2020年5月23日土曜日

官邸が意に染まぬ稲田検事総長に「責任をとって辞職しろ」と

 賭け麻雀を報じられた東京高検・黒川弘務検事長が辞職することになりました。常習的な賭け麻雀は立派な賭博法違反ですが、法務省が下した処分は形ばかりの訓告で、減給などを伴わないものでした。検察庁NO2の処分としては余りにも軽微で、これでは身内に甘いという非難は避けられません。

 その件は一応措くとして、官邸が何と稲田検事総長も監督責任をとって辞職すべきという圧力を掛けているということです。
 そもそも官邸は、黒川氏の処遇については法務省の意向に反することを繰り返してきました。東京高検の検事長に黒川氏を据えたのも官邸でした。そして黒川氏が63歳になる20年2月7日以前に現在の稲田伸夫検事総長(64)を勇退させ、そのあとを黒川氏に継がせるというのが構想でした。しかし稲田検事総長がそれを拒否したために、急遽違法な閣議決定によって黒川氏の半年間の定年延長を決めたのでした。

 現在広島地検が東京地検の多大な応援を得て、河井克行・案里夫妻の選挙違反の捜査を精力的に行っているのは勿論稲田検事総長の了解に拠るものです。それが立件されれば安倍首相が嫌っている溝手顕正・前議員を追い落とすために行った策謀が破綻するので、安倍首相は何としても避けたいわけです。しかしどうもそれだけではないようです。
 安倍首相は河井案里氏の選挙費用として自民党の基準である候補者1人当たり1500万円の10倍に当たる1億5千万円を出しましたが、河井夫妻が選挙で使い切った金はせいぜい2000万円止まりとされています。残りは安倍事務所に回された(安倍事務所の秘書4名が持ち去った)と見られると一部のメディアが報じています(情報源は検察のリーク?)。本当であれば驚くべき、いや呆れるばかりの蓄財術です。
 
 いまのままでは最悪そのことも暴露されかねないので、官邸は必死に稲田検事総長を辞職に追い込もうとしているのでしょう。黒川氏ほどの適役にはなり得ないとしても法務省には第二の黒川氏はいる訳です。
 折しも東京高検の検事長には当初稲田検事総長が自分の後任と考えていた名古屋高検の林検事長が就任する見込みです。
 検察トップスを決める権限は官邸にありますがそれは形式上のことで、法務省の推薦を官邸が承認するというのがこれまでの実態でした。それを恣意的にあれこれと細かく介入し出したのが安倍政権でした。
 慣例では検事総長は就任2年を目途に勇退するということで、8月前後がその目処になります。後任について国民が納得できる目処を付けてから退任して欲しいものです。
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安倍官邸が黒川検事長の“賭け麻雀”を悪用、官邸と対立する稲田検事総長に「監督責任で辞職しろ」と圧力! 河井前法相捜査潰しが狙いか
LITERA 2020.05.21
 周知のように、賭け麻雀を報じられた東京高検・黒川弘務検事長が辞職することになった。しかし、驚いたのは森雅子法相が発表した処分だ。賭け麻雀は賭博法違反という立派な犯罪なのだから懲戒免職になったっておかしくはない。それが、減給や戒告ですらない、訓告、つまりただの注意で終わらせてしまったのだ。
 この甘すぎる処分には国民から批判の声が殺到しているが、安倍政権がとんでもないのはこれだけではない。首相官邸はなんと、黒川氏の賭け麻雀問題を逆に利用して、自分たちにとって“目の上のたんこぶ”である稲田伸夫検事総長の排除と、河井克行・前法相の捜査潰しに動き始めたのだ。

 実際、毎日新聞がきょう昼前に配信したウェブ版の記事でこう打っている。
〈法務省は首相官邸と調整を進めているが、官邸は混乱の責任を取る形で稲田伸夫検事総長の辞職も求めているとみられる。〉
〈法務省は、黒川氏の辞職を前提に、後任人事も含めて官邸と調整を進めている。検事総長、次長検事、検事長の任命権は内閣にあるが、首相官邸は、稲田検事総長の監督責任を問題視しているという。検事総長の引責辞任は極めて異例で、調整が難航する可能性もある。〉
 毎日だけではない。共同通信も、政権の動きを伝える記事のなかで〈稲田伸夫検事総長の監督責任も今後焦点となる〉と報じた。さらに、日本経済新聞も〈政府高官は21日、稲田伸夫検事総長の監督責任について「調査結果次第だ」と言及した〉と伝えている。

「森法相の会見では稲田氏の進退問題は出ていないと言っていたが、これは何も聞かされていないだけ。実際には菅義偉官房長官と杉田和博官房副長官が法務省に、『稲田の監督責任はどうなるのか』と揺さぶりをかけている」(官邸担当記者)
 実際、これを裏付けるように、“官邸の代理人”である田崎史郎氏もきょう放送の『ひるおび!』(TBS)で、稲田検事総長の責任問題にこう言及した。
「黒川さんを指揮監督する立場にあるのは最高検なんですよ」「だから僕は今回の後始末どうするのかってことも含めて、やっぱ最高検の検事総長がどうするかってことが厳しく問われなければいけないと思います」

 よくもまあ、こんなむちゃくちゃな話のスリカエを口にできるものだ。検察トップをかばうつもりはないが、この件については稲田検事総長には何の責任もない。それどころか、稲田検事総長は黒川氏が法務省事務次官や東京高検検事長に就任する際も反対しており、昨年末、官邸が黒川氏を検事総長に据えようとしたときも、総長勇退を拒否して、その動きを阻んできた。にもかかわらず、官邸が黒川氏について「組織に引き続き必要な人材」だと言い張り、これまでの法解釈を変更して黒川氏の定年年長を閣議決定。違法な形で2月以降も検察の職にとどまらせたのだ。
 そういう意味では、引責辞任しなければならないのは、定年延長を決定した森法相であり、安倍首相なのだ。それを黒川重用に反対していた検事総長に監督責任を押し付けるとは……。
 しかし、安倍政権がこんなむちゃくちゃな理屈でなりふりかまわず稲田検事総長を辞めさせようとしているのは、理由がある。それは河井克行・前法相の逮捕をなんとしてでも潰したいからだ。
 周知のように、広島地検はこの間、河井前法相を公選法違反の買収容疑で着々と捜査を進め、「逮捕許諾請求をして国会会期中に逮捕する方針を固めた」とも伝えられる。実はこの広島地検が強気であることの背景にあるといわれていたのが、検察トップの稲田検事総長の後押しだった。
「捜査を潰そうとする黒川氏に対して、稲田氏が『立件にたる証拠があるのなら遠慮することはない』と広島地検の動きを守ったため、捜査は潰れなかった。官邸にとって稲田氏はまさに目の上のタンコブだったわけだ。だから、早く稲田氏を引退させて、黒川氏を検事総長に据えようと必死になっていたんだが “番犬”の黒川氏が国民の批判と賭け麻雀問題で沈没。だったら、河井捜査の後ろ盾になっている稲田氏も一緒に辞めさせられないか、と考えたんだろう。それに、実際に稲田検事総長を辞めさせることは無理でも、“監督責任”というプレッシャーをかければ、稲田氏が裏取引に応じて、逮捕許諾請求はせず在宅起訴くらいになるかもしれないという計算もあるはず」(検察関係者)
 明日から安倍応援団や御用メディアは一斉に稲田検事総長の監督責任を喚き立てるだろう。だが、こんな詐術に騙されてはならない。黒川検事長と定年延長をめぐる責任は、自分たちの不正を握りつぶすために腐敗官僚を検察幹部に引き立てた安倍首相にあるのだ。(編集部)


「作られた演出臭がする」賭け麻雀辞任/政界地獄耳
日刊スポーツ 2020年5月22日
★政界関係者が、一連の東京高検検事長・黒川弘務を巡る末路について「妄想だよ」と念を押しながら国会近くの喫茶店で話し始める。「産経の記者と朝日の元記者に誘われてマージャンに興じた検事長。経緯だけ見れば緊急事態宣言の最中に記者に誘われてマージャンに、月に2度も行っていたとなれば、首相・安倍晋三が『余人をもって代えがたい』人物もその程度かという気になる。それに不要不急の外出も、マージャンなら許されるという上級国民ぶりも醸し出す。それが接待マージャン、賭けマージャンならなおさらだ。検察と新聞社の癒着もうわさ以上にひどい状態と感じさせる」。本筋の情報以外の情報が多すぎるという。

★つまり「作られた、演出臭がする」というのである。よくできているのは、文春の早刷りが政界に出回った20日の午後、官房長官・菅義偉は「コメントを控える」とし、公明党政調会長・石田祝稔が「事実であれば職務を続けられるという話ではない」と、早々に辞任の線を敷いたことになる。思い出すのは元文科事務次官・前川喜平報道だ。17年5月22日、読売新聞は1面肩で、前川が歌舞伎町の出会い系バーに頻繁に出入りし、店内で気に入った女性と同席し値段交渉したうえで店外に連れ出していたと報じた。今となっては前川の説明に多くの人たちが納得しているが、その時、菅は「常識的に言って、教育行政の最高の責任者がそうした店に出入りするようなことは、到底考えられない」とコメントしている。

★その前川は10日と18日にツイッターで「黒川氏が普通の常識人なら、これだけ批判を浴びれば自ら身を引くはずだ。辞めるに辞められぬ事情があるのではないか」「黒川はやはり何かを官邸に握られている」と推測している。読売の報道時には「官邸ポリス」の存在までも取りざたされた。前川は読売が、今回は文春がということか。それにしても謎が多すぎる。
  (K)※敬称略