2020年5月14日木曜日

収束が見えた?! 政府は第2波への備えを何かやったのか(日刊ゲンダイ)

 政府はここにきてにわかに集会や営業の自粛の解除に向けて前のめりになりました。
 韓国やドイツなどの優等生国家がそちらに向かい出したので日本も・・・と言うことなのでしょうが、14日に発表されるという解除に向かう基準が本当に信頼できものなのか、そして氷山の一角しか把握していない日本で実態がその基準に適っているのか否かを確認できるのかは重要なポイントです。
 日本は、コロナ禍の入口においてクラスター対策を万能視して、PCR検査検査を他国の数十分の1に抑制するという重大な誤りを犯しました。
 医療崩壊を起こさないことが最大の理由でしたが、実際は抑制したために未確認感染者が市中の蔓延しそれが院内感染の多発につながりました(検査の抑制はいまも改善されていません)。
 13日にも28歳の力士の死亡が伝えられました。PCR検査をなかなか受けられず、直ぐには入院も出来なかったのが原因でした。タレントの岡江玖美子さんの死も同様の理由からでした。
 有名人の場合は報道されるので確認できますが、全国規模ではコロナ禍起因と確認されないままで亡くなった人は無数にいると思われます。

 入口で間違ったのだからこそ、自粛の出口戦略では間違って欲しくありません。
 そしてこれまで無為無策で過ごした分、第2波への備えは今度こそキチンとすべきです。

 日刊ゲンダイの二つの記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
収束が見えた? 政府は第2波への備えを何かやったのか
 日刊ゲンダイ 2020/05/12
<私も自分なりに調べた中で思ったのは今コロナの件で国民が大変な時に今急いで動く必要があるのか、自分たちの未来を守りたい。自分たちで守るべきだと思い呟きました>
 安倍政権が今国会に提出している検察官の定年を延長する「検察庁法改正案」に対し、SNS上で抗議の意思を示していた歌手のきゃりーぱみゅぱみゅが、11日、自身のツイッターを更新。抗議に至った動機を説明するとともに該当ツイートを削除した。
 おそらく、例によって安倍応援団の無知蒙昧のネトウヨから激しく非難されたのだろう。きゃりーは<失礼致しました>と謝罪の投稿もしていたが、謝罪する必要は全くない。不要不急かつ、安倍独裁化を助長するような検察庁法改正を審議する必要はないのは明らかで、<政治に詳しくない私>の抗議は極めてまっとうな指摘だったからだ。
 今、国会審議で何よりも優先されるべきは新型コロナウイルス対策であり、そのために政治権力は政党の枠を超えて総力を挙げて取り組むべきなのは言うまでもない。事実、きゃりーが懸念を示していた通り、安倍政権は検察庁法改正案の成立には前のめりだが、肝心要の新型コロナ対策については何一つ進んじゃいないのだ。

新型コロナ対策は口先ばかりでやる気なし
 感染拡大の防止に不可欠とされるPCR検査(遺伝子検査)についても、欧米や他のアジア諸国がPCR検査に力を入れる中、日本は感染経路をたどって濃厚接触者を重点的に検査するクラスター(感染者集団)対策に固執。その結果、経路不明の感染者を増やすことになり、慌てた政府はPCR検査の実施可能数を1日2万件に増やす――と舵を切ったものの、いまだに検査数は1日約9000件にとどまる。
 英オックスフォード大の研究者らが公表した、人口1000人当たりのPCR検査の累計件数(5月6日時点)の調査でも、イタリア(38・22件)や米国(23・52件)を大きく下回るのが日本(2・42件)の現状だ。
 検査数が増えない要因として、検体を採取、診断する医療施設の整備などの問題があるとされるが、そうであれば、ドライブスルー式のPCR検査体制を確立させた韓国などを参考にすればいいだけ。手作業による検査工程が煩雑というのであれば、すでにフランスの医療現場などで実績を上げている日本メーカーの「全自動PCR検査システム」を使えば済む話だ。安倍首相はPCR検査が増えないことに対し、「どこに目詰まりがあるか」などと他人事のようにスッとぼけたことを言っていたが、要は本気で取り組む気があるか否かだけの問題で、口先ばかりで何らやる気がない無能政権だから検査が増えないのだ。
 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。
「政策の優先順位が明らかに間違っている。今はとにかく新型コロナを封じ込めるためにPCR検査を増やし、自粛や休業によって苦しむ国民の生活を助けることに全力を挙げる時です。それなのに法案提出の理由も時期もデタラメな検察庁法改正に必死になっているのは言語道断ですよ」

国民は未来を守るために立ち上がるべき
 PCR検査の遅れに世論の不信感は高まるばかりだが、それでも安倍政権は失策や誤りを決して認めない。そんな悪辣政権の姿勢を象徴的に示しているのが、8日に変更されたPCR検査につながる受診の目安だ。
 厚労省が2月に公表した目安では、「37・5度以上の発熱が4日以上続く」「強いだるさや息苦しさがある」などと示され、保健所が感染を疑う人からの相談を受け付ける際、専用の帰国者・接触者外来を紹介するかどうかの判断にも使われてきた。ところが、この目安に従って自宅療養していた感染者の容体が急変して亡くなるケースが続出。このため、厚労省は「37・5度以上の発熱が4日以上続く」との目安を削除することになったのだが、目安を信じて亡くなった感染者の遺族からすれば「今ごろ、ふざけるな」と思うに違いない。だが、それ以上に許せないのは、加藤厚労相が目安について「我々から見れば誤解」と言い放ったことだ。
「通常の風邪やインフルエンザなら平均して3、4日で回復がみえるが、(新型コロナは)さらに続くという指摘があった。具体的な数字は専門家会合の意見を踏まえた」
 目安が公表された2月、加藤は会見でこう断言していた。担当大臣が「専門家の意見を踏まえた」とした上で説明していたにもかかわらず、まるで誤解した国民が悪いと言わんばかり。責任転嫁の発言も極まれりだ。そもそも、この政権は一事が万事、この調子だ。緊急事態宣言発令時の安倍も「すべては皆さんの行動にかかっています」と言っていたが、自分たちの無為無策には頬かむりし、すべての責任を国民に押し付ける。こんな無責任な政権では、新型コロナ感染防止のために国民が協力しても水泡と帰すだろう。

安倍首相は事態の深刻さを理解していない
 シンガポールのブラックボックス・リサーチとフランスのトルーナが23カ国・地域の人々を対象に実施した共同調査で、指導者の新型コロナ対応の評価で日本は最下位。日本で安倍政権の対応を評価した人の割合はたった5%だったが、これまでの対応を振り返れば当然だ。
 大騒ぎして緊急事態宣言を出したものの、結局、国は都道府県に権限を押し付けただけ。自粛や休業に伴う補償や財政支援はなく、PCR検査や感染者を受け入れている病院に対しても、不足しているマスクや防護服といった医療物資や、資金の支援すらしない
 詰まるところ、この数カ月間、第2波に備える何かをやってきたのかといえば、何もやっていないのだ。医療崩壊を防ぐために政府は新型コロナの感染者の受け入れ先として「全国で5万床の確保を目指す」としているが、厚労省が10日に公表した都道府県確保の病床数は全国で計1万4486床と、3割にも満たない。10万人あたりの集中治療室(ICU)病床数も4床しかなく、3月から医療体制の能力拡充に動き、今や総数で4万床のICUを確保したドイツとは程遠い状況だ。
 一方で、10日付の毎日新聞によると、緊急事態宣言が最初に出た7都府県で、新型コロナに感染した軽症・無症状の患者の療養先となるホテルや宿泊施設の稼働率を調べたところ、全体の空室率は9割以上に達していたというから、政策のチグハグさは否めない。

 PCR検査は増えない。医療器具は足りない。院内感染者も増えるばかり――。医療崩壊を防ぐどころか、今や医療崩壊を加速させているのが安倍政権であり、こんな政権に今後も新型コロナ対応を任せていいはずがない。それなのに安倍は11日の衆院予算委で「終息への道を着実に進むことができている」とか言っていたから唖然呆然だ。
 政治評論家の本澤二郎氏はこう言う。
「安倍首相は事態の深刻さをまるで理解していない。新型コロナに感染して苦しむ患者のことも、休業、自粛で収入が激減している人のことも。そして、その家族のことも。だから、どこに問題があるのか分からないし、当たり前のことをやらない。早急に審議する必要がない検察官の定年延長法案に抗議するツイッターの投稿が500万件を突破したのも当然です。感染者の数もロクに答えられないのに『終息への道』もへったくれもない。このまま第2波が来たら恐ろしい事態になります」
<自分たちの未来を守りたい。自分たちで守るべき>。今こそ、国民は怒りの声を上げる時だ。


感染実態も把握せず前のめり 緊急事態宣言解除への不安
 日刊ゲンダイ 2020/05/12
「14日に専門家から意見をいただき、一部解除が可能かどうか発表したい」
 緊急事態宣言の解除をめぐり、11日の衆院予算委でこう答弁した安倍首相。西村コロナ担当相も特定警戒都道府県以外の34県について、新規感染者数が減っていることから「解除が視野に入ってくる」と緩和に前のめり。早ければ、14日にも一部で緊急事態宣言が解除される可能性が出てきた。

 しかし、解除の判断を安倍政権に任せて大丈夫なのだろうか。感染の実態を把握していないからだ。
 厚労省が東京都の死亡者数を都のホームページをもとに19人から171人に変更したことについて、「正しい情報が総理や加藤大臣、西村大臣のもとに集まっているか?」と野党議員から突っ込まれると、加藤厚労相は「いつの、どういう報道ですか」と困惑。続いて答弁に立った西村氏も「一部修正がなされたというふうに理解しているけれども、正確な数字は覚えておりません」と白状した。
 厚労相とコロナ担当相が数字を把握していないこと自体、オドロキだが、問題はこれだけじゃない。参院予算委では、政府専門家会議の尾身茂副座長が「報告されているより(感染者の)数が多いのは間違いない」と答弁。今月4日の会見で、感染者数が実際の10倍との分析について「おっしゃる通り」と同意していたにもかかわらず、「(感染者数が)本当に10倍か15倍か20倍かは誰も分からない」「10倍かどうかと言うことは私にはできません」――とサジを投げたのだ。

韓国やドイツですらクラスター発生
 日本の約6.5倍PCR検査をして感染拡大を防いだ“優等生”の韓国やドイツですら、外出規制を緩和した途端、クラスター発覚が相次いでいるのに、感染実態すら分かっていない“劣等生”の日本政府が緊急事態宣言を解除して心配はないのか。
 感染症学が専門で西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏が言う。
「そもそも、政府は『人との接触を8割減らす』ことを訴えていますが、具体的に何を8割減らせばいいのかサッパリ分かりません。人数や行動範囲、仕事時間などいろんな基準がありますから、データに基づくサイエンスとは言い難い。数字の扱い方を理解していない時点で話になりません

 まだ感染の“第1波”を封じ込められていない安倍政権。緊急事態宣言を解除したら、たちまち感染第2幕となりかねない。