国連人権高等弁務官事務所が22日、日本の特定秘密保護法案について日本政府に透明性の確保を要請しました。
人権理事会特別報告者は、秘密漏えいによる損害が国民の「知る権利」という公益よりも大きな場合に限って秘密保持が認められるが、その場合でも、独立機関による点検が不可欠であるとし、当局の不正に関する機密情報を『良かれ』と思って公にした公務員は法的制裁から守られなければならないと主張しました。
みんなの党及び維新の会は与党との修正協議をそれぞれまとめたようですが、こうした国連の指摘するような原理的な次元での修正は一切ありませんでした。みんなの党がいち早く与党と合意すると維新の会もそれに負けじとばかりに、愚にもつかない「修正」でまとめました。テレビでは薄ら笑いを浮かべながら協議している様子が放映されていますが、醜態というべきです。
そのぶざまさに対して毎日新聞は「秘密保護法案 まるで擦り寄り競争だ」、朝日新聞は「秘密保護法案―『翼賛野党』の情けなさ」とそれぞれ社説で批判しました。もはや補完勢力どころか翼賛勢力と呼んだ方が相応しいというわけです。
維新の会などは当初は「秘密の対象は防衛だけに限定する」が主張でしたが、結局は対象は与党の案の通りで、秘密指定期間を60年に倍増すると改悪しました。朝日新聞は「与党に都合のいい修正をするのが野党の役割ではない」と述べています。
以下に「国連の懸念」の記事、毎日新聞の社説及び各地における反対運動などを紹介します。
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秘密保護法案:国連人権理の特別報告者 日本に懸念表明
毎日新聞 2013年11月22日
【ローマ福島良典】国連人権理事会のフランク・ラ・ルー特別報告者(グアテマラ、表現の自由担当)は22日、日本の特定秘密保護法案について「内部告発者やジャーナリストを脅かすもの」との懸念を表明、日本政府に透明性の確保を要請した。国連人権高等弁務官事務所(本部スイス・ジュネーブ)が報道声明で発表した。
ラ・ルー特別報告者は「内部告発者や、秘密を報じるジャーナリストを脅かす内容を含んでいる」と法案を批判。秘密漏えいによる損害が国民の「知る権利」という公益よりも大きな場合に限って秘密保持が認められるが、その場合でも、独立機関による点検が不可欠だと主張した。
国家機密を漏らした公務員らに厳罰を科す内容が法案に盛り込まれている点について「違法行為や当局の不正に関する機密情報を『良かれ』と思って公にした公務員は法的制裁から守られなければならない」と指摘した。
(社説) 秘密保護法案 まるで擦り寄り競争だ
毎日新聞 2013年11月22日
またもや「陥落」である。特定秘密保護法案の修正協議で今度は日本維新の会が妥協、与党と合意した。
法案の根幹が変わらないのは、与党とみんなの党の合意と同様だ。競い合うように野党が与党に擦り寄る状況は異様と言わざるを得ない。
そもそも最初から決裂という選択肢などなかったのではないか。そんな疑念すら抱かせる腰砕けだ。
「都合の悪いものを隠すのは人間のさが。特に権力機構になれば動機は強まる」。維新の橋下徹共同代表はこう語り、懸念を強調していた。
修正協議で維新は(1)秘密を指定する行政機関の限定(2)秘密指定が妥当かを判断する第三者機関の設置(3)秘密指定を最長30年とすることなどを求め、与党に「丸のみ」を促すなど意気軒高だった。これらが重要な論点であることは確かだ。
ところが指定期限は60年となり、しかも、非常に広範な例外が設けられた。第三者機関の設置は付則で検討が盛られるにとどまり、秘密を指定する行政機関の範囲にも事実上歯止めはかからなかった。みんなの党と五十歩百歩の大幅譲歩である。
改悪になりかねない要素もある。指定期限を60年とすることは逆に「30年を超えるときは内閣が承認」のルールを形骸化させ、あらゆる情報を半世紀以上封印するおそれがある。5年間特定秘密を保有しない行政機関は指定権限を失うとしたが、逆に各官庁を秘密指定の実績作りに走らせはしないか。
大幅譲歩の要因とみられるのが、与党とみんなの党が先行合意したことへの焦りだ。交渉の席を蹴ることはできないと足元をみた与党から強気で揺さぶられ、ぐらついたのが実態ではないか。
維新は22日に党の正式対応を決めるがこんな合意に党内からも不満が出るのは当然だ。橋下氏は「非常に不本意でも少しでも変えるのが野党の使命だ」と容認したが、重大な問題を抱える法案の根幹を変えず、成立に力を貸すマイナスの方が大きい。みんなの党も含め、議員一人一人の信念が問われる場面でもある。
対案を示し、与党と合意していない野党は民主党だけになった。「よりましな法案にするため譲歩も検討すべきだ」との意見も党内にあるようだが、安易な妥協は欠陥法案を恒久的に固定化させる道を開く。
肝心の衆院での法案審議は与党議員の大量欠席で空席が目立つなど、たるんだ光景が演じられている。審議入りからまだ2週間、民主案も含め徹底議論を尽くすべきだ。
広島、秘密法案に抗議で座り込み 原爆ドーム前、平和団体など
東京新聞 2013年11月22日
政府が今国会での成立を目指している特定秘密保護法案に反対するため、原水爆禁止広島県協議会(広島県原水禁)など広島の平和団体や労働組合のメンバーが22日、広島市中区の平和記念公園にある原爆ドーム前で抗議の座り込みをした。
被爆地の広島から、法案反対の世論を盛り上げるのが狙い。
観光客でにぎわう昼すぎ、約70人が横断幕とプラカードを掲げて座り込みを続け、法案が国民の知る権利や報道の自由を奪うと指摘。初めて原爆被害を受けた広島は、戦争への道を開く法案に強く反対し、廃案を求めるアピールを採択した。(共同)
群馬弁護士会「反対」ちらし配布 高崎駅前
東京新聞 2013年11月22日
群馬弁護士会の約二十人が二十一日夕、高崎市のJR高崎駅で特定秘密保護法案に反対するちらし約七百枚を配り、市民に法案の危険性を訴えた。
弁護士たちはオレンジ色のジャンパーを着て、西口と東口に分散。「法案に反対し、東京電力福島第一原発事故など国民が真剣に考えるべき情報公開の推進を求める」などと記したちらしを市民に手渡した。
受け取った四十代の女性は「国は法案についてきちんと説明せず、不安だ。国民も巻き込まれるような危険な法案との印象がある」と話した。
「知る権利」奪うな JR川崎駅 市民団体シール投票
東京新聞 2013年11月22日
安倍政権が成立を目指す特定秘密保護法案をめぐり、川崎市の市民団体「かわさき九条の会」が二十一日、JR川崎駅の自由通路で、通行人らに法案の賛否を問う街頭シール投票をした。
「なにが秘密か それは“秘密”です」と書いた横断幕を掲げ、足早に通る人々に参加を呼び掛けた。午前と午後で一時間ずつの投票の結果、反対百二十八、分からない五、賛成十二だった。
東京都大田区の男性(31)は「法案をよく知らなかった。戦争ができる国への一歩なんですってね」と反対に一票。ただ、全体に若者の投票は少なく、同会の城谷護代表は「若い世代ほど長く、知る権利を奪われる問題なのに。選挙の投票率が低いのと同じで心配だ。法案が国民サイドにいまだ知られていないことも影響している」と危機感を語った。
投票は弁護士や学識者らの呼び掛けで、全国で実施されている。川崎市では、高津区の「溝口駅前キラリデッキ」で別の市民団体が既に二回行っており、いずれも「反対」が最も多かった。 (山本哲正)