2020年5月27日水曜日

検察とメディアの癒着 記者クラブ制度の弊害は明らか 

 日本固有の「記者クラブ制度」は世界のメディアから奇異な目で見られています。
 記者クラブ制度は、メディアの権力からの独立の度合いを示す「報道の自由度ランキング」で、日本が66位(20年度)という低位を這っている理由の一つと考えられます。
 特に法務省(検察)の記者クラブは、検察の気に入らない記事を出したメディアには定例の記者会見に出席させないというペナルティを課すことで、法務省がメディアをコントロールする手段に使われて来ました。記者クラブには、そうしたメディアに情報を流して救済するという発想が元々ありません。
 
 日本の刑事事件での有罪率は998%という驚くべき高さです(海外では70%程度)。それは検察が人質司法と呼ばれる手法で自白を強要し、告訴すると裁判所がほぼそのまま認める結果です。そこには人権擁護の観念は全くありません。
 日本は13年5月の国連拷問禁止委員会で、アフリカの委員から「日本の司法制度の不透明性は『中世の名残』である」と批判されましたが、いまも司法の場で最大の人権蹂躙が行われています。
     ⇒13年6月15日)日本の人権大使が国連で「シャラップ」と

 検察の非道性はそれ以前からも指摘されてきました。それにもかかわらず一向に改めようとしないのは彼らが傲慢だからですが、日本のメディアが全く追及しないできたせいでもあります。日本の刑事裁判の有罪率が998%ということは、その中に膨大な冤罪が含まれていることを意味します。その異常さを糺さないメディアは検察・裁判所と同罪です。

 日刊スポーツによれば、黒川氏が賭け麻雀を繰り返していた舞台は、産経新聞の前司法記者クラブのキャップの自宅だったということです。産経のもう1人の記者は法相のインタビューなどで検察官の定年延長に一役買っていたということです。
 黒川事件では、思わぬことで検察とメディアの癒着の実態が明らかにされました。

 田中龍作ジャーナルも「黒川検事長、軽すぎる処分の影に記者クラブあり」との記事を出しました。併せて紹介します。
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黒川辞任、実名報道しない理由は何か/政界地獄耳
 日刊スポーツ 2020年5月26日
★メディアは辞職した東京高検検事長・黒川弘務の退職金やら、マージャンの賭け金の少なさから、検察の身内に甘い体質についてなどと人ごとのようにふるまっているが、余人をもって代えがたいと首相と法相がべた褒めする検事総長候補は実は大の賭けマージャン好きの博徒だったということと、訓告という処分が官邸の決定だったことが大きなポイントだ。そしてもう1つの問題は産経新聞の前司法記者クラブのキャップの自宅が賭けマージャンの舞台になっていること、産経のもう1人の記者は法相のインタビューなどで検察官の定年延長に一役買っていた。朝日の社員も元司法担当記者という。

★実名報道をうたう新聞社がこれだけの大事件の一方の当事者の実名報道しない理由は何なのだろうか。賭けマージャンもステイホームの時期の行動も、取材だから匿名なのだろうか。それならその時の様子はなぜ記事にならないのだろうか。遺族が嫌がろうとも実名で報道してきた新聞は身内には極めて甘いのか。他社もその実態を知りながら、いや関与しているから頬かむりなのだろうか。

★問題は記者の取材の仕方や流儀の問題だけではない。記者クラブ制度については内閣記者会と首相会見の茶番を見せられて国民には御用記者という言葉が浮かんだはずだ。この制度に問題があるのではないかとの指摘もあるが、この制度があるから他社も含め護送船団で匿名を守り、黒川ともう一方の当事者については触れないのだろうか。女優の大竹しのぶは22日、インスタグラムに「検察官というのは法を犯した人を起訴できる唯一の仕事であるはずなのに、その人が、かけ麻雀をしていたなんて、しかも事実を伝えるべき仕事の新聞記者と」と記し「自粛を守り、沢山の人が苦しい思いをしています。長い間守ってきたお店を閉めた人、面会することも許されず、病院で亡くなった方もいることでしょう。先が見えずに命を絶ってしまった方もいました。犯罪に走った人も。そして命をかけて働いている医療従事者の方たち、明日からどうやって生きていけばいいのか、途方に暮れている人たち。そんな人がいる中で、なぜ麻雀ができるのだろう。わからない」とつづっている。新聞は沈黙し続けるのか。(K)※敬称略


黒川検事長、軽すぎる処分の影に記者クラブあり
田中龍作ジャーナル 2020年5月26日
 記者との賭け麻雀で辞職した黒川検事長に対する処分が軽すぎる問題で、野党はきょう26日、法務省からヒアリングした。
 この問題で法務省は黒川検事長一人から聞き取り調査して処分を下した。記者3人からは事情を聞いていないのだ。
 野党議員が「聞かなかったのはなぜですか?」と追及したところ法務官僚から驚くべき答弁が飛び出した。
 「報道機関の方だったというのが基本的にある。報道の自由、取材の自由の観点からも(調べるのは)差し控えた」と答えたのである。
 驚きもしたが、すっきり納得が行った。当局と記者クラブの持ちつ持たれつを知っているからだ。
 記者は検察からリークを受ける。見返りとして検察の不祥事は書かない。検察批判はしない。 
 上記の答弁をした官僚は記者クラブの面倒を見ていた時期もあったそうだ。
 かつては、最高裁長官候補が司法記者クラブで賭け麻雀をしていた。
 元TBS記者がレイプを揉み消してもらえたのは、アベ友という理由だけではない。記者クラブメディアだったから、という説もある。
 マスコミ幹部と官邸や与党幹部との付き合いもあって、記者クラブの犯罪を問うのは至難の業だ。
 見返りに新聞テレビは本気になって黒川検事長の処分の軽さを追及することはない。
~終わり~