京都新聞は18日、「秘密法修正協議 安易な妥協許されない』とする社説で、それまでの両党との修正協議を批判しました。
秘密指定の期間に「30年以内」の上限を定めるかについて、与党が「原則30年」の表現で妥協を求めていることに対して、「『原則』というだけでは、例外扱いで政府が伏せて置きたい情報をいつまでも闇の中に隠し通せる。ずっと秘密が指定解除されない制度的欠陥は、温存されたままになる」とし、「特定秘密」としての妥当性を判断する第三者機関の設置についても、与党は、「付帯決議で今後の検討を明記する、としただけ」で、具体性はなく、口約束で野党を懐柔しようとしているかのように見える、と述べています。
『原則』や『付帯決議』に実質的な効力がないということは、政治家であれば誰でも知っていることです。その程度の文言の修正で、何か内容的に前進したとでも錯覚して合意するということであれば、笑止の沙汰というべきです。
そもそも法成立後に政府が運用で決めることの多さに、民主党からも「肝心な中身はこれから、では有権者に説明ができない」と疑問の声が出ているということですが、きわめて当然の話です。せめて民主党にはその考えを貫いて欲しいものです。
社説は、「国会や司法の機能さえゆがめかねない重要法案は、もっと時間をかけ、慎重に議論するべきだ。(中略)これから数日で採決に臨むのはあまりに粗っぽく、到底看過できない。(中略) 日本維新とみんなの党は、法案の危険な本質に立ち返り、与党との協議の場からいったん降りるべきだ。(中略)この程度の微修正に応じず、野党は協力して法案成立を阻止してほしい」、と結んでいます。
日本維新の会とみんなの党は、少しは野党らしい姿勢を示して欲しいものです。
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秘密指定に首相の「指揮権」 与党、新たな修正案提示
東京新聞 2013年11月18日
自民、公明両党は18日、特定秘密保護法案をめぐりみんなの党と修正協議を行い、漏えいを禁じる「特定秘密」の指定に関する首相の「指揮監督権」を明記する新たな修正案を提示した。みんなの党の山内康一国対委員長は協議後、評価する考えを記者団に表明した。これに先立ち、与党は日本維新の会とも修正協議を再開し、特定秘密指定の妥当性をチェックする第三者機関設置の是非などについて協議した。
与党は19日昼までに両党との修正合意を目指し、議論を加速させる。今国会成立に向け、21日に衆院を通過させる構えだ。 (共同)
(社説)秘密法修正協議 安易な妥協許されない
京都新聞 2013年11月18日
自民、公明両党は週内に特定秘密保護法案を衆院通過させようと、日本維新の会やみんなの党との修正協議を急いでいる。
協議の焦点は、秘密指定の期間に「30年以内」の上限を定めるかどうかと、秘密指定の妥当性をチェックする第三者機関設置の是非だ。
与党の示した見直し案は、枝葉の文言の微修正にとどまっており、骨格部分には何ら手を付けていない。
半永久的に秘密にされるとの批判に対し、自公は「原則30年」の表現で、妥協を求めている。
しかし、「原則」というだけでは、例外扱いで政府が伏せて置きたい情報をいつまでも闇の中に隠し通せる。ずっと秘密が指定解除されない制度的欠陥は、温存されたままだ。
また第三者機関の設置についても、付帯決議で「今後の検討」を明記する、としただけだ。具体性はなく、口約束で野党を懐柔しようとしているかのように見える。
法成立後に政府が運用で決めることの多さに、民主党から「肝心な中身はこれから、では有権者に説明ができない」と疑問の声が出ているが、当然だろう。安易な妥協は許されない。
国の情報は国民の財産だ。政府の都合で情報を隠したり、知る権利が制約されたりしないよう、きちんと明文化された法制度を構築するのが先だ。
外部の識者らでつくる委員会を設けても、それだけで透明性や独立性、国政へのチェック機能が担保されたことにはならない。過去の原子力政策をみれば明らかだ。
法案は、国会による政府へのチェック機能を弱め、国会議員の首を自ら締めるようなものだ。特定秘密漏えいが刑事事件になると、裁判所が「特定秘密」の内容にアクセスできず、公正な判断ができなくなる懸念もある。
国家による情報統制への道を開き、国会や司法の機能さえゆがめかねない重要法案は、もっと時間をかけ、慎重に議論するべきだ。衆院特別委員会での論戦は、問題点を掘り下げていない。これから数日で採決に臨むのはあまりに粗っぽく、到底看過できない。
数の上で巨大な与党が修正協議に応じているのは、反対や慎重な声が高まる世論から、強行採決だと批判されるのをかわすための形づくりにしか見えない。
日本維新とみんなの党は、法案の危険な本質に立ち返り、与党との協議の場からいったん降りるべきだ。民主も、態度が煮え切らない。この程度の微修正に応じず、野党は協力して法案成立を阻止してほしい。
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<ウォッチ>与党「見せかけ」修正案 「知る権利」依然軽視
東京新聞 2013年11月18日
国家機密を漏らした公務員らへの罰則を強化する特定秘密保護法案の修正協議で、政府・与党が日本維新の会、みんなの党に示した修正案は、特定秘密の指定の妥当性をチェックする第三者機関の設置など各項目で、実質的に中身のない内容だ。与党側に国民の「知る権利」を担保する真剣さは見えず、世論の批判をかわすための「見せかけ」と指摘されかねない。(宇田薫、安藤美由紀)
自民、公明の与党は維新、みんな両党の要求に柔軟に対応する姿勢をみせようと、修正案を提示したが、内容は乏しい。
最たるものは、特定秘密の指定の妥当性をチェックする第三者機関の設置だ。
与党は「国会の関与を強める」との代替案を示した。国会の関与が強まれば、政府の恣意(しい)的な指定は制限されるとの印象を受けるが、実際は指定や解除の件数などの「概要」を報告する程度にすぎない。国会が情報を直接確認し、妥当性を判断するわけではない。国会の秘密会に特定秘密を提示するかどうかも、政府側の判断に委ねられる。
米国では独立性の高い国立公文書館の情報保全監察局や第三者の歴史学者を含む委員会が直接判断するが、その仕組みとはかけ離れている。
特定秘密の指定は「原則」として三十年を超えたら延長できないと提案した。ただ、どのような場合に「例外」が認められるのか例示はなく、政府の判断でいくらでも例外は広がる。
条文に三十六カ所もあり、指定範囲の拡大を招くと懸念が強かった「その他」は、別表の三カ所を削除するとした。ただ、幅広い解釈が可能な別の文言が挿入されたことで、大きな変化はない。
維新は「国内事件などを対象にすると、戦前の治安維持法のようになる」として、指定範囲を「防衛」に限るように要求しているが、与党は難色を示している。
与党の回答に維新は「要求は最低限のもの。丸のみでなければ賛成できない」としているが、みんなの一部からは早くも評価する声も出ている。
与党はこの内容でも「みんなの党とは合意できる」と余裕をみせる。安倍晋三首相が「第三者的な仕組みで適切な運用を確保することは大事だ」と発言したが、本気とは思えない。