2020年5月25日月曜日

25- 官邸が次の検察トップに据えたい“ミニ黒川”

官邸が次の検察トップに据えたい“ミニ黒川”

 黒川・前東京高検検事長の賭け麻雀に対する法務省の処分は退職金の減額等を伴わない訓告という軽いもので、国民の不信を買いました。しかしながら共同通信によれば当初法務省は「国家公務員法に基づく懲戒が相当」という原案を作成して官邸に報告したのですが、官邸が懲戒にはしないと結論づけ「訓告」に決定したのでした。
 報道によれば黒川氏は少なくとも3年間にわたり、月に2~3回のペースで賭けマージャンをやっていたので、通常の感覚でいえば「常習賭博」に当たるものと思われます。

 法務省が官邸と調整したうえで野党に提示した報道関係者との賭け麻雀についての調査報告書は下記の通りの極めて簡単なものでした。
 そこでは、賭け麻雀が確認されたのは5月1日と13日の2回のみで、それ以外には「認定されなかった」ので、「常習賭博ではない」という趣旨になっています。
 これでは到底誰の納得も得られません。

お尋ねの件に関し、調査した結果は次のとおり
1 令和2年5月1日、いわゆる賭け麻雀をしたものと承知している。
2 同日、ハイヤーに同乗し、その費用は支払っていないものと承知している。
3 5月13日も賭け麻雀を行い、費用負担のないハイヤーに同乗したと承知しているが、この2日間以外、賭け麻雀やハイヤーの送迎の事実の認定には至らなかった。
4 記事に出ている記者には接触していない。


 ところで黒川検事総長の目が無くなった官邸が、次の候補と考えているのが現法務事務次官の辻裕教氏だということです。
 辻次官は「ミニ黒川」と呼ばれ、今年2月、全国の高等検察庁の検事長や検事正が一堂に集まる会議が開かれた際、黒川氏の定年が閣議決定で延長されたことに対して検事正から「検察への信頼が疑われる」という声が上がったときには、「必要性がある定年延長だ」とて異議を封じました。
 また河井克行・案里夫妻の公選法違反事件では、逮捕はせずに在宅起訴で済ませるようにと検察に働きかけました。幸いに現在は稲田氏が検事総長なので稲田氏の意向が優先されます(法務省では次官よりも検事総長が上位)が、もしも辻氏が検事総長になれば黒川氏同様に安倍首相を守る路線を行くことは目に見えています。

 日刊ゲンダイの記事「守護神辞任で…官邸が次の検察トップに据えたい“ミニ黒川”」を併せて紹介します。
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黒川氏処分、首相官邸が実質決定 法務省は懲戒と判断、軽い訓告に
共同通信 2020/5/25
 賭けマージャンで辞職した黒川弘務前東京高検検事長(63)の処分を巡り、事実関係を調査し、首相官邸に報告した法務省は、国家公務員法に基づく懲戒が相当と判断していたが、官邸が懲戒にはしないと結論付け、法務省の内規に基づく「訓告」となったことが24日、分かった。複数の法務・検察関係者が共同通信の取材に証言した。

 安倍首相は国会で「検事総長が事案の内容など、諸般の事情を考慮し、適切に処分を行ったと承知している」と繰り返すのみだった。確かに訓告処分の主体は検事総長だが、実質的には事前に官邸で決めていたといい、その経緯に言及しない首相の姿勢に批判が高まるのは必至だ。


守護神辞任で…官邸が次の検察トップに据えたい“ミニ黒川”
 日刊ゲンダイ 2020/05/23
“官邸の守護神”として知られた東京高検の黒川検事長が辞表を出したが、安倍官邸は新たな守護神を早晩、検察トップに就けようと画策しているという。
 その最右翼が辻裕教法務事務次官(58)だ。灘高から東大法のエリートで、昨年、黒川氏の後任として事務次官に就いた。
「2011年から5年にわたり、大臣官房長として政界対応を担ってきた黒川氏の後任官房長に抜擢されたのも辻氏でした。いわば黒川氏の子飼い。法務次官になってからも、まるで官邸の意を汲んだかのような動きをしていた。前法相の河井克行・案里夫妻の公選法違反事件では、逮捕はせずに在宅起訴で済ませるよう、辻氏が検察に働きかけていると疑われていました」(民放の司法担当記者)

 今年2月、全国の高等検察庁の検事長や地方検察庁トップの検事正が一堂に集まる会議が開かれた際、黒川氏の定年が閣議決定で延長されたことに対して、出席した検事正から「不偏不党でやってきた検察への信頼が疑われる」という声が上がった。こうした異議を「必要性がある定年延長だ」として封じたのも辻氏だったという。
「辻次官は、同期の中では早くから将来の検事総長といわれてきた。黒川氏と同じく、捜査現場より法務省勤務が長い赤レンガ派です。ただ、黒川氏ほどのロビーイング能力はなく、政治にうまく使われる可能性がある。担当記者の間では『ミニ黒川』と呼ばれています」(前出の司法担当記者)

 検察ナンバー2の東京高検検事長には、黒川氏の後任として名古屋高検の林真琴検事長が内定。検察内では「順当な人事」と受け止められているが、このまま林氏がすんなり検事総長に昇格するかは分からない。過去にも林氏を事務次官に昇格させる人事を官邸が認めなかった前例がある。辻氏をねじ込んでくる可能性もあるのだ。
「黒川氏が辞表を出した21日、くしくも全国の弁護士や法学者約660人が『桜を見る会』の問題で安倍首相を刑事告発しました。現職首相が法律のプロから告発されるなんて前代未聞です。後ろ暗いことだらけの安倍首相は、自分を守ってくれる人物を検察トップに据えようとますます躍起になるはずです」(政治評論家・本澤二郎氏)
 黒川氏が去っても、第2、第3の守護神が出てくれば何も変わらない。