2020年5月10日日曜日

「収束への1カ月」どころか このままでは廃業地獄に(日刊ゲンダイ)

 安倍首相は4日に記者会見を開き、緊急事態宣言を5月末まで延長するとしましたが、日刊ゲンダイによればそれは官僚の書いたポエム朗読会であり、敬意と感謝、絆で新型コロナを乗り越えられるとした上で、「新しい生活様式」定着させようと訴えるという的外れなものでした。
 また5月末まで「収束に向けた1カ月」と定義「長期戦を覚悟」「長丁場の対応」が必要だとする一方で、「専門家」に14日と21日に状況判断を依頼し、その結果によっては緊急事態解除することもあり得るという支離滅裂なものでした

 それは大阪府知事が「行動自粛・休業」から離脱するための基準を作成し、早ければ15日にもそれが実現するという事態を知って、慌ててそれに対抗しようとしたのだとも、米国の経済活動を早々に再開しようとしているトランプから、歩調を合わせるように強要されたからではないかとも言われています。
 しかし国は緊急事態宣言を終了させるための基準を全く持っていません。把握されている感染者や死者の数は氷山の一角と言われている中では、仮に基準が出来たとしてもそれに実態が合致しているのか否かの判定自体が出来ません。そうであれば宣言からの離脱は無理な話です。

 当初安倍政権は夏の東京五輪最優先の立場からPCR検査を決定的に抑制し、新型コロナ対策を誤りました。「専門家」もそれに平仄を合せて「医療崩壊を避けるため」とか「クラスター対策で拡大を防止できる」とかを口実にして、異常を感じた人のうち僅か数%しかPCR検査に辿りつけないような選別基準を定めました。その結果が、感染者が市中に蔓延するという今日の事態になりました。
「専門家」の意図とは逆に、認知されない感染者(サイレントキラー)が市中に蔓延したことが院内感染の続発を引き起こし医療崩壊につながりつつあります。
 政府はスタートを誤っただけでなくり、間違いが明らかになっても軌道修正が出来ていないし、隔離病床の確保一つとっても全て地方自治体に丸投げしているのが現状です。それではいつまで経っても自粛・休業の事態から離脱できません。
 日刊ゲンダイは絶望的迷走を重ねる安倍や専門家は一刻も早く退陣すべきだ。それが収束への近道である」と述べています。

 日刊ゲンダイの特集「何が収束への1カ月だ 新生活様式では廃業地獄<上><> を紹介します。(阿修羅に3回にわたって掲載された記事をまとめて転載します)
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何が「収束への1カ月」だ 新生活様式では廃業地獄 <上>
 日刊ゲンダイ 2020/05/07
専門家会議は何のために存在するのか 元の生活に戻すためではないのか
 トップが無能で割を食うのは、いつだって一般庶民だ。4月7日に発出された緊急事態宣言の期限は6日だったが、5月末までの延長が決まり、連休が明けても出口の見えない不安な日々は続く。
 安倍首相は4日に記者会見を開き、延長について説明したが、相変わらずのポエム朗読会で精神論に終始。敬意と感謝、絆で新型コロナを乗り越えられると訴えた。その上で打ち出したのが「新しい生活様式」の定着という妄言だ。
「帰宅したらすぐ着替える」、飲食店では「対面ではなく横並び」「おしゃべりは控えめに」など、およそ政策とは呼べず、真顔で国民に語る話とは思えない
「箸の上げ下げまでお上の指示に従わせる。コロナ禍が収束しないのは従わない国民のせいだと責任を押し付けているように感じます。専門家会議の尾身副座長も、一向にPCR検査が拡充されないことを長々と言い訳し、行政のせいにしていたから、あきれます。緊急事態宣言下の1カ月で政府や専門家会議は一体、何をやっていたのか。宣言を解除できなかったのは、明らかに政府が無能だからですよ。国民はもう十分に努力している。
 政府の御用機関のような専門家会議なら不要です」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏)

 安倍は、5月末までは「収束に向けた1カ月」と定義しながら、「長期戦を覚悟」と言って「長丁場の対応」を求めた。
 同じ口で、状況を見て緊急事態を解除する可能性にも触れるという支離滅裂。緊急事態宣言の延長は結局、有効な対策を何ひとつ打てなかったという敗北宣言に等しい
 政府や専門家会議の役割は、国民が元の生活を取り戻すことにあるはずだ。それができずに「新しい生活様式」を国民に強いるのは責任放棄でしかない。絶望的迷走を重ねる安倍や専門家は一刻も早く退陣すべきだ。それが収束への近道である

バカな大将のせいで飲食、ホテル、デパートは阿鼻叫喚の廃業へ
 緊急事態宣言の1カ月延長は、この国の経済に致命的なダメージとなるのは必至だ。そうでなくても、2月末に安倍が唐突に打ち出した一斉休校要請によって、在宅勤務や休業を余儀なくされた保護者の外出は減少。3月には夜の街がクラスター発生源とヤリ玉に挙げられ、出歩く人はガクッと減った。そして、「人との接触機会8割削減」を掲げる4月7日の宣言である。
 外食産業の3月の売上高は前年同月比17・3%減、そのうち居酒屋は41・4%減で、4月はさらに悪化の見通しだ。百貨店もメタメタで、3月の売上高は33・4%減。宣言を受けて休業した大手4社の4月の売上高は前年同月比7~8割の大幅減に陥った。
 観光や出張の需要減で休業を強いられるホテルも相次いでいる
 経済評論家の斎藤満氏は言う。
「旅客が9割減の航空業界や、新幹線乗車率1ケタ台がザラの鉄道への影響も深刻です。法人企業統計(2019年10~12月期)によると、企業の手元流動性は15・7%。つまり、毎月の売り上げの1・9カ月分しか余裕がなく、経済活動が2カ月も止まれば事業を維持することはできないのです。調査対象外の資本金1000万円未満の中小企業はさらに厳しい。政府は民間金融機関による実質無利子・無担保融資で資金繰りを支援するとしていますが、経営環境が元通りにならなければ、つなぎ融資を受けても効果はありません。コロナ禍の収束が見えなければ行動規制はずるずる長引く。企業の収益は下がり続け、最大のコストである人件費を削り、それでもカネが回らなければ資本金も食い尽くし、倒産が相次いで大量の失業者があふれかねません
 東京商工リサーチによると、新型コロナの影響で倒産した企業は1日時点で114件。揚げ句の「新生活様式」とは死刑宣告そのものだ。

何が「収束への1カ月」だ 新生活様式では廃業地獄 <中>
日刊ゲンダイ 2020/05/07 
誰の目にも歴然、この感染症について何も分かっていない浅はかな安倍首相
 安倍は6日夜、ネット動画の生配信で京大iPS細胞研究所の山中伸弥所長とリモート対談。事前に国民から質問を募集して「疑問に答える」と大見えを切ったのに、話す内容は4日の会見で朗読した官僚原稿の繰り返しだった。
 薄っぺらいパフォーマンスに利用されたノーベル賞学者はお気の毒だが、ハッキリしたのは、安倍がこの感染症について、何も分かっていないということだ。
 4月30日の参院予算委でも現在の感染者数を聞かれても答えられず、「これ(質問通告)に書いてないじゃないですか!」と逆ギレ。さらにPCR検査の数が増えない理由も分からない、いつ何を基準に緊急事態宣言を解除するかも分かっていないのだ。感染症学が専門で西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏が言う。
「何も分からないから、専門家会議に頼るしかない。その専門家の報告も全く科学的根拠に基づかない。だから、首相会見でも具体的数値がひとつも出てこない。信頼できる元データも示せず、精神論に終始した提言は、サイエンスではありません。他国は既に出口に向けて動き始めているのに、何をしているのか」
 加藤厚労相も6日、神奈川県の循環器呼吸器病センターを視察するパフォーマンス。ついでに、これまで受診の目安としてきた「37・5度以上の発熱が4日以上」という指針の取り下げをシレッと言い出した。
「4日間の待機期間中に容体が急変した女優の岡江久美子さんが亡くなったことで、慌てて対応を変えたのでしょうが、もともと科学とは程遠い措置でした。一事が万事で、この期に及んでアビガン承認ですべて解決するかのような気休めを言ったり、嘘やゴマカシで乗り切ろうとしている。これでは、ずるずると自粛生活が続き、いつまで経っても終息宣言が出せないことになりかねません」(中原英臣氏=前出)
 政府の錯乱が、コロナ禍を拡大させる。

すでに地方の反乱、官邸の分裂が始まった安倍政権にはトドメを刺す必要がある
 自粛解除の数値目標を示さない政府にイラ立つ地方の反乱が始まった。「特定警戒都道府県」以外の34県のうち、宮城や香川はパチンコ店を含む全業種への休業要請を解除。三重は7日から、富山と福井は11日から飲食店への営業短縮要請を解除する。
 特定警戒対象の大阪府や東京都は独自基準を策定。吉村府知事は「数値で出口戦略を示す。客観的な指標をもって判断する」として「大阪モデル」を公表した。「感染経路不明な新規感染者10人未満」「陽性率7%未満」「重症病床使用率6割未満」――を7日間連続で下回れば、15日以降に外出自粛や休業要請を段階的に解除する。都も基準となるロードマップを近く発表する。
 政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は言う。
「この有事にあっても国は組織論にこだわり、地方の動きを阻害する壁になっている。そもそも、新型コロナ特措法は住民に近い基礎自治体が権限を持つのがミソなのに、小池都知事が政令の範囲を超えた幅広い業界への休業要請を口にすると、政府は宣言発令当日に基本的対処方針を改定。要請に従わない場合の休業指示には国との協議を義務付けるなど、都の動きを封じ込めた。西村コロナ担当相が吉村知事に対し、〈“出口戦略”という言い方は違う。国が専門家の意見を聞いて定める話〉とクギを刺したのは典型的です」
 だったら、地方が求める具体的基準を示せばいい。それを避けるのは思惑含みだからだ。
しっかりとしたデータを示すと政治判断の余地が狭まる、数字は邪魔と考えているのでしょう。地方の頑張りで政権のダメさ加減は浮き彫りです」(鈴木哲夫氏=前出)

 政権の危機管理を担ってきた菅官房長官は遠ざけられ、官邸は分裂状態。安倍は官邸官僚の耳打ちでアベノマスク配布や“貴族動画”配信のパフォーマンスに走り、大ヒンシュクだ。
 この国に無能政権のレームダックを見届ける余裕はない。トドメを刺す必要がある。

感染症研究の予算をカットし病院を潰してきた政府の大罪
「病床数の削減に644億円。支離滅裂ですよ!」――。4月30日の参院予算委員会で、国民民主の森裕子議員が追及したのは、安倍政権が掲げる「地域医療構想」だ。
 この構想はあからさまな医療費削減策。実現のために「公立・公的病院の統廃合」「病床削減」を打ち出した。昨年9月には再編・統合が必要な全国424の公立・公的病院を名指しで公表。各自治体に今年9月末までに統廃合の結論を出すよう迫った。
 一方、病床を減らす病院には、今年度予算で84億円の補助金を計上。構想実現に向けた医療機関の施設整備事業560億円も加え、総額644億円もの税金を“病院潰し”に投じているのだ。
 森の追及に加藤は「地域に必要な医療の人的な財源をより効率的に使っていこうと。(病床削減などは)常にやっていかなきゃいけない」と答弁。コロナ危機で病床不足が深刻化しているのに、削減策をみじんも改めようとしないのだ。

 しかし、医療体制が逼迫する中、政権に「不要」とされた病院も大きな役割を担っている。感染者数が5000人に迫る都内でも10病院が再編・統合の対象だ。この政権は「医療体制の強化」を口にしながら医療の脆弱さが露呈した現実を無視。まだまだ病院を潰す気だから、この二枚舌にはもう絶句である。
 経済アナリストの菊池英博氏は「医療の現場にも、コスト重視の緊縮路線を持ち込んだのが、脆弱化の元凶」と喝破したが、その通り。1996年に約2万あった有床一般診療所の数は小泉構造改革以降に大幅減。2年前にはとうとう7000を割り込んだ。
 肝心の感染症病床も98年の9060床から1869床まで激減。国立感染症研究所の予算も10年前の水準から約20億円、3分の1も減少した。国民の命よりも医療費削減が大事……。倒錯しきった政府の罪は重い。

何が「収束への1カ月」だ 新生活様式では廃業地獄 <下>
 日刊ゲンダイ 2020/05/07
封じ込めに大失敗、小池都知事はどのツラ下げて立候補するのか
 グズグズ政権のおかげで妙に株を上げているのが、小池都知事だ。本人もまんざらでもない様子だが、五輪延期決定まで感染拡大を放置していた罪は、安倍政権と変わらない。
 3月の3連休前に厚労省クラスター対策班から感染拡大予測を報告されても、やる気なし。五輪延期の途端、軽率な「ロックダウン(都市封鎖)」発言で混乱に火をつけたのも忘れてはいけない。せめて1カ月早く対策を本格化させれば現状は違っていたはずだ。
小池都政は感染の封じ込めに大失敗し、都内の医療崩壊を招きました」と言うのは、17年の総選挙直前に小池から「排除」発言を引き出したジャーナリストの横田一氏だ。こう続ける。
「3月中旬の中野のコールセンターの集団感染発生から2週間も事実を隠し、消毒後に公表。そのため、感染者を追跡できず、周辺の中野江古田病院や総合東京病院で院内感染を発生させてしまった。さらに、都内の広域基幹病院でコロナ感染者を受け入れていた都立墨東病院を見殺しにしたのも、小池都政の怠慢です。現場は3月から、ずっとマスク不足を訴えていたのに、都病院経営本部は『診察に必要な医療用マスクを確保』と延々と虚偽の情報発信を続けたのです。結果、墨東病院は4月に集団感染が発生。今なお、救急救命の受け入れと手術は原則、中止です。つまり、救えたはずの命を救えない環境を生み出したのです」

 ところが、小池は夜の街に感染拡大の責任を押し付け、自らの失敗を都民の努力不足にすり替える。
「医療崩壊を招いた“A級戦犯”が、コロナ対策の指揮官然とする姿は“コロナのたぬき”としか言いようがありません」(横田一氏=前出)
 来月に告示が迫った都知事選で再選を目指す小池は、どのツラ下げて立候補するのか。

“戦時国債”を無限に引き受ける黒田・日銀の金はどこへ行く?
「2年で物価上昇率2%」を達成できずズルズルと異次元緩和を続けてきた日銀が、コロナ禍を口実に年間80兆円をメドとしてきた国債購入の上限撤廃に踏み込んだ。4月末の金融政策決定会合後に会見した黒田総裁は「必要なだけ、いくらでも買う」と力を込め、企業が発行するコマーシャルペーパー(CP)や社債についても買い入れ上限を7・4兆円から3倍増の計20兆円に拡大する。
 前出の斎藤満氏は言う。
「安倍政権がアベノミクスを打ち出した当初から、日銀は負け戦を覚悟していた。勢いを失った経済に緩和が効果を発揮しないことはプロなら分かっています。しかし、政権のムチャぶりを押し返せず、かといって効果がないと認めるわけにはいかず、無謀な資産買い入れを続けてきた。政府による緊急事態宣言の延長は、国債増発で追加の緊急経済対策を打つ布石。尻ぬぐいは日銀に押し付け、黒田総裁も政権と心中するつもりで“無制限買い入れ”に踏み切った。財政規律のタガを緩めた世界の動きに便乗したのです」
 まさに財政ファイナンス。敗戦後のこの国が戦時国債乱発によるハイパーインフレにもがき苦しんだのは言うまでもない。コロナ禍の収束後、どんな惨状が待ち受けているのか。それ以上におぞましいのがカネの行き先だ。
「超法規的な手法でも、必要なところに資金が回るのであれば救いがありますが、財政拡張は利権拡大につながり、政治メリットが非常に大きい。モリカケを引くまでもなく、安倍政権は根っからのオトモダチ優遇体質。政権にスリ寄る連中にカネが流れていくのではないか。モリカケが増殖するのではないか。そうした懸念は消えません」(斎藤満氏=前出)
 デタラメのツケはすべて国民に回ってくる。アベクロ心中に巻き込まれるなんて、真っ平御免だ。(おわり)