2020年5月15日金曜日

三浦瑠麗氏の「#検察庁法改正案に抗議」攻撃の大間違い(LITERA)

 浦瑠麗氏(東大講師)はTVの座談会などで上から目線の発言をすることで知られていて、何故か安倍首相のお気に入りでもあります。
 TV(やツイッター)などでの発言は短いし、新しい視点からの発言風に装えば何となく耳新しく聞こえるのですが、所詮は安倍政権を擁護する発言なので一皮むけばマヤカシの論理です。
 LITERAでこれまで何度か三浦氏の発言を取り上げ、手厳しくその誤りを批判してきました。そのため彼女はLITERAに対しては大いなる敵愾心を抱いているようです (^○^)

 今回は、三浦氏が「#検察庁法改正案に抗議します」のツイートに対して、それを見下したような発言をしたことを捉えたもので、いつものように徹底的に批判しました。と同時に政府の狙いを詳しく述べています。どうぞ全文をお読みください。

 文中に「ストローマン論法」という言葉が出てきますが、それはある主張を批判するに当たり「主張(事実)を捻じ曲げ、都合よく切り取り歪曲して反論する」論法のことで、まさに三浦氏が採っている論法のことです。
 また「スリーパーセル」という言葉も出てきますが、詳細については以前のLITERAの記事を参照ください。

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三浦瑠麗の〈#検察庁法改正案に抗議します〉攻撃の恥ずかしすぎる間違いとスリカエ詐術を徹底検証! 不勉強なのは安倍応援団のほうだ
LITERA 2020.05.14
 芸能人や有名人も続々参加するなど、前代未聞の広がりをみせた〈#検察庁法改正案に抗議します〉。しかし、ここにきて、この批判を抑え込もうという動きが露骨になってきた。加藤清隆、竹内久美子、百田尚樹らネトウヨ論客が「中国の陰謀」「広告代理店が黒幕」というトンデモを叫び始めたことは先日、紹介したが、それ以外でも、安倍応援団やネトウヨがこんなことをがなり立てている。

“検察庁法改正案は公務員の定年延長が決まったから出てきただけ、黒川検事長の定年延長は全くの別問題”
“不勉強なまま検察庁法改正案と黒川検事長の問題を混同している”
“#検察庁法改正案に抗議しますはバカな芸能人が無知をさらけ出した”

 開いた口が塞がらない。詳しくは後述するが、検察庁法改正は明らかに、安倍政権が自分たちの“番犬”である黒川弘務・東京高検検事長を検事総長に据えるため、違法に定年延長させたことを後付けで合法化しようというものだ。しかも、安倍政権はそのために公務員の定年延長や検察庁法改正をめぐるこれまでの議論の方向性をひっくり返し、政権が恣意的に検察幹部や検察官の定年を左右できる法律にしようとしている。
 声を上げた芸能人たちはその問題をまっとうに指摘している。それを「検察庁法改正案と黒川検事長の定年延長は関係ない」「公務員の定年延長議論は前からあった」などと言うほうが、無知、フェイクではないか。
 だが、こういうことを主張しているのは、頭の悪いネトウヨだけではない。実は自称国際政治学者・三浦瑠麗センセイも、10日から11日のお昼前にかけて、この検察庁法改正案を擁護・正当化するツイートを20ツイート以上連投したのだが、約3000文字に及ぶその内容は、ネトウヨのフェイクと大差ない間違いだらけのシロモノだった。
 安倍応援団が振りまく〈#検察庁法改正案に抗議します〉への反論がいかに詐術と嘘、デタラメに満ちたものであるかをはっきりさせるためにも、三浦瑠麗センセイのツイートを検証してみたい。
 三浦センセイの主張で最大の問題なのは、初っ端のこのツイートだ。

〈公務員の定年を65歳にすることの是非は別途論じたら良いと思うけれども、検察官だけ定年を短くすべきという意見が多数とは思えない。政権に対する諸々の信頼感のなさが検察庁法改正「だけ」に反対する世論をうんでいるのだけれど、ほかの公務員どうするのかまで含め論じてくださいね。#検察庁法改正〉

 三浦センセイに聞きたいが、「検察官だけ定年を短くすべき」などという主張をしている人間っていったいどこにいるのか。いま批判されている問題は、検察官全般の定年延長ではなく、安倍政権が幹部の人事を恣意的にコントロールできる規定を検察庁法改正案に入れてきたことだ。それを“国家公務員の定年延長には反対せず検察官の定年延長にだけ反対している人たち”がいるかのような誘導は、典型的なストローマン論法⇒歪めた理解に基づく反論ではないか。
 しかも、三浦センセイが悪質なのは、検察庁法改正案が歪められた経緯や本質的な問題点を完全にネグっていることだ。意図的なのか、本当に無知なのかわからないが、せっかくなのできちんと解説しておこう。

三浦瑠麗がネグった「検察庁法改正案」黒川検事長定年延長後の二つの修正
 検察庁法の改正は一昨年、人事院の勧告によって国家公務員の定年延長に伴い検討が始まった。検察庁は当初「検察官の定年延長は不要」という姿勢を示していたが、その後、定年延長に同意。昨年10月末、内閣法制局が審査を完了していた検察庁法改正案では、〈検察官は、年齢が六十五年に達した時に退官する〉という条文が明記され、改正内容の説明でも〈検察官の定年年齢を65歳に引き上げる〉と書かれていた。ここまでは官邸の関与も、黒川検事長の勤務延長問題も関係がないし、誰もそのことを批判していない。
 問題は、1月31日に内閣が黒川氏の定年延長を閣議決定した後、この法案に新たな規定が加えられていることだ。

 昨年10月の法案では、最高検次長、高検検事長、地検検事正ら検事総長を除く幹部は63歳になると役職を退くという「役職定年制」が設けられていた。言っておくが、役職定年制は、三浦氏の言うような検察官だけ定年を63歳のまま据え置くというようなものではなく、その年齢になると役職を退きヒラの検察官に戻るというだけで、検察官の定年が65歳まで引き上げられることには変わりはない。
 一般職の国家公務員については、この役職定年制とともに、特例で役職を続行する規定があるが、このときの法案ではその例外規定は設けられなかった
 当然だろう。検事長などの検察幹部は一般職の国家公務員とはまったく違って、公訴権と捜査権という強大な権力を持つ組織を率いる立場であり、役職期間をほかの公務員よりも厳しく設定する必要がある。
 実際、当の法務省も昨年秋の法案検討の際に、役職定年の例外について「63歳以降も続けさせる例外規定は必要はない、それによって公務の運営に著しい支障が生じることはない」という見解を出していた。今回、松尾邦弘・元検事総長ら検察OBが定年延長に反対する意見書を提出する動きを見せているのも、同様の理由からだ。
 
 ところが、今年3月に出てきた改正案には、内閣や法相が認めれば、特例として役職定年の63歳になった後もその役職にとどまれるという例外規定が加えられていたのだ(検察庁法改正案22条5、6項など)。
 さらに、検事総長を含むすべての検察官について、やはり内閣や法相などが認めれば、65歳になってもその役職のまま定年退職を先送りできる「定年延長制度(勤務延長制度)」も導入されていた(同22条2など)。
 これらが、黒川検事長の定年延長と連動しているのは修正された改正案に添えられた説明資料「案文修正の経緯及び概要」に〈今回、検察官についても現行国家公務員法第81条の2の規定により退職するもの(中略)であって、勤務延長制度(中略)が適用されるものと整理したことから、(中略)勤務延長制度を踏まえた新たな修正を行うこととなった〉とあることからも、明らかだ。
 安倍政権は黒川検事長を検事総長に据えるため、定年延長を閣議決定する際、特別法の検察庁法ではなく一般法の国家公務員法を適用すると言い出したが、それは特別法の優先というこの国の法運用の原則をひっくり返すありえないものだった。そこで、これを正当化するため後付けで、検察庁法改正案に幹部が役職にとどまれる修正が加えられたのである。

公訴権をもつ検察官の特殊性を無視して「公務員と同列に」論の愚かさ
 しかし、問題はそれだけではない。もっと危険なのは、検察庁法改正案にこの2点が加えられたことによって、今後、政権が検察を完全にコントロールする体制が出来上がってしまうことだ。
 修正された改正案では、63歳になった幹部がそのまま役職にとどまれる「役職定年制の例外」も、すべての検察官が65歳になっても定年を延長できる「定年延長制」も「内閣や法相が認めた場合」となっている。
 検察は、実質的にこの国で閣僚クラスの大物政治家の汚職を摘発できる唯一の捜査・公訴機関である。ところが、安倍政権は検察庁法改正案を修正することで、その機関の幹部の定年を恣意的に内閣がコントロールできるシステムをつくろうとしているのだ。
 これが成立すれば、黒川検事長のような政権の意を受けて動く検察幹部だけが定年を延長され、政界捜査を後押しする検察幹部が排除されていくことになるのは必至だろう。そして、検察内部に政権忖度と萎縮がどんどん進み、検察官の独立性は完全に失われてしまう

 ところが、三浦センセイはこうした問題点をすべて無視して、国家公務員も検察官も同じように扱うべきなどと主張するのだ。前述したように、一般職の国家公務員と検察官を同列に考えるということ自体、司法というものをまったく理解していない素人丸出しの意見だが、三浦センセイがこの公務員・検察同列論でネグっていることがもうひとつある。
 それは、今回、安倍政権が通そうとしている検察庁法改正案では一般職の国家公務員と同列どころか、検察官のほうが一般職の国家公務員よりも政権から介入されやすい仕組みになっていることだ。
 国家公務員法によると、一般職の国家公務員の役職延長や定年延長の可否を決めるのは「人事院」。ところが、検察庁法改正案では「内閣や法相」なのである。つまり、検察についてだけ直接、政権が定年延長を決める仕組みになっているのだ。そこに検察をコントロールしようという意図があるのは明らかだろう。同列にしろと言うなら、三浦氏はなぜこの不平等の問題を取り上げないのか
 ようするに、三浦センセイは自分こそが偏りまくって事実の歪曲、切り取りをしているくせに、批判の声を「検察庁法改正だけに反対する世論」などとあたかも不公平で恣意的な議論であるかのように印象操作しているのだ。
 そのほかのツイートもほとんどが同様だ。客観的に状況を分析しているふうを装って上から目線で説教するのだが、あげている根拠をひとつひとつ検証したら、事実の捻じ曲げ、切り取り、歪曲だらけなのだ。
 極め付きは、このツイートだろう。
〈安倍政権が気に入らないなら、いま一番いうべきは人為的に作り出される恐慌が人々の生活や命を奪うことなのだけど。そういうと自粛延長を望む人が反発するから、やはり政策が生活から乖離している分野であればあるほど、反対するのはラクなのだろうね。法案が潰れても政権含め大して誰も困らないから。〉

上から目線で〈政策が生活から乖離しているから反対するのはラク〉
 三浦センセイは検察庁法改正案への抗議の声をただ〈安倍政権が気に入らない〉だけ、〈政策が生活から乖離している分野であればあるほど、反対するのはラクなのだろうね〉と決めつけているのだが、この分析じたいがめちゃくちゃだ。
 そもそも現実は逆で、今回の批判はこれまで安倍政権に批判の声を上げていなかった人たちが大勢声を上げており、だからこそ、いままでにない数になっている。そのことを三浦はいったいどう説明するのか。
 しかも、三浦センセイは〈いま一番いうべきは人為的に作り出される恐慌が人々の生活や命を奪うこと〉、つまり声を上げるべきは検察庁法ではなくコロナ対応なのに、と話をすり替えているが、あんたに言われるまでもなく、コロナ対策の問題にだって多くの国民がすでに批判の声を上げている。
 今回、検察庁法改正案の問題がここまで盛り上がっているのは、むしろ、生活に直結したコロナ対策の酷さを目の当たりにした国民が、安倍政権の正体に気づき、ほかの分野にもチェックの目を向け始めたからだ。その結果、生活に直結するコロナ対策をおざなりにしている安倍政権が自分たちの支配力を強める検察庁法改正だけを不要不急の状況でゴリ押ししていることがわかり、怒りがさらに大きくなったのである。
 そうした世論の動きを一切無視して“国民は生活に関係していることより、生活に乖離しているほうが反対するのはラクだと思っている”って、いったいどこのトンチキ政治学者の学説なのか。
 おまけに〈法案が潰れても政権含め大して誰も困らないから〉ときた。政治学者のくせに、「閣議決定によって特別法の優先という法律運用の大原則が崩れてしまった状態」のつじつま合わせをすることが行政機関にとっていかに重要かがわかっていないのだ。
 また、今回の検察庁法改正案は、広島地検による河井克行・前法相の立件の動きを牽制する効果を狙っているということは、多くの検察ウォッチャーが指摘している。三浦は別のツイートで〈法案が通っても効力をもつのは2022年度からですからね〉とつぶやいていたが、2022年4月からこの法律が施行されることが決定すれば、いま、現場で捜査に当たっている検事たちの将来に大きく影響する。十分、忖度と萎縮を与えることができるだろう。
 だからこそ、安倍政権はいくら批判を浴びてもこの法案を通そうとしているのではないか。その事実をまったく見ずに、〈法案が潰れても政権含め大して誰も困らないから〉などうそぶくのだから、悪質と言うほかない。

三浦瑠麗は“法案の修正の経緯を知らなかったのではないか”疑惑
 だが、実は三浦センセイのツイートを読んでいる途中から、三浦センセイのこうした“事実の無視や歪曲”は意図的なものだけではなく、ほんとうに無知でバカだから、という要素も多分にあるのではないかという気がしてきた。
 というのも、センセイがこんなツイートもしていたからだ、
〈定年延長は両面あるが、そもそも多くの高級官僚は昇任ポストがなければ退官していくので、その再就職先を見つける支援+不当な天下り防止の両立、回転ドアのように民間と行き来する人事の拡充とセットで論じないといけない。安倍政権に注目すると多くの幹部官僚のポストが長期化している問題がある。〉
〈検察官だけ別扱いすべき、という意見もあるようですが、検察官の定年が短いと、試験エリートが一番有利なシステムになります。司法試験に一番早く受かり、脇道を経験せずまっしぐらに主要ポストを経験した人しか検事総長になれないということですね。
検察の無謬性神話や偏った価値観を醸成しやすい。〉
 だーかーらー、何度も言っているように、役職定年制に例外がなかった昨年秋の法案でも、検察官は全員63 歳から65歳に定年が引き上げられているし、役職者も役職を降りるだけで、65歳まで検察官を続けられるんだって。
 それなのに、定年延長しないと再就職先の問題が出てくるとか、いったいなんの話なのか。もしかして、三浦センセイは修正される前の昨年秋の法案の内容を知らず、今回、もち出してきた改正法案ではじめて検察官の定年が63歳から65歳に延長されると勘違いしているのではないか。
 いや、おかしいのは法案についての認識だけではない。そもそも検察官は司法試験に合格し法曹資格があるのだから、検察官を辞めても弁護士の仕事ができる。ヤメ検弁護士として検察出身の経歴を売りに企業の顧問や社外取締役に収まる者も多いし、公証人のポストを用意されるケースも少なくない。いずれにしても、ほかの公務員と違って、検察官は退職後の再就職や天下りの心配はほとんど無用なのだ。
 ここまでくれば、もうおわかりだろう。三浦センセイは、検察庁法改正案が内閣法制局の審査が完了し、その後、修正された経緯も、日本の検察官の位置付けや検察官の定年をめぐる現実もまったく知らないのだ。そうでなければ、いくら安倍政権を擁護したいとしても、こんな無知を晒すような恥ずかしい主張はできないはずだ。

不勉強なのは〈#検察庁法改正案に抗議します〉芸能人ではなく、攻撃している安倍応援団だ
 三浦センセイといえば、例の「スリーパーセル」発言などでも、なんの知識もないくせに、英タブロイド紙や右派論壇の陰謀論などを使って自説を展開していたことが明らかになったが、今回もおそらく同じだったのではないか。
 盛り上がっている〈#検察庁法改正案に抗議します〉を冷ややかに分析して自分の頭の良さをアピールしたいという自己顕示欲と、安倍政権を擁護したいという目的があって、それに使えそうな情報をネットか何かから適当にかいつまんで、組み合わせただけなのではないか。

 だが、これは三浦瑠麗だけに限った話ではない。冒頭で説明したように、いま、〈#検察庁法改正案に抗議します〉に賛同した芸能人や有名人は、御用学者や安倍応援団の極右論客から「不勉強」「無知」「バカな勘違い」などといった攻撃を浴びせられている。
 しかし、三浦センセイのケースを見れば明らかなように「不勉強」で「無知」で「バカな勘違い」をしているのは、まさに、安倍応援団やネトウヨのほうなのだ
 一昨日、小泉今日子が「不勉強」という攻撃に対して〈私、更に勉強してみました。読んで、見て、考えた。その上で今日も呟かずにはいられない。 #検察庁法改正に抗議します〉と堂々反論したが、実際、改正案の修正の経緯やその内容をきちんと見れば、これが大問題であることは誰の目にも明らかだ。だからこそ、元検事総長までがこの定年延長に異論を唱えているのだ。
 安倍応援団やネトウヨ連中の政権擁護という結論ありきのフェイクに騙されてはならない。“理”は明らかに抗議をしている側にある。問題点に気づいた聡明な国民には、日本の民主主義を終わらせないために、これからもっと大きな声を上げ続けていってほしい。(編集部)