2020年5月30日土曜日

検察が安倍マネー1億5千万円めぐり 自民党本部関係者を聴取

 河井克行案里両議員夫妻の2019年参院選をめぐる公選法違反(買収)の事件で、その原資となった1億5000万円を夫妻に振り込むように指示した人間は安倍首相と見られています。
 共同通信によると、検察当局がその金を扱う立場にいる自民党本部関係者を任意で事情聴取していたということです。
 河井夫妻が逮捕されるのは時間の問題(国会会期中か閉会直後か)とされています。本来であれば原資を渡すように指示した人間も無傷では済まされません。流石に関係者が簡単に口を割ることはないでしょうが、安倍首相の心胆を寒からしめることは間違いありません。
 LITERAが報じました。どういう展開になるのか注目されます。

 併せて、高野孟氏の記事:「永田町の裏を読む 安倍は森友と桜の2大疑惑が同時に司法の手にかかり断末魔」と孫崎享氏の記事:「日本外交と政治の正体 自民党内からも辞任を促す声が出始めた安倍首相のこれから」を紹介します。
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検察が河井陣営への「安倍マネー1億5千万円」めぐり自民党本部関係者を
聴取! 狙いは安倍首相の“自民党金庫番”への指示立証か
LITERA 2020.05.29
 検察の捜査がいよいよ安倍マネーにまで迫ってきたということなのか。河井克行前法相、河井案里参院議員の2019年参院選をめぐる公選法違反(買収)の事件で、検察当局が自民党本部関係者を任意で事情聴取していたことが判明したのだ。
「一報を報じたのは、広島地検に最も食い込み、河井事件報道で抜きまくっている共同通信。今回も明らかに検察のリークを受けての報道で、確度は非常に高い」(司法担当記者)
 検察が自民党本部関係者を聴取したとなれば、ポイントはもちろん、買収の原資となった1億5000万円だ。本サイトでも何度も指摘してきたが、2019年の参院選では、自民党本部から河井夫妻それぞれが代表を務める党支部に合計1億5000万円という異常な金額の選挙資金が振り込まれていた。自民党では候補者に配る選挙資金は1500万円が相場にもかかわらず、河井氏陣営にこの異常な額が振り込まれたのは、もちろん、2019年の参院選に河井案里氏を擁立したのが安倍首相だったからだ。
 当初、広島選挙区からは自民党の重鎮で前職の溝手顕正氏だけが公認として立候補することになっていたが、溝手氏は第一次政権時に安倍首相の責任に言及し、下野時代には「過去の人」と批判したことがあり、安倍首相は横手氏のことを毛嫌いしていた。そこで、“2人区で2人擁立して票を上積みする”という大義名分をたて、溝手氏を蹴落とすための“刺客”として、側近の河井前法相の妻である案里氏を新人として立たせたのだ。
 メディアではやたら、河井前法相が菅義偉官房長官の側近であったことが強調されているが、実は、安倍首相は菅官房長官以上に河井前法相を重用してきた。たとえば、河井氏は法相就任前、総裁外交特別補佐に務めているが、2016年の米大統領選後でトランプが当選すると、安倍首相は就任前に河井氏に渡米して地ならしすることを指示。トランプタワーでの安倍・トランプ初会談にも同行させている
 問題の選挙の際も安倍首相の力の入れようは尋常ではなかった。自ら案里氏の応援に駆けつけたのはもちろん、自分の地元事務所秘書を広島の案里氏の選対に送り込んでいたのだ。「週刊文春」でも、自民党県議が安倍首相の地元事務所の筆頭秘書をはじめとし少なくとも4人の秘書が広島入りしていたことを証言、「溝手支持で決まっているところにも手を突っ込もうとして動いとった」とも語っている。
 つまり、こうした安倍首相と河井前法相の関係の延長線上に出てきたのが、1億5000万円だったのだ。
 実際、党本部からの1億5000万円の出入金記録をすっぱ抜いたのは「週刊文春」(文藝春秋)だったが、「文春」はその記事で自民党関係者と自民党のベテラン職員のこんな証言を掲載している。
「党の金の差配は幹事長マターですが、河井陣営への1億5千万円にのぼる肩入れは安倍首相の意向があってこそです」
「安倍首相の後ろ盾は絶大で、案里氏は党本部からの『安倍マネー』を存分に使うことができたのです」
 また、広島地検の捜査が本格化した直後、二階俊博幹事長が周辺に“河井の件は官邸の案件で幹事長は関係ない”と漏らしたとの情報もかけめぐった。

検察が聴取したのは自民党の“金庫番” M事務総長周辺か、安倍首相の地元事務所も調査
 そして、今回の自民党本関係者への事情聴取はまさに、検察がこの安倍首相の関与について踏み込もうとしたものではないかといわれているのだ
「というのも、今回、検察は自民党の“金庫番”といわれるM事務総長の周辺を聴取したといわれているからです。M事務総長は20年以上前から自民党の事務方トップを務め、それこそ自民党の裏の金を動かしてきた人物。しかも、第二次安倍政権以降、安倍首相はM氏を重用しており、近年は安倍首相から直接、指示を受けて金を動かすこともしばしばあるといわれていた。つまり、検察は、河井陣営への1億5千万円提供について、直接的に安倍首相がM氏に指示した可能性を調べているのではないか」(前出・司法担当記者)
 ほかにも、広島地検は安倍首相の地元事務所の秘書の関与について調べているとの情報もある。前述したように、安倍首相の地元事務所秘書は河井陣営の選挙運動の指南役をしており、買収についても知っていた可能性があるからだ。
 広島地検が河井夫妻をW逮捕するのは確実といわれているが、この動きを見ていると、もしかしたらその先、安倍首相周辺に捜査の手が伸びる可能性もゼロではない。
「もちろん、官邸もいま、捜査を止めようと必死で圧力をかけていますから、安倍首相まで捜査が及ぶというのはかなりハードルが高い。しかし、いまの検察の空気をみていると、会期末後になる可能性はあっても、河井夫妻をW逮捕するのは確実。もし河井氏が逮捕されれば、安倍首相や地元事務所をめぐる情報がいろいろ出てくるでしょうから、安倍首相が追い込まれるのは必至でしょう」(前出・司法担当記者)
 メディアは捜査の行方を待つだけでなく、いまから、この安倍首相の関与を徹底的に調査しておくべきだろう。 (編集部)


永田町の裏を読む
安倍は森友と桜の2大疑惑が同時に司法の手にかかり断末魔 
日刊ゲンダイ 2020/05/27
 安倍晋三首相は、賭けマージャンの黒川弘務前検事長を「訓告」処分で済ませて、この問題にサッサと終止符を打とうとしているが、そうは問屋が卸さない。
 第1に、「森友学園」の国有地売却問題を担当していた近畿財務局職員の赤木俊夫さんが、佐川宣寿元国税庁長官の指示で文書の改ざんを強要され自殺に追い込まれたとして、赤木さんの妻が佐川と国に約1億1000万円の損害賠償を求めた裁判が、大阪地裁で始まる。彼女のアピールに対しては、署名運動サイト「Change.org」で35万人近い人々が支援を表明していて、裁判所もいくら何でも門前払いのような真似はできない。佐川の安倍への忖度が赤木さんを死に追いやったという構図が浮き彫りにされることだろう。
 第2に、このタイミングで、「桜を見る会」前日の安倍後援会主催のパーティーが公職選挙法および政治資金規正法違反にあたるとして、600人以上の弁護士・法学者が集団で刑事告訴した。
 さらに第3に、河井克行前法相とその妻・案里参院議員の選挙違反事件は、広島地検に大阪・東京両地検からも応援が入る異例ともいえる大掛かりな捜査が進められ、すでに十分すぎるほどの自白や物証を得ているもようで、検察側としては国会会期中であっても逮捕許諾請求をするか在宅起訴にとどめるかはともかく、早期に起訴に持ち込む構えである。

 事実上の自民党候補同士の接戦となったこの選挙では、案里側に1億5000万円という破格の資金が投じられ、それが大々的な買収の原資となったわけだが、焦点のひとつは、この金が誰の指示でつぎ込まれたかということ。検察側には、対抗馬の岸田派のベテラン溝手顕正を安倍が忌み嫌っていたこと、安倍秘書の名刺を持った運動員が大動員されて溝手票を案里側にひっくり返して歩いたことなどから、安倍の関与を疑う見方が根強い。

 こうして、安倍がこの数年間、ひたすら嘘とごまかしで逃れようとしてきた森友と桜の2大疑惑が、司法の手にかかることになった上、案里の選挙違反の張本人であるとの嫌疑も降りかかってくるわけで、これはいよいよ断末魔の様相である。特に案里の件は、もしここで止めたら「何だ、黒川が失脚してもやっぱり検察は安倍に忖度するのか」といわれるので、検察は意地でも事件にするだろう。

 高野孟 ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。


日本外交と政治の正体
自民党内からも辞任を促す声が出始めた安倍首相のこれから
 日刊ゲンダイ 2020/05/29
 安倍内閣をめぐる動きが激しくなってきた。毎日新聞の世論調査によると、安倍内閣の支持率は27%で、不支持は64%に達した。第2次安倍政権誕生後、これほど厳しい数字は今までになかった。6日の調査結果(支持率40%)からの急落で、不支持率(前回は45%)も跳ね上がった。
 安倍内閣の支持率は、ここ1カ月間、下落傾向が鮮明になってきた。5月初めの共同通信の調査では、支持率は41・7%で、前回より改善がみられたものの、検察庁法改正に反対する声が急増。同半ばには、NHKの調査で支持率が37%(前回比2ポイント減)、朝日新聞は同33%(同8ポイント減)である。これは検察庁法改正の渦中にあった黒川東京高検検事長が、ほぼ常習的に賭けマージャンを行っていたことが発覚し、それに対する処分が訓告という軽微なものであったことに起因する。

 人事院は「懲戒処分の指針について」という規則を持つ。ここでは「賭博をした職員は、減給又は戒告とする」「常習として賭博をした職員は、停職とする」という規則を持つ。
 標準例に掲げる処分の種類より重いとすることが考えられる場合としては、「非違行為を行った職員が管理又は監督の地位にあるなどその職責が特に高いとき」とある。つまり、地位の高い職にある者は、一般の公務員よりも厳しい処分が予定されている。ところが、今回は逆だ。
 この状況に世論は激しく反発。ラサール石井氏は怒りのツイートをした。
<ほんとにもう右とか左とか関係ない。法を犯したら罰を受ける。誰しもそう思うはず。芸能人が薬物や賭博やったら、完膚なきまでに打ちのめされるのに、検察官の長が3年間賭博していて注意だけ。法の下に平等じゃない。そんな国は滅びるよ>

 こうした流れを踏まえ、自民党元幹事長の石破茂氏はこう発言していた。
「(黒川訓告処分に)正直『もういい加減にしてもらいたい』」
「『戒告』ではなく、非公式な『訓告』で済むのはどういう判断基準に基づくのか」
「(安倍首相が黒川東京高検検事長の辞職について『責任は私にある』と発言したことをめぐり)けじめがついたら職を辞すのもひとつの在り方だと思う」
 経済の不振が長期化するほど、安倍政権の基盤が揺らいでいくのは間違いない。

 孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。