。〉
〈この考えは究極の火事場泥棒だ。自粛要請しておいて保証はなしとなれば、商いを続けるため、従業員やその家族を守るため、経営者は商いを続けるのは当然の行動。それだと国民は政府の言うことなど聞くわけがない。緊急事態条項で私権を制限を口にする以前に、いくらでも政治の力でやれることはある。この機に乗じて改憲をすること自体言語道断。〉
〈憲法を利用するな。4月6日に1日2万件とあなたが表明したのに未だ1日8000件。
の保健所は意図的に絞ってたとあなたの指示に反することを言いましたよ。上の言葉が伝わってない。これはトップリーダーとしての能力不足であり、憲法は関係ありません。〉
〈安倍の主張はまさに死ぬかもしれない人がいても法律があるから助けられないと言っているようなもの、コロナも対処できず喫緊の課題が山積みであるのに憲法の話は後でやれ
〈憲法できなくてもできることがたくさんあるのに、マスク2枚さえも2ヶ月かけて、国民の3%しか配れない、それも欠陥品だという政権に今以上の権力を持たせて、どうする?
役所はコロナ対応で疲弊しきっているところに、これから、憲法改正の仕事を丸投げして、自分たちは何もしないつもり? もういい加減に国民の命を救う為に、早く動いてくれ!〉
(すべて原文ママ)

 そういう意味では、今回のコロナ感染拡大は、安倍首相の改憲の動機のインチキぶりを完全にあらわにしたといえるだろう。
 しかし、恐ろしいのは、国民にその正体を見抜かれているにもわらず、平気で自分の失策を棚上げするばかりか、新型コロナを改憲に利用しようという厚顔無恥ぶりだ。
 実は本サイトは早い段階から、新型コロナを改憲に利用しようという安倍首相や自民党、安倍応援団の動きを察知し、それを徹底批判する記事を掲載していた。ここに再録するので、ぜひ読んでみてほしい。(編集部)
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どさくさ紛れ 安倍自民党が新型肺炎の不手際対応を「憲法に緊急事態条項があれば」と 改憲にスリカエ
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